仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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アナザーファイズ
2003年の樋下美鶴が変身したアナザーライダー。改変された歴史では喰種「ファイズ」として謝肉祭を開き、喰種と人間を長きに渡って大量に殺害していた。
人外であるという条件を満たせば誰でも変身が可能。アナザーライダー形態でもオルフェノクや喰種の力を使えるため、能力値は変身者によって大きく変動する。一定条件下で撃破しない限り、何度でも蘇る。

アントオルフェノク
蟻の特質を備えたオルフェノク。Aレート喰種「パラポネラ」と分類されていた。変身者は樋下美鶴。オリジナルで、赫子のような触腕を出す「捕食態」という形態を持っている。小柄だが怪力を操り、優れた聴覚や触覚で獲物を索敵する。フェロモン状のオルフェノクエネルギーは経口で撃ち込まれ、オルフェノクに対しても理性を奪う劇薬として作用する。


カービィ新作に間に合わせました146です。
ガヴドロ×ウィザード編、前半戦ラストです。まさか一週間強で終わるとは…これが春休みか。

今回も「ここすき」をよろしくお願いします!


ある魔法使いの今昔

2012

 

 

2012年、空に出来た穴より現れたタイムマジーン。それを空中より眺めるのは天使ルシフェルと、その管理者であるアヴニル。

 

 

「見えたか。あの飛行物体こそが時を超える箱舟…貴公を打倒しにやって来た、王の器だ!」

 

「そうか…精々挑んで来るといい、我がサバトは誰にも邪魔させない」

 

「それでいい。貴公の強き大義こそが、吾輩が貴公を選んだ所以なのだからッ! さぁ王となって世界を変えるとしよう!」

 

 

_________________

 

 

 

「魔法使いを探しています!! 魔法使いはいませんかああああっ!!」

 

「何の意味がある…こんな事に」

 

「やんないよりはいいでしょ! ミカドくんも声出してよ!」

 

「…やっていられるか。俺は下りる」

 

 

そう言って逃げようとするミカドを、香奈が力づくで引っ張って止める。今は壮間がいないためミカドと香奈という珍しいコンビに。香奈は押しが強く、ミカドも度重なる挫折で卑屈になっているため。互いが互いを面倒くさがっている状況だった。

 

2012年に来てやるべきことは、仮面ライダーウィザードを探すこと。しかし魔法使いであること以外何の情報も無いため、取り合えず大声で聞いて回っていた。無論、成果は無いが。

 

 

「よしこれ意味ないね! どんどん人がいなくなってくし!」

 

「そう言っている…」

 

「じゃあプランBで行こう。ガヴさんから教えてもらった情報、舞天高校にいるこの時代のガヴさん……の友達に会う!」

 

 

これまでのパターンでは、プロトウォッチを所持していた人物は仮面ライダーと深い関りがあった。つまりこちらの時代でガヴリールに会えれば、必然的にウィザードに近づけるはずなのだ。その旨を出発前にガヴリール伝えたところ、

 

 

『過去の私に迷惑かけんな』

 

 

らしく、会うならクラスメートに会えとのこと。

 

 

「ここだ。県立舞天高等学校!」

 

 

特に迷う事もなく到着した。浦の星女学院の時のように休日でもなければ、時間は放課後のようなので容易く潜入できる。壮間がいれば入校許可証を取っていたところだが、この2人がそんな手続きをするわけもない。

 

しっかり不法侵入し、許可を貰っている風に堂々と廊下で人探し。ガヴリールからその友人の名前や情報も聞いている。

 

 

『まずヴィネットってやつを探せ。そいつは人助けが趣味なイカれた悪魔だ。頼めば大体助けてくれる』

 

『悪魔!?』

 

『次はラフィエルだな。性格はちょっとアレだけど、私よりはしっかりした天使だ。多少おもちゃにされる可能性はあるけど、まぁ力にはなってくれるだろ』

 

『私はもう天使に対してそんな信頼持てないんですけど…』

 

『あともう一人、サタニキアって悪魔もいるんだけど……そいつは役に立たん。無視しろ』

 

 

天使や悪魔って意外とポコポコいるらしい。役に立たない悪魔が気になりはするが、それだけ有力な候補がいるのならウィザードもすぐ見つかるはず……だった。

 

 

「ヴィネット…あぁ月乃瀬さんね。今日は風邪でお休みだって、珍しい」

 

「白羽さんは家の用事がどうしても外せなくてお休みらしいよ。お嬢様みたいだし」

 

 

まさかの2連続外し。一応、ガヴリールの事も聞いてみたが「普通にサボり」だとか。

 

 

「なんっでこう器用に全員休むかなぁ!?」

 

「……」

 

「あーもう、なんか喋ろうよミカドくん! よくないよコミュニケーションの放棄!」

 

「…貴様と話せば俺の進むべき道が見えるのか」

 

「それはわかんないけど、何か力になれるかもでしょ。一人より二人、未来じゃわかんないけど、現代じゃ基本なんだから!」

 

「そう言って俺に寄り添った奴らは、どいつも俺の過ちで死んだんだ…俺が何をしなくとも貴様らに害は無いだろう。俺は俺だけで……戦う」

 

 

香奈の言葉は届かず、弱々しい「戦う」という言葉が嫌でも耳に残る。誰かと関わることが間違いだと言いたいのか、ミカドは目も合わせずに離れて行く。

 

結局学校ではウィザードも天使も悪魔も見つからず、ミカドと香奈の距離は離れるばかり。香奈もかける言葉や話題が上手く思いつけずヤキモキイライラして本当に殴りたくなっていたが、そんな時に背を叩いて香奈を呼び止める者が。

 

 

「ねぇ君、魔法使いを探してるんだって?」

 

「はい! でもすいません今ちょっと忙しくて!」

 

「俺が魔法使いなんだけど」

 

「そうですか、ではっ!……え゛ぇ!!?」

 

 

香奈に声をかけた青年は、自分が魔法使いだと名乗り出た。余りの急展開に女子が出すとは思えないパワーの声を出してしまう。青年が説明をするよりも前に、香奈に手を引っぱられ引きずり出されるのはミカドの前。

 

 

「ミカドくん見て!! 魔法使い見つけた!!!」

 

 

これには流石にミカドも固まった。

 

 

_______________

 

 

ミカドと香奈が向かった時間よりも少し前の時期。分離したプロトウォッチによって、壮間はその時間に降り立った。

 

季節は春。目的はアナザーウィザードの妨害と、ついでにガヴリールの駄天阻止。久しぶりの単独行動だが不思議と不安感は薄かった。成長したという証だろうか。

 

 

「さて我が王、早速行動を起こすとしようか」

 

 

どうせウィルがいるだろうと思っていたからだった。そして案の定いた。

 

 

「ウィルって概念とか妖精とかそういうのなの?」

 

「まさか。私ほどリアルを体現した存在はいないさ。そしてこの本によれば、今は春。見立て通り天真=ガヴリール=ホワイトが地上に降りた頃のようだ。アナザーウィザードこと皇=ルシフェル=セイントも下界にいる可能性がある。春の妖精ならぬ、春は天使の楽園といったところか。もっとも、いるのが天使だけとは限らない。悪魔や当然…怪人『ファントム』も……」

 

「うるさいな! 凄い喋るじゃん」

 

「ふっ…私だって我が王と2人なら機嫌も上がるというもの」

 

「気持ち悪っ…すげぇゾッとした」

 

 

彼が上機嫌な理由はこれ以上触れないようにして、取り合えずウィルが言っていた「悪魔」で壮間は留意すべきことを思い出した。出立する直前、タプリスがこんな事を言い残していたのだ。

 

 

『天真先輩の駄天を阻止するにあたって、警戒すべき特A級の危険人物がいます! その名は胡桃沢=サタニキア=マクドウェル……私が知る中で最も狡猾で強力な悪魔です!』

 

 

天使のタプリスがそこまで言う相手だ、出来る限りの警戒はしておくべきだろう。名前以外の情報は感情フルパワーで曖昧だったので、あまり当てにはしない方がいい気がするが。

 

 

「あんましガヴリールさん周りは変えない方がいい気がするんだけどな…」

 

「では先にアナザーウィザードを探すかい?」

 

「そうしたいのは山々なんだけど、方法がな…そうだ、あのミカドが持ってる鳥のロボ。あれ俺にもちょうだいよ」

 

「ふむ…元は()()()が来たら渡すつもりだったのだが、確かに索敵手段が無いのは少々不便だね。いいだろう、受け取るといい我が王」

 

 

ウィルはそう言うと、ファイズフォンⅩの時のように壮間に『タカウォッチロイド』を渡した。文字盤の部分には赤い鳥と缶ジュースの天面のような模様が描かれている。

 

 

「このタカウォッチロイドは自律AIを搭載したサポートメカ。索敵・追跡のみならず、100℃の火炎『ファイヤーホーク』、-20℃の吹雪『ブリザードホーク』、10万ボルトの電撃『サンダーホーク』と強力な3つの攻撃を操ることができるのさ」

 

「おぉ! それは凄い……って待て、なんかショボくない?」

 

「というと?」

 

「だってまぁ、10万ボルトはあんまピンと来ないけど、-20℃って大体冷凍庫の温度だし。ていうか問題は100℃の炎の方。低すぎだろ、ギリギリ湯が沸く炎ってこと?」

 

「……タカウォッチロイドの真価は索敵性能さ。ほら、とにかく空に放ってみるといい」

 

 

ウィルが強引に誤魔化した。嫌疑の意識を向けつつも言われた通りにすると、変形したタカウォッチロイドが鳴いてすぐさま反応を見せた。

 

 

「この付近で怪人の反応を感知したらしい。とはいえ走るには少し距離があるね」

 

「急がないと! 変身して間に合うといいけど…!」

 

「君は何のためにバイク免許を取ったんだい?」

 

「あ、そっか」

 

 

待ちに待ったバイクの出番は突然やって来て、感動する余裕もなく壮間はライドストライカーを走らせた。あっという間に過ぎ去る景色の中に混じった、赤い宝石の小鳥に気付くことも無く。

 

 

_________________

 

 

「……というわけで、魔法使いさん! 私たちに仮面ライダーウィザードの力をください!」

 

 

早々に説明を済ませた香奈は、情報を呑み込む暇も与えず手を差し出した。魔法使いを名乗った青年は戸惑いつつも、爽やかに笑顔を変えす。話を聞いてもらっている間もそうだったが、とても誠実そうで好印象な青年だった。

 

 

「うーん…まず、そっちの子が縛られながら凄い顔で俺を見る理由を説明してくれるか?」

 

「こうしないと逃げるので! あとミカドくんは何か凄い拗らせてます、理由はわかんないけど」

 

「貴様といい日寺といい、縛る以外思いつかないのか…!」

 

「全然わからんけど、いいか。よし俺も改めて自己紹介だ。俺は指輪の魔法使い、ウィザード。希望を守る天の遣いさ。俺の事は『輝良(きら)』と呼んでくれ」

 

 

後光が刺すような微笑み。希望を守るというのにも説得力がある。ガヴリールやタプリスと関りのある仮面ライダーなのだから、もしかしたら輝良は天使なのかもしれない。

 

 

「いい人だ。A-RISEのツバサさんと同じ名前だし! じゃあ輝良さん、ウィザードの力をください!」

 

「そう簡単に渡せるものじゃないけどな…そっちの君はどうしたい?」

 

「…好きにしていろ。そのうちもう一人来て、貴様はどの道ウィザードの力を渡すことになる。俺がどう思っても結末は変わらん」

 

「そういうわけにもいかない。君、何か悩んでるだろ? そんなあからさまな態度を魔法使いが見逃すわけないさ」

 

 

気色悪い。善人ぶるな。虫酸が走る。少し前のミカドならそう撥ね退け、戦いを挑んでいただろう。壮間がいないのなら猶の事だ。しかし、今はもうそんな気すら起きない。

 

殺せる気がしないのだ。そもそも、勝てる気すらしない。「誰にも勝てず何も成し遂げられない道化」という役割の監獄に囚われている気がして、動いても意味が無いように思えてしまう。

 

 

「俺は…世界の中心じゃない。貴様のような真っ当な善人を引き立てるための、ただの舞台装置だ」

 

 

ヴォードの言っていたことがよく理解できてしまう。今のミカドは壮間にとっての何かにも成れはしない。意味もなく排斥される脇役の一人だと、嫌に納得できてしまった。

 

 

「そんなこと言うなって。そうだ、俺の仲間に会ってみないか? 力を渡せるかどうか、そこで決めよう。君の悩みもそこで何か変わるかもしれない」

 

「だってさミカドくん! すごいよ、これもしかして今までで一番スムーズなんじゃない!? ソウマびっくりするだろうなー!」

 

 

輝良の誘いも香奈の喜びも、ミカドの心には届かない。ここに居る中で自分だけが世界に置いて行かれている、そんな感じがした。そんな考えがどうしても止められなかった。

 

 

________________

 

 

 

「さぁ…もう逃げられない。ゲームもここまでです」

 

「嫌だ……! 俺は絶対に逃げ切る、無実なんだ! だから逃げ切って…自由に!」

 

 

先日、刑務所から脱獄したある男を、山高帽子の奇妙な青年が追い詰める。追う方の男の姿が帽子で顔を隠した瞬間に移り変わり、人型のイカのような異形に。

 

それはイカの怪人というより、悪夢や怪奇そのものが偶然イカの形をしているような、純然たる「怪物」。それが「ファントム」なのだ。

 

 

「貴方を守るナイト、貴方を手助けしたルーク、そして貴方を待つクイーン…その全てが私の手中にある。貴方の欲する自由に、もはや価値は無い。チェックメイト、さぁ絶望してファントムを生み出せ!」

 

 

ファントム「シービショップ」は、最後にその三叉槍で死への絶望を突きつけようとする。が、その寸前にジオウのライドストライカーがシービショップを轢き飛ばした。

 

 

「大丈夫ですか、早く安全な所に!」

 

「誰だ…! 貴様、指輪の魔法使いではないな!?」

 

「悪いけど人違いだ! 人違いでもしっかり倒させてもらうぞ『ファントム』!」

 

 

ビルドライドウォッチをジカンギレードに装填し、いきなり全力で斬りかかるジオウ。シービショップが伸ばす触手を切り刻むが、十字型の光弾を喰らって体勢が崩れてしまう。

 

起き上がったジオウに身構えるシービショップ。しかし、そこに横槍を入れた神速の影。

 

 

「ほへぇ、今度は時計の魔法使い?」

 

「なっ……!?」

 

 

咄嗟に防御姿勢を取ったジオウだが、それを掻い潜るように幻踊的な打撃が入った。突然飛び込んできた第三者にして、たった一瞬でジオウに「強い」と思わしめた連撃。

 

孔雀の羽で着飾ったトカゲのファントム。その姿は夜を彩る妖艶にも見えれば、遊び惚ける派手好きの少年のようにも、それこそ怪異を統べる王のようにも見えた。そしてジオウは確信した。このファントムは、ガイスト・ロイミュードや火兎ナギのような「あっち側」の怪人だ。

 

 

「くっそ、ここで新手のファントム…!」

 

「ファントムって一括りは好きくない。ボクは『バジリスク』だよ、暇なら遊びましょ!」

 

「どう見ても暇じゃないだろ!」

 

 

軽い挨拶を済ませると、バジリスクが再び連撃を仕掛けてくる。相手の攻撃を一度見て、それを元に対応するというやり方が染み付いているジオウだが、それに対する違和感はビンビンと感じていた。

 

 

「なんだこのふざけた攻撃…! 全然次が想像できない!」

 

 

蹴り主体かと思えば、急な頭突きから手刀で何故か膝を狙って来るし、攻撃を大袈裟に避けたかと思えば片手で逆立ち、そこから回ってエネルギー波を放つ。整合性も効率もまるで考えてない癖に、全ての攻撃が吸い付くように命中して何故か強い。

 

 

「ダンスは苦手? ボクは得意よ。そろそろ見せて時計の魔法」

 

「だから…魔法使いじゃないって言ってんだろ!」

 

「聞いてなーい♪」

 

「お前の相手してる暇はないんだ!」

 

 

こうしている間にもシービショップが脱獄囚の男を追っている。何をする気なのかは分からないが、どうせ命を狙っているとかそういうのだ。早く追わなければ取返しが付かない。

 

 

「おっと、そっちはダメだってば」

 

 

シービショップの方に向かおうとしたジオウに、バジリスクの右手が向けられた。その手に開いた『眼』と視線が合った瞬間、ジオウの動きが止まってしまう。

 

 

「なんだこれ…全身痺れて動けない…!」

 

「ゲートを絶望させてるみたいだし、邪魔はよくない。ボクの相手すればいいじゃんよ」

 

「んなわけに行かないだろ! タカウォッチロイド来い!」

 

 

タカウォッチロイドがバジリスクに突進し、その不意打ちで少しだけ体勢が崩れた。その一瞬だけ拘束が解け、解放されたジオウはもう視線を合わせないよう場を離れる。

 

 

(やっぱりだ、止めてる間はアイツも動けない。動いたら解除される! じゃなきゃ目が合うだけで動きを止めるなんて強すぎだ! でも……!)

 

 

拘束を解いたはいいがバジリスクは追って来るし、シービショップに追いつけるかも怪しい。そんな時、別のバイク音が近づいているのを感じた。

 

それを先導するのは、壮間が見逃した赤い小鳥。プラモンスター『レッドガルーダ』。

 

 

_________________

 

 

輝良に連れられるまま、ミカドと香奈が連れて来られたのは使われていない廃倉庫。薄暗く、人の気配はしないが輝良はどんどんと奥に進んでいく。

 

 

「この先に仲間がいるの? なんか嫌な雰囲気だけど…」

 

「そう見えるだけだよ。もうそろそろだ。と、その前に…ミカド君だっけ、君のことは色々と聞いたけど…」

 

 

というのも、香奈が言わなくてもいいミカドの過去やらなにやらを全て説明したのだ。

 

 

「戦って未来を変えたいみたいだけど。もし戦えなくなったら、ミカド君はどうする?」

 

「どうするもこうするもあるか…戦えないなら俺に生きる理由なんて無い。それで死ねるなら単純な話なんだがな……」

 

「そっか、それを聞いて安心した」

 

 

闇の奥で人の輪郭が見えた。それも複数。少し不安だったのか香奈が喜びを見せるが、近づくその姿は予想を大胆に裏切ったものだった。

 

明らかな敵意と邪悪を纏った、長い耳と一本角を持った単眼の獣人。突発的な恐怖で困惑する香奈を押しのけ、輝良はその怪人の群れの前で振り返って、笑った。

 

 

「輝良さん…?」

 

「……そういうことか、俺も腐ったな。まさかここまで気付かないとは」

 

「察し良くても何も解決しねぇさ! 輝良祐樹はとっくに絶望して死んだ! この俺、『アルミラージ』というファントムを生み出してな!」

 

 

輝良の顔に紋様が浮かび、周囲の怪人と似た姿のファントムへと変貌した。違うのは色と三つ目であること。この怪人たちは『アルミラージ』の分身で、ミカドと香奈はまんまと誘い込まれたのだ。

 

つまりは、輝良が指輪の魔法使いだなんて真っ赤な嘘。そこまでしてアルミラージが狙ったのは、既に絶望寸前に追い込まれた『ゲート』。

 

 

「こっちは5人。タコ殴りにして戦えない体にして、絶望させてやるよミカド君!」

 

「やはり狙いは俺か……笑えない冗談だ」

 

 

ミカドがファントムの狙う『ゲート』。アルミラージからミカドを庇おうとする香奈をどかして、ミカドは前に立ちドライバーを装着した。

 

 

「ファントムとは何度か交戦した。俺がそうだとは…気付かなかったがな」

 

「強がりかぁ?」

 

「違う。貴様のおかげで俺はまだ絶望してないことが分かった。絶望すれば、そこで終わりが来るというのもな…!」

 

《ゲイツ!》

 

 

それが朗報なのか悲報なのか分からない。ただ、少しだけ確かに喜んだ気持ちはあった。叶いもしない理想を追い続け、戦うしかない人生は、やはり苦しいのだから。

 

でも苦しいと思うことも許されない。これは己で選び、犯した結果の道だ。

 

 

「変身!」

 

《仮面ライダー!ゲイツ!!》

 

 

5体のアルミラージを前に変身したゲイツは、雄叫びを上げて突進していく。多勢に全く臆することなく武器も持たずに拳で道を切り開く。いつ壊れてもおかしくないような戦いに、香奈は口を押えて目を閉じそうになる。

 

壁に全身を擦りつけるように、逆風に突っ込んでいくように、いつか摩耗して消えることを求めているようだった。やけくそになっていた。この悪い夢を、早く終わらせてほしくて。

 

 

その時、赤い小鳥が廃倉庫を飛んでいた。近づくバイクの音が、止まった。

 

 

 

《ドライバーオン》

 

「変身!」

 

《シャバドゥビタッチヘンシン!》

《フレイム プリーズ》

《ヒーヒー ヒーヒーヒー!》

 

 

 

それぞれの時代で、放たれた銀の弾丸がシービショップとアルミラージを射抜く。

 

顔、体、炎の魔力で満ちた赤い宝石が輝く。黒い腰マントを広げ、輝きを両手に宿した現代を生きる『指輪の魔法使い』。仮面ライダーウィザード。

 

 

_______________

 

 

「指輪の魔法使い!」

 

 

駆け出すバジリスクを、ジオウが必死に足止めした。間違いなくあれがこの時代の仮面ライダー。となればジオウがやるべきことは邪魔をさせない事で十分だ。

 

 

「チェックメイトと言ったはず…ゲームの邪魔をしないでもらいたい!」

 

 

十字架のエネルギー弾を『ウィザーソードガン』の大振りの一太刀で両断し、ウィザードはそのままモードチェンジで銃弾を乱射。ゲートの男性に回り込むと、シービショップを思いきり蹴り飛ばして距離を離させる。

 

 

「早くここから逃げて!」

 

「させませんよ。盤上から駒は逃がさない!」

 

「っ…! それなら…」

 

《ルパッチマジックタッチゴー!》

《ディフェンド プリーズ》

 

 

右手のウィザードリングを変え、魔法が発動。炎の魔法陣がシービショップの触手を弾いた。

 

 

「無駄だ。貴方との対局は想定済み、チェックメイトまでの道筋は見えている!」

 

「そうか……」

 

 

シービショップの強気な宣言に、ウィザードも───

 

 

「嘘じゃん……絶対ムリだって……そんなの勝てんって……」

 

 

凄まじく弱気に返した。

ジオウは思った、「何かダメそう」と。

 

言われてみればここまでの動きも、かなり焦っていた気がする。

 

 

「だからもう俺じゃ無理だって…はぁー魔法使いやめてぇ。マジでやめてぇ…」

 

「独り言とは余裕だな!」

 

「余裕に見えるのかよこれが……目おかしいぞ…イカって目あったんだけ…わからんよ下界の生物ややこしいし…」

 

 

シービショップの攻撃に対し、少し遅れて大慌てで対応するウィザード。壮間が言えたことではないかもだが、とてもヒヤヒヤする戦い方だった。

 

 

「あぁぁぁもうこっち来んなぁぁぁぁ!!」

 

《バインド プリーズ》

《ビッグ プリーズ》

 

「なっ…!?」

 

 

炎の鎖がシービショップを拘束。そこに魔法で巨大化した腕を叩きつけ、潰れたシービショップを更にビンタで弾き飛ばす。その上右足も巨大化させて踏みつけ、蹴っ飛ばす。

 

終わったかと思って起き上がるシービショップだったが、見上げると剣まで巨大化している。そして刃が叩きつけられて大ダメージ。息を切らしたウィザードは剣を杖替わりにして少し肩で息をすると、嫌そうに剣を構える。シービショップが立ち上がったからだ。

 

 

「嘘だろもういいだろ…」

 

「いい訳が無いだろ! 見るがいい、我が完璧な戦術───」

「だぁぁぁぁぁ! 嫌だ嫌だ嫌だ! もう何もすんな死んどけよ!!」

 

《キャモナスラッシュシェイクハンズ!》

《フレイム スラッシュストライク!》

《ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!》

 

「はぁっ!? ちょ、待……!」

 

 

 

________________

 

 

《ビッグ プリーズ》

 

 

ゲイツと香奈、アルミラージの前に颯爽と現れた仮面ライダーウィザードは、魔法で自身の右腕を巨大化させる。そして───

 

 

「邪魔だっつの」

 

 

ゲイツもろともアルミラージを叩き弾いた。

壁に激突して変身が解除されるミカドは放っておいて、ウィザードはアルミラージの前に立つ。

 

 

「指輪の魔法使い…クソ!」

 

「よぅクソファントム。さぁ…ショータイムだ!」

 

 

追突する4体の分身アルミラージを軽くいなし、攻撃で突き出された腕を足場に宙を舞う。回転しながら発射された弾丸が弧を描いて命中し、着地と同時に本体のアルミラージに斬撃一閃。

 

 

《ルパッチマジックタッチゴー!》

《ディフェンド プリーズ》

 

 

防御用の魔法陣をアルミラージの上に出現させると、それをそのまま圧しつけた。防御用とはいえ魔力を帯びた炎は強力で、アルミラージは焼きハンコ状態に。

 

 

「熱い熱い熱い! ざっけんなテメェ!」

 

「ハッハッハ焼きウサギだ。せーのっ、オラァ!」

 

「ゲッフォ!?」

 

 

アルミラージを思いきり蹴り飛ばし、ようやくディフェンドが解除された。ヒリつく肌を抑えながら、アルミラージは怒りのままに攻撃を再開。

 

が、のらりくらりとウィザードは受け流す。ウィザードは馬鹿にして煽るように手を叩き、手を振り、頭に血が昇ったアルミラージの攻撃は更に直線的に。

 

 

「テメェ…いい加減にしやがれ!…そうだ、おい魔法使い! この女がどうなってもいいのかよ!」

 

「えっ嘘ぉ! 急に私!?」

 

 

ふっ飛ばされた先には香奈がいて、アルミラージは慌てて彼女を人質に。これで動きを止めて分身たちでリンチにする寸法だ。しかしウィザードは焦った素振りを見せず、それどころか新しいリングをはめている。

 

 

「あのーすいません本物の魔法使いさん!?」

 

「忙しいからちょっと黙ってろお前。さて…と、これ使うのも久しぶりだな」

 

《ランド プリーズ》

《ドッドッドッドドドン ドンドッドッドン!》

 

「おいテメェ何やってんだ! マジでコイツ殺しちまうぞ!」

「そうですよなんか黄色くなってるけど、私いまめっちゃピンチで…!」

 

「お前らうるせぇ! ほら黙れ」

 

《シャラップ プリーズ》

 

 

黄色の四角い宝石の姿、ランドスタイルにエレメントを変えたウィザードは、2人に『シャラップウィザードリング』を使用。ただ敵を黙らせるだけの魔法を使い、香奈も黙らせるという暴挙に。無言で凄い文句言ってそうだが、気にしない。

 

 

《ディフェンド プリーズ》

 

 

そして、ゆっくりと発動した魔法で突然足元から生えた土の壁が、アルミラージを空中に弾き出した。当然、香奈も一緒に空中に。

 

 

《チョーイイネ! グラビティ》

《サイコー!》

 

 

出現した3つの魔法陣。うち香奈とウィザードに作用した魔法陣は対象の重さを軽くし、落下ダメージの低減とジャンプ力の増強を。残りのアルミラージに作用した魔法陣は10倍の重力で対象を地面に叩きつける。

 

高く飛び上がったウィザードは、重力で動けないアルミラージに高所からの膝落とし。どう見てもヒーローの戦法ではない。

 

 

「ガアぁっ……っソ! やっと喋れる…!」

 

「へっへっへ。そりゃおめでとう」

 

「もうマジで許さないからなテメェ! 挽き肉にしてやる!」

 

「はぁ~? 俺様は最強だっつーの、ファントムなんかに負けねぇよバーカ」

 

「さっきまでの威勢が通用すると思うな! こっちは5人だ、数の有利は俺たちに…!?」

 

 

いいこと聞いた、そういう顔が見えるようだった。ウィザードはまたリングを入れ替え、魔法を発動。

 

 

《コピー プリーズ》

 

 

魔法陣から現れるウィザードの分身。さらに2人のウィザードはもう一度魔法を使う。

 

 

「んでもいっちょ」

 

《コピー プリーズ》

《コピー プリーズ》

《コピー プリーズ》

 

「………はぁ゛!?」

 

 

合計4回のコピーでウィザードは16人に分身。5人に対してあっという間に多勢に無勢へと状況は変わり果てた。この絶望的戦況に、ウィザードは16人がかりで一言。

 

 

『で、数の有利が……なんだって?』

 

《キャモナスラッシュシェイクハンズ!》

《フレイム スラッシュストライク!》

《ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!》

 

「こンの……クソがああああああッ!!」

 

 

 

 

過去のウィザード。シービショップが何かする前に炎を纏った剣で滅多切り。水の魔力が必須なシービショップの体に、高熱の魔法は効果抜群(ウィザードは気付いていないが)。本来なら3回斬れば撃破できていたであろう攻撃。しかし、果てしなく不安なウィザードは斬ること16回。およそ5倍以上の過剰ダメージでオーバーキル。

 

未来のウィザード。抵抗する5体のアルミラージを嘲笑い、16本の炎の魔剣が完膚なきまでに打破。こちらも圧倒的なオーバーキルで決着。

 

爆発したファントム達は、魔法陣を残して完全に消滅したのだった。

 

 

「ふぃー……」

 

 

二つの時代でウィザードが変身を解除する。

魔力切れでぶっ倒れ、今にも死にそうな様相な赤髪の青年。ファントムの爆発跡に中指を立てて舌を出すのも、赤髪の青年。

 

性格や顔つきこそ全く別人のようだが、その2人は紛れもない同一人物だった。

 

 

「大丈夫ですか!」

 

「大丈夫なわけ無いだろ、無理…魔力切れだって…ガチ限界帰る…死ぬ…」

「そりゃあんだけ派手にやればそうなりますよ!」

 

 

シービショップ撃破でバジリスクが去り、壮間は倒れた青年に駆け寄る。

 

 

「……貴様が本物のウィザード…」

 

「本物? 偽物がいんのか!? 教えろ、そいつぶっ殺す」

「いや、さっき倒したけど…」

「あ、アレか。丁度良かったぜ。俺様こそが唯一無二の指輪の魔法使いだ!」

 

 

戦いが終わり、ウィザード被害者のミカドと香奈が彼に詰め寄る。

 

 

「俺は…竜峰(たつみね)=ダンタリオ=レンブラッド」

「俺様は竜峰(たつみね)=ダンタリオ=レンブラッド」

 

 

それだけ言って気絶した過去の彼とは違い、未来の彼は更に高々と名乗りを上げる。

 

 

「ファントムと人間共を絶望に叩き落とす指輪の魔法使いにして、魔界より来た偉大な悪魔だ! 震えて眠れクソザコ人類が!」

 

 

止まった時の中、未来と過去の狭間でウィルは本を開く。

 

 

「誰かが言った『悪魔は常に否定する快楽の求道者であるのに対して、人の営みは中道にして病みやすい』」

 

 

本を閉じる。この物語で全てが決定する。ミカドが壮間という主人公の「何」になるのか。

 

 

「今一度言おう。試される時だ、ミカド少年。君が進む道はどちらかな?」

 

 

 

_______________

 

 

次回予告

 

 

「俺には魔法使いなんて荷が重いよ…実家帰りたい…」

「おいおいおい頭が高ぇなハナクソ共。俺様は魔法使いだぜ?」

 

過去と未来、2人の魔法使い。劇的ビフォーアフターの裏側は…?

 

「あんたらと一緒にいると天使って呼ばれるのよ…悪魔なのに…」

「あなた才能ありますよ! ぜひ将来は専属のおもちゃとして白羽家に…!」

「そう、私こそ大悪魔……サタn」

 

天使と悪魔も大集合。真実は喜劇!?それとも悲劇!?

 

「魔法使いは2人もいらねぇ。俺様が絶望に叩き落としてやるよ」

「俺の生きる道に、希望なんて……!」

 

最後の希望。それは誰の指に輝く。

 

「我は絶望した。そして魔法を得たのだ! サバトの時だ天界よ!」

「違ぇな。絶望したヤツに魔法なんて使えるか!」

「さぁ……俺のショータイムだ」

 

 

次回「キボウ・エンゲージ2012」

 

 

「未だ僕を知らぬ世界よ傾聴したまえ。

僕という、悪役(ヒール)という、華麗に渦巻く美学の旋律を!」

 

誰───!?

 




個人的な話ですが、今回出したファントムは前に他の作者様に提供(押し付け)したやつのリサイクルです。ファントムは考えるの楽しいですねぇ。ベルゼバブが猫だったりするけど。

本作のウィザードことダンはクセ強めです。悪魔が普通に悪魔してるので、ガヴドロ次元でも異端ですね。輩系魔法使いはミカドをどこに導くのか。

次回、ミカドの試練の行方は。シリアスとギャグの天秤はどちらに傾く!
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今回の名言
「悪魔は常に否定する快楽の求道者であるのに対して、人の営みは中道にして病みやすい」
「青の祓魔師」より、メフィスト・フェレス。
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