次の話はどうなるのかこれもうわからん。長くなるか短くなるか……
あ、そうそう。前もって言っておきますと、ハートの数少ない相性最悪のエレメリアンがクラーケギルディです。現時点でもう二人いますが、割とすぐ出番ありますねこれ。
「ここか?トゥアール」
『はい。強大な二つの属性力は、そこから感知されています』
「……静かね。ドラグギルディとの戦いの時とは、真逆」
「だが、油断するな二人とも。肌を突き刺すような、この感覚。なんという殺気か……!」
廃工場にたどり着いたツインテイルズは、あくまで慎重に歩みを進める。まるで深い沼のような、底なしの海のような恐ろしい気配。敵意と殺気と緊張感で形成された海底の中を、ゆっくりと踏破して行く。
そして──廃工場の奥にたどり着いた彼女たちを待ち構えていたのは、二体の巨漢。クラーケギルディとリヴァイアギルディの2人だった。
「お前達は……!?」
「お初にお目にかかる。レッド、ハート、そして我が麗しの貧乳の姫君よ。私の名はクラーケギルディ!一部隊を率いる将にして、誇り高き触手の騎士!」
「俺はリヴァイアギルディだ。……成る程、
その性癖のように、どこまでも対照的な2人。しかし今は反目しあうことはなく、自らの目の前に理想的な貧乳とツインテールがありながらも、エレメリアンとしての本能も抑えて、彼らはただ、ツインテイルズに純粋な殺意をぶつけていた。
「うげっ、触手……なんて、行ってる場合じゃなさそうね」
「あっちのクラーケギルディは、剣……レイピアが武器か。んで、あっちの方は……なんか、すごいおっきいものをぶら下げてるな」
「巨大な触手、恐らくはあれがヤツの武器なのだろうな。……さて、どう戦うかっ!?」
冷静に敵を観察し、適切な対処法を考えようとするツインテイルズ。しかし彼女たちがその思考をまとめる前に、二体のエレメリアンは飛びかかり、一方は股間の触手、一方は無数の触手と剣でもって、一気に攻勢を仕掛けてくる!
「ぎゃああああっ!?こいつも触手!?こんないっぱいいやああああ!!」
「テイルブルー!我が貧乳の君よ、申し訳ないが、今は貴女から倒させてもらいます!」
「っ、ブルー!」
「余所見している暇はないぞ、テイルレッド!!」
クラーケギルディから奇襲を受け、彼が操る無数の触手に慄くブルー。そのブルーを守ろうとするレッドに対し、剛槍と化した触手をリヴァイアギルディが突き立てる!
「させぬ!レッド、お主はクラーケギルディの相手を!」
「この布、ハートか!邪魔立てを!」
しかし、ツインテイルズにはハートがいる。彼女はリヴァイアギルディの触手をハートクロスで拘束すると、もう一つハートクロスを出現させ、リヴァイアギルディの巨体を封じ込めにかかる。その隙にレッドはブルーを抱えると、廃工場の外へと駆け出していき、それを追ってクラーケギルディも外に出て行く。人の残り香も途絶え、鉄錆の匂いが充満した廃工場内で、ハートとリヴァイアギルディのたった二人だけが立っている。
「ツインテールを解くとは!しかし、それで俺を倒すほどの
「くっ!こやつ……!」
ハートに行動を邪魔されたリヴァイアギルディだったが、元々はパワーで鳴らした身。まるで巨乳のような力強さでもってして、彼は自身を拘束するハートクロスを引きちぎりにかかる。
(いかん!拘束を解除せねば、引きちぎられる!そうなっては……!)
「拘束を解除したな、ハート!今度はこちらの番だ!」
これからの展開を思い、せめて最悪の事態は避けるべく拘束を解除したハートに向かって、リヴァイアギルディの股間の触手が襲いかかる。本体は仁王立ちのままだが、その触手はまるで槍のような鋭さと閃光のような激しさをともなって、荒れ狂う
「ぬっ……おおおおおおっ!!」
しかし、ハートもこれを予期していた。だからこそ引きちぎられる前に拘束を解除し、ハートクロスを防御に活用したのだ。ハートの周囲を覆う布の結界に対し、リヴァイアギルディの触手はその防御を貫けない。
「このまま近づく!」
「『硬』の触手は捌くか、ハート!ならば……!」
「くっ、これは……!?」
しかし、リヴァイアギルディもそれならばと触手による攻め方を変化させる。今までが『硬』の触手による鋭い一撃とすれば、『軟』の触手による相手の防御の隙を突くような、滑るような一撃。瞬間的に戦法をを変えられたのに対処しきれず、ハートは触手による一撃で吹き飛ばされる。
「がはっ……」
「槍のような『硬』!鞭のような『軟』!乳というものがただ柔らかいだけではないように、俺の触手もただ硬くあるだけではない。ハート貴様に対処できるか!?」
「舐めるでないわ!初見の技とて、出を潰せば問題はない!」
吹き飛ばされたハートだったが、すぐに立ち上がると、リヴァイアギルディに向かって跳躍!さっきまでと同じように、自らの周囲にハートクロスによる結界を張りながら近づいてくるハートに対して、リヴァイアギルディもまた、同じように対処する。
「ふん!その動きは見切っているぞ!」
「ならば、これではどうだ!」
しかし、ハートは同じことを繰り返すつもりなど毛頭なかった。ハートクロスを巧みに操ると、自身の前方に螺旋状に展開。そして自身もまた、空中にいながらにして猛烈に回転し、電撃を纏う!
「超級覇王!
「ぬっ!ぐおおおお!?」
ハート渾身の一撃に自らの触手を弾かれ、驚愕するリヴァイアギルディ。その体躯にまさに猛烈な勢いでハートは激突!ハートクロスに穿たれたリヴァイアギルディ、今度は彼が吹き飛ばされ、周囲に積まれていたガラクタの中に埋もれた!
「……どうだ!?」
着地までを鮮やかに決め、敵の様子を伺うハート。確かに手応えはあった。だが、倒れてはいないという確信もあった。
その確信を裏付けるように、胸に傷跡を残しながらも、リヴァイアギルディは周囲のガラクタを吹き飛ばしながら、悠然と立ち上がった。それには驚かなかったハートだったが、彼女が驚愕したのは、リヴァイアギルディの胸の傷跡。深く刻んだと思っていたが、あまりにも浅い。単なる痣程度にしか、傷を刻めないでいた。
「やはり、な……さっきの一撃で確信したぞ!ハートよ、確かに貴様は強い。単純な戦闘技能ならば、俺はおろか、もっと上……四頂軍の隊長格にすら届くだろう!」
「…………………」
「だが、
「ならば俺が負ける道理はない!エレメリアンの宿命……人間に触れ、楽しむことの出来ない我らにとって、人の体の一部を愛するということ、それは永遠の妄執の中に身を落とすということ!ごく稀にツインテールなどを発現する者もいるが、それも本当に一部の属性のみよ!……それでも、それでも俺は、
リヴァイアギルディの咆吼が響き、廃工場を揺らす。全身から
だが、ハートにも意地がある。たとえ勝ち目が殆どなくても、彼女は引かない。前世から『東方不敗』を名乗る者として、逃げることは許されない。
「……話は終わりか」
「…………ツインテールを結び直したか。確かにその状態ならば、攻撃は通るだろう。だが……」
リヴァイアギルディの触手が、今まで以上のスピードで動く。その動きは、まさに神速。ハートの目にさえギリギリのところでしか見切れぬほどの速度で、触手が全てを粉砕していく。
「……今の俺を、先ほどまでと同じと思うな。ハート、貴様に見切れるか?この俺の武技を!」
「笑止。見切れるか、見切れないかではない。……『やる』のだ、必ずな」
「ほう……、闘気が衰えていないな。なかなかの胆力ではないか!」
鉢巻を結ぶように、ツインテールを結び直すハート。その瞳にこもる戦意は、僅かたりとて衰えてはいない。リヴァイアギルディの言う通り、自身が未だ迷いを抱える身であったとしても、それでくじけるハートではない。
「ワシとしては貴様に感謝したいぐらいだ、リヴァイアギルディ」
「なんだと?」
「未だ迷いの途中、道半ば────ならば、まだまだ成長の余地のあるというもの!先ほどの口上でワシをくじけると思うたか!むしろこれからの道程を思って、柄にもなく心が熱くなってきたわ!!」
ハートの言葉がやせ我慢などではないということを、リヴァイアギルディはその身で思い知る。突然ハートの体が
「はっ!」
「ぬうっ!」
だがその防御の上からでも、リヴァイアギルディはまるで杭でも打ち込まれたかのような衝撃をその身に感じた。
全身から余分な力を抜き、自らの体内に存在する力を放出する技術。いわゆる『発勁』というものの応用だが、リヴァイアギルディにとっては全く知らない技術だったらしい。驚愕と衝撃で四肢が固まったところを、さらにハートの攻撃が続く!
(生半可な攻撃では、
「
「うぐおっ!?」
次に繰り出したのは、八極拳の技鉄山靠。すでに固まりきったリヴァイアギルディの防御の上から繰り出されたそれは、ハートよりはるかに大きな巨体をわずかに浮かし、その両腕を跳ね上げる。
(だがここまでは準備段階!一撃に力を込めるならば!)
「スウ────」
(何をしてくる!?いや、その前に!)
リヴァイアギルディの動きは止まるが、その思考は止まらない。彼の思考さえも固まっていたのは、鉄山靠をくらう瞬間までだ。
(動け動け動け!止まるな!人がどうかは知らぬが、我らに呼吸は不要。ただ自らの
全身に
(ならば、体格で勝る俺が有利!接近したのは悪手と知れ、ハート!)
股間の触手は近すぎるため、振るえば自身にも害が及ぶ。ならばと両手での掴み、圧殺を選択したリヴァイアギルディはすぐさま飛びかかり──────
「──────セイッ!!」
「があっ!?」
ハート渾身の
「ぬうおおおおおおおおおお!!」
「ガッ、アアアアアアアアアア!!」
まるでミサイルのような勢いで『発射』された自らの拳を振り抜き、リヴァイアギルディに苦悶の声をあげさせながら吹き飛ばすハート。リヴァイアギルディの巨体が廃工場の壁を突き破り、外まで転がっていく。
エレメリアンも無知ではない。人間が扱う武術に関しても、当然いくばくかの知識はあった。
だが、それを知識として知ってはいても、実戦で体感することなどなかっただろう。自身で試すことなどなかっただろう。百戦錬磨の猛者といえど、そもそもが人間とエレメリアンという種族には、体格の時点で大きな隔たりが存在するからだ。
だが──相手が人の四肢をしているならば、人の拳法が通じぬ道理はない。自らの弱い
「リヴァイアギルディ!?まさか!」
「っ!隙あり!!」
「ぐ……!?くっ!」
「うおっ!?」
リヴァイアギルディが飛ばされて来たのに動揺したクラーケギルディが、その隙を突かれてレッドに斬られる。それでも踏鞴を踏んで耐え、その剣でレッドを弾くと、リヴァイアギルディに後ろ足で駆け寄っていく。
「リヴァイアギルディ!」
「クラーケ、ギルディ……。案ずるな、俺は大丈夫だ」
「大丈夫なものか。……肩を貸そう、つかまれ」
「いいのか?俺たちは……」
「此の期に及んで、まだそんなことをいうか!お前のいう巨乳のように、大きい度量を見せたらどうだ?」
クラーケギルディの言葉を聞いて、驚き目を見開くリヴァイアギルディ。しかし、ここは戦場。彼はすぐに奮い立つと、クラーケギルディの肩を貸りて立ち上がる。
「フン、貧乳のように小さかったお前が、そんなことを言うのに驚いただけのこと。なんだ、
「フッ、意外と小さいところに拘るな。
もはやこの二体の間に、巨乳と貧乳の壁は存在しない。埋まることのなかった谷間は、皮肉にもダークグラスパーとツインテイルズという驚異をもってして、埋まってしまった。
「レッド、ブルー!」
「ハート!ブルーは相変わらず、触手に怯えてる。でも問題はそこじゃない、あいつら……!」
「うむ。これまでとは雰囲気が異なる……今までが水と油、いやお互いがお互いの泥水であり、静水でもあるようだったのが……今はまさに、水魚の交わりといった様子よ」
「ふん、ハートよ!そのちっぽけな
「貧乳が巨乳を、巨乳が貧乳を。お互いが引き立て、高め合う。その真理に至った我らに、敵はない!」
間違いなく、ドラグギルディに匹敵……あるいはそれ以上の
「……ハート、どうする?」
「レッド、何秒稼げる?」
「無理だ」
「なるほど、ならば……こちらも全力で挑むしかあるまいっ!」
今は仕切り直され、にらみ合いの状態。そんな状況下であることを利用して、ハートは瞬時に明鏡止水の境地に至り、『ハイパーモード』を起動させ。その身を黄金に染める。心身の消耗は激しくなるが、
「……わかった。トゥアール、戦闘後の整備……苦労かけるぞ!!」
『それぐらいは大丈夫です!ですが総二様、必ず、必ず勝って……勝って帰って来てください!』
そしてレッドもまた、自らのツインテール力を最大限に高める。その右手の甲には、ハートのツインテール属性と共鳴するように『キング・オブ・ハートの紋章』が光り輝き、レッドのツインテールとも呼応して、彼女の力をさらに押し上げていく。
「「「「……………………………」」」」
激しさを増していくお互いの
(そーじも、習も頑張ってる……なら、ここであたしが触手ごときで、止まってちゃ、だめでしょ……!)
テイルギアの最大の弱点。それは変身者の精神的コンデイション低下によっては、どこまでもその機能を低下させてしまう所である。今、ブルーの体は普段以上に重く、まるで重度の風邪を引いたかのように重い。それほどまでに、彼女の触手への恐怖は深い。本能にまで、刻まれているのだ。
(考えなさい、あたし!あたしを奮い立たせるものを!)
しかし、考えども考えども、ブルーには見つからない。このまま終わってしまうのか────彼女がそう考えた、矢先だった。
「貧乳の姫君よ!ブルーとハートを倒した暁には、貴女に私の求婚を受けてもらおう!」
(……ああ、そうか)
「──────────」
「ブルー!立ち上が……ヒッ」
「ど、どうした……」
クラーケギルディの言葉を受けて、ブルーが立ち上がる。しかし今の彼女の様子がおかしいことに、まず総二が気づいた。次に習も。
「?どうされた、貧乳姫!貴女の貧乳こそ、私の思い描いていた──」
「貧乳貧乳うるせええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」
ブルー、咆哮──その手にウェイブランスを出現させると、宣言もなしに
「いかん!クラーケギルディーー!!」
「エクゼキュートッ!ウェェェェイブッ!!」
貧乳であることの怒り、悲しみ、様々な憤怒と悲哀が詰まった一撃が、クラーケギルディをかばったリヴァイアギルディに突き刺さる。
「ぬ、ううううあああああああっ!!」
「っ!?倒れない!?」
「ならば「があああああっ!!」ブルー!?」
しかしブルー渾身の一撃も、リヴァイアギルディは食い止める。即座にハートとレッドは追撃をかけようとするが、それよりも前にブルーが飛び出し、リヴァイアギルディの顔面を殴り倒した。
「ごっ……」
「誰が貧乳星のプリンセスじゃあああああああああっ!!うが、がああああああああああああああっ!!」
もはやブルーは人ではない。獣、そう獣のように本能のまま、己の破壊と殺戮の衝動に従い拳を振り下ろす。その体は
「ガッ、ア……」
「う、あ、う……」
やがて、ブルーも力を使い果たし、倒れるが──その横には、リヴァイアギルディも死に体となって、倒れていた。
「リッ、リヴァイアギルディィィィィィィィィィィィィィ!!」
わだかまりを超え、ようやく分かり合えたはずの
「え、えっと……」
「気を抜くな、レッド。ブルーがなんとかリヴァイアギルディは倒してくれたが、クラーケギルディがまだ残っているぞ」
「あ、気にしないんだな……。でも、そうだな。ドラグギルディもああだったんだ、たとえ一体だけになっても、油断できない」
しかし、ブルーの何かと引き換えにリヴァイアギルディが倒れても、レッドとハートは油断できない。未だ残るクラーケギルディの戦力は、まだ未知数。特にさっきまで戦っていたレッドは技術面で圧倒されており、ハートもリヴァイアギルディのようなものならともかくとして、クラーケギルディの備える無数の触手とは相性が悪い。リーチの差もあるが、単純に拳で払いのけることもできず、ハートクロスを使えばダメージを通すこともできないからだ。
「卑怯とは、言わぬ!真正面からの猛撃、まさに見事だった。だが、友の仇は打ち取らせてもらう!」
「来るぞ!」
「こっちから仕掛ける!」
危険を感じ、横に飛んだハートとレッドが直前までいた場所に、クラーケギルディの触手が突き刺さる。
「ヤバイとは思ってたけど、さっきまではここまでの威力じゃなかったぞ!」
「友の死が、そしてその思いが!我が
宣言通り、クラーケギルディの触手が展開される。その数、まさに無数。もはや数えるのも馬鹿らしくなるような、明らかに百を優に超える数の触手に対し、それでも二人は果敢に飛び込んでいく。二人肩を並べ滑空するその様は、まさにツインテールそのもの。例え相手が友を失おうとも、自分たちが敗北すれば、それ以上のものが世界……いや、宇宙中で失われるのだという覚悟が、彼女達にもある。
「ハート!あれをやるぞ!」
「うむ、十二王方牌大車輪!」
「何をするつもりか、知らぬが……!くっ、なんだこの技は、邪魔だ!」
手数で攻めるクラーケギルディに対して有効なのは、数々の差を埋める必殺の一撃。そう判断したレッドは、もう一本のブレイザーブレイドを展開する。そしてハートは十二王方牌大車輪を用いてクラーケギルディの触手を防ぐと、ハートクロスを展開、レッドの体に巻きつける。クラーケギルディはというと、爆発で視界が塞がたことによって、レッドとハートが何をしているのかわからないでいた。
「何を…………!このような爆炎、我が触手ならば!」
「思い切りやれ、ハートッ!」
「爆裂!
ハートが独楽を回転させるように、猛烈な勢いでレッドの体を独楽のように打ち出す!レッドは二本のブレイザーブレイドを構えており、そこから吹き上がる炎が螺旋となって彼女を包み、まるで炎の竜巻が如くクラーケギルディに迫る!
「ううおおおおおおおおおおお!!」
「ぐっ!?」
触手で迎撃しようとするクラーケギルディだったが、猛烈な回転剣に炎も加わったことでとてつもない威力を持つレッドの進撃を、触手程度では止めることはできない。
「いけえっ!レッド!!」
「このまま、一気に──!」
触手群を打ち破り、クラーケギルディに肉薄するレッド。このまま決まるか────
「────ナメるなあっ!!」
「っ!?なっ…………」
────いや、クラーケギルディはそう甘い相手ではない。無数の触手を操る彼は、しかし本質は剣士。その手に備えた剣が、レッドの攻撃の隙間を捉え、その肩口を貫いた。
「うっ、あ……!」
『総二様!!』
「ぬうあああああっ!!」
怯んだレッドに対して、クラーケギルディは触手でその身を拘束すると、自身と触手を切り離して投げ飛ばす。大ダメージを食らったうえその身を拘束され、もはやレッドは戦闘不能だ。
「レッド!」
「ハート、次は貴様だ!貴様の武技、確かに見事。だがしかしっ!今の私に敵うとは思うな!」
「くっ!」
『まずいです、習さん!このままでは────!』
♢
『おおおおおおおおおっ!』
『どうした!我が触手の前には近づけんか!』
「習さん!」
ツインテイルズ基地──そこのモニターには、死闘を繰り広げるハートとクラーケギルディの姿が映っていた。
だが、戦況は現在ハートの方が不利だ。ハートも牽制としての飛び道具は備えているが、クラーケギルディに対しては無意味。近づこうとすれば、触手で食い止められてしまう。その上、大技は警戒したクラーケギルディが出させないよう立ち回っている。
(このままでは──!)
勝機はある。クラーケギルディはハートとの戦いに専念して気づいていないが、拘束されたレッドが痛みをこらえながらも、触手をちぎり、脱け出そうとしているのだ。ハートがクラーケギルディの気を引き続けることができれば、なんとかなるかもしれない。だが……
(それさえも、か細い勝機────エレメリアンに隙を作るには、やはり────)
ドラグギルディとの戦いの時には自身で決着をつけるため、戦場に赴いたが──しかし今は、少しでも時を稼ぐために、再び仮面を被ることを考えるトゥアール。
しかし、そこまで思いつめていたトゥアールの肩に、手がかけられる。トゥアールが振り返った先にいたのは、慧理那だった。
「慧理那、さん……?」
「トゥアールさん……新型のテイルギア、わたくしに預けてください」
「………………!」
その提案は、トゥアールにとって願ってもないことだった。戦闘力のない自分が戦地に赴けば、エレメリアンがその目的上人の命を奪うことがないとわかっていても、万が一もありうる。テイルギアを纏えない自身よりも、素人であっても戦う力を持てるであろう慧理那に行かせるのが、最善の策と言えた。
「……いいえ、これは、お渡しできません」
だが、トゥアールは慧理那の提案を拒否する。
「なぜですの!?やはり────やはり、わたくしでは無理なのですか!?」
「いいえ。慧理那さんがテイルギア装着に成功する確率は、ほぼ100%です。万が一にも、そこでつまづくことはありません」
「では、なぜ!?」
「レッドも、ハートも、ブルーも、強い覚悟と決意をもって戦っています」
「────っ!?」
突き放すように、トゥアールはそう告げる。普段は、変身中でもオペレーターとして、総二達には本名で呼びかけるトゥアール。しかし今、彼女があえて変身後の呼び名で彼らを呼んだことに対して、慧理那は強い疎外感のようなものを感じた。
「ギアを纏うのに必要なのは
トゥアールの言う通り、ブルーは自らの貧乳コンプレックスで爆発的に力を増幅させ、リヴァイアギルディをダウンさせた。レッドはこの世界に芽生えたツインテール属性が、一時の流行による偽物かもしれない理解したそのうえで、たとえ身勝手でもツインテールを守り続けることを誓い、ハートもゆっくりとだが、自らの中の惑いを消化しようとしている。無論、全員自らの命と────それ以上に大切なもの全てを賭けて、戦っている。
「あなたには、それが出来ますか?レッド達と同じように、全てを賭けて、全てをさらけ出して戦う覚悟が──」
「全て、を……」
この時、慧理那の脳裏に浮かんでいたのは──これまでに投げかけられた、数々の言葉。
『……慧理那ちゃん、あなたはどうしたい? テイルブレスを使って、戦いたいと思う?』
『ヒーローに憧れているのと、ヒーローになることは違う。……それがわかっているのなら、よく考える事だな』
『いいや。俺にとってのツインテールも、そうなんだ。いや……みんなそれぞれ、会長にとってのヒーロー、俺にとってのツインテールのように……他の誰にも理解されないけれど、他の何にも譲れないものがある。俺は、それを守るために戦うんだ』
『お嬢様、少しだけ──少しだけ、自分に正直に、開放的になってみても……いいのではありませんか?』
「……その資格があるか、どうか。もう、それは関係ありませんわ。わたくしは……わたくしの大好きなものと、誰かの『好き』を守るために、戦いたいのですわ!」
慧理那の言葉を受けて、じっと顔女の瞳を見つめ返すトゥアール。時間にして、数瞬。しかし慧理那にとっては、永遠にも思える時間、彼女達は見つめあい────
「……わかりました!ですが、約束してください。必ず、無事で戻ってください!」
「……わかりましたわ!」
トゥアールから黄色のテイルギアを託され、慧理那は力強く微笑む。彼女のすぐそばに控えていた尊も、慧理那の決断にゆっくりと頷いた。
そして、今。ついに彼女は唱える。これまでの日常から離れ、戦いの中に赴くために。
「────テイルオン!」
慧理那の体が、彼女が憧れていたものと同じ、まばゆい光に包まれ────
♢
「耐え、られたか……!」
「なかなかの、一撃……!だが、捉えたぞハート!!」
大勢は、決した。無数の小さな触手を捌き、なんとかクラーケギルディにサンシャインフィンガーを打ち込んだハートだったが、しかし耐えられた。その身を灼熱に焦がされながらも、クラーケギルディは一歩たりとも退くことはなく、ついに奥の手である十本の触手まで駆使し、ハートに離脱を許さなかった。その触手はハートの右腕を拘束している。
「乙女を傷つけるは不本意だが、貴様は戦士!故に許せ!」
「っ、ハート!!逃げ……」
背筋に悪寒を感じたレッドは、ハートに向かい叫ぶが──どうすることもできなかった。
ボキッ!
「ぐっ!?こ、この、程度で……!」
「腕が……!」
クラーケギルディの触手による締め付けは、ハートが纏うハートギアの薄い装甲ごと、その右腕を砕き折るのには十分な膂力を持っていた。猛烈な激痛に苛まれながら、ハートは闘志を衰えさせない。だが、その体はもはや限界が近い。明鏡止水によるハイパーモードも、維持できなくなってしまっていた。
「うぐっ、おお……!」
「離さん……!ハート、まずは貴様の
クラーケギルディの魔の手が、ハートに迫る。その手に握られているのは、レッドもこれまで何度か目にしたことのある、
「やばい!」
リングを認識した瞬間、レッドはその力を爆発的に増加させ、飛び出す。自らを拘束していた触手も、負傷も関係ない。なんとか立ち上がると、ただがむしゃらに駆けていく。
だが、間に合わない。
「これで終わりだ!ハート!」
「間に合ってくれええええええええっ!!」
あと数センチ、あと数瞬。その、決定的に埋まらないはずの差を────
雷の矢。電光石火の銃弾はクラーケギルディの手に命中。一瞬動きが止まり、レッドが間に合う。
「ハートを、離せえっ!」
「うぐっ!?」
レッド渾身のタックルを受けて、その衝撃で思わずハートを解放するクラーケギルディ。ハートは途切れそうになる意識をなんとかもたせ、地面に着地する。
「レッド……!すまぬ、助かった。さっきの銃撃は……!?」
「わからない。……!あそこ、人影だ!」
レッドが指差した方向を、ハートもクラーケギルディも見やる。廃工場の影、その中から現れたのは、二丁の拳銃を構えた
「先ほどの銃撃、貴様か!何者だ!?」
「君は────その姿は、まさか!」
「……そうか。変身、できたか……!」
「何者か……そう問われれば、名乗るのが道理というものですわね!」
170センチ以上の高身長に、全身に着込んだ重装備。黄色に輝くその装甲は、雷を連想させる鋭さと、向日葵を思わせる豊かさを備えている。そして、黄金に輝くツインテールは、たとえ身長が高くなろうとも、胸が豊かになろうとも、常に変わらぬ高貴な輝きを放っていた。
「わたくしの名はテイルイエロー!ツインテイルズの、新たな戦士ですわ!」
神堂慧理那、16歳。彼女の戦いが、始まる────
習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?
-
構わん、やれ
-
断固として拒否する
-
メス落ちまだ?
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習側が記憶失ってたらいいよ
-
トリニティ!