なんにせよ3巻もおそらくあと2回で終わるはずです。4巻は本作オリジナルの展開が強く出てきて、ゴートギルディも表に出てきます。やっとです。アラクネさんは出番全カットの可能性もあります。うそです。でも彼の存在自体は新フォームに相応しい敵幹部でしかないので、おそらく部下の方が目立つ気がします。でも結局激闘させる気がします。
レッド達がケルベロスギルディと相対する数日前──アルティメギル基地にて。
「……して、どうじゃわらわの人気は」
「すごいわよダーちゃん! これまでにない勢いで快進撃を続けているわ!」
ダークグラスパーとケルベロスギルディによる侵略作戦は、開始から一月経たず目標とする部分まで迫っていた。
その理由はダークグラスパーが持つアイドル『善沙闇子』としての魅力、ケルベロスギルディのプロデューサーとしての手腕、ツインテールに慣れてきた世間に対する『三つ編みアイドル』という刺激。様々なものが要因として上がるだろう。
今、世界はツインテールで染められている。しかしハリウッド版『ツインテイルズ』の主演女優が特にツインテール好きでないように、ツインテイルズは好きでも、ツインテール自体が特に好きという者たちばかりではない。それに、いくら好きでも普通の人間ならば、同じものを見続ければ飽きもくる。ツインテールに対して『飽き』というものを知らないからこそ、総二達はテイルブレスを用いることができるのだ。もちろんそれだけが要因ではないが、逆説的にブレスを扱えない一般人は、ツインテールに対してのスタンスなど、よくある流行り物に対するそれでしかない。
それでもツインテールは『流行』である。今や可愛さの象徴となったツインテールに続々と髪型を変えていくアイドル。その中で先日までツインテールだったアイドル善沙闇子が、突然これまで見たことがないほど見事な三つ編みに髪型を変化させる。『眼鏡』と『三つ編み』という古から続く文学少女的ビジュアルは、人々に新鮮な刺激を与えた。それが彼女の人気の源泉となっている。
だが、ただ新鮮なだけではここまでの人気は維持できない。ダークグラスパーがアイドルとして世を席巻する理由、それは────
「眼鏡……。そう、やはり眼鏡こそが至高よ」
「そうねえ。眼鏡と三つ編みとの相性の良さもさることながら、ダーちゃんが一心に『眼鏡』を押しているという事実。アルティメギル基地の総力をあげたゴリ押しでも、ステージや番組での『実像』はどうにもできないもの。これこそが、ダーちゃんのアイドルとしての
善沙闇子というアイドルが世を席巻する最大の理由は、彼女が一貫して『眼鏡』を押しつ続けているという事実。どんな相手にも負けない、どんな相手にも口を挟ませないその眼鏡トークは、彼女の活動に芯を与えた。そして眼鏡好きアイドルとしてまさに不動の地位を得たならば、後はアルティメギルの技術力とケルベロスギルディの人並み外れたプロデュース力による超ゴリ押しであろうと、彼女が反感を食らうことはほとんどない。テレビ番組だけでなく、ポスターやバナー広告、果てはドラマなどで彼女が次々に活躍しようが、
「そうじゃ。眼鏡こそがわらわの戦略の肝にして、わらわが布教するもの。……だが、足りぬ。ケルベロスギルディよ、お主はこれまでにない勢いと言ったな?」
「? ええ、そうよ。オリコンチャート1位も、あたしがプロデュースしてもここまで短期間では────」
「確かに、表面上のファンは多かろう。だが、わらわを見る大衆には
「……なるほど。『信者』と呼べるまでのファン、その数が少なすぎるのね?」
ケルベロスギルディの思考が急激に冷えてゆく。彼もネットの反応などは掲示板なども駆使して追っていたが、アイドル善沙闇子を攻撃するようなコメントをわざとしようが、そのコメントに対して攻撃的なコメントが書き込まれることは、さほどなかったのである。
「……やはり、ツインテイルズか」
冷えた思考は、ケルベロスギルディの口調を将としてのものに切り替える。並みのエレメリアンならば震え上がるような威容を従えながら、ダークグラスパーは忌まわしき仇敵であり、同時に思い人でもある者のことを思っていた。
「トゥアール……そなたのこの世界での人気、もはや不動のもののようじゃ……。となればやはり、そなたらを倒さねばならぬ、か……」
ダークグラスパーの脳裏によぎったのは、オウルギルディに命がけで収集させたデータのこと。レッドとハートの二人ぶんのデータのみしか取れていないが、これまでのツインテイルズの戦闘記録を見ても、警戒すべきは爆発力に優れるレッドと、安定して戦闘技術の高いハートである。凡百の将ならば、この二人の情報だけで満足してしまっていただろう。
だが、この二人は違う。
「ケルベロスギルディよ、万が一の時があれば、そなたには犠牲になってもらう」
「そこまでの相手、ということか。ならばよかろう。だが死に場所はともかく、私を倒すにふさわしい相手かどうかは、私自身が見極めさせてもらおうか」
「というと?」
「今度、マスコットに扮して貴様のライブの宣伝を行う。しかし予定を変更し、純粋には行わん。三つ編みの布教も織り交ぜつつ、わざと
「オウルギルディが調査しきれなかった相手……。イエローとブルーの情報も集めようということか。なるほど、貴様の能力は情報収集に有用だったな」
「ああ。ブルーはエレメリアンの中で忌避するものが多く、極端に資料が少ない。イエローに至ってはまだ2、3戦ほど。情報は集めて損はない……」
こうして、ケルベロスギルディは出陣した……。
♢
「CDの初回特典の三つ編み券よ〜! 購入者全員もれなく三つ編みにしてあげるっ!!」
そして、ツインテイルズと邂逅しての第一声がこれである。これではブルーが挨拶もなしにドロップキックをお見舞いするのも無理はないだろう。
「はっ!? くっ、挨拶もなしに蹴りを入れてくるとは! やはりブルーが野蛮人というのは真だったか!」
「こいつ、さっきキャラが……?」
「ほんっと────にあんたらは悩みとかなさそうでいいわよね! エレメリアン!」
「待てブルー! 今は様子見を……」
慧理那と総二の『友情』を目の前で見せられたこともあり、イラついていたブルーはその手に持った槍でさらに追撃をしかける。しかしケルベロズギルディは怒涛の攻撃をあっさりと受け止めてみせた。
「こいつ……!」
「悩み、か……。そうとも限らぬぞ」
「「ブルー!」」
レッドとハートの攻撃がブルーをケルベロスギルディから引き離すが、ケルベロスギルディは二人の一撃にも動じず、冷静に彼女達を見据えている。
「このプレッシャー……! こやつ、幹部級のエレメリアンだ」
「最近現れないと思ったら、戦力を立て直してたのか!」
「……ごめん二人とも。どうも想像以上にヤバい敵みたいね……。見て、周囲を」
「なっ……なんだこりゃ!?」
レッドが驚愕するのも無理はない。ツインテイルズとケルベロスギルディの周囲には、多くの女性がへたり込んでいたのだ。しかもその何れもが、例外なく髪型を三つ編みにされている。髪の長短に関わらずだ。
「た、助けて……。気づいたら、無理やり三つ編みに……」
「むう、なぜ拒む? 我が絶技により、お前達の髪はより一層の輝きを増したというのに……」
「その口ぶり……。どうやら、この惨状はお主自身の手で作り出した、というわけか」
「その通りだハート。私はこの両の腕のみで螺旋を、三つ編みを紡ぐ!」
ツインテイルズが出現反応をキャッチしてから到着するまで、所有した時間はもって5分程度である。その短時間で数十人以上を見事な三つ編みにしたという事実に、レッドは驚いていた。
ただ乱雑なだけの三つ編みなら、エレメリアンの身体能力ならば可能だろう。だがケルベロスギルディが編んだ三つ編みは、被害者が嫌がっていなければ、レッドですら手放しに褒めていたかもしれないと錯覚するほどに見事だった。
それほどの三つ編みを数分の間に数十本編み上げたという事実。これまで相対した幹部級エレメリアンを比較しても大きい、積み上げられたエレメリアンとしての年月。それを背後から感じ、レッド達は改めて気を引き締める。
「ともかく、これ以上被害を広げるわけにはいかない! ハート、ブルー! こいつを倒すぞ!」
「わかったわ!」
「周囲には被害者もいる。敵戦闘員のせいで思うように逃げられていないようだから、慎重に戦うぞ」
今ツインテイルズがいる場所は十分に広いが、周囲の人が
「テイルブルーよ、お前は哀れだな……。私のこの腕を持ってしても、お前のノーフーチャーな胸の薄さでは、どうにもプロデュースできない……」
「
だがケルベロスギルディの挑発に乗ったブルーが、いきなり武装を
「落ち着けブル────ッ!!」
「大丈夫、あたしは冷静よ……」
「こ、これまでにないほどに殺意を研ぎ澄ましておる……」
ハートすら思わず引くほどの殺気を放ちながらも、ブルーの思考はおどろくほどに冷えていた。だが、その心にはマグマのような怒りが煮えたぎっている。もはや誰にも彼女は止められない。
「エクゼキュート……ウェェイブッ!!」
ブルーの放った断罪の一撃は、驚くほどの精密さと速度でケルベロスギルディを直撃。その身体を貫き、周囲に土煙を巻き上げる。
「やったか!?」
しかし土煙が晴れて中から現れたのは、必殺技の直撃にも五体満足のケルベロスギルディだった。
「う、嘘……直撃したのに!」
「人質をとっているも同然だというのに。やはりブルーが冷徹に勝利を求める戦士という評は、間違いでなかったか」
「……っ。いいわ、無事なら何度でもブチ込むだけよ」
「いや待て、ブルー」
無事なケルベロスギルディの姿にひるむが、それでも意地になって挑みかかろうとするブルー。しかし彼女が一歩を踏み込む前に、ハートがそれを止めた。
「何よハート!? ここで……」
「落ち着け。……あやつの首を見てみろ。数が足りぬ」
「首? ……ああっ!?」
「フ、気づいたか」
ケルベロスギルディはその顔に不敵な笑みを浮かべていたが──その笑みを浮かべる『顔』は一つだけ。残り二つの首が無くなっていた。
しかし、それはブルーの攻撃で失われたのではない。ハートによる指摘の直後、ケルベロスギルディの後ろからもう一体、同じく一つの首だけしかないケルベロスギルディが現れたのだ。そしてこの2体の後ろには、ボロボロの状態で倒れ臥す3体目がいた。
「分離? 分身? いったい……!」
「三つ編みへの愛より生まれた私は、三つの命を編んだ存在。故に、無敵なのだ」
3体目のケルベロスギルディがむくりと起き上がり、他2体と融合。再び三つ首に戻った彼の身体は、一切の損傷なく復元していた。
「……3体に分離できるのがご自慢のようですが、わたくしも入れてツインテイルズが4人いるという事を、お忘れなく」
『慧理那さん! 私も入れて5人です、5人!』
「あっ……。す、すみませんわ」
と、ここで物陰から現れたのはイエローだった。登場のタイミングを計っていたようだが、ケルベロスギルディの台詞に上手い返しを思いついたと思って出てきたらしい。
「テイルイエロー……。なかなかの
「なっ……! し、失礼ですわね!」
「二人とも、あいつ腕もそうだけど観察眼も確かみたい。強敵ね」
「「ブルー……」」
残念なものを見る目でブルーを見るレッドとハート。しかしブルーにとって巨乳とは不倶戴天の敵である。少しばかり嫉妬心を抱くのも、仕方のないことであるはずだ。
「と、ともかく! これで数のうえでは逆転しましたわ!」
「イエロー、まだ人質が残ってるんだ。慎重にな!」
「この人数で必殺技を直撃させれば、奴も倒せるかもしれん。行くぞ!」
イエローの言う通り、たとえケルベロスギルディが3体に分離できようが、ツインテイルズの方が数は上。この状況ならば、ケルベロスギルディを追い込むことも可能だろう。
だが、相手も百戦錬磨のエレメリアンである。情報収集が今回の目的である以上、ケルベロスギルディは無理に勝ちを狙う必要もないのだ。
「
「むっ……!」
「なんだ、こいつらの動き……!」
これまでツインテイルズが戦ってきた
「フ…………」
「あっ、待ちなさい!」
「待ってくださいまし、ブルー!」
「二人とも待て! 深追いは……。くっ、こやつら!」
立ち去ろうとするケルベロスギルディを追い、走り去っていくブルーとイエロー。
二人からは必死に逃亡しているように見えるケルベロスギルディを追い、いつのまにか広い場所まで来てしまったブルーとイエロー。周囲には人も建物もなく、暴れるにはうってつけだ。
「……どうやら観念したようね。場所も丁度いいわ。おとなしく槍のサビになりなさい!」
「や、やっと追い付きましたわ……」
「フン、確かにここならば丁度いい……。貴様らの実力を見るにはな!」
「「っ!?」」
振り向きざまにケルベロスギルディが放った火球を、横に飛んで避ける二人。左手側に転がるようにして避けたイエローはすかさず銃撃を放ち、ブルーは右からケルベロスギルディに襲いかかる! ケルベロスギルディはブルーの一撃を防ぐと蹴り飛ばし、再び距離をとった。
「ほう、これに対処してくるか!」
「これまでは演技だったってこと……! 上等よ。イエロー! あたし達で倒すわよ!」
「わかりましたわ! 援護はお任せを」
イエローの銃撃を背に突撃し、ケルベロスギルディ相手に接近戦を仕掛けるブルー。至近距離では槍は振り回しにくいと判断し、一気に近づくケルベロスギルディだったが、ブルーは槍の穂先を地面に突き立てると、ポールダンスを彷彿とさせるような動きで槍を支えとして回転し、ケルベロスギルディに強烈な蹴りをくらわせる。
「ぐっ! ……ブルーは槍の扱いも知らぬ、蛮族と伝え聞いていたのだがな!」
「これまではそうでも、これからは違うってことよ!」
「ハートによる特訓の成果、見せる時ですわ!」
果敢に攻勢に繰り出すブルーに追従し、自らも突撃するイエロー。あまり接近戦に適さない彼女の武装だが、慧理那の性格と彼女が心の師と仰ぐヒーロー達の戦い方の関係上、イエローは接近戦を好む傾向にあった。
その傾向を矯正するのではなく、至近距離での銃撃戦……いわゆるガン=カタをこなせるような特訓を、ハートはイエローに課した。銃撃の腕前自体はテイルギアのサポートもあって問題ないレベルなのだから、本人の性格に合わせた戦い方を教えた方が良いと判断したのだ。
そしてそれは、ブルーとの共闘の中で思わぬ形で発揮されることになった。
「イエロー!」
「わかってます!」
「先ほどとは役割を変えて来たか……! 面白い、もっとお前達の力を見せてみろ!」
重装甲のブルーが至近距離での格闘戦を担当し、ブルーが遊撃手として速度を活かして攻撃を加えていく。変身後は何から何まで対照的な二人だったが、だからこそお互いを伸ばしあうような戦い方ができていた。
「これでどう!?」
「ですわっ!!」
そして、ついにケルベロスギルディの体勢をブルーが崩し、そこにイエローが全武装を集中して叩き込んだ。いかに幹部級エレメリアンといえど、イエローの全火力をくらえばひとたまりもない。しかし……
「なるほど、強い。だが、学習能力がないな!」
「っ! 怯ませてたはずなのに、また……!」
「予備動作も必要とせずに分離できるとは……!」
また3体に分離したケルベロスギルディのうち1体が犠牲になり、再び融合して無傷に戻る……。先ほどブルーが必殺技を叩き込んだ時の焼き直しだった。
「ブルー! イエロー!」
「二人とも!」
「むっ、もうあれだけの数を倒したか……」
しかしここで、レッドとハートが
「イエロー! ここは……」
「わかっていますわ! ここまでの相手ならば、とっておきの
「ええ、レッド達と共闘して……って、え?」
イエローが取り出したのは、先日自身が倒したリヴァイアギルディから入手した
しかしこの
「ちょ、待ちなさい!」
「
「待てって言ってんでしょ! これ以上大きくなったらその胸を引きちぎるわよ!」
イエローの左腕が光ったその瞬間、ブルーの腕が彼女の肩を掴んだ。しかしその瞬間
「キャ──────────ッ!?」
「ああっ、ブルーッ!?」
季節は夏間近。野球少年たちが白球を追うべく練習を重ねるそんな季節の青空に、見事なまでの軌跡を描いてブルーは弾き飛ばされていった。
「ブルーッ!」
『これが
「同士討ちとは愚かな……。一度は見直したが、どうやら私の勘違いだったようだな。目的は達成した、撤退するぞ」
空へ消えたブルーを案じ、驚愕するものの合流したレッド達。それを見たケルベロスギルディは、目的の情報収集の達成も合わせここまでと判断したようだ。軽やかに跳躍すると、光のゲートへと消えていった。
「くそっ、あいつどうしてこの会場に現れたんだ……?」
頭の中に疑問符を抱えたまま、人が集まる前に立ち去ろうとするレッド。その視界の端にうつるのは、戦いの舞台となった会場で行われていたイベントの内容を告知するポスター。
その中で、レッドはなぜか出演者の一人が気になっていた。見知った名前だ。
その名は、善沙闇子。
破竹の勢いで進撃を続ける、眼鏡アイドルの名前だった。
実は本作では設定上、ツインテイルズは原作より強いはずです。でも原作より苦戦してる気がします。なんででしょうね。
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