仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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ミツバ
仮面ライダーエターナルに変身した青年。19歳。死した後に不死身の生物兵器として蘇った「NEVER」であり、怪盗団「cod-E」の頭領として世界中から「ガイアパーツ」を盗む怪盗。その生きる意味と評価基準は全て楽しいかどうかであり、それ以外の感情は欠落しているといってもいい悦楽狂にして戦闘狂である。高坂雪穂と絢瀬亜里沙に執着して振り回しているが、その理由は明かされていない。2009年ではアナザーダブルを足止めする役割を請け負った。修正された歴史では母国で平和に暮らしており、お金を稼いでいつか世界旅行をするのが夢。


ミツバに関しては非公開情報が多過ぎて詳しく書けん…146です。この間ぶりです。筆がノリノリでございます。今回は特に説明不要、強いて言うなら「堕天使」は別にヨハネじゃないです。あと僕の推しはタプリスです。

今回も「ここすき」をよろしくお願いします!




駄天使と堕天使

神に仕え、清い心を持ち、下界の人々を幸せへと導く。それが天使。そのように教えられ、育てられた天使たちは天使学校を卒業すると、下界に降りて人々に紛れて暮らすという修行をするしきたりとなっている。

 

天使学校を首席で卒業した「天真=ガヴリール=ホワイト」もその中の一人だった。そして、地上に降りた時には天に誓いを立てたのだ。

 

 

「人間を幸せに導くのが、天使の使命…だから私は絶対、立派な天使になります!」

 

 

 

「───なんて考えてた時期もあったなー。私にも」

 

「それで、駄天使…と」

 

「そ、どうしようもなく駄目な天使で略して駄天使な」

 

 

そして時は過ぎ、ガヴリールが地上に降りてから6年以上。彼女は完全に娯楽と怠惰に汚染され、澄んでいたあの時の姿は見る影も無し。天界でも例を見ない「駄天使」と成り果てていたのだった。

 

 

「なーにが人類だ、ふざけんなっての。こちとらバイトで毎日生きるのも精一杯。他人のことまで構ってられるか。もうぶっちゃけ今は人類滅びろって思ってる」

 

「タプリスさん。再々確認しますが、この人が尊敬する天真先輩?」

「天真先輩です……ある悪魔のせいでこんな事に……昔はこんなじゃなかったんです。本当です…」

 

 

遊園地にてアナザーウィザードと遭遇した壮間だったが、そこに現れたのが天使タプリスとミカド。たまたまその遊園地でガヴリールがバイトをしていたため、その騒ぎでばったりエンカウントし、天界と関係があるらしいアナザーウィザードの情報を聞き出すべく壮間は天使たちから話を引き出していた。

 

ミカドも壮間たちと居るのは抵抗があるみたいだが、アナザーウィザードの情報を得るために黙って同行している。

 

ガヴリールについて行く形で一行はコンビニに入店。足は真っ直ぐ雑誌売り場の横に向かう。

 

 

「6年ほど前になりますが、平和だった天界に魔獣の軍団が攻め込んできました。それは余りに突然で、もうずっと戦争なんてしてなかった天界は大パニックです。最初は魔界の悪魔の仕業だって大騒ぎでした」

 

「そっか、天界もあるから魔界もあるんだ」

「スケールが大きい話だな……天界と魔界の戦争って、人間が割って入れる話じゃない気がするんだけど」

 

「いや、そりゃ無いだろ。天界と魔界がいがみ合ってたのって、もう何百年前の話だよ」

 

 

ガヴリール曰く、天使と悪魔というのは今はそれほど険悪でもないらしい。一応、魔界や悪魔は敵という文化は残っており教育にも含まれているが、実際のところ仲が悪いお隣さんくらいの感覚に落ち着いているとか。

 

プリペイドカードを取ったガヴリールは、誰も並んでいないレジに進む。

 

 

「魔界だって今は働き方改革だ。人間滅ぼしたりとかはもうやってないとさ。あ、限度額でおねさっす」

 

「あんまし聞きたくなかったな、魔界のそんな話…俺もなんか買うか」

 

「ですが魔界の攻撃だと思った大天使様たちは悪魔と大喧嘩です。その後も攻撃は続き、天界はボロボロ。人間界にいた私たちも天界へ強制送還されることになってしまいました」

 

「……ん? じゃあなんでガヴリールさんは人間界に? バイトもしてたし、随分と馴染んでるように見えたんですけど。すいません1000円からお願いします」

 

「そんなの決まってんだろ。逃げたんだよ、天界の命令から。そんな危ないトコに誰が帰るか」

 

 

「当たり前のこと聞くなよ」と言わんばかりのガヴリールだが、いわば祖国の危機の状況にこの態度だ。薄情とかそういうレベルではない。話を聞けば聞くほど、彼女に天使の翼が付いているところをイメージし辛くなっていく気がした。

 

壮間もレジ横のチョコレートを買い、ガヴリールを追って退店。

 

 

「自分の責務を放棄するか……話にならないな」

 

「なんで知らねーやつに説教されなきゃいけないんだよ」

 

 

そこまで沈黙を貫いていたミカドが、その無責任さに思わず口を開いた。が、メンタルが無敵なのかガヴリールには全く効いていない。

 

 

「光ヶ崎さんの言う通りですよ! お姉さんからも頼まれました、天界が天真先輩の力を必要としてるんです! 今日こそ天界に連れて帰りますからね!」

 

「げっ、ゼルエル姉さんが…だが絶対に戻らないからな! 私はこのままずっとネトゲとソシャゲで特に大義もなく下界で死んだように生きていくんだ!」

 

「ここまで吹っ切れてる人、人間でも稀な気がする…」

「でも天界がそこまで頼るって、ガヴリールさんメチャクチャすごくて強い天使なんじゃ!?」

 

「お、そこのJKなかなか鋭いな。私だってこう見えて、かつては天界が誇る秀才天使と呼ばれた天使だ。私がちょっと本気出せば世界だって救えるんだぞ。出さんが」

 

「そうです天真先輩はすごいんです! 人や物を瞬間移動させる天真先輩の『神足通』は天界でも稀に見る高等魔術! その力があれば……」

 

「……敵地に一瞬で兵力を動かし、奇襲できる。最強の能力だ」

「いえ、資材の移動が楽になるので、復興がさらに進みます」

「まさかの土木工事用途」

 

 

長年戦いをしていないせいか、天使の発想が随分と平和的だ。ミカドの言う使い方なら敵を一方的に討ち滅ぼせるだろうに。

 

 

「……ていうか、お前らいつまでついて来てんの」

 

 

ここでようやくガヴリールが今の状況に言及を入れた。普通に同行しているが、タプリスはともかく壮間たちは彼女と何の関係も無い人間だ。かくいう壮間も雰囲気でいけると思っていたので、聞かれると困ってしまう。

 

 

「そういえばこれどこ行ってるの?」

 

「私の家だよ! 行っとくけど私は天界には絶対帰らないし、さっきの変な宝石魔人にも関わらない。わかったらお前らも散った散った」

 

「そんなー! 天真先輩を説得せずに天界には帰れませんよ!」

 

「知らん。そもそもなんでこの街わかったんだよタプリス。姉さんにもバレないようにわざわざ舞天市から引っ越したってのに」

 

「それはこの辺りから天真先輩の匂いを感じたので」

 

「うわっ気持ち悪っ……」

 

「俺だってアナザーウィザードのことまだ何も知れてないですし、帰れませんって」

「だからお前らは誰なんだよ」

 

 

ガヴリールも人間界に長く暮らしているから分かってきたが、これは上手く逃げられないパターンだ。香奈の方が明らかに人懐こくて押しが強いのは分かるのだが、壮間の方も控えめに見えて相当我が強いというか、謎の自信に満ちているように見えた。

 

 

「私は何も知らん。タプリス説明しろ。お前だろあの魔人と戦ってたの、人間にめっちゃ見られながら」

 

「うっ、それはその…あれは最初の魔獣侵攻の時に天界を攻めて来た魔人で、きっと魔獣を操る黒幕ですっ! 正体不明、ですが人間界でなにか企んでいるようです! 天使として見逃せません!」

 

「正体不明ね……だとよ人間共。私は駄天使だから見逃す。てなわけで私とは関係ないなQED。私じゃなくてタプリスについて行けばいいだろ」

 

「まぁそれもそうか…タプリスさん、今からどうするつもりです?」

「私、人間界で行く当てがないので天真先輩にお世話になろうかと!」

「えぇ…昔より厚かましくなってないかお前。これ、どうしても私も巻き込まれる感じか?」

 

 

もう抵抗するだけ無駄な気がしてきたガヴリール。人間界ではできるだけ面倒事に遭わないよう生きてきたつもりだが、今回ばかりは無理な匂いがプンプンする。仕方ないと割り切った方が楽そうだと判断し、肩を落として嫌そうに先の景色を指さした。

 

 

「しゃーない、邪魔しないならついて来ていいぞ。もうそこが私の家だし」

 

「おおっ! やったねソウマ!」

 

「うん…本当にやっとアナザーウィザードの件が進展する……」

 

「いや待てよお前ら、なに普通に入ろうとしてんだ。仮にも乙女で天使の一人部屋だぞ。人間の男共は出禁だ出禁」

「そうですよ! 先輩の純潔を汚すような真似はさせませんからね!」

 

「えぇ……」

 

 

確かに言われてみれば正論なので素直に身を引く、女性経験がない壮間。となると同行できるのは香奈のみなので、別れる前にサムズアップで渾身のアイコンタクトを図る。

 

 

(ツッコミは任せた!)

 

(ばっちこいだぜ!)

 

 

絶対に伝わってないだろうという確信を胸に、取り残された壮間。

そしてミカドも取り残された。

 

 

「……」

 

 

気まずい。目を泳がせた末に見つけたソレを、壮間は思わず声に出してしまった。

 

 

「ボウリング!……とか、行かね…?」

 

 

 

________________

 

 

 

「おじゃましまーす…」

「ここが天真先輩の新しい家ですか…!」

 

「新しいつっても、もう何年も住んでるけどな。ほら適当なとこ座れ」

 

「天使の部屋かぁ……そう思うとなんか緊張し……!?」

 

 

地獄。想起した二文字は、天使とは真反対に位置する単語。

香奈は大口を開けて驚く。タプリスも予想はしていたが、予想以上で顔面蒼白に。そこはもはや部屋ではなく、大き目のゴミ箱と言っていいほど汚い空間だった。

 

大小様々なゴミ袋がそこら中に敷き詰められている。ゴミ袋になっていればまだいい方で、いつのものか分からないペットボトルに空き缶、カップ麺のゴミ、ポテチの空き袋、使用済みプリペイドカード、よく分からない紙に脱ぎ捨てられたジャージに下着にetc……もはや汚部屋という概念すら逸脱した何かだ。そもそも座る場所がない。

 

 

「なんだろ、私の部屋も綺麗だとは思わないけど、なんていうかその……汚っ!!」

 

「もう天真先輩っ! やっぱりこんな生活を…ダメですよ! さっそくお掃除です!!」

 

「タプリス、しっ! シャラップ! 黙れ! いいかお前ら、もう間もなく大型アプデのメンテナンスが終了し、新キャラ実装&ピックアップガチャが開催される! その意味が分かるか?」

 

「あ、あぷで? ぴっく…? なんですそれ…?」

 

「戦って意味だ!」

「戦!?」

 

 

バイト用の服を脱ぎ捨て、そう叫んだガヴリールが持っているのはスマホ。人間の娯楽に疎いタプリスは知らないようだが、香奈はそのアイコンを見てピンと来た。

 

 

「そのソシャゲ、私もやってる! 面白いですよねそれ!」

 

「ほう、マジか。わかるやつだな」

 

「片平さんも…? はっ! つまり片平さんも戦を!!?」

 

「いや流石にそこまでの気合は…」

 

 

やっていると言っても毎日ログインして少し遊ぶ程度の、最も健全な範囲のエンジョイ無課金勢だ。しかしガヴリールはきっと確認するまでもなく、ガチ勢もガチ勢の廃課金厨。

 

 

「ふっ、低ランカーの迷える人の子に教えてやろう。今回実装されるのは今後1年は必須級となる圧倒的人権キャラ! このゲームに天井は無い。つまり出すしかない、この魂の5万円で!!」

 

「5万!?」

「先輩、天界からの給付を切ってますよね!? そんなお金どこから…まさか!」

 

「そう。私はこの6年間、課金をするためにバイトを増やして働き続けた。そして、これから一か月、私の食卓からおかずを消すことで錬成に成功した5万円だ!」

 

「なんて覚悟…これが天使の課金!?」

 

 

課金厨は己の身を切ることすら厭わない。その価値観に若干の関心をしてしまう香奈はさておき、タプリスは素直にドン引きだった。

 

 

「そんな食生活してていいわけないです! やっぱり天界に帰りましょう! いくらなんでもここよりは良い食事で栄養も取れます!」

 

「知ってるかタプリス。インスタントラーメンを食べた後のカップは、洗わないことで数回うっすらと味の付いた水を楽しめるんだ」

 

「先輩ぃ……」

 

「私は天界で炒った豆を食べて過ごすよりも、栄養バランスなんてクソ喰らえのジャンクフードと夜通しのゲームで天に召される覚悟を取った。これが無職の心得だ!」

 

「なんかかっこいい!」

 

 

以前よりも悲惨になった憧れの先輩の姿に、健気な後輩タプリスは涙が止まらない。香奈は初めて見る無職という人種に語彙力を失ってツッコミどころではない。

 

今か今かとメンテナンスが明けるのを待つガヴリールだが、その周囲は地獄絵図のゴミ置き場。そんな汚い部屋とくれば当然、居住者は他にもいるわけで。

 

 

「ん、いま何か音が…」

 

 

その姿を見て反射的に絶叫する香奈とタプリス。天使、人間問わずに遺伝子に刻まれた恐怖と嫌悪の象徴。ポテチの空き袋の中からこんにちはしたのは、例の黒いアイツ。

 

 

「ちょ、わ、ゴキぃぃぃっ!!?」

「月乃瀬先輩から聞きました。あれが下界が生んだ過ち(ブラック・ウェポン)…!? 気持ち悪いです! 片平さんなんとかしてください!!」

「天使なんでしょ! 私は無理ですゴキブリと雷はマジで無理なんです! うわっ速いしゴミで逃げ場がない! 飛ばれたら死ぬ!」

「飛ぶんですかアレ!?」

 

「ったくうるさいな。 ゴキブリくらいで……ほれ、天に召されろ!」

 

 

叫び散らす2人にイラついたガヴリールは、不意に立ち上がると慣れた動きでゴキブリに鉄槌。鈍い音が響き、ゴミの間を駆け回るゴキブリを正確に一撃で叩き潰した。

 

 

「さすがは天真先輩……助かりましたぁ……っていま何で叩きました?」

 

「ゴッって言いましたけど。それ、ラッパ……?」

 

「先輩っ!? それ世界の終末を告げるラッパですよ!!」

「終末!?」

 

「あ、ホントだ。手近にあったからつい」

 

「吹けば天界の大軍勢が人類を滅ぼしに来るという、神話級の神器を……!」

「いいじゃん別に。命を天に還してるし、用途としては正しい」

「よくないですよ! 人間界の修行を終えたら返却義務があるはずです! 天真先輩が持ちっぱなしだから継承も途絶えて……」

 

 

天使間で繰り広げられるトークのスケールが急に飛躍。そんな大層なものをこの廃人に持たせている現状とか、軽々しく扱われる人類の存亡とか、言及すべきポイントは多々あるが香奈の脳から出た言葉はこれだけだった。

 

 

「すごい!!」

 

 

________________

 

 

 

「すごい!……じゃねぇんだわ!!!」

 

 

壮間の魂の咆哮と共に放たれた重球が、10本のピンを一撃で全て薙ぎ倒した。壮間の本日初ストライクだ。

 

 

「……何故叫んだ」

「いや、なんかつい…ごめん」

 

 

そう謝る壮間の次にレーンに立つのはミカド。

ヤケクソ気味にボウリングに誘った壮間だったが、まさか了承されるとは思わなかった。普段のミカドならば「ふざけるな誰が貴様と。死ね」と言われて終わりだっただろうに。

 

 

「なんで来たんだよお前、らしくない。やっぱ変だぞ」

 

「別に理由は無い…やる事が無かっただけだ」

 

 

ミカドはそう言いながらも毎投ストライクなのでスコア差は開くばかりだ。少しだけ腹が立つ。

 

 

「俺がお前誘ったのは、話聞きたかったからだ。そんな顔するくらいなら何があったとか聞かせてくれよ。お前だって香奈に殴られたくはないだろ」

 

「断る。貴様だけには……話せない。これは俺の問題だ」

 

「あのなぁ、俺はお前のことまぁ…友達とか仲間とか思ってるわけでさ。力になれるかもしれないって思ってんだよ。一人で抱え込んでも限界ってあるだろ」

 

「貴様の力は借りたくないと言っているんだ。分からんさ…人の力ばかりを借りている貴様には!」

 

 

壮間のボールが逸れ、ガターに。ミカドの言っていることは正しいし、それを言われたら壮間にはお手上げだ。

 

一方でミカドも分かっている、壮間がただの他人依存の人間ではない事を。自分では零すような命も、切り捨ててしまうような命も、なんだかんだで救い出す。壮間はそんな男だ。だからこそ頼れない。頼ってしまった時が、ミカドの最期なのだ。

 

 

「俺のやる事は変わらない…未来を変えるため、戦うしかない。戦う以外の道なんて俺には残されていない。そうだ、最初から覚悟を決めれば済む話だったんだ…!」

 

「ミカド……」

 

「俺はあの自堕落な天使のようにはならない。己の使命からは逃げない、死んでもだ」

 

 

「まだ自分が世界の中心だと思ってるの。めでたいね」

 

 

指が鳴った音が聞こえると、投げられた玉が、倒れるピンが、ボウリング場の全てがミカドと壮間を置いて完全に停止した。ボール置き場に寄りかかって、タイムジャッカーのヴォードは壮間が買ったチョコを袋から出す。

 

 

「お前、浦の星の時のタイムジャッカー!」

 

「ヴォードね。他の2人が濃いし、別に覚えなくていいけど。それはそうと、ちょっと見ないうちにゲイツの方が愉快な事になってるや」

 

 

壮間のチョコを齧るヴォードの視線はミカドに向けられており、そこから見える感情は「憐憫」のみ。ミカドの屈辱を煽るように、ヴォードはミカドを見下す。

 

 

「ようこそこっち側に。初めて? 他人の人生の脇に追いやられるのは」

 

「……何だと…?」

 

「君がやることは全て裏目に出る。藻掻いて動いたところで、同じことを繰り返す。反省できない顧みれない。諦めな、それがこの物語で君に与えられた役割(ロール)だ」

 

「おい待てよ。何勝手なこと言ってんだ、ミカドはそんな奴じゃない! 俺もあんまコイツのことは知らないけど、お前よりは絶対知ってる。ミカドはもっとすごい奴だ」

 

「ふぅん……哀れだねぇ君。今なら仲良くなれそうだ」

 

「……黙れ!!」

 

 

それは何処に向けられた感情か分からないが、抑えられない苛立ちのままミカドはヴォードに殴りかかる。が、拳が当たる前に時間停止に阻まれてしまった。

 

馬鹿でも予想できる展開に肩をすくめるヴォードだが、彼も別にミカドを煽るために現れたわけではない。

 

 

「ジオウ、ゲイツ、ドライバーを渡せよ。アナザーウィザードはアヴニルのとっておきだ。ムカつくジオウの方はまだ分かんないけど、ゲイツは死ぬよ絶対に。その前にドライバー回収しとこうと思って」

 

「ご親切にどうもだけど、応じるわけない。どうせ無理矢理奪えないんだろ!?」

 

「君に聞いてんじゃないんだけどなぁ。ま、僕は少ない友達と自分の役割(ロール)を自覚できるやつには親切だよ。まだ戦う気でも、そのうち身の程は浮き上がる」

 

 

ヴォードが窓の外を指さし、チョコの包装紙を投げ捨てたのと同時に爆炎が上がった。その爆心地は、ちょうど香奈とタプリスが向かったはずのガヴリールの部屋があるマンション。

 

 

「で、どうする?」

 

「どうするもこうするも無いだろ! 行くぞミカド!」

「……指図するな」

 

 

ヴォードを素通りし、壮間とミカドは変身して爆炎に向かう。一瞬止まってしまった足と、ヴォードの表情と言葉が、ミカドの傷跡に爪を立てた。

 

__________________

 

 

ガヴリール宅爆発から少し時間を遡る。

 

 

「…来た! メンテ明けたぞ集合!」

 

「えぇっ…いまお掃除を始めたところで…」

「そんなもんいいから来い! 人間の祈りとタプリスの天使力があれば絶対当たる!」

 

 

香奈とタプリスに掃除を任せておいてこの言いぐさである。しかしなんだかんだ頼られると嬉しいタプリスと、単にゲームに興味がある香奈は、すぐに集合する。

 

 

「排出率は2%だ」

「あ、結構出るんだ」

 

「たった2%ですよ!? ふたりともお気を確かに! 天真先輩、やっぱりやめませんか…? その5万円があれば美味しいものや新しいお洋服だって……」

 

「そんな在り来たりな幸せは捨てた。私はこの2%に、お前らの魂を賭ける!」

 

「「勝手に賭けられた!?」」

 

 

ガヴリール、5万円を入金。ガチャの闇に没入。

そして次々と回される10連ガチャ。入らないロード、止まらない画面、毎日何時間も働いて稼いだお金はあっという間に溶けて消える。みるみるうちにガヴリールの顔色が悪くなっていく。見ていられないとタプリスが目を塞ぐ。香奈も共感性の胃痛で苦しむ。誰も幸せにならない闇のゲームだ。

 

そして、わずか数分でラスト10連に。

 

 

「…タプリス、回してみろ」

 

「ひぇ!? いやでも、それって最後の1回ですよね!?」

 

「だからこそだ。この最後の希望を…私は信頼できる後輩のお前に託す」

 

「タプリスさんならやれますよ! 勝ちましょう、私たちで必ず…この闇に!」

 

「天真先輩…片平さん…」

 

 

希望を託されたタプリスは、息をのんで人差し指を伸ばす。

これが人間界の試練。ガヴリールも通った門。超えてみせる、必ず。そう覚悟を決めたタプリスは意を決して、10連ガチャのボタンにタップした───

 

 

結果、当たらず。圧倒的爆死。

 

 

「やっぱダメかー」

 

「やっぱりってなんです!?」

 

「タプリスっ……! お前……絶対に許さないからな……人の…人の金でドブりやがって……!」

 

「す…すいません…でも先輩が回せって…!」

 

「問答無用! もう終わりだ……こうなったら………」

 

 

世界の終わりのような顔になったガヴリールは、床に転がっていたソレを拾うとフラフラと立ち上がる。彼女が構えたのは、さっきゴキブリを潰した「世界の終わりを告げるラッパ」。

 

 

「こんな世界滅ぼすしかない…!」

 

「うわあああ!? 落ち着いてください先輩!!」

「うん流石にストップ!! どうしますタプリスさん、殴りますか! 一発気絶させます!? 人類の危機ですよ!!?」

「今の私を止められるのは緊急メンテだけだ…これが天罰、悔い改めよ人類!」

「「あああああああっ!!!」」

 

 

ヤケクソ投げやりになったガヴリールを必死で止める2人。

が、そこに舞い落ちる黒い羽根。

 

 

「その絶望を、我が救済に捧げよ……」

 

 

アナザーウィザードが汚部屋の真ん中に降臨。

まだ壮間も察せていない事実だが、アナザーウィザードは人間の「絶望」を嗅ぎつけて現れる。つまりガヴリールが爆死した絶望を感知したのだ。

 

 

「……」

「ども…」

 

 

重なるカオスに凍り付いた空気。アナザーウィザードと目が合う。

アナザーウィザードも先程出くわしたタプリスや恐らく天使であろうガヴリールを見て暫く沈黙していたが、そのまま指輪を腰にかざして無慈悲に魔法を発動。

 

 

《エクスプロージョン》

 

 

爆発(エクスプロージョン)

その上位魔法は、戸惑う3人と爆死した端末と散らかった部屋を吹き飛ばした。

 

そして今に至る。

 

 

「っ、ガヴリールさん! 無事ですか!」

 

「お前…なんだその恰好。無事に見えるか?」

 

「見えませんねすいません」

 

 

ガヴリールの部屋もさぞ地獄だっただろうが、壮間とミカドが変身して駆けつけた時には部屋は消し飛んでおり、空に浮かぶアナザーウィザードと黒焦げのガヴリールが対峙していた。

 

何が起こったのかは分からないが、香奈とタプリスがその横で倒れているのを見て熾烈な戦いを想起してしまう。

 

 

「香奈! タプリスさん!」

 

「こいつらアイツの魔法で寝てるだけだ。瞬殺だった」

 

「香奈…タプリスさん…」

 

「また来たか王候補…その時ではないと言ったはずだ」

 

「知らんわ。私の部屋ぶっ飛ばしといて何言ってんだ。まず謝罪と弁償が筋ってもんだろ、出すもん出せよおら」

 

 

ガヴリールは金のハンドジェスチャーで完全にヤクザの顔をしている。絶対に天使の言い草でも仕草でもない。

 

しかし、壮間が気になっているのはやはりミカドだ。いつもならすぐにでも攻撃を仕掛けるはずなのに、今はアナザーウィザードの出方を伺っているような、攻撃を躊躇しているような。

 

 

「…そうだな、筋は通すべきか。元より貴様と我には、切れぬ縁が在る」

 

「はぁ?」

 

 

アナザーウィザードが空中で変身を解く。袴を着たような金髪の美青年は、黒い翼と汚れた天使の輪を誇りのように見せつけた。彼は懐かしむような視線をガヴリールに向け、その隠されし因縁を吐露する。

 

 

「余りに穢れていて直ぐには感知できなかった。堕ちたな、天真の妹……」

 

「お前は……!」

 

 

明かされた正体は人を絶望へ誘う堕天使。怠惰に堕ちた駄天使はその姿に、封じられていた記憶が放たれ、物語が動き出す───

 

 

「誰だ。知らん」

 

「知らないのかよ!!!」

 

 

なんてことはなく、特に何も起きなかったようだ。ジオウのツッコミが虚空に反響した。

 

 

 




この編の雰囲気が掴めた頃かと思います。思ったよりも真面目です。
ガヴリールは原作よりも更に荒れた感じに、タプリスは原作よりも「少しだけ」しっかりしてる風をイメージしています。次回もすぐ更新できそうですのでお待ちください!

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