仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
質問『ライダーの“解釈”について』
ジオウ、ゲイツのアーマータイムやアナザーライダーの能力は変身者のそのライダーへの解釈で振れ幅があります。理解や知識が深いほどその能力は多彩かつ強大となり、応用も効くようになります(四谷さんや相場は理解が偏っており、ツクモは鬼の力に対する理解だけ完璧だった。一番理解が深かったのはナギ)。令央は逸脱しており、ライダーの要素から解釈を広げることで、望む能力の生成や複数の能力の結びつけにまで至っています。姿にも解釈が多少反映されます。
キャラ紹介もネタ切れ始めました146です。今後はこんな感じで貰った質問やリクエストを前書きでやっていきたいと思います。
ダンがどんな奴か分かったところで、本題にようやく突入。アナザーウィザードが動き、ミカドも動き、あと出てなかった4人目も合流します。壮間は放置。
今回も「ここすき」をよろしくお願いします!
竜峰家は魔界に封印された魔獣『ファントム』を管理する一族。指輪魔法という変わった魔法を知る一族でもあった。それじゃ食っていけないので他にも色々やっているのだが。
ダンタリオは悪魔学校にも行っておらず家業を継ぐ予定だったが、それはもう憤懣やる方ない理不尽な事故でファントムの封印が解けたものだからさぁ大変。人間界にファントムが数体解き放たれ、責任は当然竜峰家に。そんなわけでダンタリオは尻拭いのため人間界に降りたのだった。
「熱下がらん…ネギを首に巻いたのに…」
ダンタリオは元々魔力が少ない。故にファントムを飼わないと魔法も使えない。そんなダンは一日複数回の戦闘と魔法の多用で魔力が尽き、ガヴリールに風邪を感染されてしまったのだ。
ダンはこう見えて結構素直な性格。人間界の俗説を真に受けてネギを使うも、そんなものではちっとも良くならない。
「…全然辛くねーし……全然余裕だし!? ヴィーネが一晩で治したなら俺様も余裕だっつーの! えっと!? 他に風邪治す方法は……!?」
ネギを尻に刺すらしい。
ダンは人間に恐怖を覚えた。正気ではない。風邪治すぞ!→ネギを尻穴にぶっ刺す!とはどう考えてもならないだろう。猛毒のあるフグという魚をも食べるという人間のドン引きエピソードを余裕で超えてきた。
しかし悪魔たるダンがこんな事で怖気づいていいのだろうか。否、駄目だ。人間程度が通った道、悪魔ならば飛び越えて当然だ。当然なのだろう。
「は…やってやろーじゃねーか俺様は悪魔だチクショウ!!」
ダンは熱で錯乱していた。
そんな彼が狂行に走る寸前、インターフォンが鳴ってダンを正気に戻した。ネギを投げ捨てて食い気味にドアを開けて来訪者を確認する。
「ダンタリオ! ヒマだから遊んであげるわ、感謝しなさい! テニスで勝負よ!」
サターニャだった。とてつもないアホだが、悪魔学校では志の高さだけでブイブイ言わせていたという悪魔だ。普段通り関わらないに越したことは無いし何より今は風邪がしんどい。
「あーいいかサターニャ、俺様は魔法使いだ。お前と違って暇じゃねーんだよ。人間の遊びなんざ一人でやってろ」
「へぇ…無様なことねダンタリオ。この私に負けるのが怖いんでしょ」
「魔界の果てまで吹っ飛ばしてやるよヘンテコツインドーナツ女が!」
ダンは熱で錯乱していた。が、普段からこうである。ダンはマウントを取られたら取り返す単純な悪魔である。
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「雲一つない晴天! 心地の良い風! 完璧なお出かけ日和ね!」
「こんな日に遊ばないなんてもったいない! ガヴさんの風邪も治ったことだし、みんなでお外で遊びましょー!」
「なんで私の完治祝いで私に選択権が無いんだよ。行かないからな絶対!」
ガヴの抵抗に無論意味はなく、ヴィーネと香奈に引っ張られて屋外に進出。陽の光が辛い。こんなことなら治らなければよかったとガヴは思った。
サターニャとダンは不在だったらしく、人間、天使、悪魔のトリオでお出かけ。問題の移動手段はというと……
「自転車よ!」
「やっぱ高校生のお出かけはこれでしょ!」
「あ、私は自転車乗れないから帰るわ」
「嘘ぉ!?」
ガヴリールは本当に自転車に乗れない。これはヴィーネも少し盲点だった。
「あんたいい歳して自転車も乗れないの?」
「だって天使は飛べるじゃん。神足通もあるし、なんであんな不安定なもんに乗らなきゃいけないのさ」
「じゃあどうしよっか…そうだ、せっかくだしガヴさん! 自転車の練習しよう!」
「それいいわね! そうと決まれば公園行くわよガヴ!」
「なんでそうなるんだよ」
ヴィーネが2人になったみたいで果てしなく面倒くさい。予定変更し、そのままズルズルと公園にまで連れて行かれた。確実に外出用ではないジャージ姿で、目一杯下げたサドルに跨るガヴ。
「そのままペダル漕いでみてガヴ!」
「バランスとってスーッっていってギャリギャリだよ!」
「なにも伝わってこん。まぁこんなもん勢いで…」
足を地面から離して1mも走らずにガシャーンと転んだ。一切の無駄がない、とても綺麗なお手本のような転び方だった。
「よし、これ無理だな」
「諦めが早いわね!」
「出来るって! シャーッでキュイーンだってば!」
「だって前と後ろにしか車輪無いなら転ぶだろ普通。足グルグルも疲れるし、これ考えた人間は多分頭が悪い」
「人のせいにしたわよこの天使」
「出来るまでやれば出来るから! ほら見てて!」
そう言うと香奈はガヴからマウンテンバイクを借り、一瞬でスピードに乗るとウィリーしてジャンプで段差を超え、キレッキレのジャックナイフターンから、もうなんかよく分からない回転とドリフトでフィニッシュ。
「ふぅ…ね、簡単でしょ! ガヴさんもやってみて!」
「ヴィーネ、こいつ本当の本当に人間?」
「私も実は結構疑ってる……」
公園で自転車の技をするのは危ないのでやめましょう。
それからもガヴの自転車特訓は続き、補助輪付けたり、三輪車乗ったり、ガヴが天使の力でズルしたり、通りすがりの子供と喧嘩したりと色々経過。
「そういえば、ヴィーネちゃんが頼んだ応援って…誰?」
ふと香奈が尋ねる。ダンがミカドを放置した時、ヴィーネは別の誰かに連絡を取っていたのだ。
「最近知り合った別の魔法使いよ。それ知ったらうるさいだろうから、ダンには秘密にしてるけど…」
「へぇ! 魔法使いさんがもう一人! どんな人? やっぱ悪魔!?」
「人間…多分。はっきり言って変人だったけど、まぁ魔法使いならゲートを守ってくれるでしょうし…」
そんな事を話している内にまたガヴがこけた。なんだか時間を無駄にしている気がしてならない。段々とボーっとする時間も増えて来た頃、ヴィーネの死角に光が射す。
「ヴィーネさんっ!!」
「ひゃああああっ!? って…ラフィ!?」
「なに!? ヴィーネちゃん何事!?」
「あっ、すいません。驚かせるつもりはそこまで無かったのですけど」
「少しはあったのね…」
何の脈絡もなく現れた美少女。香奈はなんとなく彼女が天使であることを察した。その美しさはガヴとは対照的なもので、銀髪で身長も香奈より大きく、清潔感もあり、あと胸が大きい。
「ヴィーネさんが顔が七色に発光して口からコーラを吐くようになる病にかかったと聞き、面白…いえ心配で急いで人間界に戻って来たんですけど…!」
「それどこ情報。めちゃくちゃ尾ひれついてるじゃない! 私は平気だし風邪を引いたのはガヴ! あとガヴももう元気だから!」
「そうなんですね。じゃあ、こちらの私をすごく見てくる女の子は…」
「未来から来た人間の香奈です! 天使さんですよね! ガヴさんの友達のラフィエルさん!」
「当たってますけど状況がよくわかりませんね。ガヴちゃんがそこで転んでるのも含めて」
白羽=ラフィエル=エインズワース。未来のガヴリールから聞いた、天使の一人だ。タプリス曰く天使学校次席卒業者で、ガヴリール曰く性格に難があるらしい。
とりあえず恒例行事として、香奈の身の上を説明。
「そういうことでしたか。私、ダンさんはとても嫌いなので特に構いませんよ」
「また怖いくらい呑み込みが早い…ま、いいならいいんだけど」
「それより未来から来た香奈さん。知っていますか? 天界には預言書というものがあるんですが……それによると2019年には犬が絶滅してしまうようですよ?」
「えぇっ!!?? あんなに沢山いるのになんで!? はっ…もしかして未知の感染症とか……!」
なんだか話がとんでもない方向に飛躍した。
もちろん嘘である。ラフィは実に楽しそうに嘘を吹聴し続ける。
「そうです! しかし、治療法もあります…それはズバリ、魔法石です!」
「魔法石!?」
「はい! その魔法石が埋まっている場所というのが…まさにこの辺りなんです! その魔法石があれば犬を絶滅から救うことができるんです! あっ、何故かここにスコップが!」
「そうと決まれば早速掘り出すしかない! ガヴさん、ヴィーネちゃん、スコップ持って! うおおおおおおっ!!」
不自然に放置されていたスコップを持ち、公園に穴を掘り始める香奈。それをめちゃくちゃ笑顔で震えながら眺めるラフィ。穴を3つほど掘った辺りで息切れした香奈に、吹き出しながらラフィは一言。
「すいません…嘘です」
「嘘ォ!!?? いや、嘘でよかったけど…はぁ!?」
「あなた才能ありますよ! ぜひ将来は専属のおもちゃとして白羽家に…!」
「いまおもちゃって!? 天使だよねラフィちゃん!?」
天使の笑顔で青鬼院蜻蛉みたいなことを言いだした。確かにこれは性格に難がある。主席が引きこもりで、次席がこの性格、天使のツートップがこれだと思うと天界の未来が心配になってくる。
「あ、そういえば…ヴィーネさんに香奈さん。さっき不二崎さんにゲートの護衛を頼んだと言ってましたけど……」
「そうね。まぁダンに頼むよりは安心だと……ん??」
ラフィが提示したのは不二崎がくれた連絡先。それはメールでも電話番号でもなくSNSアカウントであり、それによると現在、不二崎は四国地方にいるらしく……
「一大事!!!」
「また急に大声!!」
「大変よ香奈ちゃん! 私、頼む相手間違えた!! あのライオン、ゲート放って四国行ってる!」
「えぇ!? じゃあ今、ミカドくんは1人ってことで……!」
不二崎はゲートが絶望するとファントムになることをまだ知らない。ので、ゲートを守る義務を把握していない。そして一人になったミカドがどうなるか、香奈の想像が弾き出した結論は一つ。
「ミカドくん自殺しちゃう!!」
間違いではないが、極端な結論だった。
「自殺!? 遊んでる場合じゃない! ガヴ、自転車漕いでる場合でもないわよ何やってるの!!」
「お前らがやれって言ったんだろ」
「まぁ、それは大変ですね。私も天使としてお手伝いします!」
かくして、色々と不安なミカド自殺阻止隊が発足。行動を開始した。
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一方その頃、ダンとサターニャはテニスで勝負の最中だった。
「ククク…見るがいいわ、私が生み出した最強奥義! 悪魔殺法・デビルサーブ!」
「しゃ…しゃー…! かかって来いやー…!」
なんとか意地でラケットを持ち、試合をしているが、ダンはかなり限界だった。魔力もあまり回復しておらず、さっきから頭痛と吐き気で足元すらおぼつかない。
しかしサターニャはそんな事に気付かず、容赦なくサーブを炸裂させた。この悪魔、アホだが身体能力は極めて高い。
「……くだばれぇッ!!」
「その程度? 今日は私が勝たせてもらうわよダンタリオ!」
「ッ……! 俺様が負けるわけ…ねーだろーがァァァ!!」
「なっ…やるわね。それでこそ大悪魔の座を争う私のライバル!」
サターニャとダンの関係は、他と比べると誠実と言えるのかもしれない。基本的にサターニャはアホなので、ガヴやラフィは一方的に手玉に取れてしまい勝負にならない。サターニャが優位を取れる相手といえばタプリスだが、それもあちらがポンコツ過ぎて勝負にならない。
しかし、ダンはサターニャ相手には全力で戦いに臨む。悪魔らしく生きると決めた以上、悪魔としての志だけは高いサターニャには負けられないのだ。能力や性格を考えると、ダンはサターニャと対等に戦える唯一の存在だった。
(頭クラクラしてきた……鼻の奥から変な匂いする……なんで今テニスやってんだっけ…?)
とはいえ、ダンの意識は朦朧としっぱなし。意地で喰らい付くにも限度がある。辛いのだからやめればいいのに、今のダンは昔のように融通が利かない不器用な面が出てしまっている。
そうだ、辛いならやめる。これはガヴリールから教えてもらったことで、確かその時、隣には別の誰かがいたような……
『ダンさん、最後にお願いがあるんですけど───』
「あ……思い出した…」
魔法使いと勘違いしていたミカドの姿。見覚えがあった、あれは魔法使いではなく「仮面ライダー」だ。そしてダンは、もう一人仮面ライダーを知っている。彼は別れ際に一つ、ダンに頼みを託していたのだった。
「……しゃーない。おいサターニャ!」
「何よ。勝負の最中に無駄口とは余裕ね!」
「俺様は暇じゃねー。こんな勝負はさっさと終わりにしてやるよ」
「ふっ…望む所よ! この一球を落とした方が負け───」
ダンがサターニャのスマッシュを返した。
その瞬間、ダンは指輪がはまった右手をベルトにかざし、魔法陣の中心をボールが通り抜ける。
「言ったな。取れるもんなら取ってみろ!」
《ビッグ プリーズ》
「は、ちょっ!それは反則……ぎゃぁぁぁぁっ!!!」
巨大化した剛速球がネットやサターニャのラケットを粉砕し、サターニャもぶっ飛ばした。ダンはサターニャに対して本気で戦うが、別に正々堂々とは言ってない。勝つためならどんな手段でも使うのがダンの本気だ。
「俺様の勝ちだ! 後でドーナツ奢ってもらうぞ!」
頭が痛い。でも、まだまだ余裕なはずだ。
悪魔に勝った大悪魔なら、頼み事の一つくらい余裕で乗り越えられるはずだ。
破れたネット、折れたラケットなどの始末を気絶したサターニャに押し付け、ダンは走り出した。
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自責と後悔だけで生きるのは疲れる。もう何週も何週も同じ言葉で自分を責めて、飽きもせず無価値を確かめ続ける。早く終わりにしたいのに、この馬鹿げた世界がそれを許してくれない。
「何も出来ないか…俺に役割なんて無い…きっと、そういう事なんだろう」
タイムジャッカーは「役割」と言っていた。壮間がもし「主役」なら、香奈は「ヒロイン」で、アナザーライダーが「悪」で、ライダー達が「師匠」で……ミカドは壮間にとってなんだったのだろう。
「友」か「仲間」だろうか。せめてそうなれてたら、あれ以上間違うこともなかったのだろうか。どうやったらそうなれたのだろうか。
「敵」になれたら、壮間が終わらせてくれるだろうか。「過去」になれたら、意思を継いでくれるだろうか。壮間という主人公の「何」になれば、ミカドは救われる?
生きて戦えというなら教えてくれ主人公。ここで舞台から降りる以外に道はあるのか。
「ミカドくんいた!!」
海を眺めていたら、静寂もクソもない女の声がしたので振り返る。香奈とヴィネットとかいう悪魔に、なんか銀髪の女が増えていた。後ろから遅れて来たのはこの時代のガヴリールだろう。
「待ってください香奈さん! あの人…もしかしてあそこから飛び降りる気では!?」
「やっぱり自殺を…! 早まらないでミカドくん!!」
「落ち着いて! 別に自殺したからって天国行きは保証されないのよ!?」
銀髪の女、ラフィがミカドを指さしてそんな事を言った。確かにここは標高という意味ではそこそこの高さがある場所だ。背後に海も見える。
しかしミカドはこんなところで投身するつもりはない。
そもそも香奈側から見えないだろうが、ここは別に崖でもなんでもなく、柵を越えた数メートル下に陸地がある。こんな場所でどう投身しろという話である。
「ごめんねミカドくん…私じゃ何もできなかった。ミカドくんが抱えてるもの、全然わかってなかった。もう一回みんなで考えようよ! ミカドくんの未来を救う方法とか、ソウマとも一緒に! だからこんなところで死んじゃ嫌だ!」
だから別にここでは死なんと言うのに。ミカドは反応に困る。
ちなみにだがラフィはそこに陸があるのを知っているため、困るミカドを見て笑顔だった。初対面だが殴り飛ばしたい衝動に駆られる。
「……生きてどうしろというんだ。何も考えずに貴様らの日常の一部になれば、それで満足なのか。勝手を言うな! 俺は……罰を受けるべき存在だ! 俺には生きていい道理なんて一つも無い!」
戦う事でしか償えない。それなのに、その罪が重くてミカドはもうまともに戦えもしない。そんな矛盾は理解されたところで分かち合うことなんてできない。
「もうたくさんだ…どいつもこいつも、俺を罰するつもりも救うつもりも無いなら失せろ!」
「バーカ。そうはいかねーのが魔法使いってやつだ」
柵の向こう側から、黒い蝙蝠のような翼を広げたダンがミカドの肩を掴んで降り立った。真っ黒なスーツ姿で、頭に山羊の角を生やした、悪魔としてのダンの姿。ウィザードよりも魔力消費が抑えられる低燃費スタイルだ。
「貴様…ウィザード!」
「一緒に来てもらうぜ『仮面ライダー』。頼まれ事を思い出した」
「ダン!? 急に来て何するつもりよ!」
「えっ、あれ止めた方がいいの? 任せた方がいいの? どっち!?」
「もうダンに任せていいんじゃね? なんかよく分からんけど」
「あ、私はあの人と関わりたくないので帰りますね~」
「うるせーんだよ雑魚共が! 俺様は俺様で好きなようにやるだけだ、黙って寝てろ!」
ミカドの指にリングを装着させ、魔法を発動させる。「スリープ」の魔法でミカドは一瞬で眠りに落ちる。その体を抱え、ダンは専用バイク『マシンウィンガー』に乗って逃げて行った。
「と、取り合えず追おう!」
「そうね! ダンが何するか心配だし…行くわよラフィ、ガヴ!」
「「えぇ~……」」
「嫌がるな天使ども!」
「だって面倒くさいし…あとイベント周回したい」
「もうなんかダンさんを見てるだけで不快になったので、帰って映画でも見ようかと」
「そんなんだからあんたらと一緒にいると天使って呼ばれるのよ…私、悪魔なのに…」
ちょうど香奈が同じことを思っていた。タプリスがとても善い天使だったのを実感する。残された良心的な天使、もとい悪魔のヴィーネと共に香奈はダンの足跡を追うことに。
「…あれ? ガヴ!?」
しかし、自転車を漕ぎ始める前にヴィーネが気付く。
さっきまでそこで欠伸をしていたガヴリールが、影も形も無くなっていることに。
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「っ…ウィザード!」
「って、もう起きた。もっと寝てろよ」
僅か10分足らずでミカドは魔法から目覚めた。やはり魔力が足りなかったようだが、ダンにとって大した問題はない。
「結構前、俺がガヴと初めて会った時。付き添いでもう一人いたのを今更思い出した。日寺壮間…魔法使いじゃなくて仮面ライダーだって言ってたな」
「…そうか、日寺は更に過去に行ったんだったな」
「そいつに頼まれた。そのうちミカドってやつが現れるから、救ってやって欲しいって」
いかにも壮間が言いそうな頼みに、奥歯に怒りが溜まるような感覚がした。救いたければこんな脇役、早く見限ればいい。それが救いになることが何故分からない。
「ヤツは…俺の希望を継ごうとはしなかった。無責任に、何の思慮も無く俺を生かしたんだ。そんな男が何を…馬鹿馬鹿しい」
「何の話かなんてどーでもいいけど、俺様も別に頼みを聞いてやるとは言ってない。お前をどうするかはこれから決める」
視線を落としてようやく気付く。ミカドの右手の指輪は、さっきのスリープの指輪ではなくなっていた。ウィザードの顔をそのまま指輪にしたような、尚且つ変身用ではない指輪。
《エンゲージ プリーズ》
抵抗される前にダンはミカドの右手を持ち、ベルトにかざして魔法を発動させた。すると、赤い魔法陣がミカドの体を隠すように出現する。
「これは…!? 俺に何をする気だ!」
「言っただろ、話なんて聞いてやらない。直接お邪魔して見てくる。お前の過去やら絶望をな!」
「エンゲージ」は使用者の精神世界「アンダーワールド」と現実世界を繋げる魔法。本来は生まれる直前のファントムを現実に出る前に倒すために使うが、今回は単に探るために使う。
魔法使いであっても彼は悪魔。他人の心に不法侵入するのに、躊躇いなんて無い。
魔法陣を通り抜け、ダンはミカドのアンダーワールドに降り立つ。
「ここがアイツのアンダーワールド……うっわマジ…?」
そこは荒廃した2068年の世界。怪人と仮面ライダーによる破壊で、泣き叫ぶミカドから始まる物語。余りに予想以上なものが現れて、ダンは強めに引いた。
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「……なんだこれ」
ダンを追う気にはなれなかったので帰ろうとした矢先、何者かに口を押えられそのまま景色が一瞬で変わった。突然すぎる出来事に、ガヴは取り合えず死んだ目で呟く。
感覚としては神足通を使った時に近かった。そして、ガヴを拉致した犯人も目の前にいた。
「久しぶりだな、天真の妹」
「うわっ……ルシ兄さん」
姉の友人、ルシフェル。出会って一言目が「うわっ」なのは少々心外だったのか、ルシフェルも苦い顔を見せた。未来のガヴとは違ってすぐに思い出せたのは、駄天する直前に壮間からその名前を聞いたからだろう。
「如何にして我が謀を知ったのかは問わないが、ゼルエルを動かしたのはお前だな」
「…そういえばそんなこともありましたなー……どうでもよすぎてすっかり忘れてたわ」
「お陰で随分と計画が狂った。しかし、サバトの刻は変わらずやって来る…故に道筋を変え、天真の妹…貴様を封じることにした」
ルシフェルのこういう所がガヴは苦手だった。サターニャとも少し違って、ルシフェルはなんというか言動や思想の至る所が「キツい」のだ。ガヴは既に胸焼け寸前である。
(マズい。なに言ってるのか全然わからん)
あと単純に話している内容がひとつも伝わってこない。独り言のつもりならいいのだが。
「ゼルエルから逃げながら計画を遂行する猶予は無い。人質も兼ねているが、貴様には魔法をかけ、ゼルエルとの連絡を封じさせてもらった。彼女が気付く前にサバトを決行する」
そもそも姉に会ったら殺されるのに、誰がこっちから呼ぶかと無関心な目で訴えかける。しかしガヴも天使の端くれ、彼が良からぬことを企んでいるのは察した。
「なんかシリアスな感じに持って行こうとしてるけど、結局ルシ兄さん何する気?」
「…その堕ちた姿。今の貴様なら理解できるはずだ、我が理想を。我は……天界を作り直す。より崇高な世界へと」
覚悟の表情で言い放つルシフェル。ガヴが抱いた感情はただ一つ。
なに言ってんだコイツという冷めた困惑だった。
ファイズ編から引っ張って来た、いわゆる「ミカド編」もクライマックスです。色々と未回収なものも回収しつつ、残りのウィザドロもやっていきましょう。
今回「短く」を意識しているので色々カットしてます。ので、少し補完。
バジリスクの人間態はギャルで、あの後はなんやかんやでガヴたちと仲良くなります。でも別に善性ファントムってわけではないちょっと面倒くさいやつです。どう考えても描写に尺が足りなかった。
ここすき、高評価、感想、質問やリクエストなどよろしくお願いします!