仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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遅くなりました補完計画です。久しぶり投稿なので気合入れました。
「例の件」にはあまり触れない方向で行きます。


ジオウくろすと補完計画 10.5話 「ライダーの日常・冬編」

ゴーストの力を受け継ぐも、衝撃の結末で幕を下ろしたゴースト編。

そして、そんなゴースト編の補完計画になるわけですが……

 

 

蔵真→令央に刺されてダウン。

アリオス→令央に斬られてダウン。

ミカド→令央の必殺技を喰らってダウン。

朝陽→令央に眼魂を壊されて消滅。

香奈→アナザーゴーストになった。

壮間→ウィルと二人きりは嫌。

ウィル→我が王に嫌われて悲しい。

 

 

こんな感じで補完キャストが不在の事態に…

 

てなわけで、今回も予定を変更。

これまで登場したレジェンドたちの補完と称して、これまで巡った物語の日常を覗いてみることにしましょう。

 

 

 

__________

 

 

EP.01 バレンタインを制するのはだれか

 

 

それは木組みの街の、2月14日のこと。

 

 

「ソウさん!今日は何の日かわかる!?」

 

「なんだよ駆。こんな穏やかな昼間に騒がしいな」

 

 

事件も無く暇をしていた栗夢走大。津川駆は交番に飛び込んできたかと思うと、そんな彼に質問を叩きつけた。と言っても、木組みの街の2月14日と言えば、答えはこれ以外に有り得ない。

 

 

「リゼの誕生日だろ?ラビットハウスでサプライズパーティーするって言ってたぞ」

 

「んんんんんん!?そうだけどッ…!違う!

バレンタインデーだよ!つまり俺が可愛い女の子からチョコをたくさん貰う日!」

 

「あー…そうだったそうだった。忘れてた」

 

「へー、モテない人はバレンタインが頭に無いって本当だったんだ」

 

「……あ?」

 

「ジョークだって。謝るから拳銃から手ぇ放して」

 

 

走大はモテない。これは周知の事実。

東京に居た間も彼女がいたことは無い。二十代中盤になっても女性免疫が無いのは、そういう理由である。

 

 

「それで、今更バレンタインがどうしたっていうんだ。去年みたくココアたちがチョコをくれるだろ?俺にもお前にも」

 

「そ・れ・だ・よ!それがスッキリしない!バレンタインっていえば、モテる男がモテない男に一生消えないマウントを取る、血で血を洗う戦争の日であるべき!」

 

「やめろ危険思想。取り締まるぞ」

 

「白黒ハッキリさせる時が来たんだよソウさん!俺から言わせりゃ友チョコなんて甘え!本命チョコの数でどっちがモテる男なのかを決めよう!名付けて…バレンタイン大戦争!!」

 

「………昼寝してちゃ駄目か?」

 

 

というわけで開戦してしまった、バレンタイン大戦争。

一週間前からココアたちには「今年は一人の男性にチョコを渡すように」と伝えてある。走大と駆、チョコ獲得数が多い方が勝者の座を手にするのだ。

 

 

「勝った……!」

 

 

開始数分。既に駆は勝利を確信していた。

自慢だが、駆は結構モテる。東京に居た頃、バレンタインには毎年相当数のチョコを貰っていたものだ。

 

いつかのバレンタインには、ヤバめの彼女から届いたチョコで爆発物処理班が動いたり、毒物事件に発展しそうになったりもした。そのくらいモテると、確たる自身がある。

 

 

「帰りたい……」

 

 

一方で走大。既に戦意喪失。

走大はモテない(二回目)。バレンタインで貰ったことがあるのは、その辺のコンビニで買えるようなあからさまな友チョコ義理チョコ。

 

同僚の女性から、朝の挨拶ついでに机に「受験合格祈願のキットカット」を一つだけ置かれた時は絶句したものだ。当然勝てる気など全くしないが、負けたら負けたで男としての何かを深く傷つけてしまいそうで怖いのが嫌だ。

 

 

「よし…やるだけやるか!いくぞバレンタイン!」

 

 

覚悟して向かった先は甘兎庵。狙いは千夜か。

皆が集まりやすいラビットハウスに行かない辺り、既に雲行きが怪しい。

 

 

「あら、走大さんいらっしゃい。何かご用事?」

 

「お…おう千夜。いや…別に……和菓子食いたくなってな!」

 

 

走大、チキる。

 

 

「ご注文は?」

 

「え…あぁ!そうだな……」

 

 

まだ巻き返せる。そうだ、「注文は君の本命チョコ」とか言ったらカッコいいのでは?

少なくとも脳内走大はそれがカッコいいと確信している。それで行くしかない。

 

 

「そのチョ…いや…甘苦くて……思いのこもった茶色い……」

 

 

走大、チキり方がダサい。

 

女子高生相手に情けない姿を見せる警察官男性。

しかし、千夜は意図を汲み取ったようで、店の奥に品を取りに行った。

 

 

「はい!こちら、ご注文の栗の渋皮煮『忘れ去られし愛』よ!」

 

「茶色くて甘苦いけど!」

 

 

出てきたのは栗の渋皮煮。バレンタインの「洋」の要素が微塵も介在しない見事な「和」。そして名前が縁起でもない。

 

 

「ふふっ、冗談よ。はいこれバレンタインのチョコレート」

 

「…え!?お前…これ…俺に?」

 

「甘兎庵の常連さんに、ささやかなお礼の気持ち。本当はすぐ渡すつもりだったけど、困ってるのが面白いって青山さんが……」

 

「どうもー」

 

「うわあぁぁぁぁっ!翠さん!?アンタどこにでもいますね!?」

 

 

気付かぬうちに後ろの席に座ってたのは、作家の青山ブルーマウンテン。

ちなみに彼女は新作のキャラのモデルに走大を狙っており、しばしばストーキングされる間柄だ。

 

 

「色々と参考にさせてもらいましたー、ありがとうございます。

そうだ、ハッピーバレンタインというわけで、私もチョコを用意したんです。どうぞ走大さん」

 

「マジか…2つも貰っちゃった。あれ、中に何個か入ってる…?」

 

「飲み物で性格が変わる体質が気になるので、いろいろ混ぜたチョコアソートにしてみました。あとで変化を教えていただければと」

 

「私と青山さんの合作!甘兎印のロシアンチョコよ!」

 

「恋人たちの日になんてもん作り出してんだ!大丈夫だよな!?人体に有害じゃないよな!?」

 

 

その後、青山を追いかけに来た担当編集の真手凛からもチョコを貰い、なんと走大のチョコ獲得数は3に。

 

一方で自信満々だった駆はというと……

 

 

「馬鹿な……この俺がチョコたった2つだと……!?」

 

 

チョコ目当てにリゼの所へ押しかけた駆。手に入ったチョコは、リゼと彼女の同級生の狩手結良からの2つのみ。

 

その後、チノたちと遭遇するも「別の人にあげる」とキッパリ言われ、チョコ獲得ならず。

 

 

「マズい…このままじゃソウさんに負ける!あのソウさんにまで負ければ…俺は…俺は……!男として存在意義を失ってしまう!」

 

 

とんでもない言い様である。

と、悶えている駆が見つけたのはシャロの姿。手に持っているのは十中八九チョコレートだ。

 

それを見た駆が取った行動は一つ。

持ち前の瞬発力で駆け出し、一切淀みの無い動きでシャロの前まで移動し……

 

 

「チョコをくださいお願いしますッッッ!!!」

 

「きゃあぁぁっ!?土下座通り魔ぁ!?」

 

 

土下座した。それはもう見事な土下座だった。

 

 

「何やってるのよカケル……らしくないことして」

 

「分かってくれシャロちゃん。どんな手を使ってでも、男には負けられない戦いってのがある。ソウさんなんかに負ければ俺は男の恥さらし。一生お天道様の下を歩けません」

 

「そこまで言わなくても…ていうか、あんたが始めた勝負なんだし自業自得じゃない」

 

「ソウさんに勝ってマウント取りたかっただけなんです…こんなはずじゃなかったんです…」

 

「男らしさの欠片も無いわね。そんなんじゃ、貰えるチョコも貰えないわよ。

ほら、私のチョコあげるから元気出して。……最初からそのつもりだったし」

 

 

落ち込む駆に、シャロはチョコを差し出した。

子供のように表情を明るくする駆。思い出した、このドキドキと喜びこそバレンタインデーだ。

 

 

「シャロちゃん……!大好き!一生幸せにする!」

 

「大げさね…ってくっつかないで!やっぱナシ!そのチョコ返して!」

 

 

これでチョコ獲得数が3つで並んだ。

次なる戦いの地はラビットハウス。そこで走大と駆は相見えた。

 

 

「駆、気が変わった。俺はこの戦いに本気で勝ちに行く。俺にチョコをくれた皆の想いを…無駄にはしない」

 

「俺もだよソウさん。モテに驕ってた俺は死んだ。なりふり構わずガチで行くよ」

 

 

「「このバレンタインの王者になるのは俺だ!」」

 

 

いざラビットハウスに突入。

そこで待ち構えていたのはココア。

 

 

「はい、カケルくん!ハッピーバレンタイン!」

 

「しゃあああああああッ!!!」

「クッソがぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ココアからのチョコは駆が獲得。

歓喜する駆。絶叫する走大。普通に客がいるため凄く迷惑である。

 

 

「あと走大くんにはこれだよ!お姉ちゃんから手作りチョコパン!」

 

「モカぁ゛ぁぁぁッ……!ありがとうっ…!!」

 

「はぁぁ!?モカ姉さんの手作りぃ!?ソウさんズルい!そんなの最強じゃん!」

 

「うるっせぇ触んな!お前はイースト菌でもかじってろ!」

 

 

チョコ獲得数4対4。未だ均衡は破られない。

だが、まだ2月14日は終わらない。雌雄が決するその時まで、男たちはチョコを求めて戦い続ける。

 

彼らは次なる戦場へ。チョコをくれた彼女たちの想いに、応えるために───

 

 

 

 

「結果発表です。駆さんチョコ4個。走大さんチョコ4個。

 

 

トーヤさんチョコ38個。トーヤさんの圧勝です」

 

 

「「……は?」」

 

 

チノの口から発表された勝敗に双方唖然。

 

勝者はラビットハウスの少年バイト定員、槙亜透矢。

あの後一つもチョコをゲットできなかった二人に対し、トーヤはチノたちやチノの同級生、ココアの同級生、店の常連さんから大量にチョコを貰っていたのだ。

 

 

「ちょいちょいちょいちょい!は!?トーヤの奴が優勝!?有り得ないでしょ!」

 

「ルールには従ってます。『今日最もたくさんのチョコを手に入れた人が優勝』って言ったのは駆さんです」

 

「いやチノ、確かに駆はそう言ったかもだけどな…!

てかそのトーヤは何処にいるんだよ!」

 

「トーヤさんならもう帰りましたよ。いつまでも潔くないお二人とは違います」

「そういうところが男としての差かもしれんな」

 

 

チノとティッピーからトドメの一言。

敗北者たちはその場で塵になって崩れ去ったのだった。

 

 

 

「おうトーヤ、それどうしたんだ?」

 

 

トーヤが持ち帰った大量のチョコを見て、ガイストが笑いながら驚く。

 

 

「ガイスト…チョコレートなんだけど、今年はたくさん貰っちゃった…

そうだ…これ、ガイストにもあげるよ」

 

「嬉しいが…駄目だ。そいつは人間の、お前に対する気持ちって奴だ。ちゃんと食ってやんな」

 

「…わかった。でも、さっきから食べ過ぎて鼻から血が………」

 

「あ……もう頑張った後だったか」

 

 

バレンタインの勝者も、それはそれで苦しそうだった。

 

 

_________

 

 

EP02.豆撒く鬼

 

 

それは妖館の2月3日のこと。

 

 

「今日は節分の日…か。鬼は外、というのは少し複雑な気分だな」

 

 

『鬼』の先祖返りである凛々蝶は、笑いを含んで呟く。

凛々蝶は節分の豆撒き用の大豆を買い、妖館に帰るところだ。

 

他にも恵方巻の材料も揃えたりと、中々に入念な用意をしている。

というのも、先祖返りは妖怪に襲われやすい。近頃では魔化魍も出る。いくら半妖の身とはいえ、厄払いに頼りたくなるのも仕方あるまい。

 

 

「鬼の役を今年はどうするか…去年は蜻蛉だったな。あれは酷い節分だった…」

 

 

蜻蛉もまた『鬼』の先祖返りであるため、鬼役としては適任。

だが、蜻蛉は今、海外に旅に出ている真っ最中である。

 

 

「となると僕がやるべきだろう。しかし、御狐神くんがなんと言うか……」

 

 

超過保護な彼の事だ。凛々蝶に豆を投げて追い出すなど、許すはずが無い。凛々蝶に投げられた豆を全部斬り落とし、豆を投げた者を斬り捨てるのが目に見える。

 

妖館の建物が見えてきた頃、物陰に隠れる姿を見つけた。

あの頭の悪そうな金髪は───

 

 

「あれはバンキくんか。そうだ、鬼といえば今年は彼らがいるじゃないか」

 

 

豆を投げられる役を押し付けるのは少々気が引けるが、仕方あるまい。

凛々蝶は隠れるバンキに近づき、肩をちょんちょんと叩く。

 

しかし、振り返ったバンキの顔は、何故か恐怖に青ざめていた。

 

 

「…失礼だなバンキくん。人の顔を化け物を見たみたいに」

 

「凛々蝶ちゃん!?あ…っと、しーっ!静かに。場所がバレちゃう!

今日は節分だろ?鬼の間では節分の日は、互いに豆を投げ合って戦うっていう修行があるんだよ!で、今俺が隠れてるってワケ!」

 

「もう大人だろう君は……戦士ともあろう者が、豆撒き程度でビクビクと───」

 

 

その瞬間。僅かな発砲音とほぼ同時に。

凛々蝶とバンキの顔の間に、何かが命中した。

 

恐る恐る視線を移し替えると、破裂した大豆が。

 

 

「バンキくん。これは……」

 

「そういう事なんだよ。これが鬼の豆撒き」

 

 

つまりアレである。大豆が銃で発砲されたということである。

なんて話しているうちに再び発砲音。今度はバンキのチャラチャラとした金髪が射貫かれた。

 

 

「ギャアぁぁぁっ!確実にヘッドショット狙ってきてやがる!」

 

「これはアマキさんか!?さっきと違う方向から撃って来たぞ、プロのスナイパーの動きだ!」

 

「逃げよう凛々蝶ちゃん!妖館に入れば狙撃は無い!」

 

「ちょ、なぜ僕まで!?」

 

 

意見は聞かず、凛々蝶を連れて妖館の庭に逃げ込むバンキ。

 

 

「放せ!僕は部外者だ!君たちの頭のおかしい豆撒きに参加するつもりは無い!」

 

「そんなこと言わないでさぁ!助けてよ凛々蝶ちゃん強いでしょ!このままじゃ俺、1日かけて蜂の巣にされる!」

 

「知らん!君は本当にそれでも男か!」

 

 

言い合いをしていると、強い足音が近付いて来る。

逃げようとしても既に遅く、バンキの前に師匠であるサバキが。

 

 

「師匠……」

 

「覚悟しろ茨田。もう逃げられると思うな」

 

「……君が持っているソレはなんだ?」

 

「豆用ピストルだ。離れてないと怪我するぞ、白鬼院の嬢ちゃん」

 

「節分に使う道具じゃない!」

「全くもって同意だよ!」

 

 

基本的に過激思考のサバキ。先祖返りがこの程度で怪我をするわけも無いので、割と容赦なく発砲。逃げようとするがバンキが凛々蝶を逃がさない。この男、この期に及んでまだ彼女に助けてもらおうとしている。

 

 

「君も応戦したらどうだ!ほら、君は二刀流だろう!豆くらい斬り落とせ!」

 

「石川五エ門じゃないんだよ無理!」

 

 

「おっ。サバキさんとバンキ発見」

 

 

そこに新たに現れたのは、豆を握ったヒビキ。

バンキを相手にして隙があったサバキに向けて、ヒビキは右手に握った大豆を思いっきり投げる。

 

サバキはすかさず、持っていた板で防御。

しかし、超高速で投げられた多数の豆は凄まじい威力を生み出し、板を完全に破壊してしまった。

 

 

「武器もなくただ豆を投げただけで…」

「まるで散弾銃の威力…」

 

 

いよいよ命の危機を感じざるを得ない状況に。凛々蝶が逃げようとすると、バンキが涙目でそれを引き留める。心底面倒くさい。

 

しかし、そんな状況も最後の真打によって崩れ去った。

 

 

「凛々蝶さんと何をしておられるのですか、バンキさま」

 

「あ……御狐神、これは……」

 

 

恐らく今日一番の恐怖。

冷ややかな笑みを浮かべた御狐神双熾が、彼の手から凛々蝶を引き離す。

 

 

「さて、凛々蝶さんをこんな危ない所に居させるわけにはいきません。マンションの中で、皆さんと一緒に恵方巻の仕込みでもするとしましょう」

 

「御狐神くん…彼は……」

 

「今日は節分ですので。凛々蝶さまを盾に使うような悪い鬼は、『鬼は外』ですよね?」

 

「…そういうことらしい。すまないバンキくん」

 

「え、嘘!?ちょっと待って見捨てないでぇぇぇぇ!!?」

 

 

凄く爽やかにバンキを見捨て、双熾は凛々蝶と室内に。

その後1日中、妖館近辺で青年の叫び声が聞こえっぱなしだったという。

 

 

 

____________

 

 

EP03.突撃!聖なる夜!

 

 

 

「メリークリスマス!今夜はあなたの幽霊サンタ!朝陽です!」

 

 

それは沼津の12月25日の夜。

幽霊に眠るという概念は無い。常に退屈な夜を過ごす朝陽だが、今日だけは特別。何せ、今夜はクリスマスなのだから。

 

 

「生きてたらやりたかった事、その63!それがサンタクロース!

というわけで今日は、皆の枕元にプレゼントをお届けしちゃうよ!」

 

 

サンタ衣装を身に纏い、プレゼントの入った袋を持って準備は万端。

ソリとトナカイが用意できなかったのが不満だが仕方ない。幽霊らしく浮いて行くことにする。

 

 

というか、何故25日の夜なのかと疑問に思うだろう。

朝陽も本当は24日に合わせたかったのだが、その日の夜はAqoursとSaint Snowの合同ライブで彼女たちは北海道に居た上に、蔵真やアリオスは居残りをしていたのだ。流石に北海道と静岡を往復はしんどい。

 

 

「まずは善子ちゃんの家から。イマドキの家には煙突なんて無いし、壁をすり抜けて行くしかないか…サンタも色々と不自由な時代になったなぁ」

 

 

部屋に侵入。

目に入って来る中二全開の内装。何に使うのか全く不明な黒い羽根が、至る所に飾られている。

 

 

(すごく黒い部屋だけど、目とか悪くならないのかな…?)

 

 

なお、朝陽は昔の人間であるため、この部屋が「痛い」ことを知らない。

 

善子が眠っているのを確認。

枕元に黒魔術ショップで買った開運アクセサリーを置き、朝陽は撤退。

 

 

「次はアリオスか…ちゃんとお金稼いで部屋借りてるんだから、本当に立派だよね」

 

 

アリオスの部屋に侵入。こうして勝手に年頃の女子の部屋に入るのは抵抗があるが、それ以上に朝陽はサンタがしたくて仕方ないので作戦続行。

 

アリオスの部屋はお手本のような内装をしており、効率的に生活ができるように家具が並べられている。棚にあったノートを開くと、やたら丁寧な日記やその日の食事のカロリー、栄養バランスまで細かく記録されていた。怖いくらいの完璧主義だ。

 

ベッドの中心から微塵もずれずに眠るアリオス。

しかし、ベッドの近くに赤い靴下が置いてある。しかも丁寧な文体の手紙付き。眼魔世界には無いサンタの話を聞いて、ワクワクが抑えられなかったのだろう。

 

 

「『かつて眼魔の兵士として人間界で行った悪事は許されるものではないが、身勝手が許されるならば私の枕元に現れて欲しい…』か。大丈夫だよアリオス。君がいい子にしてたのは、僕らがちゃんと見てたから」

 

 

アリオスにはあげたいものが多くて迷ったため、便利グッズの詰め合わせをプレゼントすることにした。迷った末に踏み外した気がしないことも無いが、喜んでくれるだろう。多分。

 

 

これで沼津組の配達は終了。続いて内浦に向かう。

 

 

「よーし、どんどん行こうか!」

 

 

曜には彼女が東京のショップで気にしていた制服。

花丸には朝陽が生きていた頃に持っていた小説。

果南には室内プラネタリウム。鞠莉には朝陽オススメのロックのCD。

 

 

「よし…次はダイヤちゃんとルビィちゃんの番。姉妹で一つのプレゼントで申し訳ないけど…これが一番大変だったな、今思えば」

 

 

二人へのプレゼントは「伝説のアイドル伝説DVD全巻BOX」。スクールアイドルファンの中では「伝説の伝説の伝説」、略して「伝伝伝」とも呼ばれる代物だ。

 

これだけは何処を探しても無くて、内緒で東京まで探しに行ったものだ。そこで偶然出会った女性と色々あった末に「保存用」らしい一セットを譲り受けることができた。

 

 

「親切な人に会えて良かった。家にあと2セットあるらしいし、凄い人もいるもんだな。

うーんと、問題はここからかな……」

 

 

黒澤家から一旦出ると、その庭に陣取っているテントに目を向ける。

この家に届けなければいけないプレゼントはもう一つ。居候をしている蔵真だ。

 

しかし……

 

 

「来いサンタクロース。今年こそお前を捕らえて見せる」

 

 

寝てプレゼントを待つどころか、血眼になって仁王立ち。彼の眼を盗んで一回この家に入るのにもかなり苦労した。

 

 

「流石は怪奇現象管理協会、もう25日なのにサンタを捕まえる気満々だー……なんか、僕を祓おうとしてた最初の頃を思い出すなぁ……」

 

 

蔵真のプレゼントは適当な場所に置いて行くのも手だ。

しかし、それは朝陽の憧れが許さない。枕元にプレゼントを置いて消えるのがサンタ。そのこだわりは譲れない。

 

 

「よーし……いざ尋常に、勝負だ蔵真!」

 

 

朝陽は正面突破の覚悟を決めた。

付け髭と深くかぶったサンタ帽で顔を隠し、プレゼントを持って突撃!

 

 

「…!ついに出たなサンタクロース!」

 

 

当然、即座に気付く蔵真。殺意に似た執念が襲い掛かる。

迫る彼の腕を、朝陽は素早い身のこなしで潜り抜ける。それは戦場と見紛うほどの紙一重の一瞬。

 

蔵真が振り返った時には、テントの中にプレゼントが置かれ、サンタは消えていた。

 

 

「…プレゼントの礼は言う。だが、次こそ勝つ。来年も必ず来い、サンタクロース…!」

 

 

彼へのプレゼントは「綿あめマシーン」。飴玉を入れるとそれを綿あめにするタイプのやつだ。神楽月蔵真はこう見えて、大好物は綿あめである。

 

 

「一つ作ってみるか」

 

 

そんなこんなで朝陽は最大の鬼門を突破し、ほっと一安心。サンタも楽ではない。

 

 

「肝が冷えたよ…肝動いてないけど。よし、最後はあの二人」

 

 

まずは梨子。彼女が持っていた「壁ナントカ」とかいう本と似たものを幾つか用意した。朝陽は入念にリサーチし、喜ばれるものを用意したつもりだ。まぁそんな朝陽の想いとは裏腹に、それを見た彼女は複雑な叫びを上げるだろうが。

 

そして最後はその隣の家、千歌のプレゼントだ。

 

 

「ごめんね千歌ちゃん。君へのプレゼントは最後に決めようって決めてたんだけど、皆のプレゼントに思ったよりお金がかかっちゃって……」

 

 

千歌へのプレゼント、それは朝陽が作ったぬいぐるみ。彼女が好きなミカンを模したキャラにしてみたが、やはり朝陽から見れば他のプレゼントに見劣りしてしまう。

 

 

「来年はちゃんとしたプレゼントを用意するよ。クリスマスだけじゃなくて、誕生日も、色んなイベントも、色んな季節も……また来年も一緒に生きよう、千歌ちゃん」

 

 

全てのプレゼントを配り終えた朝陽は、寺に戻って一休み。

余りに楽しくて、思ったよりも早く終わってしまった。夜はまだ明けなさそうだ。

 

 

「疲れた気になっちゃうなぁ…お疲れ、全国のサンタさん」

 

「おやおや、あと一人プレゼントを届け忘れておるぞ?」

 

「まさか。僕はちゃんと皆にプレゼントを……」

 

 

真夜中の境内に聞こえた、朝陽以外の声。

 

 

チリン

 

 

振り返るよりも先にベルの音が聞こえ、朝陽の意識がぼやけていく。

瞼が閉じる寸前、大きなソリとトナカイが見えた気がした───

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?僕、何を…」

 

 

気が付くと朝だった。

夢を見ていた。ずっと昔にいなくなった『親友』に会う夢を。そんな彼と朝陽が、蔵真やアリオス、千歌たちとも一緒に笑って生きる夢を。絶対に叶わない、それでもとびきり幸せな夢を。

 

 

いや、おかしな話だ。幽霊で眠ることもない朝陽が『夢』を見ていたなんて、そんなことあるはずが……

 

 

「これ……あーそっか、これは敵わないなぁ」

 

 

朝陽の傍に置いてあった『赤い眼魂』が奇跡を物語る。

そう、奇跡だ。この夜だけ朝陽は、生者のように眠り、夢を見れたのだから。

 

 

「最高のプレゼントをありがとう。のんびり屋のサンタさん」

 

 

 

 




教えて!くろすと博士!

Q.トーヤは貰ったチョコ結局どうしたの?てかトーヤって誰?
A.何日かかけてちゃんと食べたよ!トーヤに関しては前話のキャラ紹介と、CrossoverArchivesドライブ編を参照!

Q.バンキはなんであんなにカスなの?
A.才能あっても努力しないとあぁなるんだよ。知らんけど。

Q.アリオスのプレゼント、ちゃんと喜んだの?
A.アリオス「見ろ朝陽!これはスリッパや手袋とモップが一つになって楽に掃除ができるぞ!なんと素晴らしい発想だ!これは是非とも眼魔世界に持ち帰らなければ!こっちは…!」

Q.天介「俺らの話は?」
A.ガイドラインって知ってる??????


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