仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
これは本作品ドライブ編で扱った、「ごちうさ×ドライブ」の物語の一部を切り取ったものです。
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File:DRIVE
西暦2013年。首都圏を中心に、凍り付いた時間を駆け抜け、怪物から人々を守るために戦った、一人の戦士がいた。
彼の名は「仮面ライダー」。
不完全な漆黒のボディでありながら、彼は「107体」いる怪物のうち、106体を撲滅した。
そして、残った最後の一体との決戦。
その戦いは熾烈を極めた。互いに全力を出し切り、己の全てを曝け出した。
仮面ライダーに変身するのは、一人の若い青年。そして、そんな彼を支える「ベルト」。勝負を分けたのは、戦いの中でただ一人未熟だった、その青年。
彼の迷いが、心の矛盾が、いつしか埋められない大きな差となって
最後の怪物は仮面ライダーを下し、「ベルト」を亡き者にした。
「愚かだな、仮面ライダー」
その放った一言で、彼の目が覚めた。
相棒を失って初めて気づいた。足りなかったのは、「覚悟」だ。
一人で戦う覚悟。
己の弱さと向き合う覚悟。
人々の命を背負う覚悟。
他者の命を奪う覚悟。
正義を掲げる覚悟。
何一つ足りなかった。気付くのが余りに遅すぎた。
速さが欲しい。自分が遅すぎたせいで零れ落ちそうなモノを、今すぐに走り出して、救い出せるような「速さ」が
そう願った時、彼の姿は赤く輝いた。
そうして覚醒した赤き戦士は、全ての怪物の撲滅を完遂したのだった。
だが、その戦いは終わらない。
「核」は戦いを生き延び、更なる進化を求める。
そして導かれたように、戦いの地は移り変わり―――
_______
日本という国にヨーロッパが存在する。
一見、信じるも何も無いような支離滅裂な文章だ。だが、それは紛れもない真実である。
「木組みの家と石畳の街」。通称「木組みの街」。
住むのは日本人。言語も日本語。通貨は円。しかし、その名前が示す通りの外観は、まさしく北欧。そんな奇妙で素敵な街は確かに存在している。
そんな木組みの街の喫茶店、ラビットハウスは―――
「暇ですね」
今日も繁盛していなかった。
ラビットハウスのマスターの娘、香風智乃は、もう慣れ切った様子でそう呟く。
休日の昼だというのに、笑えるほど客がいない。従業員は三人だが、今日はまだこれより客が来たのを見ていない。今日はいつにも増して酷い。
いや、客が全くいないというわけではないのだ。
「ここ毎日来てるよな、あの客」
「チノちゃん、あの人が気になるの?もしかして恋!?」
「違います」
どうやらチノだけでなく、バイトのココアとリゼも「彼」が気になっているようだった。
今、一人だけいる男性客の事だ。背が高く、モデルにいそうなイケメンという奴だが、イマイチ顔に締まりがない若い男性。
一週間ほど前から、ほぼ毎日ラビットハウスに来店するようになった、新たな常連客だ。
ただの常連客なら歓迎するだけだ。だが、彼はいくつか不審な点があった。
一つ。今もそうだが、チノたち店員をガン見してくる。というか、他の客がいたらその客もガン見する。最近客が少ないのは彼のせいではないだろうか。
しかし、チノが彼を気にする理由は、別の所にあった。
「ご注文お伺いします」
「…じゃあ厚切りトースト一つ」
「ご注文は以上ですか?」
「以上で」
「本当に以上ですか…?」
「え、あ…はい」
オーダーを受けたチノは、強烈に不満そうな顔で帰ってくる。
彼の変な所、二つ目。彼は頑なにコーヒーを注文しない。
喫茶店に来ておいてコーヒーを注文しないというのは、まぁ別に珍しい話ではない。しかし、バリスタを志すチノ(とその頭上のウサギのティッピー)にとって、それがどうも気に食わないのだ。
「あんま気にするなよ、チノ」
「別に気にしてません」
「言葉とは裏腹に、すっごい気迫を感じるわね…」
猛烈なコーヒーアピールを経ても、結局彼がコーヒーを飲むことは無く、そのまま退店。今は客もいなくなり、友人のシャロが来て駄弁っている所だ。
「まぁ気持ちは分かるわよ。私もコーヒー苦手だし」
「シャロちゃんはカフェインハイテンションだもんね!」
「いつ聞いてもトンデモ体質だよな…」
「もしかしたら、あの人もシャロさんと同じなのかもしれませんね。お兄さんとかいたりしませんか?」
チノの冗談に、「いないわよ」と返すシャロ。
だが、その後に考え込むような素振りを見せる。すると、何かを思い出したように指を立てた。
「そういえば!私も見たことあるかも、その人!」
「あら?何のお話してるの?」
すごく自然に、その穏やかな声が割り込んできた。ワンテンポ遅く仕事を終えた千夜だ。いつの間にか来ていた彼女も、その会話に参戦する。
「え…っと。ちょっと前フルールの客に、クッキーだけ頼んで紅茶を頼まずに帰った男の人がいた気が…」
「もしかしてその人って、左腕に変わった時計付けてる人?」
「そういえばそんな気が…そうなんですかリゼ先輩?」
「確かにそうだけど、あれって時計…?
って千夜も知ってるのか?」
「その人なら、最近甘兎庵によく来てくれるわ。お茶は飲んでくれないけれど…指南書無しで注文をしてみせた、期待の新人よ!」
思わず皆が驚きを見せる。というのも、甘兎庵のメニュー名は初見殺しのキラキラネーム。素人にとっては余りに難解なはずなのだ。
ただの変わった客の話のはずが、ますます彼の謎が深まってきた。もうここまで来れば、彼女たちも気になって仕方が無い。
「もしかして…何かのスパイ!?一度捕まえて尋問してみるか!」
「スパイ…ではないと思いますが」
リゼが物騒なことを言い出し、チノが冷静に言葉を返す。
そこで悪ノリを重ねるのが千夜だ。
「そうね。もしかしたら妖怪かもしれないわ」
「妖怪!?」
その言葉に過剰反応した、怖がりのシャロ。
「昼間は人に化けて、夜になると乙女の生き血をすする…」
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「あと熱い飲み物が苦手…」
「あっ、最後ちょっと可愛い」
________
そんな会話の後、ココアの「謎のお客さん探しだよー!」という一声で、その男の人を皆で探す流れに。
チノは頭上にティッピーを乗せ、のんびりと川近くの道を歩く。ただ彼にコーヒーを飲んで欲しかっただけなのに、なんだか妙な話になってしまった。
「随分と気にしているな、あの男の事。チノも恋をする年頃か…」
「だからそういうのじゃないって言ってるじゃないですか。おじいちゃん」
渋い男性の声で、ウサギのティッピーが喋った。
これはチノの腹話術ということになっているが、実際は違う。亡くなったチノの祖父の魂が、ティッピーに乗り移っているのだ。荒唐無稽だが事実であり、こうして話すことも出来る。
「でも…本当は私にも分からないんです。コーヒーが苦手な人だってたくさんいるはずなのに、あの人だけ何か気になると言うか…」
「恋の季節じゃな…コーヒー嫌いなのは気に食わんが、一度会って話をしてみたいものじゃ」
「おじいちゃん話聞いてください」
散歩を始めて結構時間がたった。ココアたちは彼を見つけたのだろうか。
そもそもこの街は広い。神出鬼没な青山ブルーマウンテン先生ならともかく、そう簡単に会えるとはとても―――
いや、いた。普通にいた。
チノの目線の先、河川敷の芝生の上に寝転がっているのは、間違いなくコーヒー嫌いの男性客だ。
「…君は、ラビットハウスの店員さんだよね?」
少し近づいてみただけだったが、すぐに気配を悟られ、見つかってしまった。店の外で会うのは初めてだ。人見知り気質なチノは、少し委縮してしまう。
「…少し見かけたので、声を掛けてみようかと……」
「あぁそう。確か、香風智乃ちゃん…だったっけ」
「…!私の名前、知ってるんですか」
「まぁな。俺は栗夢走大、最近ここに来たばっかなんだ。よろしく頼むよ」
そう言って彼は気の抜けた笑いを見せ、白い飴玉を口に放り込んだ。
チノはそんな彼を不思議そうに見ていたが、その目線が彼の体に止まった。
気になったのは服装。いつも店に来る際の私服では無く、黒く硬い印象の制服だ。
「えっと…走大さん。その服…」
「お、気付いたか。俺って実はお巡りさんなのよ。そこの交番の刑事」
日頃事件なんて起こらないためチノも忘れかけていたが、この街には一つだけ交番があるのだ。さっき散々スパイだとか猫舌妖怪だとか好き勝手言っていたが、警察官だとは予想もつかなかった。
チノは正直高揚する。彼女は割と「ヒーロー」というものに弱いのだ。
「スパイでも妖怪でもなく、正義の味方だったんですね」
「は?スパイ?妖怪?何の話?」
「それで、その刑事さんがここで何してるんですか?」
「んー?そりゃまぁ、サボり。こんな平和な街じゃ、俺たちも暇なんだよ」
欠伸しながら答える走大。チノは思わずズッコケそうになる。
刑事、つまり「正義のヒーロー」という響きにカッコよさすら感じていたが、何か思っていた感じと違って拍子抜けというか、失望というか。
「そういえば…聞きたいことがあるんです。最近、色んなお店に行ってると聞きました。もしかして、何かの捜査だったりするんですか…!?」
「よく知ってるなぁ。うーん、目的って言われると…そうだな…」
走大は暫く考え込んだ後、目を輝かせるチノに気持ち申し訳無さそうに、こう答えた。
「可愛い女の子…とか?」
________
大きいガラス窓と木の棚。例外なく異国情緒に溢れたスーパーマーケットで、走大は飴を大量に買い物かごに入れ、さっきのチノとの会話を思い出していた。
「あぁぁぁぁぁぁっ!絶対勘違いされたよなアレぇ…言い方悪かったな。駆じゃあるまいし…ハァ…」
走大とて、女性と話すのは慣れていないし、かなり苦手な部類に入る。女児相手とは言え、若干テンパっていた感が否めず、激しく反省中である。
しかし、実のところチノの予想は当たっていた。走大は現在、ある事件を追っている最中だ。だが、それを一般市民に漏らすわけにはいかない。
「さて切り替えろ。ここでバイトしてる子も、可能性あるわな…」
走大が追っているのは、連続女性誘拐事件だ。この街でも最近になって3人、姿を消している。扱いは失踪となっているが、走大はこれが誘拐であると確信していた。そして、犯人の目星も付いている。
問題は、その「犯人」がどこに現れるかだ。
これまでに消えた人物の共通点は、「女性であること」、「美人であること」、「18歳以下であること」、「働いていること」。だから走大は、その共通点に当てはまる人物を観察し続けていた。
「被害者はまだ3人…いや、
まだまだ遅い。急がなければ。
この平和が乱れてしまう前に、自分一人で終わらせてみせる。
一方、偶然ではあるがチノも食材の買い出しでこの店に来ていた。今日の特売狙いのシャロも一緒だ。
「チノちゃん…なんか不機嫌?」
「別に不機嫌じゃないです。ちょっとイライラしてるだけです」
「それ不機嫌って言うのよ。そんなにショックだったの?その…警察官の人のこと」
チノはいわゆるヒーローのようなものに憧れが強い節がある。警察官なんて話したことも無かったし、走大が警察だと知った時はワクワクもした。
しかし、蓋を開ければサボり癖のナンパ不真面目警官だ。これは彼女の意地やら好みの問題だが、おまけにコーヒー嫌いときた。わがまま言ってる自覚はあるが、なんというか、もっとちゃんとしていて欲しかった。
「確かにこの街は平和だし、警察が暇してるのも本当かもね。きっと事件とかの時はちゃんとしてるわよ」
「そうでしょうか…あの人は、何か気合が抜けきっていたというか…」
そんな風に話していると、非常にタイミング良く店の隅に走大の姿が。
「あっ!走大さんです」
「あの人が…でも、何かをずっと見てるみたいだけど…」
彼の鋭い視線を辿ると、その先には美少女のバイト店員が。
チノのがっかり具合が強まった。これにはシャロも何も言えず閉口する。
「日向ぼっこばかりで可愛い女の子が好きなんて、まるでココアさんです。あんな人がこの街の警官だなんて不安です」
「そう言われると確かに不安ね…」
シャロはそう言って笑った。
いつもの日常の一コマだった。
そのはずだった。
その瞬間、その日常は音を立てることも無く―――
止まった。
「え…?」
何かの衝撃が体を通り抜けたと思うと、一気に体が重くなった。意識もその例外ではない。段々と意識が遅くなる感覚が全身に回る。
そして、たまたま後ろを向いていたチノだけが気付いた。
この静止した世界で、何事も無いように動く侵略者の姿。
窓ガラスを突き破って現れた、ロボット怪人だ。
鈍化した頭じゃ、この異常な状況の理解なんて出来ない。
だが、怪人がこちらに手を向けた恐怖だけは、理解できてしまった。
「いや……!」
叫べない。そう思っていたチノだったが、恐怖に対する言葉が流暢に口から零れた。
「あれ…喋れる…動ける…!」
驚きより先に、体が動けるようになっていることに気付く。
でも周りは止まったまま。怪人も、動けるチノを見て驚きを見せているようだった。
一瞬動きを止めた怪人だが、確かに一言「まぁ、いい」と言うと、チノの体を振り払った。
その手がシャロに伸ばされる。体が痛い。何が起こっているのかまるで分らない。
だが、チノは何故かこう思ってしまった。
この日を境に、全てが変わってしまうと。平和な日常は、消え去ってしまうと。
「シャロさん!!」
チノは止まった世界の中で叫んだ。
自分と怪物だけが動ける、この世界の中心で。
いや、違う。動けたのは、二人だけじゃない。
チノの叫びで怪人の動きが再び止まる。
そこに駆け付けるのは、一人のヒーロー。
凍り付く時間の中でただ一人、怪物に立ち向かう戦士。
「大丈夫だ。俺に任せて」
怪人の体に蹴りを放ち、彼はチノにそう声を掛けた。
栗夢走大だ。だが、チノがさっきまで見ていた彼とは、まるで違った。
「走大さん…なんですか…?」
気合の入っていなかった顔は見違え、その背中から熱さすら感じる。まるで、「エンジンがかかった」ように。
「予想通りだな。やっぱり一番乗りはお前か、ロイミュード011!」
「貴様ァ…何者だ?」
「会ったことあるぜ?俺たち。忘れたんなら思い出させてやる」
走大はロイミュード011と呼ばれた怪物を店の外に押し出し、人が少ない道路に場所を変える。それを追ったチノが見たのは、右手にベルトを持った走大の姿。
「さぁ行くぜ、力貸してくれベルトさん…!」
「ただの機械」にそう語り掛け、彼は腰にベルトを装着。そして、ベルトのキーを回した。
その一連の動きで、ロイミュード011の様子が変わる。余裕から一転、切迫した声でその名前を口にした。
「貴様、まさか…仮面ライダー!」
「Start my engine…飛ばして行くぜ!」
飛来したミニカーを変形させ、ブレスに装填。
ドライブにギアを切り替えるようにレバーを上げ、その言葉を叫ぶ。
「変身!」
《DRIVE!》
《type-SPEED!》
駐車していた彼の車「トライドロン」からタイヤが射出。黒いアンダースーツと赤い装甲を纏った走大の体と合体し、彼は「変身」した。
「すごい……」
チノは知る由も無い。首都圏で暴れ回る機械生命体「ロイミュード」がいたことを。
そして、そんな怪物と戦う都市伝説のヒーローがいたということを。
彼こそが、その伝説のヒーロー。
その名も「仮面ライダードライブ」
「ひとっ走り付き合えよ!」
赤き戦士、ドライブはロイミュードに迷いなく駆け出す。
しかし、そこに現れる新たなロイミュード。蝙蝠のようだった011とは違い、コブラのような姿の073と、蜘蛛のような姿の093。
完全に数で負けている。それでも、ドライブは躊躇わない。
ロイミュード達の一斉射撃をスライディングで躱し、接近したと同時にパンチの一撃。
073の攻撃を両手で捌きつつ、背後から近寄る093の蹴りを右手でガード。そのまま脚を掴んで093を転ばせ、073の顔面には膝蹴りをお見舞いした。
素人目から見ても、強いのは明白だった。
訓練を重ねたことによる「慣れた動き」。これまで潜ってきた戦いの数を感じさせるような、そんな強さだ。
「相も変わらず、不快…邪魔をォ…するな!仮面ライダー!」
「俺から言わせりゃお前らが邪魔だ!こんな平和な街で悪さしようだなんて、普通考えねぇぞ!」
「理解が足りていない…平和、だから、こそ!崩すことが、尊い!」
「あぁそうかい。お前はそういう奴だったな!」
011とドライブの一対一。
011の動きは他の2体の上を行っており、ドライブでさえも先ほどのように圧倒できない。
ドライブの渾身のパンチ。しかし、011の腕が完璧にガードする。その強度は金属を遥かに超えており、まるでダイヤモンド。
「
ドライブがホルダーから取り外したのは、紫のミニカー。
変身した時と同じ手順でブレスに装填し、再びレバーを上げる。
《タイヤコウカーン!》
《MIDNIGHT SHADOW!》
トライドロンから飛び出した紫のタイヤが、ドライブのスピードタイヤと入れ替わる。
紫のタイヤのパーツが展開し、手裏剣のような形に。これがシフトカー「ミッドナイトシャドー」の力を宿した、ドライブタイプスピードシャドー。
「行くぜ!」
ドライブが飛び上がると同時に、その姿が分裂。
3人に分身したドライブが、複数方向から011を狙う。
体を硬化させて防御を図るも、全身を硬化させるわけにもいかない。必ず隙が生まれる。ドライブはその隙、つまり硬化していない死角を狙い、手裏剣型のエネルギー弾を放った。
「クっ……!」
そこに加勢に入る073と093だが、分身して3対3。数の利は消え去っている。
それどころか、ドライブは圧倒的な速度と攻撃力でロイミュードたちを翻弄。
《SHA!SHA!SHADOW!!》
レバーを3回上げ、シフトアップ。更に速度と手数を増やし、一気に三体を圧倒。
もう誰にも、ドライブを捉えることは出来ない。
その時、戦いを見ていたチノのポケットから、何かが飛び出した。
その瞬間、チノの体が突然重たくなる。
チノから離れたソレは、ドライブの手元に。
それは緑色のシフトカー「ファンキースパイク」だった。
「スパイク!?お前、どこ行ってたんだよ!
まぁいいや折角だ。お前の力も借りるぜ!」
キーを回し、ブレスのレバーをシャドーからスパイクに。
《タイヤコウカーン!》
《FUNKY SPIKE!》
今度は緑色の刺々しいタイヤにタイヤ交換。
ドライブはそこからもう一度キーを回し、ブレスの「イグナイター」を押す。
《ヒッサーツ!》
それに合わせてスパイクタイヤが高速回転。
待機するドライバーに合図を送るように、ドライブはレバーを上げた。
《Full Throtte!!SPIKE!》
超人的な脚力で高くジャンプしたドライブは、タイヤのように自身の体を回転。そこから発射される無数の棘が、3体のロイミュードに痛烈な雨となって降り注ぐ。
それにより防御が消え去った瞬間、エネルギーを帯びたドライブのキックが、ロイミュードに炸裂。ダメージ許容限界を超過したロイミュードのボディが爆発四散し、大爆発を起こした。
爆炎の中で、浮遊する073と093の数字の形をした「コア」が破裂。
体を硬化させて防御力を上げていた011だけが撃破を免れ、銀の翼で飛び去って行った。
「逃げられた…!けど、これで2体。残りは“105体”……とにかくひとまず、Nice Drive…かな?」
変身を解いた走大。戦いが終わると同時に、止まっていた世界も元に戻った。
チノの目に映るのは、紛れもないヒーローの姿。
「正義のヒーロー…仮面ライダー…!」
街の平和を怪物から守る、正義のヒーロー。
そんなありきたりな彼の戦いが、今再び幕を開けた。
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「仮面ライダー…お前も来たか」
青いコートとファーマフラーを身に着けた大柄の男が、ただ一人で呟いた。
研究施設のようなその場所で、彼の手元には「073」と「093」と刻まれた、二つの小さな「墓標」が。
彼の名は「ガイスト」。彼こそが、前の戦いでドライブと激闘を繰り広げ、「ベルト」をこの世から消した、最後の一体のロイミュードだ。ナンバーは「002」。
戦いに敗れた彼は、更なる「進化」を求め、この街に辿り着いた。
全ては、ロイミュードが支配する世界を実現するために。
そして、そのために必要な鍵が、この場所に眠っている。
「さぁ、目覚めの時だ。俺たちの…“最後の家族”よ」
建物の奥に立つ、大きなカプセル。
ガイストが掌に乗せた、ロイミュードの体の源「バイラルコア」が、吸い込まれるようにカプセルの中へと消えていった。
カプセルの内部に吸収されたスパイダーのバイラルコア。
それを号砲に、カプセルが開く。
カプセル内部を満たしていた液体が溢れ、その中から一つの体が倒れ込んだ。
ガイストはそれを受け止める。バイラルコアを取り込んだはずのその体は、生まれたままの姿の、少年の肉体だった。
いや、今まさに、彼はこの世界に生まれたのだろう。
少年の眼が開く。
ガイストは優しい眼差しで、まるで父親のように、彼に最初の言葉と「名前」を与えた。
「おはよう、
後半に続く。