仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
アナザーウィザードに変身した天使。天界の戦闘部隊の一員。かつてはゼルエルと共に下界で修行をしていたが、その際に天界の文化レベルの低さに絶望。天界と魔界の戦争を起こすことで発展を促す計画を立て、天使2人、悪魔2人を使ったサバトを実行し、彼女らの魔力とゲートから抽出した魔力から生み出した大軍勢を率いて天界に攻め込んだ。その過程で竜峰=ダンタリオ=レンブラッドを殺害した。あとゼルエルが大好き。
本来の歴史では・・・ファントムと戦う指輪の魔法使いの話を聞き、独断で下界に降りる。ガヴリールの未来の兄を自称して登場し、ダンタリオの指輪魔法は天界が持つべきという理由で彼に襲い掛かる。が、なんやかんやで完全敗北し、それ以降はホストを始めたりパチンコにハマったり寿司修行をしたりと下界文化に翻弄された姿で散見されるようになる。
スランプ気味でした146です。ちょっと進めてる作品が多くて……近いうちに新作も出すことになりそうです。ひぃ……
ダンまち編、3話目。【X階層】の話を聞いた冒険者と、別世界の住人たちは……?
今回も「ここすき」をよろしくお願いします!
「なにィ~? 別の世界から来ただって~!?」
「はい……信じてもらえないだろうと思って、説明遅れたんですけど……」
【ヘスティア・ファミリア】の拠点、『竈火の館』にて。壮間の口からファミリアの5人と1柱に告げられたその事実に、主神ヘスティアは湾曲した声を上げた。壮間は向けられる様々な視線に居心地が悪そうに、皿の上の厚焼き玉子を取って食べる。知ってる味で美味しい。
仮面ライダーディエンド、アオイがこの館に現れ、ダンジョン【X階層】の存在を彼らに叩きつけた。その際アオイが「お詫び」として用意した料理が多過ぎたため、壮間と香奈もご馳走になることになった。
ちなみにアオイだが、その後いくつか重要なことを言い残し、最後に『光ヶ崎ミカドは既にダンジョンを出ているよ』と壮間に告げると、泥の塊になって崩れ去った。どういう技や道具を使ったのかは知らないが、ここに来た彼は偽物だったようだ。ともあれミカドが無事で壮間と香奈は安心した。
「申し訳ございません……
「いえ……春姫殿のせいではなく、偽物に騙されたのは自分です……そんなことにも気付かず風呂を楽しんでいた自分が情けない……な、この味噌汁の味の深みはっ……!?」
騒ぎを聞きつけてか、【ヘスティア・ファミリア】の最後の構成員らしき
一方でそんな彼女を慰める少女、
「……落ち込んでいる極東組はそっとしておきましょう。それで、別の世界から来たというのはどういう意味ですか!? リリにはよくわかりません」
「うーん……なんだろ、ダンジョンとか無くて、神様……は多分いるかもだけど見たこと無いし、全然ファンタジーしてない世界! 私はこの世界大好きだよリリちゃん!」
「彼女馴れ馴れしいですね……そして全くわかりませんが」
「すいません。とにかくこことは全く違う世界です。都市とか国の外とかそういうレベルじゃなくて。俺たちはあのアオイって人に、この世界に連れて来られたんです。で、帰れなくてとても困ってまして」
「つまりアオイさんも別の世界から来たってことですか……あ、ありがとうございます」
机中央に置かれた鍋から野菜と魚を小皿に取り分け、ベル達【ヘスティア・ファミリア】の皆に配る壮間。なんだか全体的に随分と和風な献立だ。壮間から皿を受け取りつつも、ヘスティアはまだ壮間たちに怪訝な視線を浴びせる。
「世界がなんだか知らないが、あの青盗っ人の知り合いだなんて信用できないね!」
「ヘスティア様は嘘が分かるんだから、信用も何も無いでしょうよ」
「うるさいぞヴェルフ君! 理屈じゃないんだ、ボクはあの青盗っ人がとーにーかーくー嫌いなんだっ!!」
「あ…そういう話なら俺もそうですよ。百歩譲ってあの人とは知り合いでも、ぜっっったいに友達ではないんで……!」
「お……そ、そうなんだね……」
(ソウマが怒ってるの珍し)
そもそも異世界に勝手に連れて来られたのもあるが、その前はどさくさで撃たれて、危うくファントムもろとも丸焼きにされるところだったのだ。壮間だってそれなりに怒っている。
自分と同レベルの怒りを見ると落ち着くというのは世界を超えても変わらないようで、ヘスティアはそっと怒りの矛先を壮間から離した。
「だがまぁ、これで15階層にいた謎も解けたな。お前らも『変身』するんだろ? あの泥棒と同じように」
「私はしないけどね。ソウマと、ここにはいないミカドくんだけ」
「すいません、それも説明する余裕なくて……」
「『変身』……! アオイさんも凄く強かったし、確かにそれなら【ステイタス】無しでも……というか、なんで思い出せなかったんだろう。あんなに記憶に残ってたはずなのに……」
「やっぱりベルもそうか。俺もあの泥棒を見るまで綺麗さっぱり忘れてた。あんな変わった武器を持ってる奴を忘れるなんて、鍛冶師として自分で自分が信じられん」
記憶の塗り替え、その事象は壮間にとっては覚えのあるものだ。アナザーライダーによって起こされる歴史の改竄と似ている。しかし今回はアオイが現れたら元に戻ったようだし、そもそもアオイは普通に元気いっぱい生きている。
(仮面ライダーディエンドってなんなんだろう。どこかの時代の仮面ライダーなのか、でも今までの人たちは全然違うんだよな……もしかして、俺と同じで……?)
壮間は考え事をしながら、未だ大量に残っている料理をつまんでいく。そして深く何かを考えていたのはヘスティアやベルも同じだった。というか、この事態で何も考えてなさそうなのは香奈くらいだ。
「そういえばお名前聞いてませんでしたけど、壮間さんでいいんでしたっけ」
「あ、はい。そちらはベルさんで……」
「おいおい、お前らが喋ってると日が暮れるぞ。どっちも一歩引いて喋りやがって。それにしても……『ソウマ』か、なんか縁がある名前だなリリスケ」
「やめてくださいヴェルフ様。リリは少しフクザツな気持ちなんです!」
壮間と香奈は今、「客人」としてもてなされている。アオイと関係が無いとは言わないが、壮間たちが彼のことを何も知らないのは事実。
例の【X階層】とやらだってそう。アオイが何を目的にしているのか全く不明だ。ベルたちにとっても急を要する議題なのだろうが、客人がいる手前その話を進める感じではなさそうだ。
「まぁ……なんだ。さっきは疑って悪かったよ。そのお詫びと言っちゃなんだけど、今日はここに泊って行くといい。みんなもそれでいいだろう?」
「えっ、でもそんな! 飯までご馳走になってそれは……」
「いいんだ。お互い青盗っ人に煮え湯を飲まされた者同士、これも縁ってやつさ。無粋はいいっこなしだぜ? ただし香奈君! 君の寝室はベル君の部屋からうんと遠くだ!」
____________
「……俺ってなんだかんだ自分に甘いよなぁ」
神様の言う通りというやつか、ヘスティアの提案を壮間は断れなかった。たらふく夕食を食べた後、風呂にも入らせてもらった。しかも寝間着と寝室まで貸してもらう始末。これだけ広い屋敷なので、空き部屋が沢山あったのだけが罪悪感緩和材だ。
とはいえ、もう時間旅行をするようになって結構経つ。その度に色んな人に寝泊まりを提供してもらっているので、厚意に慣れてしまいつつある自分がいる。
「お金とか、用意しなくちゃだよなぁ。でも免許取るのにかなり使って……」
気絶という盛大な昼寝のせいか、不安のせいか、なかなか寝つけない。いつまで経っても思考が理路整然としている。
……明日からどうしよう。
朝起きて、礼を告げてこの館を出て、またダンジョンに潜ろうか。上層でウロチョロしてる分には安全そうだったし、そこそこ稼げるだろう。
その前にミカドを探さなければいけないか。アオイの言う通り、壮間もミカドが地上に帰還している事に対して疑いを持っていない。
とにかく明日生きることを。早く元の世界に戻ることを考えよう。
「……ソウマぁ、起きてる?」
「香奈か……お前も寝れないの?」
ノックも無しに部屋を覗き込む香奈。余程暇だったのだろう。壮間が起きていることを確認すると、嬉しそうに彼女は助走をつけて壮間の横に飛び込んできた。誤解がないよう付け足すと、添い寝なんて淑やかなものではなく、完全な体当たりだ。
「ってぇ…深夜テンションだなお前!」
「ねーソウマ、お風呂どうだった!? 女風呂すごかったんだ。めっちゃ広かった!」
「それ、男風呂もそんな感じ。檜風呂だったわ。しかもガラス張りで景色も見えるし、高級旅館かよって。タダで入って良かったのかなアレ。ていうかこの世界にも檜風呂とか味噌汁とかあるの驚いた」
「極東、って言うんだって。
「
「え、なんで? 日本真ん中じゃん。それか上?」
「それ日本中心の地図の話な。ヨーロッパから見たら日本は東端。あと上じゃなくて北って言え、馬鹿っぽいぞ」
「私日本史選択だもーん」
この世界にも日本に近い国があるようだ。近い文化が存在するというのは、いつまで続くか分からないここでの暮らしにおいて大きい事実。日本人というのは朝飯で味噌汁を飲めれば生きていける単純な生物だ。
「んでさ、明日どうするの?」
「それ俺も考えてた、当たり前だけど。まぁここを出たらまずミカドを探して……」
「ん? 待って待ってソウマ。ここ出て行くの?」
「そりゃそうだろ! そんな何日もお世話になれるわけないだろが」
「そうじゃなくて……ベルくんたちと一緒になんちゃら階層行くんじゃないの?」
「はぁ!?」
何がどうなってそんな話になっているのか。
確かに、【X階層】はアオイに関する重要な手がかりだ。元の世界に帰るためには彼の力を借りるのが最も確実。しかし【X階層】を攻略したからと言って元の世界に戻れる保証は無い。
早い話『危険』だ。この世界での生活を整えるのが先決というのもあるが、壮間は恐らく【X階層】に踏み込んだことがある。あそこにいたモンスターは異常に強かった。15階層で力尽きた壮間には踏破できない。そして、そんなものにベル達を巻きこめない。
「もしかして迷ってる?」
「迷ってないよ。ナシだ、ナシ。大体あんな奴の口車に乗るなんて危なすぎる。罠だったらどうするんだよ」
「危ないだなんてソウマらしくない。だって2015年でナギちゃんから私を助けてくれた! 凛々蝶ちゃんたちの時だってそうだったよ!? そこにちょっとでも希望あるなら、行こうよダンジョン!」
「それはやらなきゃいけなかったからだろ。俺は……香奈を助けたかったし、ライダーの力を受け継ぎたかった。いつもと今とじゃ、状況がまるで違うんだよ」
ここはライダーの歴史とは何の関係も無い異世界。
アナザーライダーが出なければ、タイムジャッカーもいない。壮間が倒すべき敵はいない。壮間が何かしくじったところで歴史は奪われないし、なにかバッドエンドに行き着くこともない。
だが、香奈はそんな壮間を理解できないと言わんばかりに、食い下がる。
「違わないと思うよ。ベルくんもヘスティア様もいい人。凛々蝶ちゃんや、千歌さんや、ガヴさんがそうだったみたいに、この出会いにも絶対意味がある! 私はそう思う」
「でも……」
「ソウマはどう? このままベルくん達と別れちゃって、本当にいいの?」
香奈に言われてみて自覚した。壮間は、ベル達のことをほとんど聞かなかった。名前すらちゃんと聞いていない。それもそうだ。彼らはライダーじゃない。壮間が知らなくたって、歴史から忘れられることはない。
この世界は壮間が居ても居なくても変わらない。仮面ライダーのような強者が地下にも地上にもゴロゴロいるこの世界では、壮間は無力だ。壮間がこの世界でやるべきことなんて何も無い。
「……何も無い、か。明日から俺は、何を───」
このまま漫然と元の世界に帰る方法を探す。
効率を求めた器用ぶった考えだ。元の世界に帰ったらいつも通り本気になると? まるで「明日から本気出す」と言っている夏休み中の小学生じゃないか。
「寝る。香奈も寝ろ」
「えー、なんで急に? ヒマだしもうちょっとお喋りしよーよ」
「
布団を被って無理にでも瞼を閉じる壮間を見て、香奈はまた嬉しそうに今度は部屋を出る。壮間の中でようやく、完全に『異世界ボケ』が消え去った瞬間だった。
夜が明けた。世界が違っても夜が短いとかは無い。普段と同じくらいの睡眠時間を経て、壮間は少しだけ早めに起床し、爆睡していた香奈を叩き起こして広間に向かった。
その途中、窓から庭で誰かが動いているのを見た。
それはベルだった。こんな朝早くからナイフを振り、特訓をしている。昇りかけた太陽の光を反射した赤い瞳が残光の尾を引くほど、その動きは凄まじかった。とても起き抜けとは思えない。
「っ…壮間さん、香奈さん、おはようございます」
「おはようございますベルさん……凄いですね、朝から。速くて目で追えなかった…」
「いえ、そんなことないですよ。ただ……少しでも早く強くなりたいんです。そのために、思いつくことは全部やりたいっていう、ただそれだけです」
「凄いですよ。そういえばベルさんって、めっちゃ若いように見えるんですけど何歳なんです? いつから冒険者に?」
「あ、それ私も気になってた。多分年下だよね。かわいいし!」
「14です。冒険者になってからは……4か月くらいですね。それまでは祖父と一緒に田舎で暮らしてました」
「中学生! それなのにもう戦ってお金稼いでるの!? 立派だよ立派! だって私が中学のときなんて……」
中学生という概念も知らないであろうベルに感動を熱弁する香奈。それを横目に、壮間は言葉を失っていた。まだ14歳でたった数月の経験のみ、それだけであの動きができるものなのか。戦いの道に踏み入った壮間は、その異常さを感じ取ったのだ。
壮間の中で決意が固まる。
ベルは数か月前まで戦いとは無縁の人生だった。それは壮間だって同じこと。なんとなく感じていたが、壮間とベルは何処か似ている部分が多い。
故に、確かめなければならない。
神の恩恵がどれほどのものなのか。境遇が似ているからこそ、ベルと自分の間にどれだけの差があるのか。
「俺は、倒れる直前に見たベルさんしか知らない。あの炎しか貴方という冒険者を知らない」
「壮間さん……?」
「俺と戦ってくださいベルさん。俺はきっと、貴方という人を知らなきゃいけない」
________________
「で、それを了承したのですか……本当に、ベル様はお人好しすぎます!」
「んー……私わかんないんだけど、なんで戦う感じになってんの? 教えてリリちゃん」
「聞きたいのはこっちです! どういうおつもりですか、そこまで付き合う義理は本来リリたちにはありません!」
「余計な理屈は無粋だぜ、サポーター君? これは男と男の決闘……漢の友情ってぇのは……夕焼け背後にその拳で語り合うものさ!」
「なるほど、しかし今は朝ですね!」
「ベルの得物はナイフだしな」
人々には通じない神々のジョークにツッコミを入れる、
「血と汗と涙! 漢の青春ってやつですよね!」
「お、下界の子なのに話が分かるじゃないか香奈君! さぁ立ち上がれ皆、ボクらはベル君の応援団だー!」
「じゃあ私は一人でソウマ応援しよ! 歌うぞ応援歌!」
「……いや香奈はチアじゃねーのかよ」
「神様! 恥ずかしいからやめてください!」
ベルと壮間の決闘が成立したのはいいが、外野がうるさいので握った覚悟がどこかに霧散してしまいそうだった。
「すいませんベルさん、無理な頼みをしてしまって。でも……ここで貴方を知らないまま、元の世界には帰れない」
「いいですよ。実を言えば僕も、貴方と戦ってみたかったんです。別の世界から来た『変身』する冒険者……今度は絶対、アオイさんに負けないために!」
壮間はドライバーとウォッチを装着し、ダンジョン用のプロテクター一式を装備したベルは黒いナイフを抜く。戦闘開始の合図は、壮間のその叫び。
「変身!」
壮間が仮面ライダージオウへと変身を完了させたと同時に、ベルの姿が消えた。消えたと錯覚したのは一瞬だけ。気付けば、ジオウの目の前に白色が肉迫していた。
「───速っ!?」
ジカンギレードを出現させ、ベルが放った斬撃を咄嗟に防ぐ。想像よりも軽い手応えで直感する。これは、二撃目前提の攻撃。その予想通り、絶妙な死角を突いた一閃が迫る。
それを弾き返し、衝撃でベルは後退。しかし、そこから再起までが一瞬。ジオウの目では捉えられない俊足で乱打が再開する。
思っていたよりも遥かに俊敏。さっきのトレーニングはまだ本調子では無かったようで、動きのキレが段違いだ。戦慄する。だが、速い攻撃なら壮間だってアナザーダブルで経験済みだ。
(防がれたっ!?)
ベルが手応えの変化を感じ驚嘆する。先制攻撃で圧倒するつもりだったが、徐々に、いや
それによって表面化するのは、単純な
余裕を与えたことで、ジオウの走力が、膂力が発揮される。その蹴りはベルの耐久では持て余すほど重い。変身したジオウの身体能力は、レベル3であるベルを恐らく超えている。
「……強いですね。『変身』だけじゃない。壮間さん自身が強いのが分かります」
「過剰評価ですよ。こっちから言わせれば生身でそれはおかしいって話で……!」
ジオウの剣とベルのナイフが火花を散らす。ベルが持つ黒いナイフ、《ヘスティア・ナイフ》は彼と呼応し、その速度と連撃に同調している。妙な感覚だった。武器を持った人間と戦っているというより、圧倒的に強い一匹の獣を相手にしているよう。それだけ武器と使い手が一体となっているのだ。
その気迫に気圧された瞬間、ベルの懐から伸びた緋色の軌跡。僅かに熱を帯びた一撃がジオウの胴体を斬り付ける。
(二本目ッ……!?)
ベルの二つ目の短刀装備、《牛若丸弐式》。その凄まじい破壊力と武器から漂う威圧感に、壮間はダンジョンで遭遇したあの
(二本目があんなら手数が倍だぞ、話が変わる! どう攻めて来る!? 想像して対応……!)
ベルの敏捷はジオウを凌駕している。そのステイタスの差額が壮間に手痛い現実を突きつける。あらゆる方向から仕掛けられ得る斬撃に打撃、
(そんなのアリか、選択肢が無限に見えて絞れない!? 見てから防御……できるか馬鹿! 速過ぎる!)
攻撃に意識と身体が追いつかない。徐々にダメージが蓄積されていく。これでハッキリしたが、駆け引きとか技とかはベルの方が確実に上だ。そうなれば勝負すべきはそこじゃない。悲観は後にして、ジオウが持つアドバンテージを活かす!
《ジュウ!》
ベルの片方の斬撃を受けたまま、ジカンギレードを変形させて銃弾を放つ。不意に放たれた銃撃はベルの体勢を崩すには充分だった。剣が銃に変形するなんて、予想できる奴が居たらそれこそ神か何かだ。
「ベルさん、出し惜しみは無しで行きます!」
「っ……! もちろんです壮間さん!」
これまでずっと、やるしかないと、切迫した戦いばかりだった。でもここで負けたって誰も死なない。だからといって負けていいなんて微塵も思わない。敢えて言葉にするなら、勝ちたい、そう腹の底から叫びたい程に。
『やるしかない』ではなく、『やりたい』、『やってみたい』。
壮間は今、初めて戦いそのものの意義を味わっていた。
《ビルド!》
《アーマータイム!》
ビルドアーマーを展開し、ジオウは鎧を重ねて纏う。これによって俊敏に関しては差が更に開くが、それで構わない。スピードでの勝負は捨てる。防御を上げて、ベルの攻撃を受けれる回数を増やしたのだ。
当然、ベルも防御の向上に気付く。ベルは超近接戦闘から一歩半距離を置いて、防御寄りに姿勢を変えた。そしてドリルでの攻撃を警戒しつつ、姿が変化した意味を考察する。
(鎧を重ねた。右手に新しい武器。これで手数は五分、威力はあちらが上。硬さが上がっている。カウンター狙いか。速度は下がった。連撃よりも有効打に成り得るのは───)
それらの思考を一つに集約させ、ベルはジオウと間合いを離した。そして、《牛若丸弐式》を鞘に収めると、空いた右手を体の横で構える。吊り上がる柳眉は闘争の意思。狙うは一撃の決着。
「アレが来る……!」
その音は壮間がダンジョンで聞いたものと全く同じ。あの力強い鐘の音も、視界を覆った美しい白光も、壮間が見た幻想なんかじゃなかった。その全てはベルが生み出した、彼の力を象徴する『スキル』の証。
スキルとは冒険者の生き様を綴った物語。
冒険者ベル・クラネルのスキル。銘を、【
ジオウは考える。ビルドアーマーの効力で進化した思考回路を激しく回す。壮間はあの光を見たことがある。あの音が聞こえた直後、ベルは白い光の斬撃でミノタウロスの半身を消し飛ばした。
ここまでの攻防、ベルはあの光の斬撃を使っていない。つまりアレはこの『音』に起因する結果だ。よって、この音が意味するのは『力の蓄積』。そして、構えた右手にも覚えがある。来るのはミノタウロスにトドメを刺した、あの炎。
(ベルさんの狙いは、チャージした炎での一撃必殺!)
まだ止まるな。それが分かっても勝てはしない。ビルドの力なら、羽沢天介の力ならもっと先に行けるはずだ。仮面ライダービルドの解釈を広げろ。思考の循環を加速させろ!
科学とは『再現性』だ。その法則を捉える行為こそを科学と呼ぶ。
(あの時聞こえた音は5秒。散々見た通常斬撃と比較しろ。間合いの伸びは! 威力の振れ幅は! そこから逆算する。どのくらいの威力と規模が来る!? ベルさんに与えた蓄力時間は……!)
その間、7秒。
結論が弾き出されたと同時に、号砲は放たれた。
「【ファイアボルト】ッ!」
ベルの魔法は魔力の溜めである『詠唱』を必要としない、他に類を見ない速攻魔法。7秒分の蓄力が大爆炎として刹那で出力される。しかし、そのタイミングを極僅かのみ先読みしていたジオウは、
その爆炎が届く寸前で
(しまった…! 敏捷は下がったと思ってた、でも……!)
ベルは自身の落ち度を自覚した。瞬発に関してはその限りではなかった。ビルドアーマーの『ラビット』の脚力で跳び上がったジオウは、計算した【ファイアボルト】の軌道と重ならない放物線を描き、ベルとの距離を削り取っていく。
「兎には……兎だ!!」
狙いは予測された通りのカウンター。ジオウは右手に構えたドリルを白兎に突き出す。勝負を決する突貫を、その培った己の全霊で解き放つ。
「───まだ、だああああああッ!!」
「マジかよっ……!!?」
勝負は決まった、少なくともジオウはそう思っていた。
だが、勝負はまだ終わらせない。少なくともベルはそう叫んだ。
「うおおおおおおおおおッ!!」
ドリルの刺突を《ヘスティア・ナイフ》で防御する。高速回転する刃をナイフ一本で受け止め、衝撃を後ろへ流す神業。神の名を冠するナイフは決して折れない。ヘスティア・ナイフは持ち主の決断を走り抜け、火花に彩られて死闘が一瞬、硬直した。
渾身の一撃を捌かれたジオウ。それを完璧に受け切ったベル。
その一瞬で尚も動いた者こそが、勝者。
動いたのは───ベルだ。
「【ファイアボルト】!」
体勢を崩したジオウの腹部に炸裂する、二発目の炎雷。
ジオウの体が大きく弾け飛び、倒れるまで行かずとも膝をついたまま動かない。
変身解除はしていない。戦闘の続行は可能だ。だが、防がれると思っていなかった一撃が完全に通じなかった時点で敗北のようなもの。加えて胴体に魔法を喰らわせられたとあれば、言い訳すらもまかり通らない。
「参った……俺の負けです」
_______________
早朝の決闘は壮間の敗北で終わった。お互い命に至るような大技を避けていたため、負傷は少ない。ただ、壮間の心は感じたことのない透明な敗北感で満ちていた。
全力でぶつかった上での正当な敗北。壮間にとっては、人生で初めての経験かもしれない。
「……クソ悔しい」
「どんまいソウマ! 切り替えてこ!」
「ありがとうございました壮間さん。僕も危なかったです、特に最後の……」
「へっへーん、見たか! これがボクのベル君の力さ!」
「ヘスティア様のじゃありません! あと凄いのはベル様です。ヘスティア様が威張ってどうするんですか!」
ヘスティアとリリ、2人の女性に圧し潰されるベル。彼がこのファミリアでどんな立ち位置にいるのかがなんとなく分かった気がした。昨日までは見えなかった事実だが、彼は飛び抜けて優しく、仲間に好かれているのだろう。
ともかく、これで確認は済んだ。ベルは異常だ。壮間とほぼ同じ戦闘経歴でも、きっとその密度が違う。戦士として格上なのは圧倒的にベルの方。そして、ベルがどうやってそこまで強くなれたのか、壮間は知りたいと思った。
その憧憬が答えを告げた。
ベルこそが、この世界の主人公であると。
「……もう一つ、お願いがあります、ヘスティア様。俺たちのダンジョン攻略に……【ヘスティア・ファミリア】の力を貸してください」
驚くほどスルリと出た言葉だった。でも、壮間は自分の言葉に驚かなかった。まるで頭の中で何かが沸騰しているようだった。客観性など捨て置いた、万能感すら感じる激しい高揚が鼓動を加速させていた。
しかし、発言自体はかなり自分勝手。沈黙しているベルやヘスティアを見て、壮間は我に返った。だが言ってしまった言葉が口に引っ込むこともないので、香奈の頭も一緒に下げさせ、壮間は言葉を上塗りする。
「……すいません。でも、気持ちは本気です。俺たちは別の世界から来ました。帰る方法が分かりません。その方法があるとすれば
「【X階層】に挑めば、彼とまた接触できるかもしれない……ってことかい?」
ヘスティアが壮間の言葉の意味を確かめる。正直まずは突っぱねられると思ったので。壮間は驚きつつも自身の主張を補強する。
「はい。でも、俺は一度【X階層】に入ったことがある。あそこは俺一人じゃ攻略できません……俺の力じゃ、あの世界には及ばない。だから! 俺はベルさんたちの力を借りたいんです。この世界の『冒険者』の力を」
「ベル君と手合わせして力を借りたくなったのはわかる。でも、ボクのベル君だってそんなに安くはないぜ?」
「え、でも神様……」
「しっ! ベル君、今は面接の時間なんだ。静かに!」
僅かに戸惑う壮間に、再びヘスティアが咳ばらいをして言葉を返す。
「ひとつ、聞きたい事がある。君の本心で答えて欲しい」
澄んだ声色と青い瞳が壮間に向けられる。この幼い立ち姿の彼女から感じる威光、『神威』。背が自ずと直立し、首を垂れて敬意を表さずにはいられない。
これは虚偽が立ち入ることを許さない、神の尋問。
「元の世界に戻りたいと、君は言った。それなら被害者のよしみで手助けしてもいい。でも、君たちがダンジョンに求めているのは、本当にそれだけなのかい?」
神に嘘は通じない。そうでなくとも、壮間は自身の全てを曝け出すだけだ。さっきの戦いで己に芽生えた熱を伴う感情を、率直に言葉にして返答として捧げる。
「俺は俺の世界の歴史に名を残す『王様』になりたい」
「王様ぁ!?」
「そのために戦って、強くなってきたつもりです。でも俺の力はダンジョンじゃ通じなかった。ベルさんにも敵わない。まだまだ弱過ぎるって、痛感しました」
アナザーライダーを倒し、ライダーの力を受け継ぐ。それだけじゃきっと届かない。ガイスト・ロイミュードやバジリスクのような時代を制する強者や、白いアナザービルドやソラナキ、令央のような歴史に仇成す頭抜けた異分子には。
「俺はベルさんのように成りたい。ベルさんに勝ちたい。俺はもっと強くなれる! だから近くで一緒に戦いたい。きっとそれは、ダンジョンっていう環境の中で意味を持つと思うんです」
「……そのために、ボクたちを利用しようって?」
「はい。さっき負けた瞬間に、俺には想像できました。この世界で戦い抜いて、もっと強くなった自分が。だから俺の踏み台になってください」
厚顔無恥も承知の上、分不相応な台詞上等。今の壮間には矜持というものがある。ベルがそうであるように、例え未熟でも壮間だって『主人公』だ。
こちらを見つめる5人の冒険者と、一柱の神の眼に、壮間は一歩も譲らない。
「……決まり、でいいですよね? 神様」
「まぁ、そうだね。流石に『王様』なんて単語が出るとは思わなかったけど……これ聞いた神がボクだったからよかったよ。皆も異存は?」
「
「右に同じくです。自分は団長であるベル殿の判断に従います」
「リリはまだ懐疑的ですが……体よく利用されろと言われて警戒しない方が無理です」
「俺は賛成だ。それに利用してやるのはこっちも同じだろ? そもそも、最初から
壮間が戦々恐々と返答を待っている間に、知らない話がトントン拍子で進んで行く。唖然としていた壮間に、緊張を解いた笑顔でヘスティアが事の運びを説明した。
「試すような真似をしてごめんよ。でも、しばらく一緒にやって行くんだから面接はしなきゃだろ?」
「元々僕たちは【X階層】に挑むつもりだったんです。昨日の夜それを話し合って、壮間さんの力を借りるっていう案も出てました」
「反対したのはリリとヴェルフ様です。リリはそもそも【X階層】に挑むことさえ乗り気ではありません。ダンジョンに不安要素が増えるのは困りますが、放っておいても【ロキ・ファミリア】か【フレイヤ・ファミリア】辺りが処理してくれるでしょう」
「俺は
「……つまり、手を貸してくれるってことで……? こう言っちゃなんですけど、俺かなり失礼なこと言いまくったと思うんですが……」
「何言ってるんだ。ヴァレン何某に憧れて、英雄に憧れてのベル君だぞ!? そんな自慢の眷属が逆に『憧れてる』だなんて言われて、悪い気分なわけないじゃないか!」
ヘスティアの切り替えしは意外なものだった。壮間もベルも、憧れを標に走って来た者同士。またも見えたその共通項を確かめた所で、【ヘスティア・ファミリア】団長のベルが壮間に右手を差し出す。
「僕も負けません。よろしくお願いします、壮間さん!」
「っ……はい! ベルさん!」
白兎のような少年、瞬足の冒険者、ベル・クラネル。
サポーターであり指揮官、
ファミリアの兄貴分、赤髪の鍛冶師、ヴェルフ・クロッゾ。
極東出身の少女、生真面目な武人、ヤマト・
金毛の
竈の女神、ヘスティアの眷属である彼ら5人。
そこに異世界から来た王様志望と、その隣の少女の名が新たに連ねられる。
「ソウマやるじゃん。やっぱ変わったねって言いたいけど…ほんとに変わるのこっからだよね!」
「あぁ、この異世界でなんとなく過ごそうなんて馬鹿だ。せっかくやることが無いなら、冒険しよう。今の俺達がどこまで行けるか!」
日寺壮間 レベル1
片平香奈 レベル1
【ヘスティア・ファミリア】一時入団。
____________
エルフの少女、レフィーヤ。ダンジョンでの修行から地上に戻った彼女は【ファミリア】の仲間が待つホームへと帰還する。
『黄昏の館』。その『館』というより『塔』と呼んだ方がいいような縦に長い我が家を見ると、異常事態に見舞われ疲弊しきった彼女は心からの安心を覚えた。
「大きい家だな、もはや城だ。貴様は王族か何かなのか」
「いえ、ここは私の家というわけでなく【ファミリア】の本拠地で、大きいのも都市最大派閥なのでそれはまぁ……じゃなくてっ! どうしてここまでついて来てるんですか貴方は!」
そんな安心は所詮束の間。顔を横に向けると、図々しくも地上まで同行してきた『異常事態』ことミカドがいて、疲れを思い出した体がどっと重くなる。レベル3のレフィーヤが中層で後れを取ることはまず無いので、これは圧倒的に気疲れだ。
「言ったはずだ、宿が無ければ金も無い。魔石を回収していた男がダンジョンで行方不明なんでな」
「だったら探しに行けばいいじゃないですか! 貴方の力なら中層の探索くらい余裕です。ていうか探しに行ってあげるべきでしょう!?」
「馬鹿が。奴がこの程度で死ぬようなら、ここまでの戦いでとっくに死んでいるはずだ。日寺のことだ、どうせこの世界の誰かと邂逅して生き延びているに決まっている」
「それは貴方も同じだと思うんですが……貴方、自分が助けられたって自覚あります……?」
「無論だ! 俺は貴様がいなければ地上への道も分からなかった、感謝している。だから乗りかかった船ついでに俺に衣食住を提供し、今度は本気の魔法を見せろ」
「面の皮が厚いなんてものじゃありません!?
言っていることがほとんど山賊か海賊のそれであるミカド。悪意は全く無いのだろうが、単なる都合のゴリ押しでここまで突っ切れる人をレフィーヤは初めて見た。多分脳の構造がモンスターのようになっているんだろうなと、失礼極まりないことを思った。
そして、レフィーヤがミカドの同行を断固拒否する理由は、当然【ロキ・ファミリア】が都市最大派閥だからである。他所の誰かを無断で本拠地に入れるなんて論外。一団員であるレフィーヤの一存で、派閥を危機に陥れるなんてあってはならないのだ。
この際もう5000ヴァリスほど渡せば逃げられる気もするが、それはそれで負けた気がして嫌なレフィーヤ。こうも対抗心を燃やしてしまうのは、格下なのに底知れない強さを持った点や、意味は違うが真っ直ぐな心持ち、そして厚かましさが『とある冒険者』と似ているからだろうか。
(つまりこうなったのも、全部『あのヒューマン』のせいです……! 許せません……!)
レフィーヤはとんでもない結論に至った。
「おい聞いているのかレフィーヤ・ウィリディス。貴様、さっきの戦いではまだ手の内を───」
ミカドはミカドでレフィーヤが本気でなかったと見抜き不満を募らせており、レフィーヤはミカドのことを完全に無視して『彼』への憎悪を募らせていると、彼女は向こうからよく見知った姿が近づいているのに気付いた。
「あっ……貴方は隠れててくださいっ!」
「貴様なにをガフぉッ!?」
レベル3の腕力で茂みの中に突き飛ばされたミカド。どう考えても少女が出していいものではないパワーを喰らい、ミカドは茂みの中でうずくまる。骨でも折れたんじゃないかってくらい痛い。
すぐさま立ち上がって反撃でもなんでもしてやろうと考えたミカドだったが、すぐに怒りを収めて気配を消した。多人数の冒険者が近づいていたのだ。それも、全員がかなり強いのは見ただけで分かる。
「奇遇ねレフィーヤ。ダンジョンの特訓から帰ったところ?」
「そ、そうなんですティオネさん! ちょっと色々あって遅くなっちゃったんですけど……」
「……ねぇ、レフィーヤ。さっき誰かと喋ってなかった?」
「っ!? そ、そんなことないですよ!? ティオナさんの気のせいです! 私疲れてるのかなー、独り言多くなってるかも―……なんて」
茂みに隠れながらミカドは冒険者たちを観察する。レフィーヤの仲間、つまり都市最大派閥【ロキ・ファミリア】の団員なら手練れは当然。特に先頭に立つ2人の褐色肌の女冒険者は、明らかに格が違う。
アマゾネス特有の露出の多い衣装を着た双子姉妹。
ミカドの中の極めて雑な判別を言葉にするなら、髪が長くて胸が大きい方が、【
どちらもオラリオ最強戦力の第一級冒険者。正面から挑めば変身していようがまず負けると、ミカドは悔しがる間もなく結論付けた。
「そんなことより調査の方はどうでした!?
「収穫はゼロ。けれど、意味の分からない
「うーん……誰かいた気がしたんだけどなぁ。レフィーヤが楽しそうだったし、アルゴノゥト君が来てると思ったんだけど……」
「ぜっっったい有り得ませんっ! ていうか、万一そうでも楽しんだ覚えはありませんから!」
機嫌を悪くしたレフィーヤは、自然な流れでホームに足を向ける。僅かにミカドを気にする素振りを見せながらも、彼から離れられる絶好の好機と見た彼女は、そのままヒリュテ姉妹を押して館へと退散した。
「あの女、置いて行きやがった」
今すぐにでもホームに突入して追いかけたいところだが、流石のミカドもそこまで無鉄砲ではない。そもそも館には冒険者の見張りがいるため、特攻したって取り押さえられるのがオチだ。
「諦めんぞ俺は。魔法の真髄、必ずモノにしてやる」
___________
夜が明けた。
レフィーヤはなるべく人目に付かないよう、足音を忍ばせて外に出る。というのも、昨日あれから外に置き去りにしたミカドのことが気になっていたのだ。まぁ流石に何処かに行っているだろうと、半笑いで門の前を見渡すが、
「やっと来たか。一晩も待ったぞ」
「なんでまだいるんですか!!??」
「言ったはずだ、俺は魔法を理解するまで貴様を逃がさん」
「聞いてませんよそんな話!」
当然のようにミカドが門前に座り込んでいたので腰を抜かす。一晩ずっとここにいたのだとしたら、なんという執念。レフィーヤの中のミカド評価が「変なヒューマン」から「怖いヒューマン」にランクアップした。
これが神々の言うところの「ストーカー」なのだろうか。
「それで、俺を入れる気にはなったのか」
「なるわけないじゃないですか! 貴方のような危険な人を仲間に会わせられません!」
「俺が危険? 馬鹿言え、昨日貴様と話していたあの女共の方が余程の怪物だろう。貴様はレベル3だと言っていたな。昨日の二人のレベルはいくつなんだ」
「ティオナさんとティオネさんのことですか…? おふたりはレベル6ですけど」
「6……貴様の倍か。貴様以上の魔導士はいるのか」
「そりゃもういますよ! 私なんてリヴェリア様の足元にも及びません! なんといっても
「ほう……面白い」
「はっ、ついファミリアの情報をペラペラと……! まぁ、このくらいなら都市で知らない人の方が少ないですし……って、まさかリヴェリア様にまでつきまとう気じゃないでしょうね! 絶対に許しません! 全エルフ総出で貴方を消し炭にしますよ!?」
「誰もそんな事は言ってない。が、俄然貴様の【ファミリア】とやらに興味が湧いたのは確かだ。それだけの強者が集まる環境……喰らい付く価値はある」
ミカドがそこまで強引に強さを求めるのは理解できない。ただ、その静かな声の奥で燃える感情に、レフィーヤは覚えがあった。彼と話していると、時折まるで鏡を見ているように感じることがある。
「……そうまでして負けたくない相手が、いるんですか?」
「分かるということは…貴様もそうか。あぁ、俺が『魔法』を手に入れたのはつい先日。俺はこの力を、一刻も早く自分の物にしなければいけない」
ミカドは現在、歴史を内包したライドウォッチを4つ所持している。その中で最も強力なのはウィザードウォッチ。それによって「魔力」という新概念を手にしたのだが、ミカド自身がその力を持て余しているのを理解していた。
壮間ならばそうはならない。彼は戦闘経験や余分な知識が無い分、ウォッチに眠る「他のライダーの力」に恐ろしいほど素直なのだ。もし壮間がウィザードウォッチを使えば、すぐさまその本質を理解してしまうだろう、というのがミカドの考えだ。
「……少し前までは、腑抜けた夢を語る馬鹿だとしか思っていなかった。俺が立っている次元からすれば程度が低いと、そう思い込んでいた。見下していたはずなのに……気付けば奴は俺の上にいて、俺に手を差し伸べていた」
「わかります……私は都市最大派閥の団員、あっちは無名のファミリア。冒険者としての経験だって、彼はまだ新米です! 心の何処かで……まだ私の方が上だって、そう思ってました。でも……追い付かれたんです」
「認めてからは早かった。奴の強さが、俺の弱さが痛いほどよく見えた。だが……」
「ただ機会や才能に恵まれてるだけじゃない。運がいいだけの人じゃないってことは、私が一番よくわかってる。でも……」
「俺は俺が自由であるために」
「私も憧れの人の隣に立つために」
「「絶対に負けたくない」」
その言葉が綺麗に揃い、柄にもなく笑みをこぼしてしまったミカド。それに対してレフィーヤも、僅かながらミカドを認めて柔らかく笑みを返す。
心から認めているけど、命に代えても負けたくない。そんな相手がいる者同士、心は自然と解けるものだ。
「わかりました! お互い難儀な
「謎の階層、【X階層】が出現する可能性がある。よって、団員全員がダンジョンに行くのを止められている」
「そうなんです……ですから代わりに、って!!? なんで貴方がそれを知ってるんですかっ!? まさか───!」
その、まさかである。ミカドはタカウォッチロイドを黄昏の館に侵入させ、昨夜行われた【ロキ・ファミリア】の会議を盗聴していたのだ。戦場思考のミカドが何もせず大人しく待つなんて有り得ない。
「事情を知り、カードは揃った。力を貸せレフィーヤ・ウィリディス。今からこの館に突入し、貴様らのリーダーと交渉をする」
「そんなの許すわけないじゃないですか! 少しばかり心を許した私が愚かでした、やっぱり貴方と私は全然違いますっ!!」
「当然だろう馬鹿が!! 安心しろ、俺は貴様らの利益になってやると言っているんだ。俺を信頼しろ!」
そう言われてレフィーヤの脳内に浮上するのは、ミカドの度重なる無礼な発言・態度、他派閥のホームの前で一晩待ち伏せし、あろうことか盗聴までする異常性。
「何をもって信頼すれば!?」
「じゃあ不信な動きをしたら首を折るなりなんなり好きにすればいい!」
「だから人を怪物みたいに言うのをやめ───っ!!」
レフィーヤに四の五の言わせず、ミカドは彼女の口を塞ぎ、その軽い身体を抱えて黄昏の館正門に突撃。昨日同様に見張りが居るが、彼らもレフィーヤが捕まっているのを見て血相を変える。
「門を開けろ! さもなくば、この女の頭を潰すぞ!」
(これもう充分に不信な動きじゃないですか!?)
一瞬だけ首を折るべきか否か考えたレフィーヤ、彼女も彼女で血迷っている。そして、ファミリア内でも主戦力に数えられるレフィーヤが捕まった=ミカドが強いということになるため、固まった見張りを突破して黄昏の館に侵入できてしまった。
「この派閥の頭を出せ! 話がある! 貴様らが手をこまねいている【X階層】のことだ!」
泣きそうなレフィーヤ。騒めく団員達。ミカドに対し応戦しようとする主戦力、特に一人のアマゾネス。それら全てを制止させる一声が館に響いた。
「僕を呼んだかい? 闇討ちならまだしも、朝から本拠地に攻め込まれたのは初めての経験だ。しかも単独とはね」
ミカドの呼びかけに応じたのは、金髪の幼い少年だった。子供かと思ったが、昨日の盗聴で会議を仕切っていた声と一致する。何より、相対して伝わる強さは昨日のアマゾネス姉妹を凌駕していた。
ロキ・ファミリア団長、【
レベルの上がりにくい種族である
「俺に戦闘の意思は無い。戦っても勝てんのは分かっている。話をしてくれるならコイツも解放する」
「それは助かるよ。でも、それならどうしてこんな真似を?」
「まどろっこしいのは嫌いだというのもあるが、そうしても問題ないと判断した。昨日盗み聞きさせてもらった限り、貴様は
ミカドの狙いは、交渉の卓に付くことただ一つ。フィンに会えただけで目標は達成された。ただし、本当の鬼門はここから。
交渉の相手は、オラリオ最高の智将と知られる男だ。
「…そこまで言うなら話を聞こうか。無論、聞くに値しないと判断した時点で君を捕らえさせてもらう」
「そうはさせないから黙って聞け。まず、昨夜ここに現れたアオイという男が【X階層】のことを告げて消え、その直後にダンジョンから戻った団員から、聞いた通りの異常事態に遭遇したと報告を受けた。そして貴様ら【ロキ・ファミリア】は、都市最大派閥としてその異常事態の処理をしようと考えている。ここまでは正しいな」
「驚いたね、まさか本当に盗み聞きされてたとは。ここからが本題みたいだけど、君は僕らにどんなカードを提示してくれるのかな?」
「俺が『こことは違う別の世界』から来たと言ったら、貴様は信じるか」
ミカドは己が持つ最大威力の切り札を、前置き無しで早々に切った。
結果、周囲からは怒りの声や呆れた笑いが起こる。ミカドに抱えられているレフィーヤも、「何を言ってるんですか!?」と噛み付いてくる。
「……テメェ、まさかそんなふざけた冗談を言うために、団長を呼んだんじゃねぇだろうな……!?」
特に昨日見たアマゾネスのティオネは、あの淑やかな振る舞いを消失させ、完全な殺意と怒気をミカドに向ける。恐らく彼女の地雷を踏んだのだろうが、他の団員に相手にされていないこと含め、そんなことはどうでもいい。
「待つんだティオネ」
最初から相手にしているのはフィンのみ。そして予想通り、ミカドの切り札はフィンに突き刺さっていた。
「つまりそれは、あの【
「やはり貴様は気付いていたか」
ミカドは盗聴を通し、アオイが過去一度この世界に来ていることを知った。
アオイが異世界から来たと周知されている場合。そうでない場合。そのうち後者が正しいことはさっきの反応を見て気付いたが、後者が正しい時、『フィンだけはアオイの正体に勘付いている』とミカドは確信していた。
まずアオイという男は、壮間の話を聞く限り自分の身元を隠すようなタイプではない。過去一度現れたとするなら、正体を明かさなかったとしても多数のヒントを落として去ったはず。
そして、盗聴で聞いたフィンの口調や物言い、情報整理の手腕、そして今目の前に対面した時の雰囲気や視線。恐ろしく頭が良く、尚且つ恐ろしく勘が良い者のそれだ。丁度、2003年で会い、恐らくミカドの正体に勘付いていたであろう真戸呉緒がそうだったように。
「なるほど、面白い話になってきた。という事は、君は彼についての情報を提供してくれると? それにしてはリスクと釣り合ってない気がするね」
「残念だが奴については俺も知らん。戦いも見ていない。が、安心しろ、もっと有用なものをくれてやる。そこの肌が黒い女、昨日【X階層】で見たというモンスターを言ってみろ」
「あ゛ぁ!? ガラス細工みてぇな奴にどんだけ殴っても死なねぇ虫! どいつもこいつも人型だった! それがどうした!」
「ティオネ落ち着いてよー。それにほら、大型のモンスターもいたよ? デッカい蟹!」
「ファンガイア、アンデッド、魔化魍。貴様らが見た怪物は、俺の世界の怪人だ」
団員全体に走る驚きと、不信感。感情が渦巻く場所の中心で、団長のフィンは俯瞰的に状況を精査する。
【ロキ・ファミリア】は現在、都市を揺るがす大事件の渦中にある。そんな中で飛び込んできたこの異常事態は率直に言って迷惑でしかない。できることなら片手間に済ませたい事案だが、未知のモンスターが大量にいるのであればそれは難しい。
そこで、ミカドからモンスターの情報を引き出せるとなれば、それは願っても無い事。未知と既知とでは天地の差。【X階層】攻略におけるリスクを大幅に減らすことが可能だ。
「君の言い分が真実である保証は? 僕らは名の知れた大派閥だ、取り入ろうとする輩は後を絶たない。君がそんな有象無象とは異なると、どうして言い切れる?」
「怪人の絵か写真でもあれば話が早かったか? いずれにせよ、貴様らの『俺がディエンドと繋がっている』という疑いは晴らせない。それならいっそ俺を貴様らの前線に加えろ」
「……なるほど、そう来るか」
「俺がヤツの内通者だとしても、嘘を教えれば前線に加わる俺の命も危うい。第一【X階層】を直に探索した人間が複数いる以上、デタラメに嘘を吐き連ねるだけリスキーだ。そもそもの話、多少の嘘で堕ちる程度の城なら、この怪物だらけの迷宮都市で『最大』などと謳われるはずがないと思うが?」
ミカドの話の真偽など、フィンにとってはどうでもいい。得たかった情報は『ミカドはフィンが疑っていると思っているか』であり、答えは是だった。
もしこの世界の常識が彼にあるのなら、【ファミリア】を嘘で落とそうだなんて発想には至らない。何故なら、ファミリアには必ず主神が存在し、神には下界の子の嘘は通じない。これを知らない時点で彼の「別の世界から来た」という言い分にはある程度の信憑性が生じる。
「まさか親切心で言ってるわけじゃないだろう? 僕らに対する要求もあるはずだ」
「当然。見返りは反論に織り込み済みだ。元の世界に戻るまで、俺をこのファミリアに入れろ」
「君はその意味を分かって言っているのかい? ファミリアは一蓮托生のいわば『仲間』であり『家族』だ。信頼のおけない、ましてや生きた世界すら異なる余所者にとって、生易しい場所ではないよ」
「覚悟の上だ。慣れ合う気は無い。俺は貴様らの強さを喰って強くなりに来た! さぁ俺を使え、都市最強のファミリア! 俺も貴様らを利用してやる!」
なんとも大胆不敵。そして呆れるほど愚直。
まるで削り出す前の無骨な宝石だ。その眼に宿るのは黒い業火。冒険者なら誰しも持つ、富や名声、夢や希望、それらを命懸けで掴み取らんとする、ある意味“歪んだ”野心。
それを見せられれば、例え異世界の人間だろうと『冒険者』であると認めざるを得ない。だが同時にフィンの親指が疼く。ファミリアの仲間たちにも引けを取らない、彼の燃えるような覚悟の正体に、興味を惹かれる。
「最後に一つだけ聞いてもいいかな? 別の世界に来てまで、敢えて茨の道を選ぶというのなら、君はどうしてそこまで強くなりたい」
「救世主になるためだ。怪物に支配された俺の世界を、他の誰でも無い俺が救ってみせる! 俺だけが! 俺の世界を変えられる!」
ミカドはもう過去には縛られない。ただ、その強き願いを忘れることも絶対にない。楽ではない道のりを経て、形を変えて生まれ変わったミカドの拙い夢を、勇者と呼ばれる冒険者は笑わない。
この世界はかつてモンスターに支配されていた。誰もが恐れるその絶望と混沌の時代に、この少年は挑もうと言うのか。世界を変えようと言うのか。
他の誰でも無い、自分自身が希望を実現させる。
これを笑い話にしてしまうような者に、【勇者】の名は相応しくない。
フィン・ディムナもまた『英雄にならんとする者』。同じ志を持つ者として、フィンの心はミカドの勇気に魅せられた。
「……君の名前は」
「ミカドだ」
「いいだろうミカド、君の勇気に敬意を表そう。僕たち【ロキ・ファミリア】は君を迎え入れる」
「ま、待ってください団長! 本当にこんなヒューマンを仲間に入れるんですか!? 彼は有り得ないくらい非常識です! それに、そうです! ロキにも話を通すべきじゃ……!」
「黙れ貴様。団長の決定は絶対だろうが」
「団員面しないでください! 私は認めてませんから!」
ぎゃいぎゃいと意を唱えたのは、未だ彼に人質にされたままのレフィーヤだった。力づくで抜けてからは人質の体を成していないのだが。しかし、実のところ彼女だけではなく、ミカドを受け入れていない団員は他にも大勢いる。
一蓮托生の一枚岩といっても、リーダーに従うだけではない。それだけで集団の有能さが見て取れる。だが、そこでフィンは新たに言葉の旗を掲げた。
「落ち着いてくれレフィーヤ。まずロキだが……『別の世界』なんて聞いて面白がらないはずがない。まぁ入団に反対はしないだろうね」
「それは、そうですけど……」
「そして彼は自分で言ったんだ。慣れ合うつもりは無い、と。別に仲良くする必要は無いさ。だが、僕は逆に考えている」
「……逆だと?」
「君は得難い情報を持った貴重な人材。僕は君を情報を提供する『客』として扱い、【X階層】での案内をしてもらうつもりだ。当然、元の世界に帰る方法が見つかれば見返りとして共有する。君は紅茶でも啜りながら安全圏で待っていればいい」
そう言うフィンの顔は笑っていたが、嘲るようなそれではない。これは戦力外通告と同時に挑戦状。他の団員の反対をそのまま形に変えたような、手痛い洗礼。
「いくら強い思いがあろうと、僕は半端な戦力を作戦に加えるつもりは無い。これが都市最大派閥、君の望んだ環境だ。異論はあるかい?」
「聞くまでもない話だったな。いらぬ警告だ、俺の居場所は俺自身の力で勝ち取る!」
「これが彼の覚悟だ。わかったか皆、僕らは彼を試すと同時に、彼に試されているんだ! 僕らは恐れている。怪物に支配されし古の時代を。そんな戦乱の世を生き、尚も抗おうと戦う彼をどうして侮れる!? この世界は温いと思わせたまま、彼を帰らせるつもりかい? 見せようじゃないか、僕等【ロキ・ファミリア】を、僕等こそがこの世界の英雄であると!」
団員の総意を把握して纏め、同調した上で、ミカドが仲間になるに足る存在であることを補強して反対派の団員の感情までも煽った。そうして振られた旗の通りに、ファミリアの意思は一つとなって歓声が上がる。
これが都市最大派閥の統率者。曲者なんて安易な言葉では計れない、そんな強者がここには何人もいる。そう思うと、ミカドの体が芯から震えた。これは恐怖ではなく、抑えきれない興奮だ。
(楽しいと感じているのか、俺は……! 少し前なら考えられなかったな。だが、悪くない)
世界を知らぬ弱者よ、未知へと踏み出せ。
富を求めよ。名声を渇望せよ。強くなる自分に胸を高鳴らせろ。
英雄へと至る全てはそこにある。
さぁ、産声を上げた冒険者よ───『冒険』をしよう。
光ヶ崎ミカド レベル1
【ロキ・ファミリア】一時入団。
「私は認めませんからね」
「おいウィリディス」
「レフィーヤでいいです。
レフィーヤだけは、フィンの言葉を以てしても受け入れがたい様子。他の皆もこの男の人間性を見たら辟易するはずと考えているが、ライバルに対する感情と、その行動原理は心から認めてしまっているので、なんとも形容し難い表情でミカドを睨む。
「チッ…高慢だなやはり。ならレフィーヤ、貴様の言っていた憧れとやらはどいつだ。そのリヴェリアとかいうエルフのことか?」
「リヴェリア様は憧れというわけじゃなく……貴方に教えるのも癪ですが、私の憧れはアイズさんです!」
「どいつだ」
「今は色々と忙しいんです! リヴェリア様もお仕事中ですし、アイズさんは昨日から
どうやらこの世界に携帯電話のような通信技術は無いらしい。あったとしたら【X階層】の話を伝え、体勢を整えるためにダンジョンから呼び戻すはずだ。
「…待て。今ダンジョンにいるのはどうなんだ。作戦前に【X階層】に入ってしまうんじゃないか」
「大丈夫です。アイズさんはレベル6、都市最強級の
「そこを強調する意味はあったか」
「そ、それにティオネさんたちが【X階層】に入ったのだって偶然です。話によれば出現は不規則らしいですし、アイズさんに限ってそんな偶然は───」
______________
ダンジョンに咲く一輪の花。
と安易に口にしようものなら、男神共から「いやあの美しさは湖だろ!」「眼ェ腐ってんのかテメェ! 彼女は瞬く星だ!」「いいや、あのマジかわを形容するとすれば…“嫁”だろ」などと高次元の論争が巻き起こるだろう。
神々さえも虜にする金髪金眼のヒューマンの少女。
その美しさに気取ったそれや傲慢さではい。そこに内包されるのは、ただ澄み切った無垢と、得物の細剣を体現したような圧倒的で研ぎ澄まされた強さ。
「【
風が吹く。剣先から腕を通り、そのつま先に至るまで、その軽装を補って余りある風の鎧が美し過ぎる身体を覆う。そしてその風音は、人に仇成す怪物にとっては死神の足音に同じ。
彼女の『風』の前に、異形の怪物たちは斬り裂かれ、穿たれ、灰燼へと還る。
第一級冒険者 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。
ベル・クラネル、レフィーヤ・ウィリディス、この2人の憧れの存在である彼女は今、
「どこだろう、ここ……?」
下層の探索中、【X階層】に飲み込まれてしまっていた。
完全に想定外。そして完全に知らないモンスターが彼女に襲い掛かり、それらを
彼女は無垢、言い換えれば『天然』である。
「ヤバ、【剣姫】みっけ! マティちゃんってば幸すぎ!」
「あなた、は……!?」
彼女の冒険者の感覚を掻い潜り、【X階層】に2人目の少女は現れる。その傍に悪役の姿は無い。マティーナはその身一つで【剣姫】との接触を果たした。
その身に宿すは、誰よりも軽率な愛の感情。
各々がファミリアに入団! その世界独自の超能力を身に着ける展開です。長い事クロスオーバーしてますが、こういうのは初めてでワクワクしております。
そしてフィンと春姫、アイズが登場してメインキャラはほぼ出揃ったかと。あとロキ・ファミリアの何人かですかね。そしてダンまち編を挟んだ理由の一つ、次回は少しだけマティのターンが入ります。
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