仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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荒木湊
2003年で仮面ライダーファイズに変身したオルフェノク。20歳。幼い頃に海難事故で両親を失い、その後は喰種であるドナートの孤児院で育った。オリジナルに覚醒したミツルによって殺されたことで使徒再生を果たす。愛想が無いように見えるが、実際はかなり面倒見がいい性格。「正しい生き方」を探して様々な区を転々としており、多くの喰種や人間、オルフェノクと接していた。立場上は喰種捜査官補佐となっている。2003年では霧嶋一家とミツルとミカドを守るため、喰種と偽って捜査官を襲うがミツルの能力で暴走。ミカドによって討伐されファイズの力を奪われた。修正された歴史ではミツルと共に喰種に殺された。

本来の歴史では・・・生き方を探して、ミツルにかける言葉を探して、オルフェノクたちと戦い続ける。しかし生きるほどに守る者が増えていき、ミナトのオルフェノクとしての寿命も……


カービィディスカバリーにハマってました146です。
ガヴドロ×ウィザード編の後半やっていきましょう。この後半の前半で雰囲気を掴んでもらえたら幸いです。あとキャラ紹介もひっそり更新してます。

今回も「ここすき」をよろしくお願いします!




EP16 キボウ・エンゲージ2012
もうやめたいと思ったあの日


「この本によれば、未来の青年、光ヶ崎ミカド。彼は2018年へと遡り、全ての仮面ライダーを消すという使命を得た……らしい。しかし、そんな彼は過去で己の無力を痛感し、絶望の淵にまで追いやられていた」

 

 

本を閉じる。部外者であるミカドの行く先はウィルも知り得ない。

 

 

「我が王とミカド少年、2人がそれぞれ出会ったのは過去と未来、まるで正反対のウィザード。その名も───」

 

 

______________

 

 

「悪魔!?」

 

「そう、俺様は竜峰=ダンタリオ=レンブラッド。悪魔だ。ふとした瞬間に思い出し、絶望しろ。下界にはこの俺様がいるってな」

 

 

ファントム「アルミラージ」に襲われたミカドと香奈を救ったのは、悪魔を名乗って中指を立てるこの男だった。

 

華麗さが微塵もない品性に欠けた立ち振る舞い。しかもこの男、人間を絶望させるとか言っていた。しかも悪魔。想像していた魔法使い像とは余りに乖離しており、助けてもらったといえど香奈は唖然としたまま動けない。

 

一方でミカドは助けられたとは思っていないようだ。不服の視線を送るミカドに対し、ダンタリオは何故か助走をつけて……

 

 

「っラァ!」

 

「ちょあぁぁ!? ミカドくん!?」

 

 

ドロップキックした。

急展開の不意打ちにミカドも受け損ね、廃倉庫の廃材山まで蹴り飛ばされてしまう。

 

 

「なにしてんの魔法使いさん!?」

 

「起きろよ。お前、魔法使いなんだろ?」

 

「魔法使い…だと…?」

 

 

ダンタリオはさっき、変身して戦っているミカドを見ていた(その後ふっ飛ばしたが)。どうやら仮面ライダーという括りを知らない彼は、ミカドを自分と同じ魔法使いだと思っているようだ。

 

 

「この俺様がぶっ潰してやる。魔法使いは2人もいらねー。俺様が絶望に叩き落としてやるよ」

 

「…そういう事か。貴様は話が早くていい…!」

 

「って、なんでそうなるの!? 戦わなくていいじゃん別に!」

 

 

勘違いを正す気も無く、ミカドはライドウォッチを、ダンタリオはリングを構えた。その指に通したリングは、菱形の青い宝石。

 

 

「話なんて聞いてやらねーぞ? 俺様は悪魔だ。変身!」

 

「必要無い…戦えば済む単純な話だ。変身…!」

 

《ライダータイム!》

《仮面ライダー!ゲイツ!!》

 

《シャバドゥビタッチヘンシン!》

《ウォーター プリーズ》

《スイースイー スイースイー!》

 

 

仮面ライダーゲイツと対峙する、水のエレメントを宿した青い魔法使い。仮面ライダーウィザード ウォータースタイル。ウィザードは指で「かかってこい」と挑発し、ゲイツの攻撃を待つ。

 

 

「絶望させたいんだったな。精々俺を追い詰めろ」

 

 

挑発に乗ったつもりではないが、先に仕掛けたのはやはりゲイツ。しかし、ウィザードはしなやかな動きでその攻撃を次々と受け流す。勝負を仕掛けて来たくせに、まるで真面目に取り合う気が無いように。

 

 

「馬鹿にしているのか…!?」

 

「してるさ。おちょくってぶっ倒れたとこに指輪はめて終い。それでお前の中のファントムは消えて、魔力を失って、俺だけが魔法使いだ」

 

 

魔法使いだと勘違いしたままのようだが、ウィザードはミカドをゲートじゃなくそうとしているのは確かだ。そうなれば、ミカドは絶望しても死ぬことはなくなる。

 

冗談じゃない。行き詰った自分の物語で、ようやく見えた終わりなんだ。

 

 

「ちょっとはやる気になったかぁ?」

 

 

ゲイツの殺気が引き締まる。一貫してゲイツを待つウィザードに、ゲイツはドライブウォッチを起動して戦法を変えた。

 

 

《ドライブ!》

 

《アーマータイム!》

《DRIVE!》

《ドライブ!》

 

「貴様のような悪魔なんぞに、終わりまで取り上げられてたまるか!」

 

 

ドライブアーマーに換装したゲイツが繰り出すのは、超次元の初速。速度を一切落とさず威力に変換し、受け流せないスピードの超速ブローがウィザードを貫いた。

 

 

「効かねーな! お前の攻撃なんか!」

 

 

確かな手ごたえはあったが、大きく後退しながらもウィザードは余裕綽々とした態度を崩さない。しかし、ドライブアーマー相手に相性が悪いと見たか、再びエレメントを変えるようだ。

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシン!》

《ハリケーン プリーズ》

《フーフー フーフーフーフー!》

 

 

逆三角の翠の宝石。風のエレメント、ハリケーンスタイル。

ウィザーソードガンを逆手持ちで構えたウィザードは、今度は自ら突風の如く仕掛ける。

 

 

「諦めな新人魔法使い。俺様は無敵だ!」

 

「っ…! 黙っていろ…!」

 

 

ゲイツもジカンザックスで応戦。斧と剣が幾度もぶつかり合う。速度は同等なのだが、地を這う車と風とでは三次元的な機動力の差が雲泥だ。

 

 

《アーマータイム!》

《カイガン!》

《ゴー・ス・トー!》

 

 

ゲイツはゴーストアーマーにチェンジして浮遊能力を獲得。両者が重さを感じさせない動作で空間を飛び回る。だが、やはり機動力の差は思うように埋まらない。

 

ウィザードは魔法すら使わないのにこれだ。決死で抵抗して戦っても、距離を痛感する。この男は強いのが分かってしまう。

 

 

「貴様、悪魔と言ったな!? 貴様のような人に仇成すだけの存在が、何故仮面ライダーなんだ!」

 

「は?」

 

「貴様のような存在がいなければ…未来は違った! そうさもうとっくに分かっている……仮面ライダーとは、清く正しくあるべきだった存在で、歪んでいるのは()()()の方だ!」

 

「知るかよ。そんな真面目な話なんかどーだっていい!」

 

 

そこで初めてウィザードは右手に指輪を通した。ゲイツの叫びを笑って否定するために。

 

 

「だって俺様は悪魔で魔法使いだ!」

 

《ルパッチマジックタッチゴー!》

《チョーイイネ! サンダー》

《サイコー!》

 

 

大気を揺らす膨大な魔力が雷撃として開放され、同時に風の魔力が雷に指向性を持たせた。そうして造り上げられた雷の槍は、空中のゲイツを貫き、射落とした。

 

 

「ふざけるな…! まだだ、俺は…戦うことだけは…!」

 

 

立て直すために使おうとしたのは、ファイズのライドウォッチ。しかし、ソレを使おうとした途端に逆流するのは過ちの記憶。だって、その力は受け継いだものではなく、荒木湊を殺して「奪った」ものだから。

 

清算できない感情が噴き上がり、腹の底から貫くような眩暈と吐き気で、ミカドはそれ以上動けなかった。終わるまで戦うことすらも出来ないほど、弱く脆いという事実が残酷に突き刺さる。

 

 

「……もう終わりか? じゃ、さっさと済ますと……」

 

 

動けないミカドに対し、戦いを詰めようとするウィザード。ミカドを守ろうと香奈が庇いに入ろうとした、その一瞬、誰もが感じた横方向からの黒い殺気。

 

 

「見つけたわよ…? ダ~~ン~~…!!」

 

「おっ、ヴィ───」

 

 

引きつった笑みとドス黒いオーラで現れた少女は、名前を呼ばれるよりも前に殺意を発露する。

 

具体的に言うと、何故か現れた黒い三叉槍を凄まじい勢いでウィザードへと投げ放ち、倉庫の壁ごとウィザードをふっ飛ばした。

 

 

「え…えぇ……?」

 

 

まぁ恐らく悪魔であろう少女を前に、香奈は困惑の声を漏らすしかなかった。

 

 

_____________

 

 

ミカドたちよりも前の時間に遡った壮間。こちらでもまた、竜峰=ダンタリオ=レンブラッドと邂逅を果たしていた。ただし、その様子は全く異なっているのだが。

 

 

「大丈夫ですか、えっと……」

 

「ダンでいいよ…あと大丈夫じゃ、ゲッホォ!ゴホォ!」

 

 

仮面ライダーウィザードとしてファントム「シービショップ」を撃退したのは、この気弱そうな青年だった。気弱そうと言うか、さっきから青い顔で咳き込んで死にそうになっている。

 

 

「もう本当無理…そろそろ死ぬって俺…で、まさかあんたもゲート…?」

 

「すっげぇ嫌そうな顔。いや、俺は…仮面ライダーです」

 

「仮面ライダー?」

 

「伝わんないんだ…あの、ダンさんと同じです。なんだろ…魔法使いみたいな?」

 

「マジ…? 魔法使い、俺以外にも居たの!?」

 

 

相変わらず吐きそうな程咳き込みながら、ダンは声を上げた。といっても驚きというよりは、安心して急に気が抜けたようだった。気が抜けたついでに誰にも話せなかったタイプの弱音も氾濫する。

 

 

「よかったぁぁぁ…じゃあ俺じゃなくてもいいんじゃん、魔法使い。よし、もうあんたに頼むよ魔法使いは。俺はもう無理だから…」

 

「いやいや急に何言ってんですか!? そんな見知ったばかりなのに…いや、でも継承としてはこれで…ってやっぱダメですって!」

 

「俺さ、『魔力喘息』なのよ…生まれつき普通より魔力が少なくて、こーやってすぐバテて…でもファントムはどんどん出るしゲートは全然言う事聞いてくれないし……」

 

 

ダンは今までもかなり我慢していたらしく、弱音がどんどん出てきて壮間も思わずたじろいで後ずさり。

 

 

「俺には魔法使いなんて荷が重いよ…もう実家帰りたい…」

 

 

やる気がないのはヒビキや永斗がそうだったが、かつてここまで弱気な仮面ライダーは間違いなくいなかった。壮間は自分もかなりネガティブな方だと思っているが、流石にここまでだと戦士として確実にマズいと思う。

 

 

「しっかりしてくださいよ…取り合えず…水とか買ってきますね!」

 

 

ベンチに座って買ってきた水をダンへと渡す。少しは体調も回復したみたいだが、落としっぱなしの肩と顔色が悪いのは治るようなものではないようだ。

 

 

「ダンさん、俺は別に魔法使い代わる気は無くて…」

 

「えぇぇ!? じゃなんで来たんだよ!」

 

「すんません…俺は人探ししてて、ルシフェルって人…じゃなくて…天使知りませんか? あとついでにガヴリールさんって天使も」

 

「天使ぃ…? 知らないよ俺悪魔だし…」

 

「え、悪魔!?」

 

「だよなぁ俺、悪魔っぽくもないしなぁ……ていうか天使がやればいいのに魔法使いなんて……そうだ…!」

 

 

その考えはなかったと、腕を振って壮間を向くダン。何か嬉しそうだったので少しは前向きになったのかと壮間もちょっとだけ安心した。

 

 

「その天使探そう。そんで魔法使い代わってもらおう」

 

「なんでそうなるんですか…」

 

「人助けなんて天使の方が向いてる。うん絶対そうだ。そうと決まればさっさと探そうか!」

 

 

とても弱気な決意を強気に宣言。しかも壮間を巻き込む気満々の口ぶりだった。壮間の目的としてもそっちの方向性で助かるのだが、やはりダンの弱々しさがどうしても不安でしかなかった。

 

 

_______________

 

 

「あっ、どうぞ粗茶ですが…」

 

「ありがとうございます……?」

 

「やっぱり怯えられてる…」

「お前の内なる野蛮のせいだろ。おい俺様にも茶出せよ」

「あんたねぇ、誰のせいだと…!」

 

 

槍でふっ飛ばされたウィザードことダン。その犯人の少女は直後に人がいたことに気付き、お詫びと弁明とその他諸々を兼ねて自身の家に香奈とミカドを招いていた。

 

 

「私、月乃瀬っていうんだけど…あの、普通の! 人間の! 女子だから!」

 

「えっでも槍…っていうか、月乃瀬ってどっかで……あー! もしかしてヴィネットっていう人助けが趣味な悪魔さん!?」

 

「うそ、なんで知ってるの!? あと別に趣味じゃないから人助け!」

 

 

彼女は「月乃瀬=ヴィネット=エイプリル」。予め言っておくが、悪魔なのに心優しく良識に溢れた天使のような存在である。付け加えるが、さっきの槍は稀にある例外である。

彼女がヴィネットだと知った瞬間に、香奈の心から警戒が消えた。悪魔でも人助けが趣味なら良い人だろうと。人ではないが。

 

 

「ずっと探してたのガヴさんの友達! あれ、なんで探してたんだっけ…あ、そうだ魔法使いさんだ。じゃあ別に今見つけても意味ない…? まいっか!」

 

「ガヴのことも知ってるのね…何者…? 人間??」

 

「なんっでヴィーネとガヴを知ってて俺様を知らねーんだ。つーか茶が遅いんですけどォ!?」

「あんたちょっと黙って」

 

「詳しい話はお茶でも飲みながらかくかくしかじかで! あっ、ヴィーネちゃんお菓子ある? カステラとか!」

 

「すごいグイグイ来るタイプの子ね!?」

 

 

懐に入り込んだら香奈の本領発揮だ。妖怪ハーフだらけの妖館に秒で馴染んだ彼女にとって、悪魔という種族差も大した壁ではなかった。そんなこんなでかくかくしかじか。

 

 

「…で、魔法使いさんを探してたわけです! うわ、すごい顔」

 

「そりゃこんな顔にもなるわよ…え、未来? 歴史が…なに? 全然わかんないんだけど」

 

 

とはいえヴィーネは頭がいい方である。話の要点はきっちりと理解できていた。つまりミカドは魔法使いではなく、ダンが持つ魔法使いとしての力が欲しくて、そうなった時にそれに関する記憶や出来事が消えるというわけだ。

 

思い出は人一倍大切にしているヴィーネ。香奈に悪意が無いのは分かるが、そう言われるとやはり抵抗が大きく……

 

 

「…うん、別にいい気がしてきた」

 

「えぇ!? いつもはこれでギスギスするってソウマ言ってたのに!」

 

「ダンとは魔界で近所だし、魔法使いじゃなくなったって別に…というか昔のダンの方が可愛げがあったからそっちの方がいいわ」

 

 

ヴィーネだけじゃなくダンの方も大したリアクションはしていなかった。想像を遥かに下回るリアクションに、香奈のギアも空回る。

 

 

「ってそんな事より、ガヴの話で思い出した!」

 

 

そんな事で片付けられた。

 

 

「ダン! あんたでしょ学校で嘘言いふらしたの!」

 

「ハァ? 嘘? 言いがかりだぜヴィーネ」

 

「私が学校休んだ理由よ!」

 

「そういえば…確かにヴィーネちゃん風邪だって聞いてた。違うんだ」

 

「そう、風邪は私じゃなくてガヴ。どうしてもガヴを一人にさせるのが不安だったから、学校休んだのよ。ラフィがいないから、その言伝をサターニャかダンのどっちかで悩んだんだけど…!」

 

 

ダンに頼んだ結果がアレだったようだ。しかし、そこまで聞くとあの怒り方は過剰だったかのように思えるのだが、この話には続きがあった。

 

 

「風邪ならまだ全然よかった…でも、プリントを取りに学校行ったらみんな仰天顔!? それで話聞いたら風邪どころか不治の病って話になってるじゃない! 私が! 心当たり無いのに顔合わせただけで泣かれる気持ちわかる!?」

 

 

話の顛末はどんどん酷い方向に。香奈が聞いた相手がたまたま噂の又聞きか何かで風邪と認識していただけで、実際はそんな虚偽のドラマが繰り広げられていたらしい。そして事実を看破されたダンはというと、焦るどころか堂々と開き直る。

 

 

「そーだ、俺様が言いふらした。その嘘をな!」

 

「魔法使いさんが…? そんなのなんのために…」

 

「そんなの学校サボった罪悪感に嘘の罪悪感を上乗せすれば、ヴィーネが学校で居心地悪くなって困るだろ。そしたら俺様の力が証明されて気分がいい!」

 

 

聞くだけ無駄の最低だったし、なんなら理屈がガキだった。

 

 

「俺様はお前らが嫌がる事を的確に突く! つまりこれはお人好しやアンポンタンとは悪魔の格が違うってことを見せつける、圧倒的悪魔マウントだ!」

 

「あんたねぇ…!」

 

「甘いんだよヴィーネ。いいか、俺様もお前も悪魔なんだぜ? そんな善い人ぶってねーで、もっと好きなようにやった方が……」

 

「そういうの間に合ってるから。休日明けたらダンの口からみんなに説明して」

 

「はッ、誰が指図なんか!」

「昔のあんたのことバラすわよ」

「それはズルい」

「どの口がズルとか言ってんの」

 

 

またしても槍がダンの首に向けられ、彼も指輪がはまった両手を上げて降参した。ヴィーネは良識はあるようだが、激情の発散に関しては間違いなく悪魔だ。

 

 

「とにかく、その人がゲートなのよね。だったら魔法使いとしてちゃんと守りなさいよ。私はもう一回ガヴのとこ行ってくるから!」

 

「…守られる筋合いは無い」

 

 

そこでようやくミカドが口を開いた。自分が何を求めているのかも分からないのに、戦えもしないまま守られて生き延びるのなんて嫌だ。その一心で出た言葉だった。

 

 

「言われなくても守ってやんねーよ。魔法使いじゃないなら別に興味もないしな。あとお前弱っちぃし?」

 

「そんな事は…貴様に言われずとも分かっている…!」

 

 

ミカドは憤りながらも、胸ぐらを掴むまではしなかった。虚しいのは己自身で、そんなことをしても意味がないと理解しているから。ずっと行き場がないままの感情を抱えて、ミカドは黙って外へと出て行った。

 

 

「…やーめた。あいつ面倒くせーわ、俺様は適当に遊んでくる」

 

「はぁ!? 何言ってんの魔法使いさん! ミカドくん守れるの魔法使いさんしかいないのに!」

 

「知らねー。なんで悪魔の俺様が、他人の命まで面倒みなきゃいけねーんだ?」

 

 

ヴィーネに咎められる前にダンはスモールリングを使い、体を小さくしてどこかに逃げてしまった。

 

 

「あの人、本当に仮面ライダー!? なんか思ってたのと全然違うんだけど!」

 

「ダンが本当にごめん…一応、代わりの応援は呼ぶから。私はやっぱりガヴのところ行くけど…香奈さんはどうする?」

 

「うーん…私がいてもミカドくん守れないし、無視するしなぁ…私もガヴさんのとこ行く! 風邪って心配だし。天使と悪魔の話、聞きたいし!」

 

「うん…いいけど、なんかメラメラしすぎじゃない…?」

 

 

ミカドやダンのことが気になりながらも、さっき人質にされたことを気にしている香奈。自分なら何か出来るかもしれないと思ってミカドに同行したが、このままでは足を引っ張るばかりだ。今はとにかくこの時代のことを知ろうと、香奈はグーで気持ちを固めた。

 

 

_____________

 

 

自分が信じていた正義は尽く誤りで、変えようとしていた世界は個人の力でどうにか出来るような物ではなく、悪だと憎んでいた仮面ライダーは正義の存在で悪は自分自身のような愚者のことだった。

 

ミカドの人生を形作っていたモノの全ては、過去に来た事でひっくり返った。

 

唯一揺るがないのは、未来を救いたいという気持ち。これを他者に託すことさえできれば、ミカドの存在する役割は消え失せ、長々と他人の物語に居座らなくて済む。それはこれ以上の無い終わりのはずだ。

 

 

「それさえも許してくれないのなら…傷跡でも残すか…? 奴の…日寺の人生に、俺という消えない傷を…」

 

 

まさしくミカドの心で渦巻く、タスクを殺めた後悔のように。日寺壮間は優しいのだから喪った者の意思を無下にはしない。そうやってミカドの望みを力づくで押し付ければいい。これが未来を救うための、最善手だ。

 

なんにしても、戦って、絶望して、消えることがミカドに残された唯一の希望だ。

 

 

「俺を絶望させたいのだろう…? 来るなら来い魔人共! 逃げも隠れもしない! 俺を絶望させてみせろ!」

 

 

ミカドは「ゲート」だ。生まれつき魔力が高く、絶望させることで怪人「ファントム」を生みだす人間。この時代のファントムが仲間を増やすことを目的にしているのなら、きっと今もミカドを見ているはずだ。

 

その思惑が的中したか、空気が騒めいた気がした。

闇の気配は濃くなっていき、日陰から現れた少女がミカドを怪しく笑う。

 

 

「…気付いていたとはやるわね。この私の悪魔的尾行(デビルズチェイス)に…!」

 

「やはりいたようだな…さぁ来い、何も成せぬ人形の一つくらい壊してみろ」

 

 

しかし、目の前の赤毛の少女は笑うだけで動かない。

ミカドはそんな彼女から幾つも違和感を感じていた。まず本能的に全く脅威を感じないのと、さらに言えば構えに隙があり過ぎる。だがどことなく闇のオーラは感じるので、実力を隠しているだけの可能性が高い。初手からそれだけの強敵に当たったのなら僥倖だ。

 

 

「クックックッ…待ちなさい愚かな人間。この私、サタニキアに勝負を挑むことの意味を理解していないようね…」

 

「なんだと?」

 

「負ければ最後、多くの物を失う事になる…その覚悟があるのなら相手になってあげるわ」

 

「愚問だ。俺に失うものなんて、何一つ無い」

 

「……いい覚悟ね。面白い! 受けて立とうじゃない!」

 

 

ミカドはドライバーを構える。しかし、彼女は変化する素振りも見せず、ただ握った右手を差し出した。これにはミカドも思わず固まる。

 

 

「何やってるのよ、手を出しなさい」

 

「貴様、何のつもりだ……?」

 

「いいから早く! せーのっ、じゃんけん……ぽんっ!」

 

 

勢いに乗せられてミカドが出してしまった手は「グー」。一方で少女はチョキに親指を足したよく分からない手を出している。ミカドは知らないが、これは子供のじゃんけんではよく流行しがちな、いわゆる「無敵手」である。

 

 

「……ククク、私の勝ちね。これは私が生み出した、あらゆる手に勝つことができる究極奥義、『悪魔の型』!」

 

「……?」

 

「惜しかったけどアンタの負けよ。大悪魔は挑戦者を拒まない……いつでも出直してくるといいわ!」

 

「待て貴様」

 

 

そのままカッコつけて走り去ろうとした少女を、ミカドは当然逃がさない。

 

 

「身の程知らずね…もう再戦するつもり?」

 

「ふざけるな。俺を馬鹿にしているのか? さっさとファントムの姿に変化しろ!」

 

「ファントムぅ? あんな魔獣と一緒にされても困るわね! 私はいずれ人間界を統べる大悪魔、胡桃沢=サタニキア=マクドウェル様よ!」

 

「悪魔だと? 貴様、俺を絶望させて殺すつもりは無いのか……!?」

 

「はぁ? なに言ってんのアンタ…怖っ」

 

 

ドン引くサタニキアことサターニャに対し、ミカドの顔が引きつる。勘違いしていたのはミカドだが、なんだか馬鹿にされている気がして無性に腹が立ったのだ。

 

完全に時間を無駄にした。その苛立ちがせり上がって来ようとしていた時、さっきのサターニャの闇の気配が何かの冗談に思えるほど、とてつもなく巨大な殺気がミカドを襲った。

 

 

「我々を求めるか、ゲートの男……」

 

 

ミカドが咄嗟に振るった右手は幻影を突いた。その気配は反対側に転移し、死人のような雰囲気の長身の男として現れる。

 

 

「あっ! ファント───ぶぅッ!?」

 

 

サターニャが男に軽々とふっ飛ばされたが、彼女が寸前に言った通り彼がファントムであることは疑いようも無い。その姿は黒く揺らぎ、石や枯れ木から生まれた鬼のようなファントムへと変貌した。

 

 

「悪魔に用は無い……見ていたぞゲートの男…魔法使いに非ざる者ながら、それに準じた力を使う……何者だ……」

 

「……名乗る名など…無い。何者にも成れなかっただけの人間だ…!」

 

「それなら敢えて名乗ろう……我々は『レヴァナント』」

 

 

ファントム「レヴァナント」が広げた腕から種子のようなものが落ち、接地と同時に発芽。人間界に漂う魔力を吸って急激に成長し、意思持たぬファントム「グール」となった。

 

 

「人界の言葉で……『死に戻る者』という」

 

 

横で魂が抜けているサターニャはもう放っておいて、ミカドもドライバーを構えた。対面しているだけでも伝わってくるレヴァナントの強さが、相手として不足がないという証拠だ。

 

しかし、そこでもミカドを邪魔する者は現れる。

 

予め補足しておくと、ヴィーネが用意した代わりの応援とは断じてサターニャではない。ミカドを守るために呼ばれた応援は、ファントムの魔力を嗅ぎつけて駆け付けた。

 

 

馬に乗って。

 

 

「……馬…!?」

 

 

リアルな馬に乗って、サングラスをかけて、ノースリーブのジャケットを着た男が来た。ヘッドホンも付けているがどこにも繋がっていない。意味が分からない恰好だ。

 

ついでに馬は起き上がったサターニャを轢き飛ばして行った。

 

 

「俺を呼んだのは誰だ? 俺が誰か、聞きたいんだろ!?」

 

 

そりゃ気になる。こんな男が現れたら。

そう口には出していないが、そう聞こえた体で男は言葉を続けた。

 

 

「言っておくけどカレー粉の妖精じゃないぜ! 俺はカレーよりグラタン派だからな!」

 

「何を言っている貴様…」

 

「俺は富も地位も名声もある名もなき流浪人。その名も不二崎(ふじさき)(すぐる)、さらにまたの名を……」

 

 

名もなきと言いながら名前あるらしい。2つも。

サングラスをその辺に投げ捨てた不二崎は右手の指輪を腹部にかざした。その見覚えのある行動は、ミカドも無視できない。

 

 

《ドライバーオン!》

 

「古の魔法使い…ビースト!」

 

 

ダンと同じで、魔法でドライバーを呼び出した不二崎は、左手に四角い指輪をはめて高く掲げ、腕を大きく回して構えを取った。ただし馬の上で。

 

 

「変~~身!」

 

《セット! オープン!》

《L・I・O・N! ライオン!》

 

 

「ビーストリング」を鍵として、ドライバーの扉が開き、黄金の獅子が顔を見せる。角ばった黄金の魔法陣が(馬ごと)不二崎を通り過ぎると、その姿を新たな魔法使いへと変えた。

 

黒の素体に金獅子の力を纏う。緑の眼が獲物を狙う。

あとやっとそこで馬から降りた戦士は、「仮面ライダービースト」。

 

 

「っ…この時代にも複数の仮面ライダーが…邪魔をするな!」

「いいかボウズ、よく聞け」

 

 

不思議な力が働いているように、何もかもがミカドの邪魔をする。この物語はミカドに不要な無能だと烙印を押し付けたくせに死なせてはくれない。

 

またしても思うようにいかず苛立つミカドに、ビーストは近寄って諭すように肩を叩く。

 

 

「人生は長い!」

 

「何の話だ!?」

 

「覚えておけ、人生で大切なのは三つの星。一つは北極星、一つは太陽、もう一つは梅干しだ!」

 

「くだらん!」

 

「さぁ食事の時間だ!」

 

「ふざけているのか貴様!」

 

 

 




幹部ファントムってメジャーな幻獣の法則なんですけど、APEXのおかげでレヴァナントも十分メジャーでしょうということで採用。グールの親分みたいなイメージです。

ミカド、変な野獣に出会う。ダンタリオ、言う事を聞かない。ヴィネット胃が痛い。次回はビーストとウィザードが色々やります、物語の進行はしばしお待ちください。

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