仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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バンキ
仮面ライダー蛮鬼に変身した青年。21歳。本名は茨田漠人。金髪留年間際チャラ男大学生で、ヘタレ、努力嫌い、女の子大好き、酒に弱い、浪費癖有りと揃いも揃ったカス男。主な護衛対象は4号室の住人とSS。自称ロックな男。カスだが高校時代の一年で音撃斬を習得し、師匠のサバキの副武器から独自の二刀流スタイルを編み出した天才。2005年ではミカドの修行相手を務め、アナザー響鬼討伐にも貢献した。修正された歴史ではサバキに出会わずダメ生活を送っているかと思いきや、厳格な彼女に性根を叩き直されているらしい。

本来の歴史では・・・カスで頼りない彼だが、魔化魍退治や妖館護衛を通じて『やる時はやるカス』へと成長を果たした。魔化魍「ヌエ」が現れアマキが単身挑みにいった際は真っ先に飛び出し、負傷した彼女を庇いながらも単独でヌエを討伐する。


今回はやらかしたかもしれない146です。
前回もそうでしたけど、ちょっと勢いでやりすぎた…申し訳ないですけど瞬瞬必生のテンションで読んでください。

今回も「ここすき」よろしくお願いします!




Aから始まる/犯人はお前だ

「俺たちは消えるだろうな」

 

「あ、やっぱり?アラシもそう思うなら間違いないよね」

 

 

この物語における仮面ライダーダブル、切風アラシと士門永斗は、あっけらかんとした口ぶりでそう言った。

 

何も突拍子の無い妄言ではない。未来から来た仮面ライダーと偽のダブル、そして起こっている事象を考えると、近頃渦巻いていた妙な感覚が輪郭を得ただけの話だ。

 

 

「歴史から消えて、無かったことになる。俺たちにとっちゃ別に眉唾な話でもねぇ。ただ確かめる必要はあるな。百聞は一見するまで虚像だ」

 

「でもさ、その場合はどうするの?推理通りなら、僕らの後を継ぐのはあの人だけど」

 

「それを見極めるための勝負だ。端から出来ねぇ信用なんかよりよっぽど分かりやすくて良い」

 

「脳筋ー。ま、これで何も出来ないようなら…この先は無理なのもそうか。それにしても他の時代の仮面ライダーかぁ…アラシが一番捻くれてるよ絶対」

 

「うるせぇよ余計なお世話だ。まぁ、他の連中が認めただけの奴なんだってんなら、見せてもらおうじゃねぇか」

 

 

雪は止んだが、今日は随分と風が強い日だ。

勝負の決着を付けるため、風に逆らって二人は進んだ。

 

 

__________

 

 

容疑者はスクールアイドルAERO-Castleの国見舞雨から飴を貰った3人。しかし、そこに追加の容疑者が現れる。その人物の名前は「火兎ナギ」。

 

彼女はμ’sの面々の友人らしく有用な情報が聞き出せると思ったが、アナザーダブルに襲われて行方不明となってしまった。

 

 

「ナギちゃん、大丈夫かな……」

 

「…今は事件解決に専念よ。犯人を引っぱたいてナギの居場所を聞き出すの」

 

「そう…だよね。うん、早く犯人を見つけないと…!」

 

 

不安に駆られる凛、にこ、穂乃果。友人が行方不明なのだから当然だ。だがこれまで歩んできた道がそうさせるのか、不安に反して姿勢は前向きだった。

 

話によれば、μ’sは切風アラシたちと共に探偵として活動しているらしい。場数で言えば壮間よりも圧倒的に上を行っているのから、ある程度の慣れは生じてしまうのかもしれない。

 

彼女たちは強い。だがやはり年相応の少女、強くありきることはできないのは分かる。

 

 

「アラシさんだったら、不安にもさせなかったのかな…」

 

「何を言っているんだ壮間。お前は出来る事をやっている。弱気になることは無い。しかし…前から思っていたが、お前は王を目指すというには少々謙虚が過ぎるな。もう少し胸を張った態度を取ればいいのに」

 

「アリオスさんみたいに…ですか?アリオスさんも眼魔世界の王様目指してるんでしたっけ……でも、やっぱり思いますよ。色んな人を見たから、もっと思う。俺なんかよりもずっと凄い人ばっかだって」

 

 

そんな自分を遥かに超える人物に、今回は勝たなければいけないのだ。

今までは先人から学び自分を変えていくことで乗り越えてきた。だが今回は、今ある自分を発揮して挑まなければいけない。

 

定期テストみたいだと少し思った壮間だったが、それを考えると気が抜けるのか緊張するのか、妙な心境に包まれる。

 

 

「…アリオスさん。俺たちがナギさんに会いに行ってた時、あの2人はどこにいましたか」

 

「伊佐田冷羅は私の目の届く範囲で勉学に励んでいた。抜け出したタイミングは一度もない」

 

「小杉さんが通ってる声優学校にも確認したけど、ちゃんと仕事の打ち合わせに参加していたらしいです。つまり、ウィンター・ドーパントに変身していたのは───」

 

 

ただ一人、一切のアリバイが存在しない鳩原円佳しか有り得ない。

後は鳩原円佳に問い詰め、その裏にいる「スクールアイドルを狙う黒幕」を炙り出せば勝ちだ。

 

しかし、相手は歴戦の探偵。最初から最後まで一刻の猶予も無い。

そんな焦りが、壮間の中に一つの選択肢を生み出す。

 

 

「そうだ……!だったら……っ……

あ、あぁー…俺、こういう所ですよねホント……!ダメだ、大分追い詰められて素が出てる感じがする」

 

「素?なんだ、演技でもしていたのか?」

 

「いや…俺って昔から主人公になりたい!って痛い奴だったんですよ。それで意識だけ高くて、自分がその時思ってた理想の『フリ』だけしてました。そんで…多分今もそうなんだって分かったんです。

 

勝とうって思った時に、このまま鳩原円佳を犯人ってことにして突き出せばいい、ってそう思いました。そんな事をしても解決にはなってない。そんなのただのズルだって…分かってるんですけど……」

 

 

人はそう簡単には変わらない、というのを痛感する。

火兎ナギが襲われた時も、彼女から有用な情報を聞きそびれた事に焦りを覚えた。彼女自身の安否よりも、壮間が咄嗟に欲したのは事件解決のための手掛かりだったのだ。

 

あくまで育ってきたのは「こうありたい」という理想像と、それに対する姿勢と意識。壮間自身の根本は何も変わってはいないのかもしれない。

 

極限まで追い詰められた時に見えるのが、その人の本性なのだ。

 

 

「それは妙案だと思うぞ」

 

「…はい?」

 

 

アリオスが出したのは肯定の言葉。自嘲のつもりだった壮間にとって、それは余りに予想外だった。

 

 

「意外でも無いだろう。よく知らない人間たちか、私たちの事を覚えてくれると同時に友人であるお前たちか。打算的に考えても感情的に考えても、どちらを優先するかなんて熟考する余地もない」

 

「まぁ…そうなんですけど…」

 

「私はお前が思うような立派な人間ではない。私以外だってそうだ。お前が見てきた先人たちも、それぞれ悩んで生きて育つうえで、数えきれない過ちを犯し、取返しのつかないものを何度も捨ててきたはずだ」

 

 

私たちとお前は何も変わらない。そう言っているような気がした。

余りに自分都合な聞こえ方だったとしても、彼女は壮間を認めているという事実が心強い。

 

 

「未来を今知る事はできない。だったら、理屈じゃなくて心で選べ」

 

「心で……」

 

「心の声に従うんだ。お前の心の叫びを、私は絶対的に肯定しよう」

 

 

壮間は自分の胸に手を当て、考える。

自分。戦う理由。正義。自信。感情。強さ。決意。心。命。

それらは全てここに積もっている。

 

喧しい理想を黙らせろ。愚存な自分も愚図な自分も黙らせろ。

日寺壮間の本性は何を望む?

 

 

「アリオスさん、留守番をお願いします!」

 

 

その答えを見つけた時、壮間は再び外に飛び出していた。

走っていく背中に、アリオスは僅かだが朝陽と似た何かを見た。いがみ合っていた時には無かった、その面影。

 

 

「お前はちゃんと『ゴースト』を継げている。

壮間、お前が全てのライダーの心を繋いだ時…お前ならきっと───」

 

 

_________

 

 

 

「大丈夫……これで目撃者はいない…あたしを見た火兎ナギは……!」

 

 

メモリを使った時も、アナザーウォッチを使った時も、それが終わると途端に反動が襲い掛かる。嫌悪感や恐怖心、物理的な毒素や負担に至るまで一気に襲い掛かる苦痛は、一周回って快楽と誤認してしまいそうなほどだ。

 

激しい動悸と眩暈に襲われながらも、鳩原は必死にもがく。

鳩原は人を殺した。それを知られてはいけない。隠して、誤魔化して、黙らせて、逃げて逃げて逃げて、

 

 

嘘で一生を生きるしかない。

 

 

 

「鳩原円佳さん!」

 

 

突として湧き上がった果てしない恐怖に、波長を合わせたかのような声で鳩原は激しい所作で顔を上げる。しかし、その声の主である高坂穂乃果は、拍子抜けするほどに明るい顔をしていた。

 

 

「あ、高坂穂乃果ちゃん…?」

 

「はいっ!私、μ’sの高坂穂乃果です!ってさっき言ったんだっけ……」

 

 

何なんだこの子は。自己紹介すらも腹立たしく感じてしまう。何故なら、今スクールアイドルでμ’sを知らない人なんて居ないも同然なのだから。

 

あのNo1スクールアイドルA-RISEを倒し、地区予選を突破した規格外のダークホース。しかも結成は今年の春で、それも廃校寸前の学校で。これまでの自分たちを一笑に付すように、話題も結果も一瞬で奪っていった気に入らないグループだ。

 

しかし、敵意を前に出している場合ではない。

彼女はどういうわけか「探偵」としてここに居るのだ。そんな彼女がわざわざ鳩原に声を掛けたという事は……

 

 

(バレた……!?)

 

 

穂乃果が両手を鳩原に伸ばす。思わずポケットのアナザーウォッチを意識するが、穂乃果が握ったのは鳩原の両手だった。

 

 

「私、円佳さんファンなんです!」

 

「……は…?」

 

 

また何を言っている。バカにしているのか。

この殺伐とした状況で、友人である火兎ナギの行方も知れない状況で、何を言い出すかと思えば「ファンです」なんて、頭のネジが飛んでしまったのだろうか。

 

でも、その手を振り払う気にどうしてもなれない。

その眼差しが余りにも真っ直ぐで、疑念なんて持つこともできなかったから。

 

 

「ファンっていうか…練習の時に色んなスクールアイドルのステージを見て、その中でも特に歌が凄かったのがAERO-Castleの円佳さんでした!なんというかこう…綺麗な声で奥から響いて来るみたいな…とにかく私感動しちゃって!」

 

「あ…ありがとう…?」

 

「海未ちゃんにも言って、歌の練習の参考にしてました!

こんな事件になっちゃったけど…それでも私はAERO-Castleが大好きです!全部終わったら、また一緒に歌ったりしませんか!?」

 

 

握手した腕をブンブン上下させ、凄まじい熱気で気持ちをぶつけてくる。

どうしてもこの気持ちを伝えたかった、ただそれだけなのだろう。そんな彼女を見ていると思い出す。

 

 

『祝!スクールアイドル部結成!マジヤバすぎ!言えばできるもんだね冷羅!』

 

『そうだね。マドカは歌が上手だし心強いよ。で、グループ名とかどうするの?』

 

『決めてある!AERO-Castleなんてどうよ!』

 

『金曜ロードショー見て決めたでしょ』

 

『そう!マジイカしてない?ビビッと来たんだ!

空の城みたいに目立って、ファンタジーで、楽しませるアイドルに!』

 

 

これは一年生の時、伊佐田と一緒に部を結成した時の会話だ。

あれから思うように理想はなぞれなかったけど、たくさん練習してファンもできて、楽しい時間だった。

 

ふと、その過去に理想が現実と重なり、途方もないくらい悲しくなった。

 

 

(なんで…こうなっちゃったのかな…?)

 

 

穂乃果はどこまでも正直で誠実で、未熟ながらも明るく、自分とファン両方のために努力して、才能や運や経験の全てを振り絞って結果をも勝ち取ったアイドルの鏡。鳩原の理想そのものと言っていい。

 

自分はどうだ?そんな彼女に尊敬されるだけの人間なわけが無い。

快楽に溺れた愚か者。彼女が握る手は怒りのまま命を奪って汚れた手。彼女が褒めてくれた喉は最早嘘を垂れ流すだけの器官。仲間もファンも何もかも裏切った、アイドルとして最低な人間。

 

アイドル未満で終わった自分がこのまま嘘で生き続け、一体何になるというんだ。

 

 

「…うん。あたしも、一緒に歌いたい。あたしもμ’s大好きだから……」

 

「本当ですか!?いやぁ~照れちゃうなぁ~」

 

「だから聞いて!本当は……あたしが───」

 

 

真実を告白しようとした。全てを話し、前のように戻りたかった。

でも、その奥に『彼女』がいる。その視線がこちらに向けられ、心臓が委縮し、何も声が出なくなってしまう。

 

 

「円佳さん……?」

 

「ごめん……なんでもない…」

 

 

恐怖で鳩原は立ち止まった。その先には自分では進めなかった。

そんな時に必要なのだ。心に閉じ込められた真実をこじ開け、それを照らし出す存在が。

 

 

「待たせたな穂乃果。どうやら、俺らが先着みてぇだな」

 

「あちゃー。ま、仕方ないよね。ちょうどある程度の人は揃ってるみたいだし…」

 

「あぁ、早速だが決着の謎解きと行くぞ。

鳩原円佳、犯人はお前だ」

 

 

人はそれを『探偵』と呼ぶ。

勝負の決着を付けるため、もしくは彼女を苦しみから救うため、切風アラシと士門永斗が現着した。

 

 

 

______________

 

 

 

現場に突然現れたもう一組の探偵、アラシと永斗。彼らは何かを調べに来たわけでも、参戦しに来たわけでもない。既にその答えは用意されており、犯人を指さすためだけに現れた。

 

そこに続々と駆け付ける関係者たち。詰め寄られている鳩原を真っ先に庇ったのは、同級生である伊佐田だった。

 

 

「待って!マドカが犯人なんてあり得ないよ!急に出てきて何言ってるの!?」

 

「証拠があるからここに来たんだ。

犯行はドーパントになって無差別に凍らせたりだとか色々やってたみてぇだが、一際目立ってたのはこの間の記者を凍らせて殺した事件。そいつだけは明確な殺意を感じた。同機はその直前に被害者が書いた記事って考えられる」

 

「私たちを散々に書いてたあの記事ですよね?でも、そんなん決めつけと違います?」

 

 

そこに国見も反論する。それに対し、アラシは頷いた。

 

 

「考えられる。可能ってだけだ。普通に考えりゃこの記事一本でウゼぇ殺すなんて、メモリ使ったと言えど多少なりともオツムがマシな人間様は考えても行動には移さねぇ。あの殺人には別の動機があると見た。あの記事はただトリガーを引いただけだ」

 

「それがマドカにあるとでも?」

 

 

伊佐田の問いかけに、推理はアラシから永斗にバトンチェンジ。

 

 

「伊佐田冷羅。同級生なら知ってるかな、鳩原円佳の母親は元アイドルだった。熱愛報道のスキャンダルでアイドル引退に追い込まれた後、特定のファンから陰湿な嫌がらせを受けるようになった彼女は夫の不倫が発覚した直後に自殺した。娘である鳩原円佳が小学生の頃の話だ」

 

「それが何か関係あると…?」

 

「その嫌がらせや誹謗中傷を何年も続けていたクソ野郎が、今回の被害者である記者だ。そしてそれを鳩原円佳は知っていた。アイドルの血筋かな、生まれ持った過剰なエゴサ精神ってやつ?

 

ネット掲示板からそいつが使っていた出会い系サイトも特定し、身元を隠して親の仇を探してた。いい年こいたオッサンが女子中学生に釣られて複数件、会話の内に遂にそいつの素顔を拝見できたってわけだ。それが三年前の話」

 

「疑うなら警察やら弁護士やら使って確認すりゃいい。IPアドレス…だったか?そいつが証拠になる。鳩原の中学時代の同級生からも、そいつが毎回違う男と歩いてたって証言は取れた」

 

 

証拠となる掲示板の書き込みや、その出会い系サイトが印刷された紙を見せる。

普通の捜査では、ましてや私立探偵程度の権限では知り得ない情報だらけだ。それらは全て、士門永斗がアクセス権を持つ「地球の本棚」によるものだ。

 

地球上で起こったあらゆる事象の記憶が「本」として保存されるデータベース。それが地球の本棚。地球の意思と繋がることが出来る永斗は、そこで「検索」を行うことであらゆる情報に手が届くのだ。

 

そのためのキーワードを探し、その情報を第三者にも刺さる「証拠」に変換するのがアラシの役目だ。頭脳の永斗と脚のアラシ、これが二人で一人の探偵の全容。

 

 

「だとしても!それは円佳先輩に動機があったってだけで、本当にやったって話にはならないんじゃないですかぁ!」

 

 

今度は瀧がアラシたちに噛み付く。だが、ここに来た以上、それに対する返答も準備済みだった。

 

 

「犯人の目星がつけば後は簡単だ。今日最初にウィンターが出没した時、お前はコンビニに買い出しに行ってたらしいな。確かに監視カメラにはその姿が映ってた。でも、店に駆け込んできたのは『学校の逆方向から』だ。一回コンビニを素通りして戻って来るルートじゃねぇと、それは有り得ねぇ」

 

「円佳先輩は道に迷ってたって…!」

 

「だったらこの写真を見てみろ。監視カメラの写真だが、迷ってた割には随分と綺麗な恰好だな。髪も整って服に雪もほとんど積もってねぇ。変身して移動してた証拠だ。これが説明できねぇなら今度こそ、鳩原円佳…お前が犯人だ」

 

 

もう一度その指が鳩原を指す。

もはや、彼女は何も抵抗はしなかった。これでいいんだ、これでもう誰にも嘘をつかなくていい。

 

 

「……もういいよみんな。はい…あたしが全部やりました。あの人を殺したのはあたしです」

 

 

鳩原は驚きと悲しみに打ちひしがれる仲間たちを眺め、その目は次に穂乃果を見た。彼女も仲間のメンバーと同じくらい悲しそうに、それでも受け入れると言わんばかりに、こちらを見ていた。

 

 

「…俺たちの勝ちだ。男モドキ」

 

「相も変わらず無礼な男だ。だが推理は見事だったと認めよう」

 

「そりゃどうも…そんで、勝負相手の彼がいないみたいだけど?どゆこと」

 

「決まっている。まだ、勝負は終わっていないということだ」

 

 

アリオスが強く言い切った、その時。

まるで結婚式の乱入。一つの真実が全てに認められ、決定してしまうその寸前に、彼は盛大に待ったをかける。

 

 

「逃げたと思ったぞ」

 

「そんなわけないじゃないですか…!逃げたくても逃げられませんよ!」

 

 

息を切らした日寺壮間が、事件の渦中へと戻って来た。

そして間違いなく、何かを掴んで。

 

 

「円佳さん!確かにあなたは人を殺して、怪物になってたくさんの人に迷惑をかけたかもしれない!でも…それを全てあなたが背負う必要なんてない!」

 

「どういう意味だ?」

 

「真犯人は別にいます!円佳さんがメモリを使うように仕向け、アナザーダブルの力を彼女に与えた真犯人は……この中にいる!」

 

 

現場が衝撃で湧き上がる。その中で彼に全霊の期待を寄せるμ’sの3人、そして笑っていたのはアリオスと…アラシだった。

 

その光景に相棒である永斗も驚く。少なくとも、彼が事件の中で笑うのは珍しい。

 

 

「そこまで言うなら根拠はあるんだろうな!?言ってみろ探偵見習い!」

 

「さっきの騒動は知ってますよね。アナザーダブルがファストフード店を襲撃したあの時、生身の人を一人殺すくらい一瞬で出来たはずなのに、俺たちは間に合ったんです。あの時のアナザーダブルは人殺しを躊躇してた。それなのにその直後。負傷者を搬送してた襲ったアナザーダブルは、中の医療スタッフを皆殺しにしてます。俺にはこの二つの出来事が、同一人物の犯行とは思えなかった!」

 

「そろそろ教えろ。テメェはさっきまで何を探しに行ってた」

 

「無実の証拠です。あの近くでもう一度聞き込みをすると、一つ証言を得られました。ファストフード店襲撃の直後、逃げ去る円佳さんに会った女子高生がいたんです」

 

「だったら決まりだ。鳩原円佳はあの場所にいた、犯人だから当然じゃねぇか」

 

 

穂乃果たちも少し不自然に思っていた。というか、やはり珍しかった。

アラシは悪意を向けてくる敵に対し、ほとんどの場合敵意以外の感情を向けはしない。むしろ誰にでも敵意を向けて噛みつくのがアラシだ。

 

そんな彼が笑っている。必死に対抗する壮間を見て、嬉しそうにも楽しそうにも見えた。

 

 

「違います。その女子高生はAERO-Castleのファンだったんです!円佳さんは握手をした後、一緒に写真を撮ったそうです。それがその写真です!撮影時刻は救急車襲撃の時とピッタリ重なります」

 

「じゃあ僕からもいい?それなら、なんで言わなかったんだろうね。そんな立派なアリバイを」

 

「相手がファンだったからですよ。円佳さんは、自分都合の誤魔化しのためにファンを利用したくなかったんです。人は追い詰められた時に本性を出す。彼女は追い詰められても、そのアイドルとしての誇りは捨てなかった!」

 

 

壮間の言葉に、鳩原は満たされたように感じてしまった。

彼の言う通り。あの時、火兎ナギを殺せなかった鳩原は『彼女』に見つかってウォッチを渡した。そして言われたのだ。『こっちで始末してあげるから、そっちはアリバイを作ってて』と。

 

言われた通りにアリバイを作ったが、それを盾として使うことは出来なかった。

 

こんな自分だと知りながらも彼は、穂乃果と同じようにアイドルとして認めてくれた。過ちを犯した身には十分すぎる施しだ。

 

 

「お優しいな。わざわざ犯人のフォローか?」

 

「そんなんじゃないですよ。ただ、これは『アナザーダブルは2人いた』確たる証拠です。こればかりはこの中に居るっていう確証も無かったけど、改めるて考えると一つ違和感がありました。それは、ある人物の証言」

 

 

犯人の絞り込みが始まった。

アリオスの見張りの下にいた伊佐田冷羅に犯行は不可能。同様の理由で今ここにいない小杉涙愛もそうだ。ならば残るは瀧奈桜美。

 

いや、そうとは決まらない。二度目のウィンター出現が鳩原だと確定したのだから、飴に関する議論は白紙に戻る。そうなると黒幕の容疑者として、彼女も数えられる。

 

 

「あの時あなたは『飴に余分は作ってない』って言いましたよね、国見舞雨さん」

 

「…?はい、そりゃあんな危ないもん…」

 

「だったら何で部外者に渡す分があったんですか?飴は全部で4個しかなかったはずなのに」

 

 

国見の顔色が変わった。なんにせよこれは、彼女が嘘をついていることの証左。

ナギは確かに飴を受け取っていた。ゴミ箱には袋が3つあった。つまり、飴は全部で5個以上あったはずなのだ。

 

そもそもなんで下剤飴なんて作ったのか。言われてみれば、そのせいで容疑者がトイレに頻繁に行くようになったためこの状況下でもアリバイがあやふやになったのだ。万が一に備え、それを狙った可能性はある。

 

 

「彼女が何か円佳さんに不利になる証拠を持っていると知っていたから、そっちに目が向かないように飴は4つだと偽った。でも円佳さんが飴を現場に落したって聞いて、作戦を変えたんです。その場でアリバイを作って、円佳さんを容疑者から外す作戦に」

 

「でもそれは失敗した。自分が代わりにその証拠人を殺そうとしたんだろうが、大方鳩原円佳がテンパって先走ったんだろ。それで救急車襲撃で挽回しようとした…まぁ、鳩原がアリバイを作っても言わなかったお陰で、それも破綻したんだがな」

 

 

壮間とアラシによって、彼女に疑いの焦点が合っていく。しかし所詮は推測の域を出ない妄想推理だ。そんな中、推理を聞いていた穂乃果が、不意に声を出す。

 

 

「壮間君…そのアナザーダブルって、仮面ライダーダブルと似てるんだよね…?」

 

「えぇ…まぁレプリカみたいなもの…ですかね?」

 

「それで犯人は2人…だったら、アナザーダブルも2人で1人なんじゃないかな!誰かが変身してる間、もう一人の誰かは永斗君みたいに気を失ってるとか…!」

 

 

仮面ライダーダブルについての初知り情報だ。しかしそれが本当で、アナザーダブルがその性質を持っているなら…一つの情報がここに来て光り輝く。

 

 

二度目のウィンター襲来時、アナザーダブルが初めて出現した。

その時の国見舞雨のアリバイは

 

『瀧奈桜美が見ているそばで、国見舞雨は眠っていた』

 

 

「まさか黒幕まで見つけるとはな。俺はてっきり、鳩原円佳を吊るして終わりにすると思ってた。実際こっちもそれがゴールだと思って乗ってやったんだ」

 

「俺も最初そうしようと思いました。でも、それじゃ満足できなかったんです。消える歴史はどうなってもオーケー、最後に残る自分たちが助かればいい。そんなの小さすぎる。俺が目指すのは王様だから、もっと偉大に、道中出会った人たちをついでに余裕で皆救うような主人公になりたいんです。

 

でも今の俺はそんなに凄くないから…俺はただ、目の前に広がる瞬間瞬間を必死に生きる。過去でも未来でもなくて『今』、そう決めました!」

 

「王様だぁ?どこの中二病だよ全く。

馬鹿馬鹿しいが、仮面ライダーならそれでいいんだ。強いだけの仮面ライダーに価値はねぇ。自分の中にニートを一人飼ってるくらいが丁度いいんだよ」

 

 

何が完璧か、何が正解か分からないから、

どうせ分からないなら優しさを持ちたいと、壮間は思った。

 

その優しさで見つけ出した真実を、壮間は叫ぶ!

 

 

「犯人はお前だ!国見舞雨!」

 

 

 

 

アイドルは夢を与える偶像。

頑張らなきゃ駄目。恋愛をしちゃ駄目。清廉潔白じゃなきゃ駄目。聖人君主じゃなきゃ駄目。

 

楽しそうって、目立ちたいって思っただけなのに、どこを見ても駄目だらけで息が詰まる。

 

知らない奴のために我慢するのは耐えられない。

そう思った時、たまたま力が手元にやって来た。だから我慢をしなくなった。それだけだ。

 

 

「…本当に。スクールアイドルってクソね。どっかの誰かとキャラは被るし、我慢しても見向きもされない。目立ってる奴もどーせ、私と同じ汚物だって決まってるのに」

 

 

追い詰められた国見の口調が変わった。

その様子に鳩原が激しく怯えているのも分かる。もう疑う余地は無い。黒幕は彼女だ。

 

 

「皆もそう思わない?上手く隠れて汚い事をした子ほど成功する。そりゃそうよ、赤信号を待つより無視した方が目的地に早く着くもの」

 

「アホ抜かせ。そんなに信号が嫌なら南アフリカの先住民とでも暮らすんだな。道路も無い快適な生活が過ごせるぞ」

 

「円佳さんにメモリを渡したのも、アナザーウォッチを渡したのもお前だな。我慢できなかったなら自分一人でやればいいだろ!」

 

「こんな素晴らしいことを独り占めなんてそんな!私は親切に教えてあげたの。チャラそうなくせに真面目な円佳先輩に、もっと楽になれる素敵な方法を。ここで終わらせなんてさせない。これからもずっと、一緒に我慢せず生きていきましょう!」

 

 

国見は鳩原のポケットからアナザーウォッチを奪い取り、起動させて自身の体に埋め込んだ。呻き声にも聞こえる風の音を全身に纏い、その姿をアナザーダブルへと変える。

 

 

《ダブルゥ…》

 

 

「うわっ、直接見ると気持ち悪さ5割増しだね。あれ本当にモデル僕ら?」

 

「元のデザインも大概だろ。そういやテメェ名前は…確か壮間だったか」

 

「日寺壮間です」

 

「半分だけ手ぇ貸してやる。精々気張れよ、壮間」

 

 

《ジオウ!》

 

《サイクロン!》

《ジョーカー!》

 

 

壮間がジクウドライバーを装着するのと同じく、アラシもダブルドライバーを装着。それと同時に永斗の腰にも同じドライバーが出現した。

 

ジオウが使うのはライドウォッチ。ダブルが使うのはドーパントやアクセルと同じガイアメモリ。彼らが起動させた記憶は…『疾風の記憶』と『切札の記憶』。

 

 

「「「変身!」」」

 

 

壮間が左腕を前に構え、アラシと永斗はメモリを持った片腕同士で『W』を形作る。

 

アラシがジョーカーメモリを装填すると、永斗が装填したサイクロンメモリがアラシのドライバーに転送される。それにより、ドライバーは二本のメモリが刺さった状態に。

 

壮間がドライバーを回転。アラシがドライバーを展開。

2人の仮面ライダーが今ここに並び立つ。

 

 

《仮面ライダー!ジオウ!!》

 

《サイクロンジョーカー!》

 

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

「皆さん決め台詞ありますよね…俺も何か考えようかな…」

 

「呑気か後にしろバカ。行くぞ!」

 

 

開戦と同時にアナザーダブルが竜巻を放つ。寮の壁を取り払って吹き抜けにし、そこから外へ逃走。どうやら開けた場所での戦いがお望みのようだ。

 

着地を待たず、ダブルは空中で攻撃を仕掛けた。ジョーカーの身体能力増強により、その動きは空中で行っていい動作を遥かに凌駕している。しかし、着地までに叩き込んだ数撃が効いている様子は無く、その後の反撃で軽々とダブルは吹き飛ばされてしまった。

 

 

「…妙に強ぇな」

 

『こりゃ僕らに強烈なデバフが掛かってるね。アイツの能力…って感じもしないけど』

 

「なるほど。あの気が弱そうな壮間が、意地でも自分の力で倒そうとしてる理由がこれか。俺たちにはコイツは倒せねぇってワケだ」

 

「すいません…説明するの遅れちゃいました。大丈夫ですか?」

 

「誰の心配してんだ。お前はお前の戦いに集中しろ。こっちは勝手にやらせてもらう」

『無理ゲーには無理ゲーのやり方があるんだ。僕らに任せてよ壮間くん』

 

 

心配する余裕を与えてはくれず、アナザーダブルは倒しやすそうなダブルから狙う。それを庇うジオウだが、あちらもジョーカーの身体能力を持つためパワー負けしている。

 

 

「あんたもいかにも真面目そう!だからそんなに弱いのよ!全部忘れて逃げちゃえば楽なのにそうしない、バカで損する可哀そうな人!」

 

「逃げないし逃がさない!俺はお前を倒すためにここに来たんだ!俺がやるしかないから俺がやる、それが俺だ!」

 

 

アナザーダブルの正拳突きを真正面から受け、ダメージを負いながらもジオウは反撃。しかしアナザーダブルはサイクロンの力で俊敏な動きを見せる。ジョーカーのパワー+身体能力に、サイクロンの機動力、この組み合わせが肉弾戦最高峰の強さを生み出すのだ。

 

 

「俺たちの攻撃は効かねぇ。それならアレだ」

 

『OK、メモリチェンジだね』

 

 

ダブルは複数のメモリを持ち、それらを組み合わせることであらゆる戦況に対応することが出来る。今回ダブルが選択したメモリは『幻想の記憶』のルナメモリと、『銃撃手の記憶』のトリガーメモリ。

 

 

《ルナトリガー!》

 

 

ダブルの右半身が黄色に、左半身が青色に変化。出現した専用装備『トリガーマグナム』から無数に放たれる光弾は、奇怪な軌道を描きながらアナザーダブルに向かう。

 

 

「そんな豆鉄砲効くわけ……」

 

 

この攻撃もダメージにはならないと感覚的に察知しているアナザーダブルは、防御を取らない。その見立ては恐らく間違ってはいない。

 

だが、銃弾はアナザーダブルに当たることなく、ただ周囲を旋回したり近くを過ぎ去ったりするのみ。妙に思ったその瞬間、アナザーダブルにジオウの攻撃が叩き込まれた。

 

 

「よしっ!当たった!」

 

「なっ…なんで…!?」

 

 

それからも同じ展開が続く。銃弾は当たらないが、その代わりにジオウの攻撃がヒットするようになる。そして上手い具合に機動力が活きなくなっているのに気付き、その絡繰りをようやく察した。

 

周囲を動くダブルの光弾は、当てるのが目的では無く「アナザーダブルの動きを制限する」のが目的。ジオウの動きは妨げず、アナザーダブルの動きだけを妨げるように軌道が設定されている。

 

意識すれば動きが鈍り、受けても効かないと思って防御をしなければジオウに対して無防備に。無視できれば楽だが、やたらと目立つ蛍光色の銃弾は存在するだけで意識を割かれる。

 

 

「壮間、お前そのクソダサライダー文字以外にもあんだろ。別のライダーの力を使うアレだ」

 

「アーマータイムですか?まぁ色々ありますけど…」

 

『力と速さ、両取りの奴とか無い?あとは属性攻撃があれば尚良し。それで一気に楽になるんだけど…』

 

「そんなウォッチは多分…あ、あった。ミカドから勝手に借りて来たこれ!」

 

 

ジオウが選択したのはドライブウォッチ。マッハよりも速さでは劣るがパワーはある。ダブルの要求にはもってこいの力だ。

 

 

《ドライブ!》

 

「走大さん、力を借ります!」

 

《アーマータイム!》

《DRIVE!》

《ドライブ!》

 

 

ディスプレイには2014。赤いアーマーと両肩のタイヤが装着され、カタカナの「ドライブ」が複眼に収まる。仮面ライダージオウ ドライブアーマーが爆誕した。ウィルが居たら祝っていたことだろう。

 

 

「ひとっ走り…付き合えよ!」

 

「なるほど『ドライブ』か、そりゃ適任だ」

 

 

ダブルは再び弾幕を射出し、ジオウがそれを合図に加速。

その速度はアナザーダブルの反応を瞬間的に振り切り、低い位置から放たれた蹴りがアナザーダブルの足元を奪う。

 

そして、ドライブアーマーによる超スピードには、その速さに対応した情報処理能力も備わっている。静止した世界の中で、ジオウはダブルの弾幕の意図を読み取った。

 

さっきとは異なる弾丸の軌道。無数の弾丸が一つの場所に収束するような軌道だ。それがタイミングをずらして複数組見える。

 

ジオウは体勢が崩れたアナザーダブルを、その弾丸の収束点へと押し飛ばす。

それに合わせた正確なタイミングで、光弾は束になってアナザーダブルに炸裂。いくら弱体化しているとはいえ、これだけ重ねればある程度のダメージにはなる。

 

 

「これでいいんですよね!」

 

「鈍間にしちゃ上出来だ」

 

 

ドライブアーマーの速度はアナザーダブルよりも少し速い程度。しかしダブルが用意した『置き弾』が、敵に慣れるまでの猶予と立て直しの隙を与えない。

 

ダブルはこれまで幾度となく強敵と渡り合ってきた。例えばヒビキの積み重ねた故の揺るぎない強さとは違い、ダブルはその場その場を情報と工夫と限界突破で乗り越えてきた。言うなれば桁外れの適応能力。

 

その力は即興の阿吽の呼吸すら生み出し、ジオウの力を最大以上に引き出した。

 

 

「小賢しいっ!吹っ飛べえええっ!」

 

 

ヤケクソ気味に放たれたのは強烈な竜巻。火事場の馬鹿力的なとんでもない出力のせいか、それが中々に厄介な一手となり、ジオウと距離を取られてしまった。

 

 

「適当かよクッソ、そう簡単には行かねぇか」

 

『いや、そうでもないよ。壮間くん、ちょっと耳貸して欲しいんだけど…』

 

「はい…?」

 

 

アナザーダブルが反撃を繰り出す前に会話を終え、ダブルは一旦退避。

殴りかかるアナザーダブルに対し、ジオウが最初に防御を取る。肩アーマーで受け止めた攻撃を、タイヤをフル回転させて弾き、その勢いのままタックルでのカウンターが決まった。

 

 

「ドライブの力をイメージ…走大さんの資料で見た力…タイヤ交換!」

 

 

ジオウがイメージしたのはマックスフレアのタイヤ。

そのイメージは形となり肩アーマーに出現した。しかし、肩のタイヤと入れ替わることはなく、燃え盛るフレアタイヤはアナザーダブルに勢いよく突撃してしまう。

 

 

「あれっ?でも…これはこれで!」

 

 

その勢いを逃さぬまま、ジオウは次々にタイヤをイメージ。

ファンキースパイク、ミッドナイトシャドー、ランブルダンプ……それらが次々とアナザーダブルにぶち当たっていく。

 

たまらずにアナザーダブルは最大出力の風を展開。彼女を中心に凄まじい勢いの竜巻が昇り、その風はあらゆる攻撃を遮断する防壁となる。

 

が、それこそがジオウの狙いだった。さっき永斗はジオウにこう言った。

 

 

『絶えず攻撃してアイツを追い詰めよう。もし竜巻で完全防御に入ったら…僕たちの勝ちだ』

 

 

《ヒートトリガー!》

 

「チェックメイトだ」

 

 

『熱き記憶』のヒートメモリでダブルの右半身が赤く染まった。炎の力を帯びたダブルは、その竜巻にマグナムからの火炎放射を注ぎ込む。ジオウもそれに合わせてフレアタイヤの炎を投下。

 

その結果、アナザーダブルを守る風の壁は一変。防壁から炎の牢獄へと姿を変えた。

 

 

「チィッ…!いちいち鬱陶しいのよ!」

 

 

熱で体力が削れていき、竜巻の解除も視野に入って来た。しかしそれでは奴らの思う壺。

そんな時、竜巻の外側から強引に近づいて来る気配が二つ。

 

 

「しめた…!気付かないとでも思ったの!?大人しく待ってれば良かったものを…死ねぇッ!!」

 

 

右腕に風を纏わせ、左腕には力を込める。来る方向さえ分かっていれば同時に相手取ることも容易い。しかも、面倒なダブルはこの一撃で確実に沈められる。

 

その推測も正しく、アナザーダブルは接近する影を二つ同時に撃退した。

片方の姿は黒、もう片方は赤。その手ごたえは余りに軽く……

 

 

「…しまった……!」

 

「信号嫌いはいいが、轢かれても文句言えねぇよな。終わりだクソ女。決めろ、壮間!」

 

 

二つの影はそれぞれダブル ヒートジョーカーの半身ずつだった。ジョーカーの能力でダブルは右半身と左半身を分離できる。それを利用し、アナザーダブルが完全に無防備になる瞬間を作り上げたのだ。

 

そして、ジオウが来るのは右でも左でもなく、上。

上空から竜巻に侵入したジオウはジカンギレードを握り、落下の勢いで斬撃を叩きつける。

 

 

《フィニッシュタイム!》

 

「俺たちの……勝ちだ!!」

 

《ジオウ!ギリギリスラッシュ!!》

 

 

炎の竜巻が行く手を阻む。この台風の目に逃げ場はない。

ジオウの斬撃は時計盤のようなエフェクトを描き、アナザーダブルを縦一閃に切り裂いた。右と左を烈断するような一撃は竜巻をも消し飛ばす。

 

爆炎の中から国見の姿が這い出て、転がったアナザーウォッチに手を伸ばす。

しかし変身解除したアラシがそれを踏み潰し、彼女の意識はそこで途切れたのだった。

 

 

「あ、力渡してねぇけどこれでいいのか?」

 

「あーそれは…また後から。多分完全に倒せてはないんですけど、今のうちに彼女を無力化すれば大丈夫だと思います」

 

「んじゃ腕折るか。いや脚の方がいいな。そしたら改めてボコボコにし易い」

 

「とんでもないこと言いますね……あ…っと、そうだまだ終わりじゃない!ナギさんの居場所を聞き出さないと!」

 

 

タイムジャッカーが邪魔しに来ないかと身構えるジオウ。

それに対し、アラシは───

 

 

 

「今、ナギって言ったか…!?まさか火兎ナギか!?」

 

「え…はい。ファストフード店で襲われた参考人ですけど…言ってませんでしたっけ」

 

「聞いてねぇよバカ!おい、この事件のことを手っ取り早くかつ詳しく教えろ!できるだけ早く詳しくだ!」

 

「そんな無茶な…」

 

 

ナギの名前を聞いてアラシの形相が変わった。

そして事件の詳細を聞くほどに、その表情は険しくなっていく。まるで想定し得る最悪を目の当たりにしたような、自分を責めるような怒りの様相に、壮間は思わず震えた。

 

 

「……手掛かりになった飴、落ちたのはウィンターからアナザーダブルになる間ってことになる。んなわけあるか、遠くの俺からも見えたくらいの竜巻だぞ?変身する時に落ちたとしても、そんな小さい飴玉なんか吹っ飛ばされてる決まってる!」

 

「あ…!じゃあなんであそこに飴が!?円佳さんが落としたんじゃないとしたら……!」

 

 

ゴミ箱に3つ包装紙はあった。鳩原が本当に飴を無くした、もしくは国見が飴を渡していなかっただけだとしたら、あの場所に飴を置けるのは一人しかいない。

 

そもそもアナザーダブルは2人で1人と推理したはず。それなのに、この国見は一人で変身をした。しかも戦い方が壮間の知る『アナザーゴーストの中身』とは違い過ぎた。

 

黒幕が別にいるとしたら。国見の体で変身していたもう一人の黒幕は、ここに必ずやって来る。

 

 

「悪かったな壮間、こいつは勝負になんねぇ。お前が気付くわけねぇし、俺たちはアイツのことをよく知ってる。最初から全部仕組まれてたんだよ…アイツが、化け物に襲われたくらいで怪我もするわけがねぇんだ!」

 

 

アナザーライダーは、ライダーの対極を成す存在。

才能しか持たない天介と才能以外持った四谷。市民を守る走大と正義を守る相場。全て知っていたから愛したヒビキと何も知らずに恨んだ九十九。命を繋ぐ朝陽と今に執着した梨子。

 

仮面ライダーダブル、切風アラシ。

『嵐』の対極は、風一つ吹かない静寂の『凪』。

 

 

 

「グッドイブニング、お疲れですか?アラシせんぱーいっ☆」

 

 

凪と呼ぶには喧しすぎる彼女は、無邪気な笑顔のままアラシの前に降り立った。引きつった表情の彼を労わるように、ナギは顔をアラシに近づけ───

 

 

口づけの寸前、アラシがナギの首を掴む。そのままへし折るくらいに強く。

だが、ナギは足をアラシの首に絡め、無理矢理体勢を崩して引き離した。そこまでが挨拶と言わんばかりに、ナギは艶めかしく笑う。

 

 

「やっぱガード硬いなぁ。他の娘もそうやって突っぱねてるの?かわいそ」

 

「安心しやがれテメェだけ特別扱いだ。もうテメェとは会わなくていいと思ってたが、やっぱり逃げちゃいけねぇって事なんだろうな……ナギ…!」

 

「あはは嬉しいっ!私にはわかるよ、それってアラシの最初で最後は私ってことでしょ!」

 

 

戦闘で結構な距離を移動したようで、ここに穂乃果たちはいない。それだけがアラシにとって安堵の対象だった。

 

現れたナギに対し、ジオウは動けない。前に会った時の『可愛らしさ』はそのままに、内側から溢れ出る気味の悪さが生理的嫌悪感を呼び覚ます。少なくとも壮間には、彼女が人間だとは思えなかった。

 

彼女とアラシの間にどんな因縁があるかは知らない。それでも、間違いなく彼女は敵であると、壮間の記憶に前提が刻まれる。

 

 

「ナギさんが黒幕…もう、疑いようも無いけど…!」

 

「やや…っと、そこにいるのはぁ…あぁ、さっきの童貞臭い男の子か。どうだった?探偵ナギちゃんの名サポート、おかげで犯人わかってよかったね!」

 

「どうせ全部仕組んでやがったんだろ。今思えば国見舞雨の()()もいかにもテメェの仕業だな。何が目的だ」

 

「そ、こないだ変わった男の子からコレもらって、誰か一緒じゃないと使えないらしいから舞雨ちゃんにあげたの。ついでにメモリも。でもさぁ、そしたらまた違う女に渡してるじゃん、そーゆーとこだよねこの子って」

 

 

ダブルが砕いたはずのアナザーウォッチが再生し、持ち主であるナギの手元に浮かび上がる。気絶した国見の顔を持ち上げ首を指でなぞると、ナギはウォッチを起動させた。

 

 

「溜まってるのに一人じゃ発散もできない。快感も罪悪も誰かと共有したいだなんて、クッソつまんない性癖!だからμ’sを呼んだんだ。今のままじゃぜーんぜんもの足りなかったから。

 

あー目的だっけ?そりゃ簡単だよっ、舞雨ちゃんと一つだけ気が合ったとこ。私さぁ………スクールアイドル大っっっ嫌いなんだよね!!!」

 

 

国見の体にウォッチを埋め込み、その姿が再びアナザーダブルに。だが、その立ち姿はさっきまでとは明らかに異なっている。国見の意識が無い分、ナギの人格が前面に出ているのだ。

 

 

「壮間逃げろ!お前が勝てる相手じゃねぇ!!」

 

「えー待ってよ。ちょっとくらい遊んでくれてもいいじのに!」

 

 

ジオウが一歩引いた瞬間、アナザーダブルがジオウの頭を掴んだ。

手から全身に伝播する寒気。高く上げられた膝蹴りが顔面に突き刺さり、次の一瞬で首に足が絡まったかと思うと、腕を掴まれ背後に回られて背中を蹴りが襲った。

 

多分これで合っていると思う。予測できたものではない一瞬の暴力に、苦痛さえも後から追いかけてくるようだ。

 

 

「反応できてないけど?不感症ですかァっ!?」

 

 

この鮮烈で絶え間のない狂気的な動きは、2018年で目にしたアナザーゴーストの開眼と一致する。そこから先も出鱈目で滅茶苦茶な連撃が続いた。体の動きや関節の曲がり方が異次元の域だ。

 

 

「ッ…ぐっ……あぁ~っ!!あははは痛いっ!舞雨ちゃんのカラダだったっけそういえば。でもそれ快感っ!痛さが痺れるこの慣れないカンジ!このカラダがグチャグチャになるまで、私が遊んであげる!」

 

 

逃げられない迫撃が再開しようとした時、ダブルに再変身したアラシがそこに割って入った。それを悦で濡れた笑いで喜ぶアナザーダブル。攻撃の矛先がダブルへと移り変わる。

 

 

「やっぱアラシとが一番気持ちいいよ!その逞しい肉体を殴って、アラシの細胞が潰れるたびに私の奥で何かが這い上がってくるの!」

 

「気色の悪ぃ表現は変わんねぇな!あぁ本当に……テメェは昔から変わらねぇ!!」

 

「私をこんなにしたのはアラシなんだよ!?責任取ってよ、ねぇっ!」

 

 

アナザーライダーの前で弱体化するルールは変わらない。ナギの圧倒的な力とそのルールを前に、ダブルは一切の成す術が無い。

 

 

「でも今はこんなに差がついちゃってる…嫌だよ、これじゃ愛の無い一方的な蹂躙じゃん。私が一方的にアラシを踏みにじって、物言わぬ体になるまで引きずって…本当に……悲しいなぁああああっ!!あっはははははははははっっ!!」

 

「うるせぇんだよ…この変態女が。例え死んでも、テメェの好きなようにはなってやんねぇよ!」

 

「じゃあさじゃあさっ、もしそうなったらアラシは私の何になってくれる?恋人?愛人?ペット?お兄ちゃん?何でもいいよ!私…アラシのこと大嫌い(だいすき)だからさぁっ!!!」

 

 

ダブルが叩きのめされるこの悪夢に、ジオウは入る隙も無い。

 

またこれだ。上手く行った、これで終わると思ったその瞬間からの、突然襲い掛かる理不尽な最悪のデウスエクスマキナ。今の壮間はそれに抗うことができない。

 

 

「ふざけんな…!こんなので…終わらせてたまるかよ!」

 

《フィニッシュタイム!》

《タイムブレーク!!》

 

 

考えても恨んでも何も変わらない。その怒りを無理矢理にでも通さんと、ジオウは反撃覚悟でアナザーダブルにライダーキックを放った。

 

恍惚としていたアナザーダブルの視野にそれは入っておらず、不意打ちの形で一撃が決まった。そして幸運が味方したか、その一撃をきっかけに酷使した肉体が限界を迎えたようだ。

 

 

「あーこれは無理っぽいかぁ…また来るよ。グッドナイト、おやすみアラシ」

 

 

ナギの身体を抱え、アナザーダブルは飛び去った。

またしても助かった形だ。何度も幸運に命を救われている。壮間はただ、今の自分の非力を恨んだ。

 

自分一人で全てを守り、叶える力。

それがあったらどんなに良いのだろうと、そう思う。

 

 

_____________

 

 

 

事件は犯人不在の形で解決した。勝負の決着については、ナギが黒幕だと見抜いたアラシ達の勝利になりそうだが……今はそんなことを気に出来るほど悠長にはなれなかった。

 

ナギの話を聞かせたくないのか、アラシは穂乃果たちをアリオスの付き添いで帰らせた。今はアラシと永斗、壮間が探偵事務所に戻っており、この状況にまず永斗が一言漏らす。

 

 

「最悪だね」

 

「あぁ…最悪だ。まさか最後に立ちはだかんのがナギとはな。朱月や憂鬱の方がなんぼかマシだ、アイツは質が悪すぎる」

 

「分かりますよ…あの人はとんでもなく強かった。下手したら九十九さんより強い。しかもまだ令央もいるってのに……!」

 

「話がイマイチ見えねぇな。お前の事情、詳しく教えろ」

 

 

そういえば詳しい話はまだだったと、いつものように全てを話す壮間。継承に関してはほとんどアラシたちの推理通りだったのだが、それ以外の状況も大概に酷く、永斗の方は分かりやすく顔をしかめていた。

 

 

「えーと、つまりもう一人ヤバいのがこの時代に来てて、2015年では君の友達に取り憑いた火兎ナギが暴れてて、現状どちらも倒す手段が無いと…何それなんて地獄?」

 

「だから令央が持つナイチンゲール眼魂を取り返してミカドを助け、こっちでアナザーダブルを倒してから2015年で香奈を助けようと……消えちゃったゴーストの力は、グレートアイがあれば元に戻せるかも…と」

 

 

『主人公が死ねば物語は消える』とウィルは言っていた。もし朝陽の消滅でゴーストの歴史が消えたのならば、アリオスや蔵真がそのままだったのはおかしい。

 

つまり、理由は分からないがゴーストの物語はまだ消滅していない。グレートアイもまだ健在であるという訳だ。

 

 

「確かに机上論じゃ完璧かもな。でもお前にナギが倒せんのか?あと、ナギが取り憑いてるっつうお前の幼馴染、そいつ助けんのも結構至難だぞ」

 

「え…アナザーダブルを倒せれば、後はアナザーゴーストを倒せば解決なんじゃ…」

 

「ナギのことだ。もしトドメを刺すとこまで行ったとしても、その直前に変身解除してその香奈ってやつを身代わりに。嘲笑いながらまんまと逃げおおせる…なんて普通にしてみせるだろうな」

 

「そんな…でも、それなら香奈が取り込まれる前に戻れば!」

 

「それは出来ないよ、我が王」

 

「出たよ…」

 

 

こういう話をしていると決まって現れる男、それがウィル。本を持っている繋がりか永斗に軽くおじぎした彼は、得意げに本を開いた。

 

 

「なんだコイツ。今度はちゃんと不法侵入だな」

 

「まぁ落ち着きたまえ。私はただの解説役、ルールに誤解があってはいけないから来たまでさ。我が王よ、結論から言うと君は一度行った時間に戻ることはできない」

 

「なっ…!?なんで!」

 

「当然じゃないか、それで何度もやり直しが効いてしまっては、試練として成り立たない。レジェンド継承という一連の試練はやり直しも一時停止も無効。もし君が今から2015年に戻っても、それは2009年で過ごした分の時間だけ先の2015年になる」

 

「何だよそれ!じゃあ香奈を助けるにはどうしろって……」

 

 

文句を言おうとした時には、ウィルは消えていた。あの男はいつも言いたい事だけ言って逃げるのが本当に気に食わない。

 

 

「まぁ、方法は一つだ。ナギとそいつを一旦分離してからぶっ倒すしかねぇ」

 

「できるんですか、そんなこと…?」

 

「それを今から考えんだよ。分離の方法も、お前がナギを倒す方法も、この事態を全部丸く収めるための全部を、俺たちがお前と一緒に考えてやる」

 

「これは珍しい。アラシが他人のために熱心になるなんて。さっきも笑ってたし、壮間くんのこと気に入った?」

 

「笑ってねぇしそんなんじゃねぇ。コイツは依頼の一環ってだけの話だ」

 

「依頼…ですか?」

 

「忘れたのか?お前が頼んだことだろうが」

 

 

壮間は思い出そうとするが、そもそもアラシとの会話は大体喧嘩腰だった。何かを頼んだ覚えなんて一度も無い。

 

そう思った壮間だったが、一つだけあった。でもそれは、もう既に終わったはずの依頼だ。

 

 

「『ダブルを探してほしい』、俺はお前からそう依頼された」

 

「あ、やっぱりそれですよね。でもそれがどうして…ダブルはアラシさんと永斗さんだったし」

 

「俺たちはもうダブルじゃなくなんだろ?だったら俺たちは次のダブルを見つけるしかねぇ。少なくとも俺は、お前にギリギリだが可能性を見た」

 

 

切風アラシと士門永斗、彼らの選択の指針は単純明快。

それは『μ’sを守れるかどうか』。そのためなら自分の存在が消えようが、その先を任せられる人物がいるなら構わない。

 

 

「だからお前を『次』として信じられるようになるまで、依頼は終わらねぇ。依頼人のために戦うのが探偵だ。最後まで付き合ってやる」

 

「アラシさん……!…若干こじつけな感じしますけど」

 

「僕もそう思う」

 

「うるせぇぞボケ2人。余計な事言ってねぇで考えろ」

 

 

____________

 

 

アナザーダブルの変身が綻ぶように解け、意思の無い肉塊となった国見の体が乱雑に地に放られた。

 

 

「おつかれ舞雨ちゃん。次は…どのアイドルにしよっかなー☆」

 

 

別に誰でもいいという訳でもなく、アナザーダブルの体として使える人間には一定の条件がある。それに、未成熟かつ綺麗で純潔の象徴であるスクールアイドルを穢すのがナギの『性癖』だ。

 

悦に震えるナギの指から、細かい砂が流れ落ちた。

逆行しない時の砂時計。それは取り返しのつかない最悪に、更に最悪を重ねる。

 

 

「お兄さんだれ?」

 

「私は令央。君の冒涜極まる作品に感化された芸術家…君に魅入られた滑稽な男の一人だよ」

 

「へぇ、全然好きですよ。お兄さんみたいな破滅的な男性(ヒト)

 

 

 

_____________

 

 

 

「片平香奈とナギの最大の相異点はどこだ?そこを突けば切り離せねぇか?」

 

「僕に聞いてる?うーん…その辺の仕組み知らないからなんともだけど、精神で主導権奪い合ってる感じなら、心がまるっきり別のベクトルを向いたら分離できるかも…?」

 

「本当ですか!?香奈との相異点……どっちも女子で、年齢は同じくらいで、あとまぁ可愛いってのと…」

 

 

状況の打開案を必死に探る3人。アラシの思いつきで見えた光を、壮間は必死で掴もうとする。そして、思考の末に結論を一つ弾き出した。

 

 

「スクールアイドル!そうです、香奈はスクールアイドルが大好きです!」

 

「その反対にナギはスクールアイドルが死ぬほど嫌い…それだ!μ’s(アイツら)のライブでも見せれば分離できるんじゃねぇか?μ’sは未来でもそれなりに有名なんだろ?」

 

「確かに!香奈はμ’sも好きだって言ってました!」

 

「いやいやお二人さん、それはオタク心舐めすぎよ。所詮は見たことのあるライブ映像で感動も無い。いくらなんでもその程度じゃ大した効果は出ないと思うけど」

 

 

だったらと、アラシは壮間のカバンを指さす。

一度壮間の荷物を全て調べた際、アラシはそれの存在を確認していた。

 

 

「壮間、お前のカバンに入ってたあの楽譜。あの筆跡は真姫のもんだろ」

 

「忘れてた…!そうです、未来の真姫さんから穂乃果さんに渡すよう言われて、穂乃果さんに昔のμ’sに渡すように言われてたやつです!もしかして……!」

 

「あぁ、これならどうだ永斗!存在するはずのねぇμ’sの新曲でライブはデカいインパクトになる!」

 

「いやぁ……どうだろ。確かに人によっちゃ発狂ものだけど、そもそも香奈ちゃんってそんなにμ’sのこと好きだったの?」

 

「そう言われれば…一番好きなのはAqoursって言ってました。μ’sがどのくらい好きなのかは俺にも……」

 

 

せっかく見えた希望を掻き消すようなことを言ってしまった。沈んだ空気になるかと思えば、アラシはその台詞の中で聞こえた名前に目を見開く。

 

 

「Aqoursだと?」

 

「あ、はい。そういえばこれも言ってなかったっけ、2015年でアナザーゴーストの事件に巻き込まれたスクールアイドルっていうのがAqoursで、そもそも香奈がそこに首を突っ込んだとこから始まったんですけど…ってどうしました?」

 

「いや…偶然って言うのかこれ。まさかAqoursがここで…か」

 

「どっちかというと運命でしょ…とんでもないね、あのグループは世界が違っても仮面ライダーが仲間なんだ。もしかしたらμ’sも…割とありそうな話だね」

 

 

アラシと永斗はAqoursのことを知っているようだ。

その話の詳細を聞こうとしたが、壮間の興味はすぐに移り変わった。その時、アラシが何か閃いた顔で、口元に笑みを浮かべたからだ。

 

 

「相手はスクールアイドル大好き少女。最推しのAqoursか、超スクープのμ’sの新曲か……馬鹿言うんじゃねぇ事態が事態だぞ?そんな二択、無粋ってもんだろ」

 

「アラシ…まさか…!?」

 

「なるほど。素晴らしいアイデアだ切風アラシ!」

 

 

アラシがそれを言おうとした時に、ウィルがまた現れた。なんだか今回は我慢できなくなったかのような登場だ。

 

 

「だからなんだテメェ!こいつもお前の仲間か、壮間」

 

「いや、知り合いですけど仲間…かどうかはちょっと。友達ではないです」

 

「酷いね我が王、私泣きそうだよ。

まぁ良しとしよう。何故なら、私は彼のアイデアに感動しているんだ!

せめてささやかながらヒントを献上しよう。複数のグループ、ソロアイドルが一つのイベントを織りなすまさに宴!未来でとある少女が考案した、そのイベントの名は───スクールアイドルフェスティバル!」

 

 

そこまでする必要は無いかもしれない。もっと効率的な方法があるかもしれない。それでも、アラシはやらせてやりたいと願った。歴史から消える自分たちが残す、最後の贈り物だ。

 

 

「もしかしたら無粋かもな。でも知ったこっちゃねぇんだよ。これまで歩んできた道も、選択も、矜持も、文脈も、何もかも知った事か。どうせ無かったことになるんだ。最後くらい…ド派手に花火上げて祭りと行くぞ!

 

μ’sとAqours、時を超えた合同ライブ!スクールアイドルフェスティバル ライダーズedition開催だ!!」

 

 

2018年、2015年、2009年

三つの時代がスクールアイドルで交錯した。

 

みんなで叶える奇跡が、最低最悪の結末を覆す時だ。

 

 

 

____________

 

 

次回予告

 

 

「未来のアイドルと一緒にライブ!?」

「μ’sと合同ライブですってえぇぇええええっ!!!??」

「おい!しっかりしろダイヤ!」

 

奇跡のイベント開催!香奈を救え!

 

「君が士門永斗だよね?わたしはその知識が欲しいんだよ」

「贋作共が、奇跡や夢だなんて笑わせてくれる!」

「もっと気持ちいいこと教えてよ!そのクソ気取った仮面剝ぎ取ってあげるからさぁっ!」

 

集う邪悪。立ち向かうは仮面ライダー!

 

「信じられる相棒がいる」

「命を燃やす」

「最高最善の王になる」

 

「俺たちも…仮面ライダーだ!」

 

今こそ、積み重なった最悪を覆せ!

 

「μ’s!ミュージックスタート!」

「Aqours!サンシャイン!」

 

次回、「フェスティバル!2015/2009」

 

 

 




ナギちゃん普通に敵でした。ラブダブルでは今後登場する予定の超つよつよ敵で、アラシとは並々ならぬ因縁持ちです。察しの読者は色々読み取れるかもです。

次回からは補完計画を挟んでクライマックス。合同ライブ実現とナギ撃破に向け、全員が一丸となって戦います。未回収の色々は一気に回収していきたい感じです。

アラシ達がAqoursを知ってた理由は、ラブダブルでただいま進行中のコラボ編を是非ご覧ください!

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