仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

5 / 112
※注意
これは本作品ドライブ編で扱った、「ごちうさ×ドライブ」の物語の一部を切り取ったものです。






















Access…[Archive 2014]

File:DRIVE






この街を守るのはだれか

西暦2013年。首都圏を中心に、凍り付いた時間を駆け抜け、怪物から人々を守るために戦った、一人の戦士がいた。

 

彼の名は「仮面ライダー」。

不完全な漆黒のボディでありながら、彼は「107体」いる怪物のうち、106体を撲滅した。

 

そして、残った最後の一体との決戦。

その戦いは熾烈を極めた。互いに全力を出し切り、己の全てを曝け出した。

 

仮面ライダーに変身するのは、一人の若い青年。そして、そんな彼を支える「ベルト」。勝負を分けたのは、戦いの中でただ一人未熟だった、その青年。

 

彼の迷いが、心の矛盾が、いつしか埋められない大きな差となって

最後の怪物は仮面ライダーを下し、「ベルト」を亡き者にした。

 

 

「愚かだな、仮面ライダー」

 

 

その放った一言で、彼の目が覚めた。

相棒を失って初めて気づいた。足りなかったのは、「覚悟」だ。

 

一人で戦う覚悟。

己の弱さと向き合う覚悟。

人々の命を背負う覚悟。

他者の命を奪う覚悟。

正義を掲げる覚悟。

 

何一つ足りなかった。気付くのが余りに遅すぎた。

 

速さが欲しい。自分が遅すぎたせいで零れ落ちそうなモノを、今すぐに走り出して、救い出せるような「速さ」が

 

そう願った時、彼の姿は赤く輝いた。

そうして覚醒した赤き戦士は、全ての怪物の撲滅を完遂したのだった。

 

 

だが、その戦いは終わらない。

「核」は戦いを生き延び、更なる進化を求める。

 

そして導かれたように、戦いの地は移り変わり―――

 

 

 

_______

 

 

 

日本という国にヨーロッパが存在する。

一見、信じるも何も無いような支離滅裂な文章だ。だが、それは紛れもない真実である。

 

「木組みの家と石畳の街」。通称「木組みの街」。

住むのは日本人。言語も日本語。通貨は円。しかし、その名前が示す通りの外観は、まさしく北欧。そんな奇妙で素敵な街は確かに存在している。

 

そんな木組みの街の喫茶店、ラビットハウスは―――

 

 

「暇ですね」

 

 

今日も繁盛していなかった。

 

ラビットハウスのマスターの娘、香風智乃は、もう慣れ切った様子でそう呟く。

休日の昼だというのに、笑えるほど客がいない。従業員は三人だが、今日はまだこれより客が来たのを見ていない。今日はいつにも増して酷い。

 

いや、客が全くいないというわけではないのだ。

 

 

「ここ毎日来てるよな、あの客」

 

「チノちゃん、あの人が気になるの?もしかして恋!?」

 

「違います」

 

 

どうやらチノだけでなく、バイトのココアとリゼも「彼」が気になっているようだった。

今、一人だけいる男性客の事だ。背が高く、モデルにいそうなイケメンという奴だが、イマイチ顔に締まりがない若い男性。

 

一週間ほど前から、ほぼ毎日ラビットハウスに来店するようになった、新たな常連客だ。

ただの常連客なら歓迎するだけだ。だが、彼はいくつか不審な点があった。

 

一つ。今もそうだが、チノたち店員をガン見してくる。というか、他の客がいたらその客もガン見する。最近客が少ないのは彼のせいではないだろうか。

 

しかし、チノが彼を気にする理由は、別の所にあった。

 

 

「ご注文お伺いします」

 

「…じゃあ厚切りトースト一つ」

 

「ご注文は以上ですか?」

 

「以上で」

「本当に以上ですか…?」

「え、あ…はい」

 

 

オーダーを受けたチノは、強烈に不満そうな顔で帰ってくる。

彼の変な所、二つ目。彼は頑なにコーヒーを注文しない。

 

喫茶店に来ておいてコーヒーを注文しないというのは、まぁ別に珍しい話ではない。しかし、バリスタを志すチノ(とその頭上のウサギのティッピー)にとって、それがどうも気に食わないのだ。

 

 

「あんま気にするなよ、チノ」

 

「別に気にしてません」

 

「言葉とは裏腹に、すっごい気迫を感じるわね…」

 

 

猛烈なコーヒーアピールを経ても、結局彼がコーヒーを飲むことは無く、そのまま退店。今は客もいなくなり、友人のシャロが来て駄弁っている所だ。

 

 

「まぁ気持ちは分かるわよ。私もコーヒー苦手だし」

 

「シャロちゃんはカフェインハイテンションだもんね!」

 

「いつ聞いてもトンデモ体質だよな…」

 

「もしかしたら、あの人もシャロさんと同じなのかもしれませんね。お兄さんとかいたりしませんか?」

 

 

チノの冗談に、「いないわよ」と返すシャロ。

だが、その後に考え込むような素振りを見せる。すると、何かを思い出したように指を立てた。

 

 

「そういえば!私も見たことあるかも、その人!」

「あら?何のお話してるの?」

 

 

すごく自然に、その穏やかな声が割り込んできた。ワンテンポ遅く仕事を終えた千夜だ。いつの間にか来ていた彼女も、その会話に参戦する。

 

 

「え…っと。ちょっと前フルールの客に、クッキーだけ頼んで紅茶を頼まずに帰った男の人がいた気が…」

 

「もしかしてその人って、左腕に変わった時計付けてる人?」

 

「そういえばそんな気が…そうなんですかリゼ先輩?」

 

「確かにそうだけど、あれって時計…?

って千夜も知ってるのか?」

 

「その人なら、最近甘兎庵によく来てくれるわ。お茶は飲んでくれないけれど…指南書無しで注文をしてみせた、期待の新人よ!」

 

 

思わず皆が驚きを見せる。というのも、甘兎庵のメニュー名は初見殺しのキラキラネーム。素人にとっては余りに難解なはずなのだ。

 

ただの変わった客の話のはずが、ますます彼の謎が深まってきた。もうここまで来れば、彼女たちも気になって仕方が無い。

 

 

「もしかして…何かのスパイ!?一度捕まえて尋問してみるか!」

 

「スパイ…ではないと思いますが」

 

 

リゼが物騒なことを言い出し、チノが冷静に言葉を返す。

そこで悪ノリを重ねるのが千夜だ。

 

 

「そうね。もしかしたら妖怪かもしれないわ」

 

「妖怪!?」

 

 

その言葉に過剰反応した、怖がりのシャロ。

 

 

「昼間は人に化けて、夜になると乙女の生き血をすする…」

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 

「あと熱い飲み物が苦手…」

 

「あっ、最後ちょっと可愛い」

 

 

 

________

 

 

そんな会話の後、ココアの「謎のお客さん探しだよー!」という一声で、その男の人を皆で探す流れに。

 

チノは頭上にティッピーを乗せ、のんびりと川近くの道を歩く。ただ彼にコーヒーを飲んで欲しかっただけなのに、なんだか妙な話になってしまった。

 

 

「随分と気にしているな、あの男の事。チノも恋をする年頃か…」

 

「だからそういうのじゃないって言ってるじゃないですか。おじいちゃん」

 

 

渋い男性の声で、ウサギのティッピーが喋った。

これはチノの腹話術ということになっているが、実際は違う。亡くなったチノの祖父の魂が、ティッピーに乗り移っているのだ。荒唐無稽だが事実であり、こうして話すことも出来る。

 

 

「でも…本当は私にも分からないんです。コーヒーが苦手な人だってたくさんいるはずなのに、あの人だけ何か気になると言うか…」

 

「恋の季節じゃな…コーヒー嫌いなのは気に食わんが、一度会って話をしてみたいものじゃ」

 

「おじいちゃん話聞いてください」

 

 

散歩を始めて結構時間がたった。ココアたちは彼を見つけたのだろうか。

そもそもこの街は広い。神出鬼没な青山ブルーマウンテン先生ならともかく、そう簡単に会えるとはとても―――

 

 

いや、いた。普通にいた。

チノの目線の先、河川敷の芝生の上に寝転がっているのは、間違いなくコーヒー嫌いの男性客だ。

 

 

「…君は、ラビットハウスの店員さんだよね?」

 

 

少し近づいてみただけだったが、すぐに気配を悟られ、見つかってしまった。店の外で会うのは初めてだ。人見知り気質なチノは、少し委縮してしまう。

 

 

「…少し見かけたので、声を掛けてみようかと……」

 

「あぁそう。確か、香風智乃ちゃん…だったっけ」

 

「…!私の名前、知ってるんですか」

 

「まぁな。俺は栗夢走大、最近ここに来たばっかなんだ。よろしく頼むよ」

 

 

そう言って彼は気の抜けた笑いを見せ、白い飴玉を口に放り込んだ。

チノはそんな彼を不思議そうに見ていたが、その目線が彼の体に止まった。

 

気になったのは服装。いつも店に来る際の私服では無く、黒く硬い印象の制服だ。

 

 

「えっと…走大さん。その服…」

 

「お、気付いたか。俺って実はお巡りさんなのよ。そこの交番の刑事」

 

 

日頃事件なんて起こらないためチノも忘れかけていたが、この街には一つだけ交番があるのだ。さっき散々スパイだとか猫舌妖怪だとか好き勝手言っていたが、警察官だとは予想もつかなかった。

 

チノは正直高揚する。彼女は割と「ヒーロー」というものに弱いのだ。

 

 

「スパイでも妖怪でもなく、正義の味方だったんですね」

 

「は?スパイ?妖怪?何の話?」

 

「それで、その刑事さんがここで何してるんですか?」

 

「んー?そりゃまぁ、サボり。こんな平和な街じゃ、俺たちも暇なんだよ」

 

 

欠伸しながら答える走大。チノは思わずズッコケそうになる。

刑事、つまり「正義のヒーロー」という響きにカッコよさすら感じていたが、何か思っていた感じと違って拍子抜けというか、失望というか。

 

 

「そういえば…聞きたいことがあるんです。最近、色んなお店に行ってると聞きました。もしかして、何かの捜査だったりするんですか…!?」

 

「よく知ってるなぁ。うーん、目的って言われると…そうだな…」

 

 

走大は暫く考え込んだ後、目を輝かせるチノに気持ち申し訳無さそうに、こう答えた。

 

 

 

「可愛い女の子…とか?」

 

 

 

________

 

 

 

大きいガラス窓と木の棚。例外なく異国情緒に溢れたスーパーマーケットで、走大は飴を大量に買い物かごに入れ、さっきのチノとの会話を思い出していた。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!絶対勘違いされたよなアレぇ…言い方悪かったな。駆じゃあるまいし…ハァ…」

 

 

走大とて、女性と話すのは慣れていないし、かなり苦手な部類に入る。女児相手とは言え、若干テンパっていた感が否めず、激しく反省中である。

 

しかし、実のところチノの予想は当たっていた。走大は現在、ある事件を追っている最中だ。だが、それを一般市民に漏らすわけにはいかない。

 

 

「さて切り替えろ。ここでバイトしてる子も、可能性あるわな…」

 

 

走大が追っているのは、連続女性誘拐事件だ。この街でも最近になって3人、姿を消している。扱いは失踪となっているが、走大はこれが誘拐であると確信していた。そして、犯人の目星も付いている。

 

問題は、その「犯人」がどこに現れるかだ。

これまでに消えた人物の共通点は、「女性であること」、「美人であること」、「18歳以下であること」、「働いていること」。だから走大は、その共通点に当てはまる人物を観察し続けていた。

 

 

「被害者はまだ3人…いや、()()3人だ」

 

 

まだまだ遅い。急がなければ。

この平和が乱れてしまう前に、自分一人で終わらせてみせる。

 

 

 

 

 

一方、偶然ではあるがチノも食材の買い出しでこの店に来ていた。今日の特売狙いのシャロも一緒だ。

 

 

「チノちゃん…なんか不機嫌?」

 

「別に不機嫌じゃないです。ちょっとイライラしてるだけです」

 

「それ不機嫌って言うのよ。そんなにショックだったの?その…警察官の人のこと」

 

 

チノはいわゆるヒーローのようなものに憧れが強い節がある。警察官なんて話したことも無かったし、走大が警察だと知った時はワクワクもした。

 

しかし、蓋を開ければサボり癖のナンパ不真面目警官だ。これは彼女の意地やら好みの問題だが、おまけにコーヒー嫌いときた。わがまま言ってる自覚はあるが、なんというか、もっとちゃんとしていて欲しかった。

 

 

「確かにこの街は平和だし、警察が暇してるのも本当かもね。きっと事件とかの時はちゃんとしてるわよ」

 

「そうでしょうか…あの人は、何か気合が抜けきっていたというか…」

 

 

そんな風に話していると、非常にタイミング良く店の隅に走大の姿が。

 

 

「あっ!走大さんです」

 

「あの人が…でも、何かをずっと見てるみたいだけど…」

 

 

彼の鋭い視線を辿ると、その先には美少女のバイト店員が。

チノのがっかり具合が強まった。これにはシャロも何も言えず閉口する。

 

 

「日向ぼっこばかりで可愛い女の子が好きなんて、まるでココアさんです。あんな人がこの街の警官だなんて不安です」

 

「そう言われると確かに不安ね…」

 

 

シャロはそう言って笑った。

いつもの日常の一コマだった。

 

 

そのはずだった。

 

 

その瞬間、その日常は音を立てることも無く―――

 

 

 

止まった。

 

 

 

「え…?」

 

 

 

何かの衝撃が体を通り抜けたと思うと、一気に体が重くなった。意識もその例外ではない。段々と意識が遅くなる感覚が全身に回る。

 

 

そして、たまたま後ろを向いていたチノだけが気付いた。

この静止した世界で、何事も無いように動く侵略者の姿。

 

窓ガラスを突き破って現れた、ロボット怪人だ。

 

 

鈍化した頭じゃ、この異常な状況の理解なんて出来ない。

だが、怪人がこちらに手を向けた恐怖だけは、理解できてしまった。

 

 

「いや……!」

 

 

 

叫べない。そう思っていたチノだったが、恐怖に対する言葉が流暢に口から零れた。

 

 

「あれ…喋れる…動ける…!」

 

 

驚きより先に、体が動けるようになっていることに気付く。

でも周りは止まったまま。怪人も、動けるチノを見て驚きを見せているようだった。

 

一瞬動きを止めた怪人だが、確かに一言「まぁ、いい」と言うと、チノの体を振り払った。

 

 

その手がシャロに伸ばされる。体が痛い。何が起こっているのかまるで分らない。

 

だが、チノは何故かこう思ってしまった。

この日を境に、全てが変わってしまうと。平和な日常は、消え去ってしまうと。

 

 

「シャロさん!!」

 

 

チノは止まった世界の中で叫んだ。

自分と怪物だけが動ける、この世界の中心で。

 

 

いや、違う。動けたのは、二人だけじゃない。

 

 

チノの叫びで怪人の動きが再び止まる。

そこに駆け付けるのは、一人のヒーロー。

 

凍り付く時間の中でただ一人、怪物に立ち向かう戦士。

 

 

「大丈夫だ。俺に任せて」

 

 

怪人の体に蹴りを放ち、彼はチノにそう声を掛けた。

栗夢走大だ。だが、チノがさっきまで見ていた彼とは、まるで違った。

 

 

「走大さん…なんですか…?」

 

 

気合の入っていなかった顔は見違え、その背中から熱さすら感じる。まるで、「エンジンがかかった」ように。

 

 

「予想通りだな。やっぱり一番乗りはお前か、ロイミュード011!」

 

「貴様ァ…何者だ?」

 

「会ったことあるぜ?俺たち。忘れたんなら思い出させてやる」

 

 

走大はロイミュード011と呼ばれた怪物を店の外に押し出し、人が少ない道路に場所を変える。それを追ったチノが見たのは、右手にベルトを持った走大の姿。

 

 

「さぁ行くぜ、力貸してくれベルトさん…!」

 

 

「ただの機械」にそう語り掛け、彼は腰にベルトを装着。そして、ベルトのキーを回した。

その一連の動きで、ロイミュード011の様子が変わる。余裕から一転、切迫した声でその名前を口にした。

 

 

「貴様、まさか…仮面ライダー!」

 

「Start my engine…飛ばして行くぜ!」

 

 

飛来したミニカーを変形させ、ブレスに装填。

ドライブにギアを切り替えるようにレバーを上げ、その言葉を叫ぶ。

 

 

「変身!」

 

《DRIVE!》

《type-SPEED!》

 

 

駐車していた彼の車「トライドロン」からタイヤが射出。黒いアンダースーツと赤い装甲を纏った走大の体と合体し、彼は「変身」した。

 

 

「すごい……」

 

 

チノは知る由も無い。首都圏で暴れ回る機械生命体「ロイミュード」がいたことを。

そして、そんな怪物と戦う都市伝説のヒーローがいたということを。

 

彼こそが、その伝説のヒーロー。

その名も「仮面ライダードライブ」

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

赤き戦士、ドライブはロイミュードに迷いなく駆け出す。

しかし、そこに現れる新たなロイミュード。蝙蝠のようだった011とは違い、コブラのような姿の073と、蜘蛛のような姿の093。

 

完全に数で負けている。それでも、ドライブは躊躇わない。

 

ロイミュード達の一斉射撃をスライディングで躱し、接近したと同時にパンチの一撃。

073の攻撃を両手で捌きつつ、背後から近寄る093の蹴りを右手でガード。そのまま脚を掴んで093を転ばせ、073の顔面には膝蹴りをお見舞いした。

 

 

素人目から見ても、強いのは明白だった。

訓練を重ねたことによる「慣れた動き」。これまで潜ってきた戦いの数を感じさせるような、そんな強さだ。

 

 

「相も変わらず、不快…邪魔をォ…するな!仮面ライダー!」

 

「俺から言わせりゃお前らが邪魔だ!こんな平和な街で悪さしようだなんて、普通考えねぇぞ!」

 

「理解が足りていない…平和、だから、こそ!崩すことが、尊い!」

 

「あぁそうかい。お前はそういう奴だったな!」

 

 

011とドライブの一対一。

011の動きは他の2体の上を行っており、ドライブでさえも先ほどのように圧倒できない。

 

ドライブの渾身のパンチ。しかし、011の腕が完璧にガードする。その強度は金属を遥かに超えており、まるでダイヤモンド。

 

 

()()は健在かよ!それならこっちも…本気で行かせてもらうか!」

 

 

 

ドライブがホルダーから取り外したのは、紫のミニカー。

変身した時と同じ手順でブレスに装填し、再びレバーを上げる。

 

 

《タイヤコウカーン!》

《MIDNIGHT SHADOW!》

 

 

トライドロンから飛び出した紫のタイヤが、ドライブのスピードタイヤと入れ替わる。

紫のタイヤのパーツが展開し、手裏剣のような形に。これがシフトカー「ミッドナイトシャドー」の力を宿した、ドライブタイプスピードシャドー。

 

 

「行くぜ!」

 

 

ドライブが飛び上がると同時に、その姿が分裂。

3人に分身したドライブが、複数方向から011を狙う。

 

体を硬化させて防御を図るも、全身を硬化させるわけにもいかない。必ず隙が生まれる。ドライブはその隙、つまり硬化していない死角を狙い、手裏剣型のエネルギー弾を放った。

 

 

「クっ……!」

 

 

そこに加勢に入る073と093だが、分身して3対3。数の利は消え去っている。

それどころか、ドライブは圧倒的な速度と攻撃力でロイミュードたちを翻弄。

 

 

《SHA!SHA!SHADOW!!》

 

 

レバーを3回上げ、シフトアップ。更に速度と手数を増やし、一気に三体を圧倒。

もう誰にも、ドライブを捉えることは出来ない。

 

 

その時、戦いを見ていたチノのポケットから、何かが飛び出した。

その瞬間、チノの体が突然重たくなる。

 

チノから離れたソレは、ドライブの手元に。

それは緑色のシフトカー「ファンキースパイク」だった。

 

 

「スパイク!?お前、どこ行ってたんだよ!

まぁいいや折角だ。お前の力も借りるぜ!」

 

 

キーを回し、ブレスのレバーをシャドーからスパイクに。

 

 

《タイヤコウカーン!》

《FUNKY SPIKE!》

 

 

今度は緑色の刺々しいタイヤにタイヤ交換。

ドライブはそこからもう一度キーを回し、ブレスの「イグナイター」を押す。

 

 

《ヒッサーツ!》

 

 

それに合わせてスパイクタイヤが高速回転。

待機するドライバーに合図を送るように、ドライブはレバーを上げた。

 

 

《Full Throtte!!SPIKE!》

 

 

超人的な脚力で高くジャンプしたドライブは、タイヤのように自身の体を回転。そこから発射される無数の棘が、3体のロイミュードに痛烈な雨となって降り注ぐ。

 

それにより防御が消え去った瞬間、エネルギーを帯びたドライブのキックが、ロイミュードに炸裂。ダメージ許容限界を超過したロイミュードのボディが爆発四散し、大爆発を起こした。

 

 

爆炎の中で、浮遊する073と093の数字の形をした「コア」が破裂。

体を硬化させて防御力を上げていた011だけが撃破を免れ、銀の翼で飛び去って行った。

 

 

「逃げられた…!けど、これで2体。残りは“105体”……とにかくひとまず、Nice Drive…かな?」

 

 

変身を解いた走大。戦いが終わると同時に、止まっていた世界も元に戻った。

チノの目に映るのは、紛れもないヒーローの姿。

 

 

「正義のヒーロー…仮面ライダー…!」

 

 

街の平和を怪物から守る、正義のヒーロー。

そんなありきたりな彼の戦いが、今再び幕を開けた。

 

 

 

 

_______

 

 

 

「仮面ライダー…お前も来たか」

 

 

青いコートとファーマフラーを身に着けた大柄の男が、ただ一人で呟いた。

研究施設のようなその場所で、彼の手元には「073」と「093」と刻まれた、二つの小さな「墓標」が。

 

彼の名は「ガイスト」。彼こそが、前の戦いでドライブと激闘を繰り広げ、「ベルト」をこの世から消した、最後の一体のロイミュードだ。ナンバーは「002」。

 

 

戦いに敗れた彼は、更なる「進化」を求め、この街に辿り着いた。

全ては、ロイミュードが支配する世界を実現するために。

 

そして、そのために必要な鍵が、この場所に眠っている。

 

 

「さぁ、目覚めの時だ。俺たちの…“最後の家族”よ」

 

 

建物の奥に立つ、大きなカプセル。

ガイストが掌に乗せた、ロイミュードの体の源「バイラルコア」が、吸い込まれるようにカプセルの中へと消えていった。

 

カプセルの内部に吸収されたスパイダーのバイラルコア。

それを号砲に、カプセルが開く。

 

カプセル内部を満たしていた液体が溢れ、その中から一つの体が倒れ込んだ。

ガイストはそれを受け止める。バイラルコアを取り込んだはずのその体は、生まれたままの姿の、少年の肉体だった。

 

 

いや、今まさに、彼はこの世界に生まれたのだろう。

 

 

少年の眼が開く。

ガイストは優しい眼差しで、まるで父親のように、彼に最初の言葉と「名前」を与えた。

 

 

 

「おはよう、108(トーヤ)

 

 

 

 




後半に続く。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。