仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

65 / 112
バーン
ロイミュード006の進化態。人間態は軍の将校のような姿の男。多数のロイミュードを従えて軍を編成しており、ロイミュード随一の兵力を誇る。進化に必要な感情は「勝利」であり、他人を屈服させるために手段は選ばない。熱や炎、爆発を操る能力を持つ。2014年では木組みの街で戦争を起こすことを画策し、018に裏切りを強いた。デザインモチーフは『将軍』『銃火器』。

本来の歴史では・・・018の死をきっかけに仮面ライダーとバーン軍の全面戦争が勃発。一夜人知れず続いた激しい戦いの末、勝利を目前にしたバーンは超進化の領域に手をかける。しかし、最期はベルトが残した最後の遺産「青いドライブ」に覚醒した走大の手によって討伐された。


デュエマ新弾でお休みをいただいていました、146です。
最近暑いし課題多いしで大変です。学生諸君は夏休みまで頑張りましょう。

前回、ついに覚醒した壮間。予告通り全ての戦いの決着が今回で決まります。細かい描写は勢いで読み進めてほしいです。

今回も「ここすき」をよろしくお願いします!


無限大エクストリーム

「普通の青年、日寺壮間。彼は自身の力を認識し、その一歩を踏み出した。そして物語の歯車は動き出し…止まっていた時間が大きく動く。

 

……しかし、破壊が止まることは無い」

 

 

その姿は預言者では無かった。

どこからか戦場を見渡す、仮面の人物。

 

 

「優雅に可憐に踊ると良い。愛しい下位存在たち」

 

 

終局に向かう戦いを遥か上から眺める。その男もまた招かれざる介入者。

 

 

______________

 

 

「この世界に普通の人間なんて、多分いないんだと思う」

 

 

仮面ライダーダブルの力を受け継ぎ、Wアーマーを身に纏ったジオウ。あらゆる感覚が人生で初めて経験するくらいに冴え渡り、アナザーダブルという強敵の前でも余裕さえ感じていた。

 

そんな彼は、自分の真価を確かめるように浮かんだ思いを口に出す。

 

 

「ただ…生涯をかけてもその特別を見つけられる確率が低すぎるだけ。そんな気が遠くなる奇跡を探して生きるのは簡単じゃない。俺は幸運だった。その幸運も含めて特別で、それを超えた者を主人公って呼ぶんだ」

 

「あーぁ、そう!?もういいよそのクソ下らない理論!語るなら肉体言語が一番!御託よりもっと気持ちいいこと教えてよ!そのクソ気取った仮面剥ぎ取ってあげるからさぁっ!」

 

 

突風が吹き抜け、前傾姿勢のアナザーダブルの左腕がジオウに迫る。ジオウはその風をまた風で受け流し、軽い足取りからの強烈な左の蹴りを放った。

 

怪物クラスの強さを持つナギに対し、壮間が持つ力は「想像力」。その一点だけで飛躍し、互角の戦いを繰り広げるにまで至っている。

 

 

「主人公ねぇ、いいよ好み!そういうつけ上がってる子も可愛くて大好きだよっ!でも気に入らないのは、そのいかにもな小綺麗さ。アラシとは匂いが全然違うんだよね。穢れを知らない童貞クンって感じぃ?」

 

「あぁそうだ、俺の過去には何も無い。真面目に生きてきたんだ」

 

「そういう子を汚すのが最っ高に気持ちイイんだ!どうやって汚して欲しい?可愛い愛人と裸で語り合おうよ!」

 

「裸で語り合う…?」

 

 

壮間の想像力は予測だけじゃない。2014年で019の嘘を見破ったように、元々彼は人を見抜く力に長けている。今の壮間の想像は、ナギの心理の深くまでにまで及んでいた。

 

そこで壮間は、彼女の『素顔』の片鱗を感じ取った。

 

 

「お前が言うなよ。まず素顔で話すとこから始めれば?」

 

「……何を見たの?その、想像力で!!?」

 

 

 

_______________

 

 

2015年の戦いもまた、局面を迎えている。

グレートアイの力で蘇ったミカドは、同じく蘇ったゴーストウォッチを継承してゴーストアーマーへと変身した。

 

ゲイツと相対するのはアナザーゴーストとキメラアナザー。

特に後者はすぐさまゲイツに照準を向け、銃口から火力の豪雨を浴びせた。

 

 

「無駄だ。幽霊に銃火器が通用すると思うか」

 

 

キメラアナザーが感知した生体反応は上空。

ゴーストの力で浮遊したゲイツは、キメラアナザーを無視してアナザーゴーストの傍に着地した。

 

力任せに暴れるアナザーゴースト。コイツが動いていると不都合なのはゲイツも分かっていた。だからまずはアナザーゴーストを再び拘束する。

 

 

「幽霊には金縛りという力があると聞いている。じっとしていろ!」

 

 

眼魂ショルダーから数体のパーカーゴーストが現れ、アナザーゴーストにしがみついた。金縛りと言うには嫌に具体的で不格好だが、時間を稼ぐという役割は果たせる。

 

ここから先はゲイツの戦いじゃない。時代や彼岸此岸を越えて継がれてきたバトンを、もう一度ステージ上の彼女たちに受け渡す。

 

 

「今のうちだ!さっさとしろ!」

 

「もちろん!ありがとうミカドくん!」

 

「素直じゃないねKiller Boy!」

 

「黙れ!!」

 

 

千歌が礼を言うが、鞠莉が一言余計だったもんでゲイツの機嫌が悪くなった。でもキメラアナザーから守ってはくれそうなので安心ではある。

 

何があっても絶えずパフォーマンスを続け、ここまで来たスクールアイドルフェスティバル。永斗の計算の理想値を沿えているのなら、次がラストステージになる。

 

ステージに残ったのはμ'sとAqours。

綺麗な空が広がる。果てしない海が広がる。

 

空から舞い落ち、水面に無数に浮かぶ青と白の羽。

 

 

これは穂乃果が去った未来のμ'sが作った一曲。

心の中に残っていた記憶、思い出、夢、それらを音と詩に変えたこの曲を、真姫は過去のμ'sに託したのだ。

 

これは「あの日」のμ'sの曲だから。

でもそのμ'sはそこに留めておくことはなく、この曲を未来への懸け橋とした。

 

 

『この曲、私たちが歌っていいのかな…?』

 

『当たり前だよ千歌ちゃん!こんな素敵な曲、一緒に歌わなきゃもったいないよ!』

 

 

穂乃果がそう言ったのにはもう一つ理由があった。

話しているとわかったのだ。Aqoursにも、感謝を届けたい誰かがいると。その想いはμ'sも同じで、今伝えなければいけない。そんな気がする。

 

この想いが消える前に。無かった事になる前に。

 

 

ずっとそばで応援してくれた『あなた』に

 

命懸けで戦い、支えてくれた『あなた』に

 

この想いを未来に繋いでくれる『あなた』に───!

 

 

─『ありがとうを、君に』

 

─『ありがとうを、君に』

 

─『ありがとうを、君に』

 

 

─『ありがとう!』

 

 

最終曲『A song for You! You? You!!』

 

 

風を受け羽が舞う。揺れた水面と水飛沫が生き生きと輝く。

μ'sとAqoursが相乗りする奇跡。スクールアイドルという歴史の片隅に生まれた夢のライブが光を放つ。

 

 

―『君がいて 僕がいるよ』

─『当たり前の景色が 見たくって』

 

 

歌声を聞いていると、透き通るように見えてくる。知るはずのない物語、彼女たちが経験した奇跡の出会いと、今この瞬間までの想いが。

 

 

─『風の色 空の青さ』

 

 

風の色。それを問われれば、彼女たちは口を揃えて『二色』と答える。

街を守る探偵。口が悪い基本クールな彼と、引きこもりニートの彼。彼らは間違いなくμ'sという物語を揺らした風だった。

 

 

─『精一杯生きてるんだよ』

 

 

誰よりも精一杯生きていたのは誰か。死んでいたからこそ未来を夢見て戦った彼だろう。不思議な人だった。どんな恐怖の中だろうと皆の心を繋ぎ、心を未来に繋いできた彼こそ、紛れもないAqoursの英雄だ。

 

 

─『出会い…それこそ大事なタカラモノなんだよね』

 

 

その出会いは消えてしまうのかもしれない。

でも『あなた』が覚えてくれるから。この物語は永遠を生きる。

 

千歌と穂乃果の手が、アナザーゴーストに───香奈に差し出される。

 

『あなた』の未来は必ず繋ぐ。救いの声に手を伸べる。

物語の淵で出会った『あなた』に、この歌を捧げる!

 

 

─『あきらめない限り 奇跡は何度でも起こるんだ』

─『君には もう伝わってるね』

 

─『あきらめない 本気で夢を描くんだよ』

─『君からもらったね たくさんの応援のコトバ』

 

 

─『こんどは僕らが返すよ』

 

─『新しい勇気』

─『新しい歌を』

 

 

 

纏わりつく闇の中で、香奈は奇跡を目にし、涙した。

このステージはスクールアイドルという歴史の一つの終局なのだ。

 

 

「私は、スクールアイドルが大好きなんだ。Aqoursを初めて見て、そこからμ'sを知って、気付いたらどうしようもないくらい好きになってた」

 

 

自分を縛る影に、その「大好き」を香奈は語り掛ける。

 

 

「だから…!こんなところで立ち止まれない!Aqoursとμ'sと…スクールアイドルの歴史が作ってくれたこの光を!私だけは忘れちゃいけないから!それが…私にできることだから!」

 

 

腕に絡む影が消えた。足もそうだ。纏わりつく闇は光から逃げるように香奈から離れ、遠くで一人の少女の形になった。

 

 

「ごめんね…」

 

「なんで謝るのさ。やめてよその眼」

 

 

ステージ上のアイドルを見る程、その姿は遠のく。

香奈がナギを見る目は哀れみなんかじゃなく、悲しみの目。友との別れを惜しむようなその目に、ナギは乾いた笑いを上げる。

 

 

「知らないだろうから教えてあげる。罪や穢れは伝染して遺伝する病なの。どいつもこいつも…お前らが清く正しく生きるたびに、一体何人の病人が惨めさに苦しむか、考えたこともないんでしょ?」

 

「うん、無い」

 

「だったら早く消えなよ。穢れがうつるのは嫌でしょ、お嬢様」

 

 

香奈は完全な自由の身。足を止めることなく光に進む。

だが、一瞬だけ振り返り、闇に向かって声を張る。

 

 

「でも…!きっとあなたも分かり合えた!私は、あなたのことも忘れない!」

 

 

笑う気も起きない。しかし、どこかでそれを聞いた気がする。

浮かんでは消えるこの記憶。心から気に入らない主人公が吐いた、あの言葉。

 

 

『お前も最後まで───でも俺は───』

 

 

「最期まで会いたくなかったよ、余所者のくせにさ……」

 

 

____________

 

 

 

アナザーゴーストの体が解け、そこから香奈が飛び出して来た。

しっかりとした足取りで土を踏みしめ、自分の体が思い通りに動くことを噛み締める。そして、涙を流しながら、笑ってステージに手を振った。

 

 

スクールアイドルフェスティバル、ここに閉幕。

香奈の救出は無事に達成されたのだ。

 

 

「異常事態をカンチ…排ジョ…!」

 

 

しかしキメラアナザーの標的は依然スクールアイドル。アナザーゴーストも中身の抜けた悪霊として、目に入る者を消し去ろうと暴れ回る。

 

アナザーゴーストを喰いとめたのはゲイツ。

キメラアナザーの対処にも入ろうとしたその時、別の姿がその巨体を弾き飛ばしていた。

 

 

「……ありがとう。ここからは、僕らに任せて」

 

 

光の存在が感謝を声に出し、千歌が持っていた眼魂の欠片がそこに集まっていく。

 

 

「……朝陽くん!!」

 

 

オレ眼魂が元の形を取り戻し、青年の姿が色を得て、実像を結んだ。

想いが起こした最大の奇跡。Aqoursの想いが、彼を再び現世へと呼び戻したのだ。

 

そして彼がこの世に持ち帰った奇跡は、もう一つあった。

 

 

「仮面ライダーゴースト…!新たな脅威、排除!」

 

「いいや君にはできない。だってみんなが想ってくれてる。

その心が僕の命を輝かせる限り…僕はもう、絶対に負けない!」

 

 

朝陽の体から飛び出した白い光が、虹を帯びた眼魂へ変わった。

それは奇跡の力。その名は、ムゲン。

 

 

______________

 

 

 

「お前も感じただろ?アイツの覚醒を。時間は動き出した、もうお前には止められねぇ!」

 

「黙れ贋作風情が!私を決めつけるな!」

 

 

アナザー電王とダブルの戦いは拮抗を保っていたが、ダブルが僅かに押され始めていた。そんな時アラシと永斗が感じ取った、壮間の目覚め。だからダブルは力をウォッチに込め、風に乗せたのだ。

 

 

『君の正体は彼女の記憶から検索済みだよ。だから赤嶺刑事も怪盗も、瞬樹も呼ばなかった。君は僕らの手で倒すべき存在だ』

 

「それは侮辱か!?私の正体を知るならば分かるはずだ、貴様らがいかに質の悪い贋作なのか!その存在に一片の価値もないことを!貴様らは仮面ライダーなどでは無い!!」

 

「知らねぇな!仮面ライダーがどんなもんかなんて辞書にも載ってねぇもんでな!

でも、お前みたいな危険な奴を野放しにはできねぇ。アイツらの未来を守るため、死んでも喰らいついてテメェをここで倒す!それが仮面ライダーとしての、俺の最後の使命だ!」

 

「軽い!貴様如きがその言葉を吐くな!」

 

 

アナザー電王の刃がダブルを切り裂き、吹き飛ばす。

戦いの後はいつも全身の痛みと傷のせいか、風が感じやすい気がした。その度に思う。この世界に生まれてよかった、守れてよかったと。

 

 

この世界を守る後継はようやく空に飛び立った。ならば、飛ぶ姿の手本を見せてやるのが先輩と言うものだ。

 

 

「見せてやるよ赤鬼野郎。後輩に負けてちゃ先輩の名折れだからな!」

 

『君もよく知る力だ。こっちもマナー通り、全力の究極で君を倒す』

 

「来い!エクストリーム!!」

 

 

奇妙な鳴き声は響き、光り輝く鳥が空を舞う。

ダブルドライバーがひとりでに閉じ、サイクロンメモリから緑の光が、ジョーカーメモリから紫の光が空に伸びた。

 

鳥の名はエクストリーム。永斗の体をデータとして格納したエクストリームメモリは天に昇る光を滑走路とし、ダブルドライバーと一体化する。

 

 

「この力も手にしていたのか…!究極の…ダブル!」

 

 

《エクストリーム!》

 

 

展開したエクストリームメモリが風を受け、『X』のタービンが激しく回転。ダブルの体を二つに分かつラインが更に広がっていき、無数のアルファベットと共に虹色に輝く光が、ダブルの体を作り替えた。

 

緑、黒、そして体の中央に広がった新たな透明な層。

触覚でWを象ったマスクも一新し、左右上下斜めの角が『X』を象徴する。

 

『極限の記憶』で永斗の体をアラシの体と一体化させた、『2人で1人』の極致。

人呼んで『究極のダブル』、仮面ライダーダブル サイクロンジョーカーエクストリーム。

 

 

_________________

 

 

 

《ムゲンシンカ!》

《アーイ!》

《バッチリミナー…!バッチリミナー…!》

 

 

白い新たな眼魂をドライバーに装填し、朝陽は印を結んで構えを取る。この力から湧き出るのは文字通り無限の可能性。神にも届く光のゴースト。

 

 

「変身!」

 

《チョーカイガン!ムゲン!》

《KEEP ON GOING!》

《ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!GODゴースト!》

 

 

神々しい白のパーカーが太陽を覆う。白い羽根が舞い落ちる。

その神衣を羽織り、虹色の炎が幽霊を再誕させた。彼岸と此岸を繋ぎ渡し、死を超えて生に到達した白い奇跡は、仮面ライダーゴースト ムゲン魂。

 

 

「千歌ちゃん…ずっと見てたよ。あの頃みたいに真っ暗などこかから」

 

「朝陽くん!私…私たちは、Aqoursは…!見せてあげられたよね!?私たちの英雄に、最高の輝きを!」

 

「うん、その光が僕を呼び戻した。ありがとうは僕の方だ。僕を英雄と呼んでくれるなら、Aqoursは僕の太陽だ。これからも…何があってもずっと!」

 

「観察…分析フカノウ。消去を実行」

 

 

瞬間、光の粒子となったゴーストが香奈の体をステージ上に運び、アナザーゴーストの体を弾き飛ばした。

 

キメラアナザーの背後に実体化したゴーストをキメラアナザーが感知。一切の出し惜しみが無い弾幕がゴーストを爆炎の海に沈めるが、その光は薄れることなく炎の中から抜け出してくる。

 

そこから接近戦に移行し、爪と卓越した近接格闘でゴーストを叩き潰そうとするが、全ての動きが見切られているかのように躱され、受け止められる。

 

 

「無駄だよ。君のツギハギの可能性じゃ僕たちには届かない!」

 

 

液状化したキメラアナザーがゴーストを縛り付けた。動きを止め、溺死すらさせる凶悪な一手だが、ゴーストはエネルギーを全身から解放してそれを退けた。5人の仮面ライダーの力をものともしない、まさに無限大のエネルギーだ。

 

 

一方、アナザーゴーストとゲイツの戦いも風向きが変わっていた。

意思を失ったのかアナザーゴーストの動きに戦略性が無い。この世にしがみつく亡霊そのもののように、目に入るゲイツをこの世から弾き出そうとしているだけ。

 

香奈の救出も終わった。こうなれば敵を止める必要はなく、ゲイツに課された使命は亡霊の駆除だ。

 

 

「今度こそ最後だ!幽霊だろうがこの手で殲滅するのみ!」

 

 

そういえば幽霊嫌いだったゲイツ。気持ち力が入っている気がする。

アナザーゴーストの大振りの攻撃を体をよじって回避すると、軽く地面を蹴って浮き上がったゲイツは空中から斧の一撃を放った。

 

まるで無重力下にいるようなアクションはゲイツの攻撃に大きな幅を持たせる。理性の無い亡霊如きに、その動きを凌駕することはできない。

 

 

 

_________________

 

 

エクストリームへと変身したダブルを見て、アナザー電王は剣を握って即座に潰しにかかった。このダブルに時間を与えることは敗北に直結すると、令央は知っている。

 

ゴーストを一度叩き潰した、破壊の波動を帯びた短剣の一撃。

しかしそれはダブルに到達すること無く止まった。ダブルを守ったのは体中央の『クリスタルサーバー』から出現した盾と剣の専用装備『プリズムビッカー』だ。

 

 

『アナザー電王、令央。君の全てを閲覧した』

 

 

永斗の宣告は検索の完了を意味する。

エクストリームは地球という無限のデータベースと直結した形態であり、変身した状態で即座に検索、分析、理解が可能になっている。今、アナザー電王の全てがダブルの知識に蓄えられた。

 

 

「私の何を理解しただと…?ならば見せてみろ!」

 

 

激昂したアナザー電王の攻撃は過激を極め、全てを破壊し尽くすような速度と威力でなりふり構わず連撃を仕掛けてくる。しかし、それらを全て読めているダブルは盾で必要最低限の攻撃を防ぐと、あるメモリを起動させた。

 

 

《プリズム!》

 

 

プリズムメモリを装填した『プリズムソード』を抜刀。

 

 

《プリズム!マキシマムドライブ!!》

 

 

『結晶の記憶』を解放し、ダブルが防御から攻撃の姿勢に転じた。

荒ぶる破壊の津波。それに真正面から向かうダブルは、光の火花が散る剣戟の末、それを完全に捌ききった。そして、防御機能そのものを断ち切る斬撃がアナザー電王を斬る。即座の反撃も盾で防がれ、今度は二度の斬撃が刻み込まれた。

 

 

「馬鹿な…!!『電王』が『ダブル』に剣術で負けただと…!?」

 

『君が言うダブルと僕らは違うってことだよ。悪いね』

 

「違う…?そうとも違う!貴様ら贋作が勝っているものなど何一つ無い!大人しく壊れろ!私の結末の一部となり、絶望に塗り潰されて死ね!」

 

「さっきから誰と比べてんのか知らねぇけどな、そのお前が知ってるダブルとやらに伝えとけ!俺たちはスクールアイドルμ'sの奇跡に魅入られ、アイツらを守ると決めた『仮面ライダーダブル』だ、お見知りおきを…ってな。

 

お前が何を否定しようと関係ねぇ。俺には信じられる相棒がいる!仲間がいる!俺たちも…仮面ライダーだ!」

 

「黙れ…!黙れ!贋作共が奇跡や夢だなんて笑わせてくれる!茶番はお終いだ、これよりこの物語を、理不尽で、脈絡も希望の無い、未来すら喰い潰すバッドエンドに沈める!」

 

 

アナザー電王の殺気が膨れ上がるのが分かる。空を斬った剣の余波でアスファルトが砂に変わった。奴は全ての力を解放し、何もかも見境なく破壊するつもりだ。

 

 

『…君は災害だよ。全てを破壊するために生まれた、悲しい存在だ』

 

「同情のつもりか!!?侮辱も甚だしい!分かったような口を利くな!」

 

「そんなわけあるか。同情なんてしねぇ、この世界で悪事を働く野郎にくれてやるのはこの言葉だけだ」

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

 

ダブルとアナザー電王の戦いの動向はジオウにも伝わっていた。空を突き抜けた光の柱、そして感じる破壊の衝動。あちらの戦いは一つ上の次元に存在している。

 

 

「ほらほらぁっ!よそ見してる場合!?」

 

 

アナザーダブルの攻撃がジオウをかすめた。能力が半減しているというのに恐るべき強さだ。それどころか、長引くにつれて段々と強さを取り戻しているようにすら感じる。

 

ジオウとアナザーダブル、同じ力を持った拳が同時に炸裂。だが、ジオウを襲ったのは斬られたような痛みだった。白く変わりつつあるアナザーダブルの半身とその痛みは、そのまま恐怖を伴う想像として壮間に降りかかる。

 

 

「ははっ、今のイイ感じじゃなかった!?なんかこうさ、生まれ変わるって感じするよ!」

 

「何回か見たことあるな、そういうの。そんで…お前がそれに目覚めたら駄目だ。そっちの方向には勝てる未来が見えない」

 

「正直じゃん。でもさぁ、君にできたなら私にもできるよねっ!進化ってやつ!」

 

 

戦いが長引けば負ける。その未来も想像できる。

想像力が冴えているというのも便利なことばかりじゃない。だが、眼前にまで迫る絶望にも、壮間は微塵とて臆するわけにはいかない。

 

 

「それでも俺は負けない。敵を倒してハッピーエンドを勝ち取って、その先に進んで!俺は……最高最善の王になる!」

 

「馬鹿らし!何が最高最善!?夢なんて叶わない!皆がいるからなに?一人じゃないのがそんなに偉いの?誰がどれだけ清らかに繋がろうと!人は最期に、浅ましく、たった独りで死んでいく!だったら夢なんて捨てて一緒にトリップしようよ!身を溶かすほどの快楽に!」

 

 

出鱈目に向けられた激しい感情は暴走し、一層戦いを激化させる。アナザーダブルが走り抜け、叩き込まれた膝蹴り。そして遅れてやって来る暴風。余りの速度にジオウも避けられず体勢を崩してしまう。

 

顔を上げるともうアナザーダブルの姿が無い。

しかし、風が彼女の動きを教えてくれる。そうして出現を感知したジオウは、その先に左の蹴りを突き出す。

 

 

「やはっ!効くねぇ!」

 

 

確かに突き刺さった一撃にしがみつき、アナザーダブルはその脚に全身で絡みつく。そこからは想像の範疇を出た常識外れの柔軟で動きを制され、ジオウの首が足に捕まった。

 

想像するのは首がへし折られる未来。ジオウは残った右足と風の補助で跳躍し、建物の壁に自分ごとアナザーダブルを叩きつけ、その未来の回避に成功した。

 

壁を破壊したほどの衝撃で引き剝がしはした。しかし、アナザーダブルは一瞬も留まることなく、軟体動物のように姿勢を変えてはジオウを上方向に思いきり蹴り上げる。その威力は凄まじく、建物の天井を突き破ってジオウを上の階層にまで送り届けるほどだ。

 

 

「やっぱ強いなあの人…!あぁクソ、いるんだよなこういうバケモノってこの先にも!」

 

 

吹っ飛ばされながらも想像はやめない。まだ勝てる未来は見える。

天井を蹴り、一気に急降下。全身に受ける風を吸収し、下の階層で待つアナザーダブルにかかと落しを叩きつけた。

 

壮間は右利き。Wアーマーにおいて高威力の左側を十分に使えないのが痛い。だからジオウは右側で拳を突き出し、激しい突風でアナザーダブルを外に吹き飛ばす。

 

 

「勝負だ火兎ナギ。俺かお前…この先の物語を生きるのはどっちか、今この瞬間に全てを決めよう」

 

「勝てると思ってるの?君が、私に!?」

 

「言っただろ。勝てる。俺は主人公なんだ!」

 

 

《フィニッシュタイム!》

《ダブル!》

 

 

______________

 

 

 

「身に余る幸せだったよ。あの日、何も守れずに死んだ僕が、またこうやって生きることができただなんて」

 

「理解フノウ。対象の生体反応は0。間違いなく死者であると断定」

 

「君には分からないよ。生きてるっていうのは心臓が動いてることでも、息をしてることでもない。誰かが覚えてくれてて、誰かが僕のことで笑ってくれる。それ以外に何もいらないんだ」

 

 

キメラアナザーの腕の銃器がゴーストの一撃で粉砕された。そして追撃の拳が胴体に決まり、液状化でも受け流せない衝撃がキメラアナザーの内部に反響する。

 

 

「僕という存在を継いでくれる誰かがいる。僕の命はそうやって未来を生きる。こんなに喜ばしいことは無い!だから僕も命を燃やす!人間の可能性は…無限大だ!!」

 

 

《イノチ!ダイカイガン!》

 

 

レバーを操作しゴーストドライバーの瞳が切り替わる。出現したガンガンセイバー ナギナタモードが光を放ち、その光は斬撃となって大地を伝い、キメラアナザーの防御を縦一閃に切り裂く。

 

 

「はぁっ!」

 

《ヨロコビストリーム!》

 

 

大きく振りかぶり薙ぎ払う一閃。『喜』の感情を司るその必殺攻撃は、一度放たれれば光で『∞』の軌道を描き、敵の全てを打ち砕く。

 

鎧も装備も全てが砕け、5つのウォッチが体から解放される。キメラアナザーのライダーの力は全て削ぎ落された。

 

 

「そして…千歌ちゃん、Aqoursのみんな!僕に命をくれたみんなに、僕を愛してくれたみんなに!僕も心から溢れる愛を!」

 

《イノチ!ダイカイガン!》

 

 

ナギナタモードにクモランタンが合体し、ハンマーモードに。舞い踊るように回転しながら威力を増すその衝撃を、力を失ったガンマイザーウィンドに叩き込む。

 

 

《ラブボンバー!》

 

 

『愛』を司る、何よりも重く、尊い一撃。

∞の光が浮き上がり、ガンマイザーの本体であるプレートが爆散。例え相手が不滅の存在だろうと、その無限の感情は理をも打ち破った。

 

 

 

《フィニッシュタイム!》

《ゴースト!》

 

 

アナザーゴーストを岩盤に押し付けジカンザックスで不可避かつ痛烈な一撃を刻み、必殺シークエンスを起動。武器を投げ捨てると印を結び、眼魂ショルダーから15のパーカーゴーストを召喚した。

 

 

「力を貸せ、歴史を作った英雄たち!」

 

 

ゲイツの言葉に頷いたパーカーゴーストは、宙に階段を作るように整列。そんな彼らに背を向けて浮かび上がったゲイツは次々とパーカーを羽織っていき、15の重ね着が完了すると背後に完全な眼の紋章が浮かび上がった。

 

 

「あの世に還れ、亡霊!」

 

《オメガタイムバースト!!》

 

 

15英雄の紋章が足先に収束し、英雄の力が束ねられたライダーキックが岩盤と共にアナザーゴーストを木端微塵に破砕する。

 

 

仮面ライダーゴーストは“命”の戦士。

命ある限り命を求め、命に代えても命を繋ぐ。時を越えて繋がれてきた想いそのものが力の根源。

 

 

着地したゲイツが見たのは土煙の中で僅かに浮かぶ幽霊。その影は興が冷めたような、嘲るような短い笑いを残し、消えた。そして地に落ちたアナザーゴーストウォッチが砕けるのだった。

 

 

_______________

 

 

アナザー電王が放つ破滅の波動が辺り一帯を覆い尽くし、万物を潰すような殺意の圧が重く圧し掛かる。そんな正気の沙汰ではない場所でも、ダブルのデータベースは正確に目の前の怪物を分析した。

 

 

『アラシ、アナザー電王は異様にタフだ。防御っていうか単純にHPが馬鹿げてるって感じだね』

 

「エクストリームの力じゃ断ち切れねぇってことだな」

 

『ここはお得意のゴリ押しで行こう。

3回だ。3回の必殺技で僕たちの勝利は確定する』

 

「あまり夢を見るなよ愚かな贋作が。私の力は最高潮だ、存在の一片すら残さない!無に帰れ!貴様らの物語は、ここで打ち切りだ!」

 

 

アナザー電王の短剣からエネルギー状の刃が切り離され、軌道上の全てを砂に還しながら無差別に荒れ狂う。

 

仮面ライダー電王の『俺の必殺技Part2』。その技に禍々しい悪意が織り交ぜられ、殺戮兵器とも呼べるほどの凶悪攻撃と化しているのだ。

 

 

『1回目、まずはアレを受け止めるよ!』

 

「上等だ!」

 

《サイクロン!マキシマムドライブ!!》

《ルナ!マキシマムドライブ!!》

《メタル!マキシマムドライブ!!》

《トリガー!マキシマムドライブ!!》

 

 

この圧倒的破壊力を受け止めるという永斗の決断に、アラシは欠片の疑念も持たない。相棒が言うのならそれが最善手であり、紛うことなく可能なのは自明だからだ。

 

プリズムビッカーにセットしたのは4本のメモリ。プリズムメモリの力によって最大4本までのメモリの力を収束させ、一つの技として解き放つことができる。

 

上空からダブルを叩き割ろうと迫る赤い刃。ダブルはビッカーシールドに出現した光の装甲でそれを迎え撃った。

 

桁外れの威力と重さに受け止めるダブルの足元が砕け始め、伝播した破壊の力でダブル周囲の空間が砂塵となって消えていく。それでも一歩も退かずに砂を踏みしめ、迫る刃を見事に押し返して見せた。

 

 

「馬鹿なッ…!?」

 

「お返しだ!」

「『ビッカーファイナリュージョン!!』」

 

 

この4本の組み合わせは防御+反射のコンボ。受け止めた有り余る威力を4色の光線としてアナザー電王に跳ね返し、一本に収束したビームがその体を抉り取った。

 

 

「がアァっ…!!っ…!まだだ…!」

 

「あぁ…最初からそのつもりだ!」

 

 

ダブルの手元にやって来た小型の恐竜のようなガジェット『ファングメモリ』が変形し、ガイアメモリに。そして白い光の後、ガジェット部分は消えてひび割れた白いメモリに変化した。

 

そうして変化したファングメモリ、赤嶺から預かったアクセルメモリ、そしてさらに二つのメモリをプリズムビッカーに装填する。

 

 

《ファング!マキシマムドライブ!!》

《アクセル!マキシマムドライブ!!》

《ヒート!マキシマムドライブ!!》

《ジョーカー!マキシマムドライブ!!》

 

「『ビッカーチャージブレイク!!』」

 

 

全てを攻撃に振り切った力が刀身に宿り、虹色の輝きを斬撃として、アナザー電王の深くにまで刻み付けた。

 

しかし、それでもアナザー電王は耐えてみせた。尚も消えない殺意の炎を再び灯し刃を握る。

 

 

『ここまで予測通り。正直君の耐久も執念もドン引きだけどね』

 

「でも次でおしまいだ。正真正銘の引導ってやつを渡してやる」

 

「黙れ…!薄汚れた口を開くなあぁぁぁ!!」

 

 

エクストリームメモリを一度閉じ、再び展開。

風がダブルへと集まっていく。まるでこの世界の全ての風がそこに集まっているかのような激しい嵐がドライバーから解放され、黒と緑の稲妻を帯びてダブルの姿と一つになる。

 

その瞬間、アナザー電王は刃を向ける先を見失った。

規格が違う、そう感じた故の一瞬だけの戦意喪失。眼前に迫るこれに立ち向かうことは、世界を変える程の災害に挑むことに等しい。

 

 

「そんな…馬鹿な……!」

 

「『ダブルエクストリーム!!』」

 

 

暴風と一体化したダブルの蹴りがアナザー電王を貫き、凄まじい爆炎と断末魔すらも風が全て吞み込んだ。

 

砂を巻き込んだ風も収まり、着地したダブルが見たものは意識を失う寸前ながらも立っているアナザー電王。呆れるほどの執念だが、もはや戦う力が無いのは明らかだった。

 

 

「ふざ…けるな…!私が負けて…いいはずがない!贋作如きに!存在する価値のない…塵芥の存在共に…!」

 

「知らねぇよ。価値がどうとかは、未来のアイツらが決めてくれる」

 

 

アナザー電王の姿が歪む。怪人としての体が掠れ、乱れ、体の随所が出鱈目に別の姿に切り替わり、次々と体に文字が現れる。

 

『2007』『2011』『2002』『2004』───

 

吹いた風が砂を巻き上げて、揺らぐ姿を覆い隠す。

最後に現した『真の姿』を見せることは無く、令央はこの物語から姿を消した。

 

 

 

そして、最後の一戦はジオウVSアナザーダブル。

ダブルウォッチの力を全て解放し、必殺シークエンスが発動。巻き起こる風でジオウの体が浮かび上がる。

 

しかし、その力は当然相手も有しており、最終局面にして空中戦が幕を開けた。

 

 

「俺は未来で二度、お前の罪を見た!一つはAqoursの覚悟を踏みつけにし、今を生きる命を過去に縛り付けた罪!」

 

「それが!?いいじゃん!懐かしめる過去があるって幸せじゃん!むしろ感謝して欲しいけどな!」

 

 

二つの風がぶつかり合う様はまるで天変地異の大災害。

アナザーダブルがジオウの脚を掴み、その体をしなる腕で思いっきり叩き付ける。

 

回転しながら地面に向かって行くジオウだが、落下の寸前にジカンギレードを再出現させて無防備なアナザーダブルに投げ飛ばし、相打ちの形に持ち込むことに成功した。

 

刃を受けたアナザーダブル、墜落したジオウ、再起のタイミングはほぼ同時。

再び空中で火花が散る。真っ直ぐ向かってくるジオウを叩き潰そうと拳に力を込めるアナザーダブル。しかし、

 

 

「っ…!?」

 

 

ジオウはアナザーダブルの眼前で跳躍した。

空中を蹴って跳ぶなんて不可能だ。ジオウが足場にしたのは、その直前にウォッチから変形させた専用バイク『ライドストライカー』。

 

アナザーダブルの虚を突き、頭上を取った。その隙に蹴り下ろした一撃が、アナザーダブルを地に墜とす。

 

 

「もう一つも同じだ。お前はたくさんのアイドルの人生を歪め、穂乃果さんの未来を歪めた!お前が誰かの人生を台無しにするのに固執する理由なんて興味は無い。でも、これだけは分かる!お前は諦めた!真っ当に生きることを諦めて、そして負けたんだ!誇り高く生きるスクールアイドルの魂に!」

 

「何が…分かるって言うのさ!諦めた?負けた!?正義論の押し付けだよねぇそれは!穢れた命に生きる資格が無いって言ったのはあんたらだろうが!私は負けないよ!光も闇も右も左もっ!馬鹿しかいないこの世界で最期に笑うのは私だ!」

 

「分かったよ、じゃあ勝負を決める!これで…決まりだ!」

 

 

ジオウのWアーマーが分離し、二体のメモリドロイドとなって落下したアナザーダブルに突っ込んでいく。

 

 

《マキシマムタイムブレーク!!》

 

 

風を発生させ、凄まじい推進力で蹴りを叩き入れるサイクロン。その威力で大きく退きながらも、アナザーダブルはサイクロンを押し返した。

 

だが、そこに間髪入れずに追撃を加えるのはジョーカーだ。極限の身体能力から繰り出される蹴りが生み出した段違いの衝撃が、腕から足に突き抜けた。

 

快楽か痛覚か、五感はもはや狂気の領域。アナザーダブルは全身が砕け千切れる感覚を噛み殺し、ジョーカーをも弾き飛ばしてしまった。

 

 

「はっ、あっはははははっ…ははは!」

 

 

傷を撫でるような風で、二度の攻撃を凌いだアナザーダブルが顔を上げる。

そこには弾かれたメモリドロイドを再び装着したジオウの姿が。ダブルの二段攻撃を超えた、限界突破の三段攻撃。

 

 

「ジオウエクストリーム!!」

 

 

仮面ライダーダブルは“双”の戦士。

全てを壊す力、全てを知る知性。愛を知らない者、抗うことを知らない者。それに憧れる者、それを憎む者。歪な不完全を掛け合わせたその風は、いつかは運命をも突き抜ける。

 

 

最後の一撃がアナザーダブルの胴体を打ち抜いた。

風が止んで訪れる凪の瞬間。未だ姿を保つアナザーダブルに、ジオウは言葉をかけた。

 

 

「お前の境遇なんて知らない。葛藤も何も知らない。

でもお前は強かった。お前も最後まで、確かに『主人公』だったよ。でも俺は……ここで貴女を越えて行く」

 

「…はははっ、なにが主人公だよ。クソ喰らえ!

ようこそ地獄の入口へ、あんたは平凡に死ぬ権利さえも失ったんだ!バッドナイト!あんたの未来に…不幸を願ってるよ!死んじまえ主人公!」

 

 

笑い声で悪意を撒き散らし、アナザーダブルは悲鳴を上げることなく爆散。それから笑い声は徐々に薄れていき、何かが砕ける音が()()()聞こえたのだった。

 

 

_______________

 

 

2015年。ゲイツはアナザーゴーストの撃破を確かに確認する。アナザーダブルが中から現れる様子もない。つまりアナザーダブルの撃破は成功したということだ。

 

 

「終わったか。日寺の思い通りに動かされたのは、気に食わないがな…」

 

 

分からないがミカドの心が妙にざわつく。あんな奴を最初は意識すらしていなかったはずが、この戦いで大きく差を付けられてしまったような気がする。

 

焦りと怒りを抱え、ミカドはこの時代を去ろうとする。

そんな彼の前にひょっこり現れたのは浮かぶオレ眼魂。驚く間もなく、ミカドの姿が眼魂の中に吸い込まれてしまった。

 

 

「っ…ここは…!?」

 

 

ミカドは眼を開けて辺りを見回す。現代と比べて更に古い町並みだが、その雰囲気はミカドが居た2068年に似たものを感じた。少なくとも現実ではないのは明らかだ。

 

 

「やぁ、始めまして。僕は朝陽。君の事も見てたよ、ミカド君」

 

「朝陽…貴様が仮面ライダーゴーストか。俺を復活させたのは貴様だな」

 

「うん。ガンマイザーに異常が出てたおかげで神様の力を使えた。君ならやってくれるって、そう思ってたよ」

 

 

眼魂の中の空間に現れた朝陽は、地に足をついてミカドに歩み寄り、彼の肩に触れた。ミカドはすぐに振り払ったが、その一瞬で朝陽は何かが分かったようだった。

 

 

「…そっか。君も色々と大変だったんだね」

 

「特殊能力の類か。何を見たのかは知らんが、仮面ライダーに同情される謂れは無い」

 

「違うよ。いや…違うくは無いかな?僕も君がいたような世界はよく知ってるからね。未来から来たみたいだけど、歴史は知ってる?」

 

「馬鹿にするな。その話しぶりやこの光景から、貴様が生きていた時代は第二次世界大戦かその付近だろう。記録でしか知り得ないが荒んだ時代だ」

 

「へぇ歴史好きなんだ」

 

「黙れ」

 

「歴史は良いよね。僕も好き。といっても僕より僕の友達が偉人好きで、そっちに引っ張られて好きになったんだ。過去を知るという行為そのものが偉大だって…」

 

「そんな与太話をするために俺を助け、ここに呼んだわけじゃないだろう!何のつもりで俺の前に現れた仮面ライダー!過去を知ったのなら、俺の憎しみもわかるはずだ!」

 

 

朝陽の軽い態度にミカドは怒り心頭のようだった。その様子に朝陽は肩をすくめ、それがかえってミカドの怒りを煽る。

 

 

「余裕がないよねミカド君は」

 

「あるわけがない!俺は未来の者たちの痛みを背負ってこの時代に来た!俺が変えなければ未来は愚かな強者に貪られるだけの地獄になる!焦りを覚えて当然だ!」

 

「そうじゃないよ。君は生きてるんだ、だから怒りに呑まれてちゃ損だって思うんだよね」

 

「怒りは何も生まないとでも言いたいのか!?」

 

「怒りも大事な感情さ。でも人生には喜びも、楽しみも、悲しみも、いろんな感情が溢れてる。怒りだけじゃないんだ。ちゃんと目を凝らせば世界は無限に広がってる」

 

 

腕を広げて眼を輝かせる朝陽に、ミカドはその言葉が飲み込めないようだった。ただ生き生きと話す彼が死人だとは、どうしても思えなかった。

 

 

「生きてる限り可能性は無限なんだ!僕が叶わなかった分、君には命を謳歌してほしい。壮間君よりも君にそうして欲しいんだ」

 

「押しつけがましい考えだ。やはり同情じゃないか、下らん」

 

「君にも分かるよ、そのうちね」

 

 

そう言って笑った朝陽が、ミカドの目の前で光の粒になって消えていく。99日のタイムリミットがやってきたようだ。

 

 

「…もう時間か」

 

「消えるのか、貴様。奴らに何か言ってやらなくてもいいのか」

 

「おっ、優しいこと言うんだね。やっぱり根はいい子だ」

「黙って消えろ」

 

「みんなに言いたい事はもう全部言った。それに僕が何を言わなくたって、Aqoursは未来を生きてくれる。それだけで満足だ。

 

それに、僕の最期にいたのが君でよかった。みんなの未来を頼んだよ」

 

 

ミカドが眼魂の世界から弾き出され、消えた。

一人になった朝陽は時と共に消えていき、思い出や感情が光として空に散る。

 

幸せだった記憶の海を遡っては、生まれてよかったと、そう思う。

全てが消えてしまう瞬間、源まで遡った先にあった思い出は、かつて生きる理由と命をくれた大切な友人の姿。

 

 

「僕も英雄になれたかな、君みたいに………」

 

 

友人の魂が宿るオレ眼魂と共に、光は天に溶けて消える。

最期にその答えが聞こえた気がして、幽霊は幸せそうにこの世を去った。

 

____________________

 

 

2009年。アナザーダブルを倒し、こちらも全てが終わった。

壮間は同じく令央を退けたアラシ、永斗と合流する。顔を合わせて、アラシはまず素直に驚いた。

 

 

「変わり過ぎだろ、顔つき」

 

「そうですか…?まぁ、確かに心当たりはありますけど」

 

「そうだね。おめでとう、レベル2の魔王だ」

 

「魔王は魔王なんですね…」

 

 

他のライダー達にも負けないと息まいたはいいが、やはり敬語はやめられないらしい。これは自意識どうこうより礼儀の問題だろうか。

 

 

「壮間、ナギの奴は…どうだった」

 

 

アラシは「どうなった」とは聞かなかった。聞くまでもないか、聞く必要もないからだ。どうせ消える歴史の中でも、彼女は確かに壮間に大きな何かを残した。その事実に対し、例え悪でも壮間は礼儀を持って率直に向き合う。

 

 

「勝ったとは思いません。俺が彼女の何かを変えられたわけでもないし、何より…彼女は最後まで笑ってました。戦いの中で叫んだ通りに」

 

 

壮間がなんとなく感じていた予感がもう一つあった。

それは「ナギは別の力を隠していた」ということ。もしそれを使われれば敗北は必至だっただろう。

 

しかし、ナギはアナザーダブルの力にこだわり続けた。

 

 

「ナギさんは、アラシさんやμ'sみたいになりたかったのかもしれません。でも…最後までそうなれなかったとしても、俺から見れば紛れもない主人公でしたよ」

 

「そう思ってくれるなら十分だ。お前に任せて正解だった」

 

 

アラシは少し安心したようにそう返した。

アナザーライダーとは、則ち「主人公になれなかった者」。理由に差はあれど、物語の中心に成りたかった者たちなのだ。

 

そんな超えるべき大きな壁たちは、これから先に幾つも立ち塞がる。

超えて行くしかない。超えられる。そうやっていつか、最高最善の王になる。

 

 

「じゃあもう喋ることもねぇ。さっさと行け。俺たちの最後の依頼は達成された」

 

「…はい。ありがとうございました!いつか超えますよ、あなた達のことも!」

 

「しっかり頼むよ。王様になったら名誉大臣として僕の似顔絵貼っといてね」

 

 

タイムマジーンの巨体が降り立ち、壮間がそこに入るとアラシと永斗の姿はもう遠くなっていた。

 

背中を向けたまま、アラシは軽く手を振る。

壮間もそれ以上言葉を発することなく、例え見えなくても精一杯に大きく手を振って、現代へのタイムトンネルへと飛び込んでいった。

 

 

______________

 

 

活動報告書

 

 

年末のクソ忙しい時期に飛び込んできた依頼は、切風探偵事務所最後の依頼になった。その依頼は「Wを探すこと」。これがこんなに苦労するとは夢にも思わなかった。

 

だがまぁ、苦労して見つけた次のダブルは気に入っている。危なっかしいところもあるが、信じられる誰かがいるっていうなら何も心配はない。俺たちはただ、黙ってアイツらに任せるだけだ。

 

なんの記録にも残らないのに、俺はなんで活動報告書なんて書いてんだ?仕方無いだろ。仕事終わった後の癖みたいになってるんだ。なんもかんもクソ親父の癖がうつったせいだ。アイツ頭いいくせに英語じゃなくてローマ字で報告書書いてたんだぜ?

 

永斗はというと、μ'sのとこに行ったみたいだ。μ'sには歴史が消える事を伝えてないから、アイツらと何か会話することを最後に望んだらしい。俺との対話はもう済んでるからな。

 

その内容もまぁしょーもない世間話みたいなものだった。最後と言われても喋ることなんて特にない。アイツだけ消えるならまだしも、俺も一緒に消えちまうっていうんだから泣けばいいのか笑えばいいのか分かったもんじゃない。積もる話はこれまでに散々した。最後だからってもったいつける話なんて、俺達には無い。

 

歴史が消えれば親父は俺を拾わなくなり、俺はきっと生きていけずにガキの頃に死んでる事になるだろう。何がどう間違っても永斗と出会うことがないのは少し寂しい気もするが、別の俺のことなんて知ったことか。生きてたら精々出会いに幸あれくらいだ。

 

そうだ、μ'sだ。永斗は最後に会うのを選んだが、俺はこの事務所にいることにした。俺は最後まで探偵としてこの場所を見ていたい。それに、これでも割と悔いているんだ、お前らを巻き込んだこと。最後の償いはこれでいいだろ?

 

 

 

「やっぱりここにいた、アラシ君」

 

 

事務所のドアを叩き、返事をする前に入ってきたのは穂乃果だった。

俺は思わず書きかけの活動報告書を隠す。いや何焦ってんだ、恥ずかしいが別にいいだろ忘れるんだから。

 

 

「どうした穂乃果。Aqoursの連中や永斗と喋ってんじゃなかったのか」

 

「ちゃんとアラシ君ともお話したいなーって。だって忘れちゃうんでしょ?」

 

 

さらっと核心を突いてきやがった。Aqoursには口止めしたつもりだが、救出した香奈ってやつが喋ったか?いや、多分これは…

 

 

「なんでそう思った?」

 

「んーっと、アラシ君や永斗君の姿勢っていうか態度がいつもと全然違ったし、壮間君がAERO-Castleの事件のときに言ってたことを考えると、これが自然と思い付いたっていうか…」

 

「流石。もうお前十分に探偵だよ」

 

「ほんと!?いやー探偵部ですしそれほどでも…って、そうじゃなくて!なんで言ってくれないのそんな大事なこと!アラシ君そういうのばっかりだよ!」

 

「言わねぇ方がスマートだろうが。それとも何だ?最後だからって何か言いたいことややり残したことでもあるって……」

 

「今までありがとう。大好きだよ、アラシ君」

 

 

…またコイツはさらっと。なんつーいい笑顔でそんな台詞吐きやがる。まさか最後にこんな笑いたくなるなんて思いもしなかった。

 

 

「……そりゃこっちの台詞だバカ!だから言いたくなかったんだ、こんな時になってお前らに言えなかった言葉が次々浮かんできやがる」

 

「えー、なになに教えてよ!ほら、まだ忘れそうにもないし!そうだパン持ってきたよ!これでも食べながらじっくり…」

 

「修学旅行の夜じゃねぇんだよ!つーかおかずパンじゃねぇか、甘いヤツ持ってこい!ったく……本当に、お前らに出会えて良かったよ。お前らのために戦えて良かった。ありがとな、穂乃果」

 

「うん、それでそれで?」

 

「渾身の一言だ!次を期待してんじゃねぇ!」

 

 

思ってたのとは違うが、馬鹿みたいに騒がしい最後も悪くない。

そうだな、もし俺の願いを叶えてくれるなら…俺は同じ出会いが欲しい。永斗と、μ'sと出会う、そんな馬鹿げた確率を神に祈りながら最後にしよう。

 

 

この出会いだけでよかった。それだけで俺は、俺の物語を愛せたんだ。

 

 

 




やっとバイク使ったね!(足場)
ラブダブル(とゴースト)の一つの最終回ということで、また最終フォームを出してしまいました。いや…ラブダブル本編の方は終わる気配すら見えないというのに…

朝陽の過去の詳細はまたどこかで明かします。質問が来ればそこで、もしくはアーカイブか…ラブダブルの方は気長に待ってくださいとしか言えずすいません。

次回にエピローグを入れて、ラブライブクロス編完結です!

感想、高評価、お気に入り登録、あとここすきをよろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。