仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
仮面ライダー歌舞鬼に変身した謎の男。年齢不明(推定1000歳以上)。本名は本人も忘れた。千年桜で不死になった男だが、その経緯も一切が不明。ただかつて悟ヶ原家に婿入りし、先祖返りのコミュニティで相応の力を持っているらしいのは確か。400年前に彦匡を救ってから彼の師匠となったが、最終的にオロチの封印を解くことで彼を殺害。行動原理や信念など人としての核と呼べるものが一切無く、その後も多くの鬼や人間や先祖返りを殺したため、彼を知る一部の者からは「祟り」として恐れられている。2005年での戦いは静観していた。修正された歴史でも千年桜を使ったらしいが動向は不明。どの記録にもその後の彼は記されていない。
本来の歴史では・・・魔化魍の研究を続ける男の手足として動いた。ヒビキが九十九と向き合い始め、魔化魍頻出の黒幕に近づいてきた頃を見計らい、カブキは妖館の住人の渡狸卍里と接触する。
試験が一旦終わった146です。暇なうちに書いちゃいたいです。
壮間の前にクソ高い壁がそびえる回です。あと混乱のタネになるからハブってたアイツがどうなってるかもちょっとだけ。
あと最近とにかくガバが多いので、見つけた時は指摘をお願いします。歴史改竄します。
今回も「ここすき」をよろしくお願いします!
「はーい、皆さんに良いお知らせと悪いお知らせがあります」
2015年と2009年のスクールアイドルの合同イベント、スクールアイドルフェスティバル。あれやこれやでなんとか練習環境を確保できた頃、遅れてやって来た永斗がそう話を切りだした。
『あっ、この男の子が…』
「永斗くんにゃ!遅いよー!」
『凛さんの言う通り、ほんとに獲れたてのワカメみたいな人ずら…』
短い会話で既に仲良くなっていた花陽と凛に、受け取り方に困る形容を投げつけられたが、今は一旦置いておいて話を続ける。
「えっと、まず僕はなんやかんやで更に天才になったわけです。そこで感情・精神理論やらアナザーライダーの構造やら諸々考慮して計算した結果…視覚から取り入れた映像で強い精神変位を引き起こして宿主と寄生者の精神平衡状態…あるいは支配的状態に歪を与えられれば結合が弱まり、そこから比較的小さい外力によって片平香奈ちゃんとアナザーゴーストを分離が十分に可能ってことがわかった」
「……あれ、もしかして分かってないの私だけ?」
『はいっ穂乃果さん!私も全然分かりません!』
「さすが千歌ちゃん!」
「似た者同士で安心しないでください…」
「じゃあ海未ちゃん分かったの!?」
「それは……まぁ計画続行ということは」
「というか永斗、あんたわざと難しい言い方して遊んだでしょ。ちゃんと教えて」
真姫に図星を突かれ、目を逸らして舌を出す永斗。
Aqours側にもこの男がまぁまぁいい加減なことが知れ渡ったところで、本題へ。
「海未ちゃんの言う通り、ただ計画続行ってだけだよ。アラシの見立てが正しくて、ライブでの分離は可能だった」
「それはめでたいにゃ!」
『で、それ多分良いお知らせだよね?悪い方は?』
可能かどうかも分かってなかったことが発覚し、『ちゃんとしてる側』の絵里がダイヤと目を合わせて苦笑い。しかしまだダイヤの方は動揺してしまうため目を合わせてくれない。絵里は少し凹んだ。
そして問題は曜の言う通り、悪いニュースの方だ。
「…えー、壮間くんから聞いた話で、その片平香奈ちゃんの人格をシミュレーションしたわけ。まぁ聞いた限りだと、香奈ちゃんのアイドル好き好き係数は甘く見積もっても85前後……」
「めちゃくちゃ頭悪そうな数字出てきたけど大丈夫なんでしょうね!?」
「多分にこちゃんよりは頭いいから大丈夫にゃ」
「なんですってぇ!?」
「で!その係数を元に計算したところ、分離に必要なライブ時間は……ざっとぶっ続けで98分になりました……」
思ったよりも重たい数字に、ほとんどのメンバーの雰囲気が沈む。
一方、全然そんなこともない例外もいた。
『一時間半ちょっとね…全然いけそうでよかったよかった!』
「そうですね…少し辛いかもしれませんが、今から特訓すれば!」
果南と海未だ。
「ハラショー…」
「この子たち正気…!?」
『残念ながら正気ずら。果南ちゃんはマルと正反対の体力オバケずら…』
「海未ちゃんも特訓で全部解決すると思ってる古き良き少年漫画思考!こっちも似た者同士の海属性やね!」
「海合宿の時も大変だったよね…確かランニング15km、腕立て腹筋20セット、発声、ダンスレッスン、精神統一に遠泳15km…!」
「かよちんよく覚えてるね」
「大変過ぎたから…」
『これが噂に聞くμ'sの魔教官、園田海未…!あれ、今のメニューどこかで……』
善子の記憶に封じ込められたままになったが、Aqoursも夏合宿でダイヤ持ち込みの同じメニューを行っている。どこから流出したのか知らないが、μ'sが残した負の遺産だ。ちなみに果南はこれをこなして平然としていた。
「でもやっぱり100分もずっとライブは…ちょっと厳しいかな?永斗君、なんとかならない?」
「そういうと思ったよことり先輩。漫然と踊って歌うだけじゃなく、常に感動を届けるライブを98分続けるのは流石のバケモノ2人でも無理があると思う」
『「バケモノ…」』
「でもそれは単に初見のインパクトが薄れるから長くなるだけに過ぎないんだ。これを解消するためには、香奈ちゃんにとってのμ's&Aqoursの合同ライブと同じくらいの衝撃を、小出しにして定期的に与えてあげればいい。つまり……」
「そう。そのために私たちがいる」
交渉材料に過ぎなかったはずが、計画に欠かせないピースになっていた。やはりそれだけのパワーがその存在に秘められているという事だろう。
待ち構えていたようなタイミングで画面に現れたのは、A-RISEの綺羅ツバサ。
『綺羅…ツバサさん…!ホンモノですわ!まさか本当に…!!』
『μ'sとA-RISEが一緒に…!!』
『流石に知ってるわよ、ネットでもテレビでも有名なアイドルの…!』
「あら、嬉しい事が聞けたわね。ありがとう可愛い堕天使さん」
「頼んだらすぐに大阪に来てくれたし、そっちのメンバーも説明済み。流石のトップアイドル、フットワークの軽さも対応の柔軟さも尋常じゃないね」
「そういえば私たちの参加で協力を承諾してくれたグループがいるって聞いたけど……」
『あー、一応そこにいるんですけど…』
練習場所を提供してもらったはいいが彼女たちが姿を見せず、千歌が画面の外に視線を向ける。通信に入って来る音からは「早くしなさい理亜…」や「姉さま、本当に変なとこ無い?大丈夫…?」などの会話が聞こえてきた。
そんなメチャクチャに動転した様子の理亜と、申し訳無さそうながらも少し緊張しているような聖良、2015年のスクールアイドル『SaintSnow』だ。
「あんじゅと英玲奈もすぐに合流するわ。これで全参加グループが集合したみたいね。μ'sと一緒のステージに立つ日が来たのも驚きだけど、まさかスクールアイドルの未来まで見ることになるとはね」
『は…はい!落胆させるつもりはありません。やるからには全力で、私たちも本気で行きます!』
『Saint SnowにA-RISEまで力を貸してくれるんでしょ!もう誰にも負ける気しないよ!』
「だよね千歌ちゃん!よーし絶対いいライブに…って、いつなんだっけ?ライブの日程」
『何言ってるんですか穂乃果さん!そんな大事なこと忘れるわけ…あれ、いつだっけ?てゆうか決まってたっけ?』
4グループの代表者の声明が一つになったはいいが、そういえば最も大事なことが決まっていなかった。ずっこけそうになるところにウィルが補足しに現れる。
「この本によれば、彼岸の者が此岸の者との縁が続く限り、消え去る事は無いとある」
「シガン…ヒガン…?何それ?」
「つまりは死者と生者ということ。仮面ライダーゴースト、朝陽の話さ」
『朝陽くんの…!?』
「朝陽は消えていない。仮面ライダーゴーストの歴史が消滅していないのが、その証拠だ。それは高海千歌、君が朝陽のことを想い続けているからに他ならない」
思っている限り、そこにいる。
やっぱりそれは真実だった。朝陽はまだ消えていない、疑っていたわけじゃないが、言葉として聞くと堪らなく安心してしまう。
『そっか…だよね。朝陽くんはまだ……』
「だがそれにも限界がある。タイムリミット、99日の縛りだ。その時が訪れた瞬間に朝陽は消滅し、ゴーストの物語は消える。それまでにアナザーゴーストを撃破しなければならない」
安心と同時に突き付けられた明確な崖っぷち。
壮間たちが来た時点が土曜で、朝陽消滅のタイムリミットは次週の日曜。アナザーゴーストを一度倒したのが日曜で、アリオスと壮間が東京とニューヨークに行ってμ'sを探して月曜、ウィンター事件に奔走したのが2015年視点で火曜、そして今が水曜だから……
『あと3日しかないじゃん!』
ライブ一つを仕上げるのには余りに足りなさ過ぎる時間。
しかし、千歌に比べて穂乃果の方はそこまで焦っているようではなさそうだった。
「平気だよ!こっちには永斗君もいるし、今は4つのグループがいるんだよ?絶対できる!」
「まぁこれまで無茶なスケジュールこなしてきたからね…音源やら設備は僕に任せて。君らはライブの完成度に注力してくれればいい」
「彼に任せれば大丈夫よ、この綺羅ツバサが保証するわ。それでも信用ならない?画面の端で縮こまってる理亜さん?」
『い…いえっ!信用してないわけじゃ…』
『すっごい疑いの目だったずらよ』
『うるさい!信用とかそういうのはその人じゃなくて、今はどっちも敵に狙われてるって話だったでしょ。追いつかれたらライブどころじゃ…』
「それも心配いらないよ。そっちのキメラアナザーっていうやつ、推測する限り索敵も移動もさほど優れて無さそうだったし。こっちも別に」
「そう、私たちの時代には甲がいる」
「あと怪盗もね」
ナギと令央を足止めしているのはアクセルとエターナル。
特にアクセルの赤嶺甲に対して、ツバサは全幅の信頼を置いていた。正義の名に於いて、彼は役目を完遂し、生きて帰って来る。それ以外の結果を誰より彼が許さない。
対して永斗はエターナルのミツバを疑いもしない。
信頼なんかではなく、確信だ。相手がどれだけ強かろうと、ミツバが足止めさえできない相手なんて存在しない。存在してはいけない。何せ彼は『最強』の一角なのだから。
______________
アナザー電王に変身した令央と、仮面ライダーアクセルに変身した赤嶺。街中で刃を交えて既に一時間。令央はその違和感をとっくに感じ取っていた。
「つまらない真似をしてくれる。時間稼ぎが見え見えだ」
「その通りだ」
「笑えないくらいに正直だな」
「不必要な虚偽は正義ではないからな」
「そうか、贋作の分際で正義を掲げるな!反吐が出る!」
これまで何人もの仮面ライダーを葬ってきたアナザー電王の猛攻。しかし、アクセルはその速度とパワーに渡り合っている。
アクセルは『加速の記憶』。その性能は時間経過と共に強化される。
普段は迅速な解決を主義とする赤嶺であるためその力を見ることは少ないが、長期戦において彼の右に出る者はいない。
「違う。俺が正義を掲げるのではない、俺自身が正義だ!」
「ならば教えてもらおうか、この時間稼ぎは何が狙いだ?
いや…私としたことが、『質問は無駄』だったな!」
そしてまた別の場所では、アナザーダブルとエターナルが災害にも等しい戦いを繰り広げていた。ナギとミツバ、人類にとっての天敵がどちらなのか、一概には言えないような2人だ。
「あははっ!話と違うなぁ。仮面ライダーは弱くなるって聞いてたんだけど!?」
「いいやお嬢さん、そうでもないさ。オレも自分のテイタラクにとても驚いている」
エターナルはそう言いつつも、その強さはアナザーダブルから見てもバケモノじみていた。これでも強烈なデバフが掛かっているというのだから恐ろしい。
アナザーダブルが旋風を巻き起こすと、エターナルはそこに秒で突っ込んでいき、内側から掻き消す。そして接近されて、気付いたらエターナルエッジで三回は斬られていると来た。
しかし攻撃の効きはやはり弱く、勝負が決めきれない。
しかもナギはアナザーダブルに変身する際、近くに通りがかった一般の少女の体を使った。それが問題だった。
(頑張れば体ごと吹き飛ばして時計を取り出せそうだけど…)
そうなると脳裏にチラつくのは、普段自分が振り回している雪穂や亜里沙の姿。そしてもう一つ、自分が戦う理由のこと。
彼女たちに嫌われてしまうのは、やっぱり嫌だ。
「いいね、楽しくなってきた」
「そう?私は全然!別に私はさぁ、いい戦いしたいとかそういうおアツいのじゃないんだ。ただ一方的に、原型なくなるまでグチャグチャにしたいだけだから!」
「リガイのイッチってやつだね。それなら踊ろう。
さぁ…死神のパーティータイムの始まりだ!」
エターナルのサムズダウン。アナザーダブルの右半身が赤く染まり、拳に炎が宿る。双方の拳がぶつかり合い、エンターテイメントは閉幕を迎えた。
ここから先は、戦争の時間だ。
____________
μ's、Aqours、A-RISE、Saint Snowが一つになり、イベントは完成に向けて進行している。アクセルとエターナルの時間稼ぎも上手く行ったようで、今のところは完全に計画通りだ。
ただ、それも壮間がアナザーダブルを倒せなければ無意味に終わる。
「くそ…うあああああっ!」
壮間はジオウ ビルドアーマーに変身して、覚えている姿を頼りに体を動かす。アナザーダブルとの戦いを想定し、2017年で共に戦った羽沢天介のように……
「…ダメだ」
思ったように動けない。イメージと現実が一向に近づかない。ビルドのような分析能力も知識も無いのだから当然だ。
ドライブも響鬼も同じだ。アラシはライダーの力を完全に使いこなせればナギに負けるわけがないと言っていたが、やっぱり彼らのようにはいかない。でもやらないわけにはいかない。何も進まないまま、そうやって時間だけが過ぎていく。
「何やってやがんだ。人手が足りねぇんだ、お前も手伝え」
「アラシさん…いや、でもこのままじゃ…」
様子を見に来たアラシが倒れた壮間の額を叩く。
乱暴に叩き起こされた壮間だったが、その表情は依然として暗いままだ。
「鍛えたってしょうがねぇって言っただろ。お前が今から変えられるとすれば、心の持ちようくらいだ」
「…それで駄目だったらどうするんですか。俺は正直、その日までに強くなれる気はしません。駄目だったじゃ済まないんです」
「これまで駄目だったで済んだ戦いがあったか?そうじゃねぇなら、今回も同じように乗り越えるだけだろうが」
「それは……」
そう言われればそうかもしれない。でも今の壮間には、どうしてこれまで生き抜いてこれたのかさえも分からなくなってしまっているのだ。
成し遂げたと思ってからの、最悪への急転直下。眠る度に何度だって夢に出る。
「ミカドがいれば…」
不意に零れた弱音に、壮間は自身の弱さを恥じた。
これまで戦ってこれた理由なんて、近くに誰かがいたからに決まっている。壮間はいつだって一人じゃ戦ってこれなかった。
「ミカドってのは、あの未来にいた犬みたいなヤツか」
「…ライダー殺すばっかり言う危ないヤツですけど、なんだかんだ俺が戦えて来たのってアイツのお陰なんです。ミカドは俺より重いものを背負ってて、俺よりもずっと強いですから……」
「じゃあ連れてくりゃいいじゃねぇか。それで勝てるっていうならな」
雪崩れ込む弱音に、アラシはあっさりとそう言った。
皮肉めいた呆れではなく至極真面目な意見として、アラシは話を続けた。
「何でもかんでも一人で出来りゃいいのに。そう思ってんだろ」
「そりゃ…そうに決まってます。一人で全部解決できるくらい強かったら、こんな事にはなってなかった。王になるんだったら…俺はそうならなきゃいけないんです」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。そんな完璧な奴がいてたまるかよ。
完璧がねぇから人は群れてんだ。足りない部分を補う相手がミカドっていうなら、未来の都合も何も関係なく頼ればいい。こいつは結局、お前が中心の戦いなんだからな」
ミカドを呼べば2015年でキメラアナザーと戦える者はいなくなる。攻め込まれればそこで終わりだ。でも、壮間がナギに勝てなければそもそも話にすらならない。
ミカドを呼ぶべきか否か、それに悩んでしまう壮間の弱さ。アラシはそれを肯定した。
「お前は弱い。誰かを頼るのも、頼らねぇのも、見方によっちゃどっちも弱さだ。お前が成りたいのはどっちの弱虫だ?」
「俺は……」
答えは出ない。そんな壮間を見てアラシは少し歯がゆくも感じた。
答えを教えるのは簡単だ。でもそれじゃいけないと勘が言っている。いつもは今のことだけしか考えないアラシだが、今だけは未来を見ざるを得ない。
『出会うことだ。好きな女でも、競い合うライバルでも、何でもいい。
コイツになら全てを託せる。そう思える相手に出会って初めて、人間は進化できる』
アラシの記憶に深く刻まれた言葉が聞こえてくる。
壮間が誰の力を頼るか、頼らないのか、それは出会いを重ねてきた彼が決めなければ意味が無い。
彼が『相棒』とどう向き合うか、それが全てを決定する。
「ハードボイルド…だろ?分かってんだよクソ親父…」
____________
正解が見えないままμ'sの練習場所に戻ると、怪盗の飛行船には乗らなかったアリオスがいた。タイムマジーンを貸して欲しいと頼まれたのだが、その後の足取りは分かっていない。
「アリオスさん…タイムマジーンで今までどこに?」
「内浦だ。士門永斗に頼まれ、この時代の眼魔世界にコレを取りに行っていた。壮間から渡しておいてくれ」
永斗の予測によると、2015年から見て2009年の歴史が消えていたとしても、その逆はそうじゃない可能性が高いとのことだ。実際、アリオスの眼魔の体が動かせている。それはグレートアイがこの時代にも存在することを意味するらしい。
アリオスが渡して来たのはシェークスピア眼魂。それを見て壮間も察した。永斗が言っていたあの発明品だ。
「でも、よく取りに行けましたね。顔パス的なやつですか?」
「他の民とは違い、私はこの時代ではまだ幼子だ。顔は使えない。だから…少々乱暴な手を使った。相当心苦しいが…あれは最小限の被害だったはずだ…そうに違いない…」
ネクロムの力を失っているのに大丈夫だったのかと尋ねると、「切風アラシの仲間が1人、年末年始で沼津の実家に帰っていると聞いたから彼の力を借りた」とのこと。どんな人物だったかというと、アリオスは少し困り顔しながら「…似ていた」とだけ返した。
「それはそうと…浮かない顔をしているな、壮間」
「分かりますか…?」
「話は聞くぞ。力になれるかどうかは……分からないけど」
ここで黙っているのも失礼だと思ったし、悩んでいる暇が無いのは分かっているから、壮間は話してしまった。後で考えればどう考えてもおかしい判断だったと思う。
こんなこと、天秤の上に乗っている彼女に話すことではなかった。
「……そうか。彼を呼ぶべきか否か、それで悩んでいると」
「ッ…!忘れてください…!やっぱ俺どうかして……」
「私は壮間の心を全面的に肯定する。それは今も変わらない。お前がそれで正しいと思うのなら私はそれに従い、欠けた戦力を埋めに2015年に帰るだけだ。そして蔵真と共に命を散らしてでも、使命を果たそう」
心が痛む。壮間が弱いばかりに不要な事で悩み、他者にも苦痛を撒き散らす。
しかし肯定されて壮間の心が傾いたのは事実だ。やはりアラシの言った通り、壮間は弱い。
「…この時代で私に出来る事、それがこれなんだな…蔵真」
息を深く吸い込んだアリオスは、落ち込む壮間の腕を持ち上げ
思い詰めた息苦しそうなその面を殴り飛ばした。
何をされたのか理解が追いつかなかった。親しいと思っていた人に殴られたのは、壮間にとって初めての経験だったから。衝撃と痛みで、理解よりも先に涙が出そうになる。
「泣くな!立て壮間!お前はそれでも私が見込んだ男か!」
「アリオス…さん…?」
「確かに私はお前を肯定する。だが、そんな情けない弱音を許すとは言っていない!来い。お前が1人では勝てないと抜かすのなら、私が鍛えてやる!」
《Stand by》
「変身!」
アリオスが変身したのは、蔵真と同じダークネクロム。
変身したダークネクロム
「どうした!反撃してこい!」
「あぁっ…!くっ、あああああっ!!」
迷いを忘れようと、弱さを忘れようとジオウも我武者羅な戦いを始めた。全力を出したつもりだった。それでもダークネクロムには易々と動きを捌かれる。大きな性能差があるはずなのにまるで敵わない。
「…その程度ではアナザーダブルには勝てないぞ。本気を出せ」
ダークネクロムの一撃を受け、ジオウは変身解除までしてしまう。
冷たい言葉と現実。壮間はもう何も見たくなかった。
「勝てるわけ…ないじゃないですか…!」
仰向けになって地面で体を汚す壮間は、腕で涙目を隠し、震える声で溢れる本音を吐き出す。
「俺は何もしてこなかった!俺は……ただ生きてただけなんです。何も特別なものなんて持ってない!皆さんとは違うんです!」
色んな時代で多くを学んだ。先人の生き方をなぞり、成長は出来たと思う。でも、少しだけ前に進めてしまったからこそ見える、ナギやアラシのような本物との絶望的な差を前に、もう壮間は動くこともできない。
「ずっと分かってた…変われると思ってた…!でも、変われてなかったからどうしようもなくて!俺はもうミカドや他のライダーを頼るしかできない!俺は……普通なんだから……!普通にしかなれないから……!」
壮間は『普通の青年』だ。どこにでもいて、たまたま預言者に導かれてここに来ただけの男。ここまでの道筋だって、壮間だから超えられた場所なんて一つも無い。
もし俺じゃなかったら、危なげなく先に進めただろう。
もし俺じゃなかったら、今頃もっと先に行けているはずだ。
もし俺じゃなかったら、香奈がこんな目には遭ってない。
少なくとも壮間には、そうとしか思えない。
「普通…か」
変身を解いたアリオスが呟く。
比較的聞き馴染みのある言葉だ。そして、この世界で最も理解に苦しんだ言葉だ。
「来い、壮間」
壮間の腕を引き、アリオスが踏み入れたのはμ'sの練習場。
そこでは大画面の前でダンスレッスンをする組や、ファイズフォンⅩでの通話で作詞やメロディの調整をする組に分かれ、急ピッチでイベント準備が進められていた。
「見ろ。今4グループが力を合わせ、片平香奈を救おうと頑張ってくれている」
「……はい。凄いと思います…」
「何も見えていない。壮間、お前は自分を普通と言ったな。そして私やAqours、μ'sはそうじゃないと言った。私にはそれが理解できない。
お前は千歌が自分を『普通』と言って悩んでいたことを知っているか?」
そういえば、2018年で曜からそんな話を聞いたのを思い出した。
『普通星に生まれた普通怪獣』。アリオスにとっても聞いた話でしかないが、夢も何も持たず転機を待っていただけの時期が千歌にもあったらしい。
「それでも千歌はスクールアイドルを始めた。その後、力不足に苛まれることが何度あってもこれまで続けてきた。異常だ。完璧だと思っていた私の世界では考えられない存在。私にとっての普通という定義に、あんな人間は存在しない」
「それは…でも…!」
「高坂穂乃果もスクールアイドルを始めた2年生以前に、これと言って目立った功績は無い。彼女も梨子や千歌の言う普通の域を出ない少女だった。それでも伝説に上り詰めたんだ」
「だから、千歌さんや穂乃果さんが特別だったってだけで…!」
「逃げるな壮間!!はっきりと言ってやる、お前は弱くない。強い!特別な存在だ!お前はただ普通であり続け、強者の責任から逃げようとしているだけだ!」
練習と打ち合わせに取り組む彼女たちに目を向ける。
「またミスにゃ!そこのステップはこのテンポでこう、こう、こうだって!もうこれで5回目だよ!」
『ごめんなさーい!でもやっぱどうしても足がなぁー!』
「それなら振付をワンテンポずらして余裕を作るっていう手もあるけれど…」
『ううん、大丈夫!今の方が絶対いいと思います!私ができるようになれば…!』
ダンスの方では千歌が苦戦していた。でもすぐに立ち上がり、自分を平気で追い詰めて上に行こうとしている。
『穂乃果さん、その音はもう少し高い方がいいと思うず…ます』
「分かったよ花丸ちゃん!あ~♪こんな感じ!?」
『余計にズレてますね』
「あれぇ?ごめん!もう一回最初から合わせてもいい?」
花丸と聖良のダメ出しに上手く対応できなくても穂乃果は折れない。彼女が見据えている完成形までの道のりで、一歩たりとも休みたくない。そんな風に見えた。
それは壮間が思っていたよりも、ずっと泥臭い光景だった。
「俺も千歌さんも穂乃果さんも、同じだって言うんですか。だったらなんでスクールアイドルなんて始めたんですか……?」
「私も同じ疑問を返そう。壮間、お前は自分が普通だというなら、何故仮面ライダーになんてなったんだ。何故これまで逃げ出さずに戦ってきた」
「それは俺が、俺も…特別になりたいって、主人公になりたいって思ったから……」
成りたいと思ったから。本当にそうだろうか?
間違いじゃないけど間違いな気がする。逃げずに戦ってこれたのは隣に誰かがいたから?それも何か違う気がする。違ってないけど、多分壮間はそんなに綺麗じゃない。
分からない。やっぱり答えは見えない。
壮間の思考を足止めしている何かが、どうしても見えない。
「…私が言えるのはここまでだ」
アリオスは苦悩ではなく思考に沈んだ壮間を見届け、その場所を後にした。
_______________
2015年。合同ライブの段取りが順調に決まる中、Aqoursの中で姿が余り見えない人物が1人。
「そういえば鞠莉ちゃんは?」
「ミカドくんを探しに行ったらしいけど…どこまで行っちゃったんだろ?」
千歌の問いに曜が答える。
ミカドを半ば無理矢理北海道に連れてこさせられたのは良かったが、すぐに姿を消してしまった。何故か鞠莉はそんなミカドに随分とご執心のようだ。
「見つけたよ!Killer Boy!」
「わざわざ探しに来るとはな…時間を持て余しているのか、運転手の女」
「小原鞠莉デース!ちゃんと覚えてよね!」
タイムマジーンでどこかに行かれていてはお手上げだったが、ミカドは比較的近辺で彼にとってはほとんど異国である北海道の街を散策していた。
ミカドと鞠莉は、倒れた壮間を預けた時くらいしか関係性が無い。何故わざわざ時間をかけてミカドを追ってきたのか、意味が分からなかった。
「どけ。貴様と話すことは何も無い」
「私にはあるよ。アナタはどうして一緒に戦ってくれないの?」
「チッ…その話か。言ったはずだ、好きにやらせてもらうと。俺は俺の目的のために動くだけだ」
「へぇー、そんなMasked Riderもいるんだね。蔵真や朝陽、アリオスとは違うね。ライダーは人々を守るHero!英雄!そう思ってたんだけど?」
「貴様もか…!俺を仮面ライダーと呼ぶな。俺は奴らとは違う!」
「ミカドは仮面ライダーが嫌いなの?」
「あぁ嫌いだ。俺は仮面ライダーを殺すためにこの時代に来た。
確かに、悪党とは言えない仮面ライダーがいることも知った。だが過ぎた力は人を変え、力の本質を変え、人と時を経て世界を滅ぼす悪になる!力を持つ者は消すべきだ!これが俺の全てだ、これ以上話すことは無い。消えろ」
鞠莉との会話は時間の無駄としか思っていないのか、言うだけ言ってミカドは鞠莉を突き放した。
「あぁー…もうイライラするっ!なんで本音で話さないの!?」
「何だと…!?」
顔を引きつらせたミカドが足を止めた。
鞠莉がミカドにこだわっていた理由はそこにある。会った時間は短いながらも、鞠莉はミカドから既視感のあるソレを鮮烈に感じていたのだ。
ダイヤ、果南、鞠莉で最初のAqoursを結成し、解散してから2年後。内浦に帰ってきてから、すれ違ったまま過ぎたあの時間で何度も合わせた、本心を強情で隠した不器用すぎる互いの顔を。
「ミカドはただ臆病で信じられないだけ。未来の事も信じられないし、自分の事も信じられない。似てると思ってたけどやっぱり違うね。果南もダイヤも私のことを想ってくれてた…強い言葉で本心を武装して、もう誰のために戦ってるか分からなくなったミカドとは大違い」
「黙れ…!貴様に何が分かる!俺たちの時代を見て、この世界の何を信じろと言うんだ!」
激しい敵意を剥き出しにして、ミカドは鞠莉の言葉を拒絶する。
その心を自分よりも適格に言い当てて来て、それが本心だと納得しそうになってしまう。この時代はそんな奴らばかりだ。どいつもこいつも、触れたくない場所にベタベタと指紋を付けてきて鬱陶しい。
「だったら望み通り本音を聞かせてやる。俺は貴様らが大嫌いだ!一つの目的を目指し戦うというのなら、何故笑っている!何故慣れ合っている!血反吐を吐いて戦えない弱卒が偉そうな口を叩くな!俺は貴様の言うヒーローなんかになるつもりは無い。嫌いだから、貴様らを守らない!これで満足か!」
そんな言葉で突き放し、鞠莉の体を押しのけてミカドは立ち去った。自分の口から出てきた幼稚な怒りに苛立ちながら土を蹴り、奥歯が軋む音を聞く。
「この地域は寒いな…!」
風で乱れた衣服を直し、白い息を飲み込む。
ミカドはまた一人になって当てもなく歩き続ける。
_______________
それからライブの構成も決定、レッスンも順調に進んだ。
ライブの音源作成も永斗が「1日あればできる」と言ったものを、アラシの「半日でやれ」の一言で速攻完成。設備も用意完了し、2015年側のライブ会場も蔵真が奔走してくれたおかげで仕上がった。
こうして3日の時間をかけ、イベントは問題なく完成に近づいていた。
一方でライダー側にも動きがあった。
「…その怪我でよく動けますね…赤嶺刑事」
「当然よ。だって甲ですもの」
「俺を名前で呼ぶな、綺羅」
包帯だらけの重傷で大阪まで来た赤嶺に、激しく引きながら驚く海未。それに何故かドヤ顔で返すのはツバサだ。
「ご苦労だったな赤嶺。怪盗のヤツはどうした?」
「すんでの所をヤツに助けられ、情けなくも撤退した形だ。逮捕しようとしたが逃げられた。重ね重ね不覚だ…!!」
「ブレねぇなお前」
アラシも身体の丈夫さは大概だが、赤嶺はそれに加えて正義への執念が異常なのだからアラシも気色の悪さを感じてしまう。まぁ、ここにミツバも来て大騒ぎになるよりはマシだ。
「怪盗は逃げおおせたが、俺はあの男に敗れアクセルの力を奪われた。変身は不可能だ」
「赤嶺で負けんのかよ…まぁ元々倒せないって話だったが」
「俺が敗れたことに変わりはない。それでどうだ、この作戦の鍵となるあの少年の具合は。ダブルの力とやらはもう渡したのか」
「いやまだだ。もう時間はねぇんだけどな…どーにもあと一歩ってとこで躓いてる」
その一歩の答えは幾通りにもある。アラシや赤嶺が思う正解を提示したところで、それで勝てるようになるとも限らない。それは壮間が向き合い、自分で弾き出して初めて意味を持つものなのだと思う。
「酷な設問だと思うか?」
「何も難しいことは無い。俺は正義である俺自身を突き進むだけだ」
「まぁお前はな。お前に関しちゃ分かりやすいわな」
答えを探す壮間は、今度は永斗のもとに足を運んだ。
「出来そうですか、例の発明…?」
「多分。まぁ片手間だからギリになるだろうけど。
で?そんな確認しに来たわけじゃないでしょ?」
「そう…ですね。ちょっと分からないことが多すぎて…」
ミカドを呼ぶべきかどうか。その争点で、アラシとアリオスは真反対の教えを壮間に与えた。アラシは「壮間は弱い」と言い、アリオスは「壮間は強い」と言う。これまでのように先輩ライダーの生き方を沿う解き方じゃ、絶対に答えは出ない。
「永斗さんは、どっちだと思います?」
「別に…どっちでも。ていうかどーでもいい」
第三の答えを押し付けられた。なんとなく予想は出来ていたのだが。
「まぁでも…強いて言うなら。二択の答えにはなってないんだけど。
期待は大いにしてるよ。今弱くても強くても、君はもっとすごい人になれる。進化できる。壮間くんはまだレベル1の魔王だからさ」
「…なんで魔王?」
「いや…ゲームで例えるなら魔王じゃない?王だし、勇者って感じじゃないし」
「そう…ですかね…?」
一方で物語の崩壊を目論む悪も、黙って出し抜かれるわけがない。
アクセルウォッチを手に入れた令央は、エターナルを取り逃した事が不満そうに、鉄棒の上で歩くナギを睨む。
「なにぃ?文句?私だって気持ちよくなれなくてイラついてんだからおあいこでしょー?あーやだやだ怒りっぽいヤツって楽しくなさそ」
「楽しいわけ無いだろう。別に私は君が好きなわけでもなんでも無い」
「えぇーびっくり。え、本当に好きじゃないの?こんな可愛いのに?もしかしてゲイ?ウケる」
「うるさい。私は私の思い描く結末のため、アナザーダブルを利用するだけだ。終われば君からダブルとゴーストの力を奪い取るさ」
「ふーん。結末なんだか知らないけどさ、結局のとこそれって気持ちいいわけ?」
「快楽主義者の猿と一緒にするな。私の行動原理はより崇高な思想だ」
「なにそれ。思想とか?教えとか?あと復讐がー、未来のため―、くっだらない。生は瞬間の爆発、快楽、エクスタシー。それを満喫もしないでさぁ、お兄さん生きる意味あんの?」
ナギの鼻先を斬撃が撫で、鉄棒が真っ二つに割れた。
令央の核心に触れた感触がその激昂する瞳から伝わって来て、死と隣り合うゾクゾクとした感覚にナギの頬が緩む。
「前言撤回する。お前は嫌いだ」
「そんな事言わず仲良くしよーよ。私、お兄さんのこともっと好きになっちゃった☆」
ウォッチを持つ者同士は引かれ合う。それもルールの一つ。
アナザーウォッチを体内に宿す2人は、感じるその波動から少しずつ壮間のもとに近づいていた。
決戦の時が近づき、アリオスも自分の役目が終わったことを悟った。
あちらの時代の戦力を少しでも増やすため、アリオスは2015年に帰る事を決意する。
「これを渡せばいいんだな」
「はい。永斗さんが、そっちの時代のシェークスピア眼魂でも使えるはず…って」
アリオスのプロトメガウルオウダーに眼魂を分析し、そこにオゼの知識を応用することで完成したそのガジェットをアリオスに持たせ、壮間は彼女を2015年の地に下ろした。
壮間が戦うのは2009年。きっと、これ以降はもう会うことは無いだろう。
「アリオスさん…俺…!アリオスさんがいたから…!」
「違う、私は何もしていない。自信を持て。道を切り開いたのはお前なんだ」
伝えたい感謝は山ほどあるのに、彼女はそれを必要ないと言う。彼女とは一度激しくぶつかり、そして肩を並べ、支えてすらももらった。別れが辛い。
彼は繊細だから、悲しみで調子が出ないなんてあってはいけない。
最後までそんな心配をして、アリオスは壮間にこんな言葉を伝えた。
「壮間…お前は必ず王になる。ただの王じゃない、私が目指した完璧な……いや、最悪を覆して理想の未来を創造する王に、最高最善の王になれ!」
それを最後に、アリオスは手を振って壮間に別れを告げた。
タイムマジーンの速さでは小さくなっていく姿も見えない。寂しくないのは絶対に嘘だ。
でもその言葉は、壮間の胸にかかっていた何かを消し飛ばしてくれた。
追い風が吹いているような気分だった。時間を早め、一歩を広げてくれるような、心地の良い追い風が。
「…なんだ」
単独行動を続けていたミカドのファイズフォンⅩに、メールの通知が届いた。
「日寺……!?」
それは壮間の決断の一つを示したメールだった。
______________
スクールアイドルフェスティバル、当日。
2015年ではAqoursとSaint Snowは眼魔世界を経由して内浦に戻って来ていた。
「う゛…あぁ゛…っ…」
蔵馬の誘導でアナザーゴーストが現れる。そこはライブステージが設置された場所、スクールアイドルフェスティバルの特等席だ。
ステージには永斗が作った投影機のようなガジェットがセットされ、言われた通りにシェークスピア眼魂が装填されている。そのガジェットの正体とは…
『スーパー演出マシーン、ってとこかな。アラシの言う通り合成映像でも良かったんだけど、それだとやっぱ不自然が残る。だから、2009年で撮った映像をシェークスピア眼魂の力でドンピシャで質量を持った立体映像…ソリッドビジョンとして2015年に出力するメカを作った。つまり…その場にはいなくても、別時代のアイドルは“同じステージ”で踊れる』
シェークスピア眼魂の幻想空間を利用した演出機、永斗はスクールアイドル達にそう説明した。
その効果はシェークスピアの試練を体験したAqoursなら体感済みだし、リハーサルでもまるで本当に同じ空間にいるかのような感覚だった。その上、ライブ演出のレベルも数段上がったと言っていい。
2009年の陣営は凄さに驚きこそすれ、意外そうでは無かった。「やる気になった永斗なら何してもおかしくない」だそうだ。
また、ライブステージも戦場に野ざらしというワケではない。
『朝陽から教わった簡易結界でステージを覆ったから、流れ弾などは遮断できるはずだ。直接攻撃に耐えられるほどの強度は無いが、そこは俺達の役目だ。何があってもそんな事態にはさせない』
蔵真がそう言うのだからと、誰もその提案に反発はしなかった。
このようにしてライブイベントの準備は整った。後はそのパフォーマンスを発揮するだけ。
2015
ライブ前の円陣を組み、曜は一言だけ千歌に尋ねた。
「怖い?千歌ちゃん」
「全然!リオちゃんも蔵真さんもいる!私たちは最高のライブを、香奈ちゃんに見せればいい!」
「そうね。歴史には残らないこのライブ、しっかり見てもらわなきゃね!」
アナザーゴーストとして利用されていた梨子も、力強く答えた。
いくら操られていたとはいえ、自分の未練で仲間を悲しませたのは事実だ。そしてそれは梨子じゃなくてもそうだった、Aqoursの全員がそう思っている。
もう大丈夫だ。繋いでくれる誰かがいるなら、
Aqoursはもう亡霊になんてならない。
2009
「凄いね。μ'sは…ここまで来ちゃった」
「思ってた場所とは少し違いますが…私たちは私たちが繋いだ未来と並び、共に戦える。こんな奇跡、私たち以外に誰も味わえません」
「やっぱりスクールアイドルって凄いよ!人を救って、きっと世界も救うんだから!よーし…みんな!奇跡のライブ、楽しもう!」
ことり、海未、穂乃果が円陣の中で胸の内を語る。
イレギュラーはあった。しかしそれを受け入れ辿り着いたのがこの場所なら、それも最高だったと胸を張れる。
これまでの奇跡に、ここから先も奇跡を紡ぐ。そして未来を繋ぐ。
笑えるほど無謀なのはいつも通りだ。でも、アラシはスクールアイドル達にこう言った。
『そっちも同じだろ未来の連中。可能性を…未来を拓くのはいつだって
それならμ'sも変わらず信じるだけ。
さぁ、無謀な賭けに勝ちに行こう。
「戻って来たんだなアリオス」
「私の役目は果たした。壮間は必ず乗り越える!
行くぞ蔵真…最後に残った使命を果たす!」
キメラアナザーはAqoursを探しに遠方に向かったはずだ、そこを眼魔ゲートの瞬間移動で裏をかいた。しばらくは戻ってこれないその間に、アナザーゴーストと香奈を分離する。
ライブを見せるその間、アナザーゴーストの動きを止めるのは蔵真とアリオスが請け負った。
「見ぃーつけたぁっ!!なにわの地に発見、カワイ子ちゃーん!」
「手間はかかったが構うまい。ここが終点だ贋作の物語」
μ'sとA-RISEがライブを収録する会場に到達してしまった、令央と変身用の一般人の体を引きずったナギ。時間稼ぎもギリギリでタイムアップを迎えた。
「ロスタイムを知らねぇのか特殊性癖コンビ。お前らの終点はここだ、こっから先には死んでも行かせねぇ」
「まぁ僕は死なないけどね。面倒くさいけど、最後の一頑張りと行こうか」
当然、その守護者としてアラシと永斗が仁王立ちする。その隣に並ぶのは壮間だが、その顔から自分に対する明確な回答が出ていない事は明らかだ。
「壮間」
「わかってます…やるしかないって事は…!」
「焦んじゃねぇぞ。生きる、守る、それだけは譲るな。もし心臓が動いてるうちにその答えが見つかったなら……切り札は必ずお前の所に来る。勝てると思ったその瞬間、そいつを引け」
3つの時代を繋いだ戦い、その最終決戦が始まる。
《Stand by》
「「変身!」」
《サイクロン!》
《ジョーカー!》
「「変身!」」
《ジオウ!》
「変身!」
《Loading》
《サイクロンジョーカー!!》
《ライダータイム!》
《仮面ライダー!ジオウ!!》
ダークネクロムB、ダークネクロムR、ダブル、ジオウ。
アナザーゴースト、アナザー電王、アナザーダブル。
火蓋が切られた激しい戦場の裏で、もう一つの戦いもまた幕を開ける。
「「1!」」
「「2!」」
「「3!」」
「「4!」」
「「5!」」
「「6!」」
「「7!」」
「「8!」」
「「9!」」
2015年、9人の指で形作られた「0」は、それぞれの「1」となって天を指す。
2009年、9人が作ったピースサインが描く星が弾け、開演のベルを鳴らした。
「Aqours!サンシャイン!」
「μ’s!ミュージックスタート!」
イベント開始!勝利条件は香奈の分離とアナザーダブル撃破です。壮間のレベルアップではなくランクアップが鍵になります。
あと鞠莉がちょっとだけ目立ったのは誕生日だからですね。ハッピーバースデー。
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