全新系裂! 究極東方不敗伝テイルハート   作:天地優介

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また戦闘シーン無くてすみません……。原作には無かったダークグラスパーのシーンでここまで尺とるとか、この作者生意気じゃね?炎上だ炎上!

炎上系アイドル夢見りあむちゃんと、原作俺ツイ。どちらもよろしくお願いします。

最近忙し過ぎて遅れててすみません!ですが、週間に一度は出したい所存です。



第12話 登場!ダークグラスパー!その戦慄と混沌!

「……はあ」

 

 ゴールデンウィーク明けの初日──学校も終わり、部活動の時間。尊が運転する車の中で、慧理那は窓の外の景色を眺めていた。しかし、彼女の表情は、彼女が見つめる曇った空よりも憂鬱なものであった。

 

 その原因は、総二からの提案──『テイルブレスを慧理那のため、新しく作る』。慧理那の数日に渡る悩みは、これに端を発していた。

 

「……わたくしに、その資格があるのでしょうか」

 

 無意識のうちに、慧理那は自らのツインテールを触る。

 総二が、いや全校生徒が見惚れる彼女のツインテール。しかし、幼少期よりツインテールのままであり続けた彼女だからこそわかっていた。自身のツインテールがその輝きを失い、曇り始めていると言う事実を。

 

「テイルブレスを起動させるには、ツインテールを愛する心……それによって生まれるツインテール属性が必要…………でも、今のわたくしに()()があるのでしょうか……」

 

 自問自答を重ねる慧理那。そのつぶやきは尊の耳にも届いていたが、いかに慧理那の幼少から仕える彼女といえど、この悩みに口を出すのは難しいことだった。

 神堂の家において、最も重き家訓──それは、ツインテールであること。ただそれだけは、決して破ることは許されない。もし、今の慧理那が自らのツインテールを解こうものなら、彼女の母である現神堂家当主の神堂永夢(しんどうえむ)は、彼女のことを決して許さないだろう。

 

(お嬢様……)

 

 尊にとって、慧理那が背負う重責は想像もできないものだ。だが、慧理那を誰よりも近くで見続けてきたのは、他でもない彼女である。

 

「……大丈夫ですよ、お嬢様」

「え……?」

「無責任な言葉かもしれませんが──観束総二、あの男ならば、慧理那様のお悩みも、なんとかしてくれると思います」

 

 だからこそ、尊は総二が慧理那の心を溶かしてくれることを願う。それは、尊が総二という人間を好ましく思うゆえではない。

 

「観束君は、ツインテール馬鹿です。寝ても覚めても、女性と共にある時も、私が婚姻届を渡した時にも、彼が第一に思うのはツインテールでしょう。もしかすると彼が戦う理由も、平和のためなどではなく、ツインテールのためなのかもしれません」

「尊……!」

 

 尊の言葉に、先ほどまで沈んだ表情を見せていた慧理那が怒る。何よりも『ヒーロー』に憧れる慧理那にとって、尊の発言はレッドとしての総二を侮辱しているようにも思えたからだ。何故なら、慧理那にとっての『ヒーロー』とは、平和のために戦う存在であるからだ。

 だが、そうではない。桜川尊という女は、伊達に教師を名乗っているわけではない。使用人としての経験と、自らの婚約者を探すための努力で培われた人物眼は、『観束総二』という一人のツインテール馬鹿を、短期間で理解していた。

 

「──ですが、彼は人を想うことのできる人間です。そうでなければ、戦えない。私が、神堂の家のためにしか命を懸けられないというのに、彼は自らの手の届く範囲以上のものを救おうとしています」

「…………!」

「お嬢様、少しだけ──少しだけ、自分に正直に、開放的になってみても……いいのではありませんか?」

「自分に、正直に……」

 

 不意に、光が差し込んでくる。曇り空はまだ晴れていないが、どうやら雲の切れ目から、太陽が顔をのぞかせたようだ。

 その太陽の光を浴びて、慧理那は一つの決心をする。

 

「尊、車を陽月学園に回してください」

「わかりました、お嬢様」

 

 慧理那の命を受けて、尊は車を陽月学園に戻らせる。初めから慧理那の言葉を期待していたのか、その行動は迅速に実行された。

 

「やっぱり……尊は頼りになりますわね。これも、年の功でしょうか?」

「やめてくださいお嬢様。その言葉は私に効きます」

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 慧理那が陽月学園に戻る一方、アルティメギル基地。ここでは、先日までの部隊同士の喧嘩によるものとは異なる趣の喧騒が生まれていた。

 

「ええい、ダークグラスパーめ……。こんな時にやってくるなどと……」

「おかげで、出撃予定もキャンセルになってしまった。……この状況で我らがいなくなれば、どうなるかわからんからな」

 

 クラーケギルディとリヴァイアギルディも、珍しく言い争ってはいない。それどころか、彼ら以上に血気盛んな部下達でさえも。

 その原因は、先日までは単なる噂程度だったはずの、ダークグラスパーの来訪予定……その具体的な日程が、あの会議の後唐突に知らされたからだ。それも、ダークグラスパー本人から。

 そして今日こそは、ダークグラスパーの来訪予定日である。噂の処刑人、闇の監察官の来訪に部隊は浮つき、戦士達全員が、もはや言い争いどころではないほどに緊張していた。あの自由な気風で、普段の会議でさえ無視するフェンリルギルディも、今日はダークグラスパーを迎えるため、基地最奥の搬入口へと集合している。

 

「リヴァイアギルディよ、今回のダークグラスパーの動き、どう見る?」

「……奴もゴートギルディも、同じく首領様の直属で動く存在。その二人が同じ命を受けたのだ。おおかた、ゴートギルディに先んじてここに合流することで、ゴートギルディにプレッシャーを与える目的なのだろうな……」

「全く、権力争いに巻き込まれる身にもなってほしいものだ。おかげで、ツインテイルズに対し小手調べを挑むことも出来ないではないか」

「…………そうだな」

(クラーケギルディがツインテイルズと相対すれば、間違いなくブルーの貧乳に惹かれるだろう……。幸い奴は触手が弱点のようだが、弱点を突けるままにしておくツインテイルズでもあるまい。なんらかの対策は行う可能性が高い……。そうなれば、コンプレックスを刺激された奴は……)

 

 クラーケギルディの愚痴を適当に受け流すリヴァイアギルディの脳裏によぎるのは、この世界に来てからそれこそ擦り切れるほどに見た、ツインテイルズの戦闘記録────特に、テイルブルーのものだった。

 

(レッドとハートはいい。なんだかんだ言って、お約束というものを理解している。撤退する相手を深追いすることもないだろう。だが、ブルーは──)

 

 思い浮かぶのは、ブルーが発している、モニターの画面越しにでも伝わるほどの気迫。タイガギルディとの戦いといい、バッファローギルディとの戦いといい、ブルーの貧乳コンプレックスが刺激された時、それは血の雨が降り、戦士でさえも慄く凄惨な光景が繰り広げられる時だった。

 

(ダークグラスパーが来訪するという時に、クラーケギルディ……もしくは俺を失うわけにはいかん。どちらかでも欠ければ、首領様直々の命を受けるほどの者だ、瞬く間に部隊を掌握し、部下たちをいいように扱うだろう……)

「おいリヴァイアギルディ、聞いておるのか? もうすぐ予定の時刻だぞ」

「む……。ふん、貴様に言われずともわかっておるわ」

(……あれこれと考えるのは後だ。まずは、ダークグラスパーがどのような人物か見極めなければ)

 

 密かに決意を固め、姿勢を正すリヴァイアギルディ。場の空気が闇のように重くなっているとすら思えるほどの緊張感の中、ついに搬入口へと次元移動艇が着艦する。黒塗りのボディに赤のラインが走るデザインは、確かに事前に伝えられていたダークグラスパー専用機のものだ。

 その専用機から、2つの影が現れる。もう一方は銀色の装甲を持つロボット。属性力(エレメーラ)は感じるものの、エレメリアンではない。

 ならば、ダークグラスパーとはもう一方の影か。そう思い視線を向けたリヴァイアギルディを襲ったのは、全身を貫く雷のごとき衝撃だった。

 

「……!?」

「ダ、ダークグラスパー……様……?」

「いかにも、わらわこそが首領様直属の戦士。ダークグラスパーである」

 

 現れたのは、エレメリアンはおろか、側に控えるロボットのような存在ですらない、1人の少女だった。

 黒衣を纏い、眼鏡を纏うその姿は、この場に集まる者に異物感を与えていた。しかしその異物感は、彼女の強大さからくるものではない。

 

(なぜ、人間が──!?)

 

 人間とエレメリアン……両種族は決して相入れる事はない。根本的に、種族としての生存条件が違い過ぎるのだ。故に、アルティメギルにおいて、人間とは不倶戴天の天敵であると同時に、自分達では手に入れる事の出来ないものを持つ、憧れの存在でもあった。

 しかし──今現れたダークグラスパーは、まぎれもない人間の少女である。無論、リヴァイアギルディやクラーケギルディは、彼女の実力を侮ってはいない。自分達が恐れるツインテイルズも人間であるのだから、彼女達と同じ種族であり、首領直属戦士であるダークグラスパーの強さを、疑う理由もない。

 

 しかし、いかに彼らでも、人間が自らの上に立つというこの状況に、困惑を隠せないのも事実である。歴戦の将でさえそうなるのだから、彼らの下から馬鹿な行為に出る者がいるのも、当然のことだった。

 

「……失礼ながら、本当にダークグラスパー様であらせられるのでしょうか? 私の目には、どうにも人間の小娘しか見えませぬ」

(フェンリルギルディ殿……!?)

(馬鹿な、奴め死に急ぐつもりか!)

 

 ダークグラスパーの前に居並ぶエレメリアン達。その中から出て来たのは、他でもないフェンリルギルディだった。彼はダークグラスパーを前にして挑戦的な表情を見せると、彼女を挑発すべく、戦士にとって侮辱であろう言葉を投げかける。このフェンリルギルディの行動に、彼我の戦力差というものを理解しているスパロウギルディやリヴァイアギルディなどは驚愕していたが、ただ一人、クラーケギルディだけは冷静だった。フェンリルギルディの反骨心というものを、事前に体感したからだ。

 

(……フェンリルギルディ)

 

 だからこそ、クラーケギルディは予期してしまっていた。彼の末路を。

 

「……ふむ、なるほど。フェンリルギルディ、確かにお主の言い分も理解できる。首領直属とはいえ、ぽっと出の者に上に立たれるのは、屈辱的だろう」

(!? 私は名乗ってなどいないはず。だというのに、私の名を──いや、事前に情報を集めていたのだろう)

「だからこそ、貴様らにくれてやるものがある。わらわからの親睦、その証にな。……メガ・ネ、あれを」

 

 どうやら、ダークグラスパーの側に控える銀色のロボットの名はメ・ガネというらしい。ダークグラスパーの声に少し遅れて、まるで母親が赤子を寝かしつけるような所作でもって、()()は運ばれて来た。

 

「あれは、パソコン……?」

「スパロウギルディ、この基地で最も大きなスクリーンがあるのは会議室──大ホールであったな?」

「!? ……そ、その通りでございますが」

「行くぞ、ついてくるがいい。……メ・ガネ、お主はわらわの部屋を整えておけ」

 

 ダークグラスパーに促され、彼女の後をついて、大ホールへと向かうエレメリアン達。しかし、人間である彼女が、基地の心臓部とも言える大ホールに近づいているためだろうか? エレメリアンの戦士達は、彼女が現れた時に感じた異物感を、より強く感じるようになっていた。

 

(なんだ、この感覚は──)

「……着いたか。ならば──」

 

 大ホールに到着した瞬間、ダークグラスパーは自らのパソコンをゆっくりと持ち上げ、スクリーンにその画面を映し出す準備をし始める。この作業が終わった後、彼女が取り出したのは、一つの箱だった。

 それを見た瞬間、博識で知られるスパロウギルディは驚愕する。

 

「そ、それは……!?」

「その通り。この世界の闇の闇、暗黒の中で作られた、禁断のエロゲー……『ドキッ! ツインテイルズと恋人大作戦!』じゃ。レッド、ハートはおろかブルーまでも平等に網羅したこの作品は、しかしテイルレッドたん保護委員会と、ハート姉様に守り守られたい会の暗闘によって誕生間も無く闇に葬られた……。つい先日、ゴールデンウィークの途中のことよ」

 

 そう、それは発売されてから一週間と経たず、闇へと葬り去られたエロゲーであった。ダークグラスパーは白磁のような細指で──しかし慣れた手つきで箱を開封すると、その中からディスクケースを取り出す。そのディスクケースの中から取り出されたDVDディスクは、いつの間にだろうか、イジェクトされていたPCのドライブに収まった。

 

(なんという、鮮やかな手つきか──)

(わかりきっていたことだが、こやつ……できる!)

 

 読み込み音が静かに流れ、パソコンの画面上にツインテール少女のアイコンが出現する。ダークグラスパーはそれをためらいもなくクリック。するとパソコンの画面と、戦士達の真正面に存在する大型スクリーンにでかでかと目の痛くなるような白背景が映し出され、そこに、既にこの世から消滅したメーカーのロゴが表示される。

 

「──────」

 

 言いようのない緊張感が、場を支配する。先ほどまでは物怖じもしていなかったはずのフェンリルギルディでさえ、息を呑み──その瞬間、彼は言いようもない悪寒を覚えた。

 

(…………っ!?)

 

 ダークグラスパーの冷ややかな視線が、ほんの一瞬だけ彼を捉え──しかし、すぐに視線はパソコンのモニターへと戻る。既にOPは終わり、ゲームがその開始を待っているからだ。

 そしてついに、ダークグラスパーの指がマウスをクリックし、ゲームがスタートされる。

 

 

 ──そこから先は、地獄だった。

 

 

 

 

『レッド、俺──』

『わかってる、俺のカラダ、お前の、好きに──』

 

「フッ……フヘヘ…………」

 

(馬鹿な……この衆人環視の中で、あのようなリラックスした、ただテイルレッドを愛でるためだけのだらしない笑いを──!?)

(自室でさえ、あるいは誰か来ないかと気になっている時には、できない行為だというのに!)

 

 

『ハート!』

『フッ……ワシに、情けをかけるとは……お前は、眩しいな──』

 

「……わかる、わかるぞ」

 

(ゲーム中のキャラに同意を見せる……あれは、何も気になっていない状況、『ゾーン』に入っていなければ不可能な行為のはず!)

(我らの存在など、気にも留めていない、ということか……!?)

 

 

『ブルー、俺がお前の拳を受け止めてやる!』

『グウルルルルルルル……』

 

「………………』

 

(流石に、ブルーのシーンではおし黙──っ!? 馬鹿な! わ、笑っている!? ニヤニヤしている!)

(そんな……! 我らが心底から恐れるブルーでさえ、愛でる対象に過ぎぬということなのか!?)

 

 

 当たり前の話だが、衆人環視の中でエロゲーをプレイできる者など、隊長格でさえも一握りしかいない。あまつさえ、ニヤニヤと表情を変え、下卑た衝動を晒すことのできる者など、アルティメギル広しといえど、どれほどいるか。

 だが、ダークグラスパーはやってのけた。それも、ハートやレッドだけでなく、ブルーでさえも彼女は愛でているのだ。いかにゲームといえど、ブルーがスクリーンに映った瞬間、戦士達は戦慄を隠せなかったというのに。

 

 こうして、一通りダークグラスパーがツインテイルズ達の『シーン』を見終えるまで、逆に精神的に消耗し、追い詰められていたエレメリアンの戦士達だったが──本当の恐怖は、ここからだった。

 

「……ふう。皆の者、見たな? この素晴らしいゲームを。残念なことに、制作会社は潰れたが──だが安心せよ」

「あ、安心……?」

「そうじゃ。……入り口を見るがよい」

 

 ダークグラスパーに促され、大ホールの入り口を一斉に見るエレメリアン達。そこに現れたのは、箱が山積みになった台車を押すメ・ガネの姿だった。よく見れば、台車に積まれているのは、さっきまでダークグラスパーが遊んでいたゲームである。

 

「あ、あれは!」

「そうじゃ。今から貴様達一人一人に、このゲームをくれてやろう。わらわからの餞別よ。だが……一人だけ、例外がいる」

「…………!」

 

 ダークグラスパーは立ち上がり、フェンリルギルディの眼前まで迫る。その威圧感に対し、無意識のうちにフェンリルギルディの身体は跪くことを選択していた。本来ダークグラスパーは、フェンリルギルディとは、大きく見上げるほどに身長差がある。しかし今、確かにフェンリルギルディの体躯は、誰の目にもダークグラスパーより遥かに小さく見えた。

 

「ダ、ダークグラスパー様……。いったい、私が何を──」

「とぼけるでない、フェンリルギルディ。お主、ツインテール属性を軽んじたな?」

「!?!?」

 

 驚愕し、思わずクラーケギルディを見やるフェンリルギルディ。しかし、驚いているのはクラーケギルディも同じだった。

 

「安心するがよい。誰から聞いたわけでもない。ただ、わらわのこの眼鏡が……全てを見通しただけのこと」

 

 ダークグラスパーの眼鏡が怪しく光る。そう、彼女の眼鏡は単なる眼鏡ではない。表面的な情報ではなく、属性力の深奥、魂の底までをも見通す眼鏡なのだ。

 

 それに見つめられ、フェンリルギルディはぞっとする気持ちを覚えた。まるで、お前など薄っぺらだと、そう言われたかのような気分だった。

 

 屈辱と恐怖、そしてわずかに残る反骨心と自尊心……その全てが、彼を凶行に駆り立てる。

 

「黙れ小娘! 貴様の属性力(エレメーラ)、今ここに貰い受け……っ!?」

 

 長剣を出現させ、周囲が止める間もなく、ダークグラスパーに斬りかかろうとしたフェンリルギルディ。その次の瞬間、彼が出現させた長剣は()()()()()()

 

「元より貴様らの個々の属性へのこだわりは、ツインテール属性の奪取が前提にあってこそ! それを忘れ、つけあがるとは愚かな……」

「あ、あ……」

「ツインテール不要論など、首領様への叛逆、神に唾するに等しい行為よ。故に、貴様を断罪する!」

「私は、ただ……!」

 

 ダークグラスパーのメガネが激しく発光し、二つの光円が発生する。それは無限を形作り、フェンリルギルディを無限の悪夢の中へと誘う扉を開く。

 

眼鏡よりの無限混沌(カオシックインフィニット)! わらわの眼鏡が生み出す属性力(エレメーラ)の深淵の中で、自らの闇と向き合うが良い!」

 

 フェンリルギルディも抵抗したが、そんな抵抗などものともせず、円は彼を深遠なる空間へと導いてく。

 そこに待っていたのは──彼にとっての悪夢。女性用下着を愛するフェンリルギルディにとっては死よりも暗く、恐ろしいもの。

 下着姿で汗だくの男たちが、むさくるしさ全開で、フェンリルギルディを連れ去ってゆく。

 

「あ、ああ……ああああああああああああああああ!!」

 

 絶叫までも、虚空は飲み込み──いつしか、戦士達の耳には、もはやフェンリルギルディの声はその残響すら、聞こえなくなっていた。

 

「な、なんという……!」

「恐ろしいか? だが安心せよ。わらわは首領様に役立つ者には寛大じゃ。役立つ者には、な……」

 

 ダークグラスパーが一歩踏み出すと、エレメリアン達の集団は割れていく。まるでモーセが海を渡った時のように。だが今この場を支配しているのは、新たな土地への希望などではない。ただ、新しい恐怖による深淵だった。

 

「ああ、そうだ。忘れておったが……ここへの合流が遅れておるのは、ゴートギルディだけではない」

 

 ダークグラスパーのその言葉とともに、エレメリアンの一団が大ホールに入ってくる。蟷螂のように鋭利な刃を全身にそなえる者もいれば、蟻のように堅牢な体躯の者もいた。

 

「あれは……!?」

「知っておられるのですか、スパロウギルディ様!」

「あれはエレメリアン四頂軍の一つ、美の四心(ビューティフルハート)の戦士達……! まさか、四頂軍が動くとは!」

「四頂軍はわらわの統率下にある。隊長格である奴の合流は遅れるが……。その配下も含め、精鋭揃いよ。……貴様らもツインテイルズに挑みたくば、鍛錬に励むことだな」

「…………っ!」

 

 ダークグラスパーは言外に、この基地に存在するエレメリアン達は戦力外であると、そう言っていた。このことに気づかない者はいなかったが、ダークグラスパーに対し何か言える者など、ただ1人もいなかった。

 

 ただ、2人の男を除いては。

 

「……ダークグラスパー様、次の戦い、私にお任せを」

「貧乳だけに任せられるか。貴様1人など、おめおめ死ににいくだけ。ここは、俺も同行しよう」」

「クラーケギルディ様!?」

「リ、リヴァイアギルディ様……!」

 

 クラーケギルディとリヴァイアギルディ、これまでいがみ合っていたはずの両者が、自ら『協力しての出撃』を提案する。……この異常性がわからない配下達ではなかった。

 だが、何も言えなかった。彼らにも、ようやく理解出来たのだろう。自分達がどれだけ怠け、無駄ないがみ合いを続けていたか。

 

「ほう……。ならば、存分に戦うがよい。安心せよ、残るのならば、屍は拾ってやろう」

「はっ……」

「しかし……ドラグギルディも敗れ、わらわにも抗えぬ敗兵どもと侮っておったが、覇気までは失っておらなんだか。気に入ったぞ……」

 

 ダークグラスパーはわざとらしい所作で、自らの懐より携帯電話を取り出す。アルティメギル内で流通している、次元を超えた通信も可能な代物だ。

 

「……? ダークグラスパー様、なんでございましょうか?」

「褒美じゃ。エロゲーソフトだけでなく、貴様らにわらわのアドレスをくれてやる。各々、携帯電話を出すがよいのじゃ!」

 

 皆、さっきまでは怒りや恐怖などが入り混じった、複雑な感情を抱いていたが……ダークグラスパーの鶴の一声に呆気にとられてしまうのと同時に、彼らは気づいた。ダークグラスパーが姿を現した時に感じた異物感。あれは、ダークグラスパーが人間だったからではない。

 

「どうした、わらわのアドレスが欲しくはないのか? ……おい貴様、携帯電話ぐらい持っているであろう。出せ!」

 

 さっきのエロゲー実演押し売りといい、ダークグラスパーは最悪の執行者(パワハラ上司)である。この事実に彼らが気づいた時、既に全ては遅かった。

 

「この腰抜けども……! ええい、もうよい! クラーケギルディとリヴァイアギルディ! さっさと出撃してくるのじゃ!」

「は、ははっ!」

「りょ、了解……」

 

 ちなみに、後日判明した事だが、ダークグラスパーがエレメリアン達にくれてやったエロゲー、『ドキッ! ツインテイルズと恋人大作戦!』はデータが書き換えられており、()()()()()()でダークグラスパーのアドレスが出現する仕様となっていた。

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 ……ダークグラスパーとの邂逅を終え、クラーケギルディとリヴァイアギルディは、無人の会議室の中にいた。

 2人はパソコンに向かい、自らの思いを書き綴っていた。スパロウギルディに向けての今後の部隊のまとめ方と、詫びの言葉。自らの部下達に向けての、ダークグラスパーのパワハラにも負けないようにという、励ましの言葉。

 リヴァイアギルディは、スワンギルディに向けての激励の言葉も書き記してある。

 

 お前は先が楽しみな戦士だ、と。

 

「────征くか」

「応よ」

 

 自らのパソコンに背を向け、宿敵(とも)と肩を並べ行くのは、死地。

 

 だが、勝たねばならない。勝って戻らねば、見られるのだ。乳という、無限の螺旋に彩られた2人の生が詰まった、このパソコンを。

 

 

 ただ、必勝を胸に秘めて──堂々と歩く2人の背は、確かに大部隊の将。兵が習うに相応しい、大きな背中だった。




次回やっとだ……やっとイエローを書ける……。

あ、そうそう。本作が原作から離れた展開しだすのは、良くも悪くも五巻前後からと、けっこうスローペースです。そのぶん、所々端折りつつ進めてるんですけどねー。

習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?

  • 構わん、やれ
  • 断固として拒否する
  • メス落ちまだ?
  • 習側が記憶失ってたらいいよ
  • トリニティ!
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