仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
アナザーファイズに変身したオルフェノク。19歳。兄が殺人事件を起こし失踪、父が暴行で逮捕、母が自殺するという壮絶な過去を経てドナートの孤児院に引き取られるも、喰種に焼き殺されたことでオリジナルに覚醒した。化け物であり居場所のない自分が嫌で、人間であることに固執するようになったがその性根は非常に暴力的に。アヴニルの誘いを受けて喰種化施術により半喰種となり、アナザーファイズとなって荒木湊を殺害。それから15年に渡って「謝肉祭」を行い、喰種を絶滅させ誰かに認められることを望んだ。
本来の歴史では・・・ファイズがミナトだと知り、心の何処かで縋っていた希望を失ったミツル。ミナトが死に、心が壊れた後も執念で生き延び、何の因果か流れ着いたファイズギアで変身しラッキークローバーの「グラスホッパー」を討伐。ラッキークローバーの「ディノポネラ」として名を連ねることになる。
Twitterのスペースで声がデカくて家族に叱られた146です。
前回「誰!?」で終わった物語、彼の正体は一体…あと今回ガヴの戦闘スキルがちょっとだけ成長しています。能力的な面で。
あとアンケートを新しくしました。投票よろしくお願いします!
「誰だ。知らん」
「……そんなことは無い。思い出せ、天真の妹」
「そんなこと言われましても」
堕天使としての正体を明かしたアナザーウィザード。彼はガヴリールとの因縁があると言い張るが、どうやらガヴリールにその記憶はないようで不毛な問答が続いていた。
「……皇=ルシフェル=セイントだ」
「あ、『ルシ兄さん』か。いたいたそんなやつ。確か神足通が得意だった」
「やっぱ知り合い…ですか? 一体どんな因縁が…」
「普通に姉さんの知り合いで、本当に昔ちょっと会ってたくらい。全然やっちゃっていいぞ」
「そうですか。何だったんだこの時間と引き…」
どうやら引っ張った時間に意味は無かったようで、ルシフェルは自己紹介を済ますと再び変身し、容赦なく魔法攻撃を仕向けてくる。
「天真の妹といえど、堕ちた天使に慈悲など与えない」
「あの人も天使なんですよね!? そっちの方も大概なんか堕ちてる感じに見えるけど!」
「我が堕天は必要な犠牲だ。全ては、我らの天界を救うために!」
《フレイム》
生成された複数の火の玉が降り注ぐ。運動能力がゴミ過ぎて避けられないガヴリールをジオウが庇うが、ゲイツの動きが鈍い。先程よりも更に。
「我が行動に矛盾を感じることだろう。だが絶望の世界を救うためだ、理解は求めない。サバトを決行する! 叛逆したくば剣を持て、天真=ガヴリール=ホワイト!」
「いや別にやらねーよ…ルシ兄さんのことなんてどうでもいいし、天界がどうなったって恨みとか何も……」
別にアナザーウィザードに恨みなんて、部屋を壊されたくらいしかない。天界が攻められようが知ったことでは無いし、魔界が疑われて両者の仲が険悪になったところでどうでもいい。
そのせいで世話焼き女房の悪魔にも、どうしようもない馬鹿悪魔にも会えなくなって、人間界でよく笑うようになった性悪天使がまた昔みたいに戻ったくらいで、特に何も恨みなんて───
「……いいや、気が変わった。やっぱ一発悔い改めろや、ルシ兄さん」
「いいだろう、来い…!」
ガヴリールの表情が変わった。たった一人で何万人を救済できると言われた天使、その存在感が光として溢れる。そしてジャージ姿は天使としての衣装に塗り替わり、翼と光輪が輝きを放った。随分と薄汚れてはいるが。
かつて神童と呼ばれた天使の本気が解放される。ガヴリールが放った光の矢が、天空に座するアナザーウィザードを貫く……
《ハリケーン》
なんてことはできず、風の魔法で矢とガヴリールはあっさりと吹き飛ばされてしまった。
「やっぱり弱いじゃないですか!!」
「当たり前だろ…だいたい私はリアルではタンクじゃなくてヒーラーなの。あー、今の一発で肩外れた。もう無理」
「じゃあなんで本気出すかーみたいな空気出したんですか!」
「なにもやらないとは言ってないじゃんか。例えば…」
ガヴリールが祈るように手を合わせると、振り返っていたジオウの視界からガヴリールが消え、足元から地面も消えた。その背後にはアナザーウィザード。空中のアナザーウィザードの後ろに瞬間移動したジオウは、咄嗟に斬りかかるが、一発当てた後はそのまま落下してしまった。
「こんな風に神足通でサポートしたりとか」
「先に言ってください! でも助かります、アイツは絶対に逃がさない!」
「ほらお前もはよ行けよ、なに悩んでんのか知らないけど」
「……分かっている」
《ゴースト!》
《ダブル!》
《アーマータイム!》
《カイガン!》
《ゴー・ス・トー!》
《サイクロンジョーカー!!》
《ダ・ブ・ルー!》
浮遊するアナザーウィザードに対し、ジオウとゲイツも空中戦用のアーマーを纏う。ゲイツはパーカーゴーストで攻撃を仕掛けるが、「アナザーウィザーソードガン」の出現と同時に布切れとして斬って捨てられてしまった。やはり強い。
「人間達よ貴様らに問う。何故戦い、王を志す。我が理想より尊き望みがあるなら示すがいい。無ければ世界のために犠牲となれ、人間よ!」
「その世界ってのは天使の世界だろ! 俺は人間なんだから人間の世界守るし、人間界傷付けるようなら取り合えず止める!」
「そうか…そちらの赤い戦士の言葉が、聞こえないようだが」
「ッ……!」
壮間の目から見ても明らかなほど、ゲイツの動きにキレが無さ過ぎる。そのせいでアナザーウィザードの重力の魔法をモロに喰らってしまい、ゴーストの浮遊が無力と化して地面に叩きつけられた。
「迷える羊が戦場に来るべきではない」
「…黙れ。世界を救う、世界のため、大義名分を振りかざして他者を傷付ける。なんだそれは…悪の怪人が、殺されるべき害虫が、俺のような事をするな!」
思えばアナザードライブだってそうだった。あの時は容易く蹴落とせた他人の愚かな正義を、ミカドはもう見ないふりすることはできない。知ってしまったのだ、自分の正義こそが最も尊いものというわけでは無いことを。自分がたったそれだけで止まってしまうほど弱く、愚かであることを。
この世界は何も間違っていなかった。間違っていたのはミカドだ。
「俺以外が理想を語るな…俺の前に現れるな! 貴様らがただ倒されるべき何かであればよかった…俺こそが世界の中心で、ただそれだけを貫けていたのなら…未来は救われたんだ!!」
「聞くに堪えない戯言だ。人間も随分と堕ちた…!」
アナザーウィザードの魔法攻撃に合わせ、ガヴリールの神足通がゲイツを再び空中に移動させた。何かを振り払うようにゲイツは殴りかかり、腕を掴んだそばからパーカーゴーストで攻め立てる。
鬼気迫りつつも合理性を貫いていたミカドらしからぬ戦い方だ。しかしそんな戦い方は通用せず、魔法じゃない単なる魔力の放出で退かされてしまう。
《ハリケーン》
「2対1だって言ってんだろ、両方ともさぁ!」
風の魔法をダブルアーマーのサイクロンサイドが相殺。左足のかかと落しが決まる前にアナザーウィザードが地上へと転移した。人間の前に現れる際にも使っていた、ガヴリールと同じルシフェルの『神足通』だ。
だが、それと全く同じタイミングでガヴリールも神足通を発動。逃げた先でかかと落しが決まり、更に斬り裂くように鋭い回し蹴りがヒットした。
「ミカド! なんだかわかんないけど、集中しないとタイムジャッカーが言ってたみたいに死ぬぞ! コイツ本当に強いし!」
「他人の心配か…? 偉そうになったな貴様も…!」
「はぁ!?」
「俺の事は構うな……俺は、貴様とは違う!」
アナザーウィザードが『ディフェンド』で足元から土の防壁を出現させるも、ミカドはジカンザックスで一直線に掘り進んでいく。何も考えず、執念だけを燃やして。
「貴様に倣ってやるアナザーウィザード! そうさ、殺さなければ未来は無い。決まっていたことだ! 誰の正義も知った事か。俺は理想の未来のために全てを捨てる! 例え悪になったとしても…俺は!」
大義のために個人の感情など必要無い。ただ仮面ライダーを殺すだけの部品になることが出来たのなら、迷う事も苦しむ事もなく、最短で、家族や友は救われる。
そんなゲイツの猛進に、アナザーウィザードは敢えてガードを解いた。抑えを失った力はそのままアナザーウィザードに迫る。
「貴様の行いで無数の幸福が消え去る。その意味が分かるか、人間」
振り下ろす腕が、真っ白になった自分の頭が。タスクを撃った時の、ミナトを斬った時の、ミツルを殺めた時の後悔を呼び戻す。体が温度を忘れて殺しきれない感情が溢れて、その手から武器は零れ落ちた。
駄目だ、殺せない。また後悔したくない。苦しみたくない。ミカドは悪にも成り切れないし、悪である自分を受け入れることができない。そんな自分が、死んでしまうほど嫌いだ。
「───ガヴリールさん!」
ジオウが咄嗟に叫んだ。想像できたのだ、その先に何が起こるのか。
アナザーウィザードが止まったゲイツに触れようとする。そこにあるのは、非凡な人間が抱えた良質な『絶望』。
ゲイツが自分の危機に気付いた時には、移動してきたジオウがアナザーウィザードの手を阻んでいた。
救われてしまったという事実が、その心を更に底へと落とす。
《リキッド》
アナザーウィザードの体が液状化し、あらゆる物質の介入を拒絶する。そこでジオウが起動したのは、この状況に対応できる唯一のウォッチ。
「アリオスさん、勝手に使います!」
《ネクロム!》
《ライダータイム!》
《仮面ライダー!ジオウ!!》
《アーマータイム!》
《テンガン!》
《ネク・ロ・ムー!》
円形の複眼に収まるピンク色の「ネクロム」。キメラアナザーから奪還したネクロムウォッチで変身した「仮面ライダージオウ ネクロムアーマー」は、緑の液体で満たされた眼魂ショルダーを起動させ、その体を液体に変化させた。
互いに液状化したことで互いに干渉する権利を得た両者は、形を問わない変幻自在な戦いを繰り広げる。
ゲイツは何も出来ない。何か方法はあったのかもしれないが、何も考えられなかった。両者が遠い。出会った時、取るに足らない男だったはずの壮間に何があった。己の正義に盲目になっている間に、変わろうとしなかった間に、とっくに追い越されていたことにやっと気づいてしまった。
そんなこと言ったって変われないんだ。未来を救う契約と、己に染み付いた憎しみと、殺してしまった命が変わることを許してくれない。
このまま例え悪になったとして、きっとミカドは壮間に止められる。それがミカドの限界だ。
「……存外、手間取らせてくれる」
「悪いけど俺…主人公なんで。こんなとこで負けられないんだよ」
「致し方ない…ここで使うつもりは無かったが、サバトの一端を見るがいい…!」
周囲に出現したのは4つの手のひら大の宝石。そのうち一つは前にアナザーウィザードが人間から取り出していた物と同じ色をしていた。あれはアナザーウィザードことルシフェルが集めているものだ。
宝石に亀裂が入り、砕け、そこから魔力が放出されて人の形を練り上げる。
「まさかアレが、タプリスさんが言ってた天界を攻撃した魔獣!」
「然り。名を『ファントム』。かつて魔界に封印されし絶望の化身達だ」
『ガーゴイル』、『リザードマン』、『ラーム』、『ヒドラ』の4体がアナザーウィザードの下僕として生み出された。一転して5対2の窮地に陥ってしまった。
恐らくアナザーウィザードはまだ手駒を出し惜しんでいる。このまま意地でも2人を殺すつもりなら、壮間はともかく今のミカドでは───
「…しゃーない。これだけは絶対嫌だったけど……」
ガヴリールが口を開いた。すると手を組んで目を閉じ、神々しい光が彼女の背から放たれる。彼女が何をしたのか誰も分からない中で、ガヴリールはとびきり下衆な顔で言い放った。
「今、天界に祈りを捧げてチクった」
「何…?」
「ルシ兄さんが下界で暴れてるってね。それ聞いたら誰が来るか分かるよな? 来るぞ、天界最強の『神の腕』。あんたの天敵のゼルエル姉さんが」
空気に電気が流れた様に緊張が走った。アナザーウィザードから発せられるのは、明らかにこれまでと様子の異なる威圧感。何を思ったかアナザーウィザードは、ファントム達を控えさせて撤退の姿勢を取った。
「ここは退いてやろう。だが、我が計画に狂いは無い。必ずサバトを決行し、天界を救済する……必ずだ」
ファントム共々、アナザーウィザードは神足通でその場から姿を消した。結果としては逃がすことになってしまったが仕方ないだろうと息をつく壮間だったが、ガヴリールは凄まじい様相で頭を抱えていた。
「よし逃げるぞ私は! もうすぐここに姉さんが来る!」
「別に逃げなくたっていいじゃないですか…呼んだのガヴリールさんでしょ」
「バカ言うな、私が何年姉さんから逃げてたと思ってんだ! もし会ったら…殺される! マジで! 下手すりゃ…消えるぞ、人間界…!」
それは逃げ場がないのでは。迷惑過ぎる。と思った壮間だったが、そこまでしてアナザーウィザードを追い払ってくれたと考えると、素直に感謝すべきだろう。本人は後悔してそうだが。
「アナザーウィザードの『救済』の意味、分かりますか…?」
「知らん。ルシ兄さんは前からちょっとアレな人だったし…でも、そういえばお前らが持ってるソレは見覚えあるぞ」
「そうですか…はいっ!? もしかしてウォッチですか? いきなりぶっこみましたね!?」
変身を解除したところで、ガヴリールが指さしたのはジオウのライドウォッチ。今までのパターンと同じようにアナザーライダーと関りのある人物がプロトウォッチを持っているとは思っていたが、展開が急すぎて転びそうになる。
「ちょうど天界がゴタついた頃だな、いつの間にか家にあって…」
「はい」
「金が無かったからネットで出品した」
「はぁ!? 何やってんすかマジで!」
「…んだけど、ビックリするぐらい売れなかったからまだ持ってる」
「あぁ良かった……! で、それはどこに!? 俺たちそれがどうしても必要なんです!」
「あんなもん欲しいのか? っと…確かあの辺に……」
そう言って振り返るも、あるのは瓦礫と爆風で吹き飛んだガヴリールの私物。
「このどっかにあるわ」
「嘘だろ……探すしかないのか……」
「…はっ、ここはどこ! 私は片平香奈! そして部屋も無い!?」
「うぅ……ここは私に任せて…公平にババ抜きで勝負…あれ、なんで私寝てたんです?」
「いいとこに起きた2人とも。ちょっと探して欲しいものあるんですけど、寝起きで悪いんですが…ガヴリールさんも手伝ってください」
「えぇ~私もやるのぉ~?」
いいタイミングで魔法が解け、目を覚ました香奈とタプリスを早速物探しに駆り出す。すると左程時間は経たずにソレは見つかった。自堕落な人間は散らかっていた方が物の場所がよく分かると言うが、見つけたのはガヴリールなので現実味を帯びている。
「『2012』に魔法陣…これがウィザードのプロトウォッチ!」
「よし、じゃあ1万円な」
「金取るんですか!? でも…背に腹は代えられないか…!!」
「さすがに冗談だって。で、そんなのを何に使うんだ?」
「2012年と言えば…そうですよ、天界に魔獣が攻めて来た年です!」
ガヴリールとタプリスに、香奈が詳しい事情を説明した。何故香奈がやったかというと、本人の希望だ。一回やってみたかったらしい。
「時間移動…!? そんな聞いたこともない高度な魔法を人間が…!?」
タプリスが凄まじいワナワナを見せている。一方でガヴリールも薄めのリアクションとはいえ、流石に驚いてはいるようだ。
「と、いうわけで私たちは今から過去に行って、あのアナザーライダーから天界を救って来るというわけです! どう、凄くないですか!?」
「すごいです! これぞ主がお与えになった奇跡……これで私も天真先輩とスクールライフを送ったことに……!」
「いやぁー、別にどっちでもいいわ」
「天真先輩っ!?」
しかしガヴリールから帰って来たのは予想外の返答だった。そもそも天界のことなんてどうでもいいのだから、それもそうかと思った壮間だったが、その理由もまた意外だった。
「天界とか魔界がどうだろうと私は変わらん。どーせ私はゲームばっかの駄目天使だし、それはヴィーネやサターニャ、ラフィだって同じだ。だったら別に変えなくたって、いつかなんとかなるだろ」
「…なんかちょっとだけ天使っぽいですね」
「天使だからな」
「ですが過去に戻ってもらえるんですよ? せっかくなので何か……そうです!」
しばらく悩んでいたタプリスが顔を明るくし、「これしかない!」と声を上げる。壮間も香奈も、その内容についてはある程度察しが付いていたが。
「天真先輩の駄天を未然に防ぐこともできるのではっ!?」
「はぁ? さっき言ったろ、私は元来こんな感じでどーせ変わんないって」
「いえ、本当の天真先輩はもっと品行方正で良識のある素晴らしい方でした! お願いします日寺さん、片平さん! 先輩を悪魔の魔の手から守ってください!」
「や…そんなこと言われても、俺たちだって好きなタイミングに飛べるわけじゃないし…」
「いや、中々に悪くない展開だ。承ってはどうだろうか我が王」
「ウィル!?」
「ど、どちらさまですかぁ!?」
「おぉ…またなんか出た。あんた人間か…?」
遊園地以来フェードアウトしていたウィルが、ここで再び登場。驚くタプリスに軽くお辞儀をすると、ウィルは壮間と沈黙するミカドに視線を向ける。
「本来は我が王の試練に私が介入すべきではないが、今回は難敵。ミカド少年のこともある。ならば……この程度なら問題あるまい」
ウィルがウィザードプロトウォッチに触れると、そこからもう一つのプロトウォッチが分離し、浮かび上がった。ウィルは2つのウォッチを壮間に手渡す。
「アナザーウィザードは2012年でサバトを決行した。アヴニル氏の事だ、かなり用意周到に準備をしていたに違いない。ならば試練の時代よりも『更に前の時間』に向かい、アナザーウィザードを妨害するというのはどうだろう」
「そんなことできんの!? ウィル、お前ほんとに何者…?」
「このウォッチでその時間に行けるようにしてある。妨害が終われば本来の試練に合流することも可能だ。それにその辺りは丁度、天真=ガヴリール=ホワイトが下界に降りてきた時期の可能性が高い」
都合のいい話だが、その通りに出来るのならそれが最善だろう。問題は壮間とミカドのどちらがどちらの時間に向かうか。それに対する答えは壮間の中では決まっていた。
「俺がアナザーウィザードを妨害する。あとついでにガヴリールさんの事も…ミカドは仮面ライダーウィザードがいる2012年の方を頼む」
「何だと…?」
言わばどちらかが裏方に回るようなもの。そこで壮間は、ミカドのサブに引っ込むと言い出したのだ。ミカドはそれが理解できなかった。この男はまだミカドを見誤っていると、静かに弱々しい怒りが湧き上がっていた。
「我が王ならばそう言うと思っていたよ。ミカド少年、君という存在が試される時だ」
「試される…だと? もう俺は俺という存在を思い知った…勘付けないなら言ってやる、俺はまた何も出来ない! 間違える! あのタイムジャッカーが言っていたことに……何一つ誤りは無い…!」
今はただ自分を否定した方が楽になれた。それくらいしか出来ることが無かった。自分を守るためにずっと溜め込んでいた本音が、2003年から帰って来た時のようにまた口から零れだす。
「貴様がやればいいんだ! 何もかも貴様一人が! 俺が何もしなくたって全てを収められるはずだ! 他から学び、答えを見つけ、望むように変わって……俺の家族も! タスクも! 俺が変えたかった未来だって、貴様ならきっと……!」
「……やっぱそうか。ミカド、だから俺は今のお前とは一緒に行けない」
「何故だ…!」
「俺が皆さんの心を受け継いできたのと、お前の願いを受け継ぐのとじゃ意味が違う。俺はお前が救いたい未来ってやつを受け継ぐ気は無い。なんで出来ないなんて言うんだよ、俺に出来るって思うならお前にだって出来るだろ!」
「何も分かっていない! 貴様は俺が犯した過ちも、俺の愚かさも何も…!!」
「それはお前が何も話してくれないから…!!」
「はいはいストップ。お前らちょっと落ち着け」
ガヴリールが仲裁に入ってくれたおかげで喧嘩にまでは発展しなかったが、今の壮間じゃミカドをどうこうできないのはよく分かってしまった。だったらやはり、今は別れて行動するしかない。
「どうしたんですかミカドさん…喧嘩はよくないです、私でよければ相談に…」
「やめとけタプリス。天使が手伝っちゃダメなやつだろコレは」
「ですが、それでは私たち天使は何のために……」
「知らね。ゲームとかするためじゃない? じゃ、私はそろそろ逃げるわ。姉さんがキレる前にお前らもはよ行った方がいいぞ」
ガヴリールはそう捨て台詞を残すと、ノートパソコンとスマホだけ持ってそそくさと走って行った。角を曲がったところでゼーハーと息切れが聞こえるので、逃げ切れるかは些か不安ではあるが。
「ソウマ、私はミカドくんの方に行くよ。私なら何かできるかも」
「あぁ頼む。次会った時、まだそんなんだったら今度はぶん殴るからな、ミカド!」
「知ったことか…俺はどうせ変われない」
ミカドは無駄な抵抗はせず、流れに従って2012年へと向かう事にした。いくら己に絶望していようが、何もしないわけにはいかないから。ミカドは死ぬまで戦い、世界を変えようとしなければいけないから。
タイムマジーンに乗り込んだ3人に、タプリスが祈りを捧げる。その先にある救いと輝かしい未来が訪れるように。
「……ま、なんとかなるだろ」
飛んで行くタイムマジーン。少し先でガヴリールも軽く祈ると、そう言って再び走り出す。その数メートル先で息を切らしているうちに、タイムマジーンはこの時間から消えた。
あと1話、2012年に行って少し話を進めて前半戦終了です。ギャグとシリアスの天秤は今のところ少しシリアス寄りか…?どうなんですかね、感想で教えてください。不安です。
今回は壮間とミカドの別行動。ダブル編でもそうだったけど。色々とビフォーアフターを楽しんでもらえるようにしましたが、これ絶対に難しいしキバ編に取っとけって話では……いいや知らね。
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