全新系裂! 究極東方不敗伝テイルハート   作:天地優介

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お待たせしたので、今回は当社比いつもの60%増しのボリュームとなっております。
いやー長い!3巻はさっさと終われるとか、誰が言ったんでしょうね!
とにかく重要な伏線とか、サラッとしたとこに大事な描写があるせいで、取りこぼしが全く出来なくて辛い!ぶっちゃけ原作とそんなボリューム変わってない気さえする!
まあそれはないんでしょうが、戦闘シーンは原作以上に盛りに盛るのが本作の意地。Gガンと俺ツイのクロスらしさが出るまでもう少しなんだ……!だからアストラルチェインに心を囚われてる暇はないんだ……!


第23話 対決・光と闇のツインテール

「……やっぱり三体に分身してるな。これがあのケルベロスギルディの能力なのか?」

「はい。二度この能力を見せていますが、いずれも攻撃の直前で分離していて、直撃を受けたのは一体だけです。しかし再融合時にはダメージが完全に回復しています。……分離の速度といい、厄介な能力ですね」

 

 ケルベロスギルディとの戦いの直後。ブルーを回収して基地に戻った総二達は、早速ケルベロスギルディの対策について作戦会議を行なっていた。

 これまで数々のエレメリアンを撃破してきた彼らだが、基本的には相手がどんな能力を持っていようが、最終的には力で上回っての力押しで勝利をもぎ取ってきた。

 しかし、ここにきて力押しでは勝つのが難しい相手の登場である。それに加え、トゥアールには一つ懸念事項があった。

 

「ケルベロスギルディの目的……。彼は偶然現れたわけではないかもしれません」

「それってどういうこと? まさか……」

「そのまさかです。先日オウルギルディが総二様と習さん相手に、情報収集を目的に戦闘を仕掛けてきていました。そして今度は戦闘員を使ってわざわざ分断してから、愛香さんと慧理那さんに勝負を挑んでいます。おそらく、今回の彼の目的は情報収集でしょう」

 

 トゥアールは見抜いていた。ケルベロスギルディの目的と、その裏にいるであろうイースナのことも。だが、ダークグラスパーとしてのイースナの力は、ケルベロスギルディ以上に強大で凄まじい。ただでさえ勝利が難しい相手に情報戦で上回られては、勝利への可能性がますます遠ざかってしまう。本質的には理知的な科学者であるトゥアールにとって、一か八かの賭けは何としても避けたいものだった。

 

「なるほど……。それならば、結果的に属性玉(エレメーラオーブ)の効果をあまり見せなかったのは良かったかもしれませんわね」

「イースナもいるんです、こちらの基本戦力に対しては、間違いなく対応してくるはず。相手の虚を突くには、属性玉(エレメーラオーブ)を駆使する……それしかないでしょう」

「成る程、それならばワシのハートブレスにも属性玉変換機構(エレメンタリーション)を実装してくれぬか? 難しいかもしれぬが……」

「前回は急ぎでしたから。属性玉変換機構(エレメンタリーション)程度なら、なんとか実装できるかもしれません。やってみましょう」

 

 いずれ来るであろう決戦の時に向け、着々と準備を進めるトゥアール達。しかし総二はこの会議中、ずっと口を閉ざしていた。

 その原因は、ケルベロスギルディとの戦いの直後にある。彼がいた会場で当日行われていたイベントに、人気眼鏡アイドル善沙闇子が出演していたのだ。

 それだけならば、単なる偶然として片付けていただろう。だが、総二の中には違和感があった。それは善沙闇子が短期間の間には不自然なほどのブレイクを果たしたことや、彼女が眼鏡ばかり推していることも積み重なって生まれた違和感だった。

 

「………………」

「どうしたの? 総ちゃん。そんなに難しい顔して」

「うわっ!? いたのか、母さん……。てか、何その格好」

「いいでしょ、これ。悪の女幹部コスよ!」

 

 悩む総二に声をかけた未春の格好は、おそらくダークグラスパーの衣装も意識したのだろう。彼女が着るには少しセクシーすぎないかと思えるようなものだった。

 

「母さん、今は大事な話を……」

「ねえ、総ちゃん。あなたが何で悩んでいるかは、わからないけど……一つアドバイス。自分の心に正直にしてみればいいわ」

「え…………?」

「これでもあなたの母親よ? 私も父さんも、自分の心に正直に生きてきたわ。そしてあなたという子を授かったの。だから、あなたも自分の心の赴くままにやってみなさい。もし失敗したとしても大丈夫、あなたには、仲間がいるでしょ?」

「仲間……」

 

 そう言われて顔を上げた総二の目に映ったのは、彼を心配する仲間たちの顔だった。

 

「そーじ、大丈夫?」

「悩みがあるなら聞くぞ? 総二」

「観束君には多大な恩がありますもの。わたくしにできることなら、なんでも言ってくださいね!」

「総二様、あまりお一人で抱え込まないでください。私たちがいるのですから」

 

 仲間達からの言葉を受けて、総二はいつのまにか自分の中から、『仲間を頼る』という選択肢がなくなっていたことを悟った。これまでにない強敵を相手にしたからか、それとも同じ『人間』が相手だったからか、彼は知らぬ間に、自分の心の内に迷いを抱いていたのだ。

 だが、彼はもう迷わない。気づかないうちに自分を心配してくれていた仲間たちの顔を見て、彼の中の迷いは晴れ、同時に違和感は確信へと変化したからだ。

 

「……そうだな。でもごめん、今は話せない。このことに気づいてるのは多分この世界で俺だけで……。その事実には、きっと意味があると思うから」

「フッ、ならば良し。先ほどまでは悩みで顔をしかめておったが、今は精悍な顔つきをしておる。これならば、心配はない」

「そうね、習の言う通りだわ。……そういう顔してる時のそーじは負けないって、私はわかってるから」

「愛香さん何を幼馴染アピールしてんですか! 今の愛香さんの顔はメス顔ですよメス顔!」

「あんたの顔を大福のように丸めてあげるわトゥアール。丸顔って男ウケいいらしいわよ?」

「あででででででででででで! 顔が引きちぎれます!」

 

 いつもの光景を眺めがら、総二は自身の中に生まれた一つの確信を確かめるためスマートフォンを起動する。

 目的は、アイドル善沙闇子のライブ日程の確認である。予約分のチケットは売り切れていたが、当日分を多く用意しているようだ。これならば、総二が早く会場に向かえば購入することができるだろう。

 

(急激な人気の拡散、多くの人を集めようとする営業戦略────そして、正体を思い浮かべた瞬間の、繋がったような感覚)

 

 認識撹乱装置(イマジンチャフ)はテイルギアに備えられた装備である。ならば、そのコピー品であるグラスギアに備わっていようと、おかしくはない。

 

(間違いない。善沙闇子の正体は────ダークグラスパーだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ところで昔話をするんだけどね? ケルベロスってどこかで聞いたなって思ったら、卒業後すぐ妊娠して結婚したドMの後輩を飼ってた時の名前だったわ。懐かしいわ〜。名家の子だったらしいけど」

「やめてくれないか!? 唐突にツッコミが追いつかない発言をしてくるのは! ていうか、名家……? 母さんの後輩……? ………………あっ」

 

 自分の母と、慧理那の母。二人の間にあった禁断の関係について一つのひらめきを得てしまった総二は、慧理那にこの事実が知られないようにしなければと、また密かに決意を固めるのであった。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 ……一方、ダークグラスパー──いや、イースナも決戦に向け、英気を養っていた。とは言っても、メガ・ネだけがともにいる部屋でゴロゴロしているだけだが。

 

「どや、イースナちゃん。お仕事うまくいっとるんか?」

「う、ううん……。普段は、も、もっと早く、ファンなんてドカンと増えるのに……」

「やっぱ、ツインテール愛に溢れとる世界は違うなあ」

「それだけじゃ、ない……。この世界、眼鏡自体がないがしろにされてる……。だから、三つ編みを頼ったけど……。そ、それも、やっぱり一時的なブーストにしかならない……」

 

 この世界に浸透するツインテール、その根源はこれまでと何かが違う────イースナはそう直感していた。

 

「……メガ・ネ。あれ出して」

「え? でもトゥアールはんの写真集、夢が叶うまで見ないようにするって言っとったやない」

「トゥアールさんには、巡り会えたから……だから大丈夫。それに、頑張った自分にご褒美」

「ミサンガとかと同じで、こういう願掛けって一回折れるとあかんもんやと思うけど……。まあええわ。頑張っとるのは事実やしな」

 

 口では注意しながらも、メガ・ネは自身の右腰をポンと叩く。すると腹部から引き出しのように箱がせり出してきた。中に入っていたのは、アルバムだ。数多くの写真が収められているが、それは全てトゥアールをとうさ……撮影したものである。

 そのアルバムをメガ・ネから受け取り、満面の笑みを浮かべてめくり始めるイースナ。しかしその表情はすぐに笑顔でなくなり、困惑と沈鬱さが混じったものとなる。

 

「……なに、これ」

「ん? どしたん?」

 

 

 

「トゥ、トゥアールさんが……ツインテールじゃない…………!」

 

 

 

 イースナが知るトゥアールは、常にツインテールだった。幼子を愛する以上に彼女はツインテールを愛し、常にツインテールのことを想い戦っていた。

 そのトゥアールがツインテールを解いた写真など、イースナは持っていない。当然だ、イースナはトゥアールがテイルブルーとして戦う姿ばかりを見ていた。テイルギアを纏うものがツインテールを解く姿など、それは敗北による属性力(エレメーラ)の奪取という前提なくしてありえない。

 だが、写真の中のトゥアールの姿は────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()属性力(エレメーラ)を彼女が失ったことによる、決してありえない光景。究極の矛盾がそこには存在していた。

 

 ────そして、この写真を見てイースナはすぐに『真相』に気づいた。

 

「トゥアールさん、ツインテール属性を、失ったんだ……!」

「なんやて!?」

「でも、どうして……!? テイルレッドは……ツインテールで……! っ、まさか……!」

 

 イースナは震える指で眼鏡のブリッジを押し上げると、激情のままにダークグラスパーの姿へと変身した。

 その心中に宿るのは、ただ純然たる怒りである。

 

「メガ・ネ。ケルベロスギルディを呼べ」

「イースナちゃん……」

「テイルレッド────やつは、やつはトゥアールではない……!」

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 

『コンタク〜トも、レ〜シィ〜ックも、全宇宙から消し去〜る♪』

 

 アイドル『善沙闇子』の初野外ライブ。数万人規模で開催されたこのライブは、当日券の多さもあってか当然のごとく超満員。数万の観客が善沙闇子のきらびやかな姿のために集まり、熱狂する興奮の坩堝の中に総二はいた。

 

『アイドル善沙闇子こそ、ダークグラスパーである』。その確信を得た総二には、もう一つの確信が会った。それはライブ会場のボルテージが最大限に達したその瞬間、何かが起きるという確信である。

 

「うおおおおお! 闇子ちゃ〜〜ん!!」

「俺のコンタクトも奪い去ってくれ〜!」

「君のために眼鏡にしたんだ〜!」

『め〜がねめがね、なにもかもめがねになっ……きゃ──────────ッ!?』

 

 そして、総二の確信は現実のものとなる。観客席からライブステージへの声援も最高潮に達し、曲もサビに突入しようかというその時、上空から降り立った何かが、善沙闇子のステージに直撃したのだ。

 

「エ、エレメリアンだ!」

 

 世間はツインテイルズのおかげで呑気さを保っているが、至近距離に怪物が現れれば流石にパニックにもなる。ステージ上の善沙闇子──いやイースナが我先にと逃げてみせたのも手伝って、ステージ周囲はあっという間に無人となった。

 会場の広さもあるのか、人の群れは止まることもなくはけていく。その流れに乗ってステージから自然に離れた総二は、大型看板の裏に隠れると、トゥアールに通信を入れた。

 

「トゥアール! ケルベロスギルディが出てきた! 愛香達にも連絡してくれ!!」

『既に向かっています! 総二様……まさか、ダークグラスパーの正体は!』

「……多分。でもまだわからないし、他の人の避難がまだだ! ……今日ここで、決着をつける!」

 

 

「テイルオン!」

 

 

 トゥアールとの通信を打ち切った総二は変身。テイルレッドとなると駆け出し、ステージ上へとおどり出る。

 普段は戦いを遠巻きに見守るギャラリーがいるものだが、ケルベロスギルディが派手に登場したこともあってか、周囲にはレッドとケルベロスギルディ以外、誰一人としていなかった。

 

「ケルベロスギルディ!!」

「……来たな、テイルレッド」

 

 レッドの登場にも顔色ひとつ変えず、ただ冷静に構えるケルベロスギルディ。その態度に不信感を覚えたレッドは、攻撃をすぐには仕掛けず、小手調べにと挑発を行う。

 

「どうも、色々と手間暇かけて作戦を考えてたみたいだが……。残念だったな! お前らの計画はこれでオジャンってわけだ」

「ふっ……。なるほど、確かに我らの計画は潰えた。それもこれもテイルレッド、貴様のツインテールの凄まじさゆえ……。私が彼女のポテンシャルならばと、欲をかきすぎ、三つ編みと眼鏡の同時拡散を狙ったのもあるだろうが……。だが思い知ったよ、貴様のツインテールの凄まじさを」

「! お前が善沙闇子のプロデューサーだったのか……!」

 

 思わぬ敵どうしの繋がりを知り、驚くテイルレッド。しかしケルベロスギルディはそんな彼女には構わず、ただその口から言葉を紡ぐ。まるで、レッドの気を逸らすかのように。

 

「そうだ。ダークグラスパー様はこの私の腕を信じて仕事を託してくださったというのに……。このケルベロスギルディ、一生の不覚よ」

「ケルベロスギルディ……」

「だが、作戦はまだ完全に潰えた訳ではない。テイルレッド、貴様を倒せばまだ三つ編みにも望みはある……! だから、許せ!!」

 

 ケルベロスギルディはそう言うとすぐさま戦闘体勢に入り、レッドに向かい火球を放った。その火球をブレイザーブレイドで弾くと、ケルベロスギルディに向かいレッドは斬りかかる。

 

「お前、三つ編みをそんなに愛してるのに……! どうして、みんなから『好き』を奪うようなマネをし続けてきたんだ!?」

「私はエレメリアンだ……! そうしなければ生きられない! それに、一度は自らの滅びを受け入れた……!」

「なんだって!?」

「だが、三つ編みのため……! 我が属性力(エレメーラ)のため、私は帰ってきた! そのことに言い訳はせんテイルレッド! でも……でもねっ! 三つ編みは消えゆく属性なのっ! それが少しでも復活できるなら……そう思ったら、止まらなかったのよ!」

「ぐうっ!?」

 

 口調も変化し、急にクネクネとした動きをしだすケルベロスギルディ。そんな彼の姿に驚いたレッドは動きが鈍り、強烈な拳を受けて転がされてしまう。

 

「この世界、もうツインテールの寡占状態なのよ! アルティメギルにとってはそれでいいのかもしれないけど、でも私は許せない! 三つ編みは少女を最も美しく輝かせる髪型なのよ!」

「ぐ、ううっ……」

「百歩譲ってツインテールの方が美しいとしても! でも、髪型の選択肢は多い方がいいわ! ツインテールだけじゃなく、いろんな髪型を楽しんだっていいじゃない!」

 

 アルティメギルの計画に真っ向から反することを叫ぶケルベロスギルディ。その言葉の中に込められていたのは、滅びゆく属性を抱えた者の悲哀でしかなかった。

 

「分かったらあなたも観念なさい! 三つ編みに──「うるせえっ!!」────ッ!?」

 

 だが────だからこそ、テイルレッドはケルベロスギルディの思いではなく、その行動こそを否定する。

 

「どんな想いがあったとしても、他の人の属性力(エレメーラ)を奪うなんてやっちゃいけないことなんだよ! 奪おうとする奴らに味方するのも、自分の属性力(エレメーラ)だけが生き残るのも、俺は嫌だッ!!」

 

 レッドの脳裏に浮かぶのは、トゥアールの姿。彼女は前の世界でただ一人ツインテール属性を保持したまま生き残り、その結果、アルティメギルのせいで心を失ってしまった人々だけの世界を見てしまった。

 自分の好きな属性だけが残る……そんな考えを、レッドは持ち合わせていなかった。

 

「あなたは怖くないの!? 自分の想いを失うことが! 自分の想いが消えていくことが!」

「怖いさ……! でも戦う力の無い普通の人は、もっと怖いはずだ! だから俺は、お前達と戦うんだ!」

 

 レッドが知るトゥアールは、快活で聡明で賑やかな女性だが──彼女がツインテールを見つめる時、そこには常に寂しさがあった。

 

「守るなら、ツインテールだけじゃない! 俺は──全ての属性力(エレメーラ)をお前達から、守ってみせる!!」

「くっ……!」

 

 レッドの気迫にか、言葉にか、あるいはその両方か。気圧されたケルベロスギルディは、自分も気づかないまま一歩、後退する。

 だが、彼にも退けない意地がある。自身の意識を将としてのものに再び切り替えた彼は、勝利のために非情の策を行う決意をする。

 

「お前の言葉は、正しいのかもしれぬ、テイルレッド。だが、私にも退けないわけがある! だから許せっ!」

「っ! 来るっ!?」

 

 ケルベロスギルディはその三つ首で吠えると、これまでにない大火球を生み出し、レッドに向けて吐き出した! 当然、レッドはその迎撃に集中するが……。

 

「もらったぞ!」

「なっ!?」

 

 レッドの背後にはダークグラスパーがいた! 彼女はケルベロスギルディがレッドと問答をしている隙に忍び寄っていたのだ。

 全く気づけていなかったレッドに、彼女の大鎌は避けられない。迫り来る火球にも挟まれ、レッドは瞳を閉じ────

 

 

「「「レッド!!!」」」

 

 

 火球をブルーが、ダークグラスパーをハートとイエローが、基地からのワープが間一髪で間に合ったツインテイルズの面々がそれぞれ脅威に対処し、レッドを敵の急襲から助け出した。

 

「みんな……」

「全く、先走りおって! ワシらを待たぬか!」

「不意打ちとは卑怯じゃない。いい度胸ね……!」

「わらわ達は『悪』だぞ! 卑怯もラッキョウもあるものか!」

 

 ツインテイルズを挟んだ状態を維持し、ジリジリと距離を詰めてくるケルベロスギルディとダークグラスパー。対するツインテイルズは背中を預けあっている。

 

「ダークグラスパー! 自分のことを悪だというなら、なぜお主は……」

「黙れ! わらわの気持ちが、お前達に……特にテイルレッドにだけはわかろうものか!!」

 

 ハートの言葉にも耳を貸さず、自身の内から憎悪による属性力(エレメーラ)を溢れ出させるダークグラスパー。その禍々しい気迫はイエローのみならず、ブルーやハートにも冷や汗をかかせるほどに強烈だった。

 

「ッ! この気迫……。どうやら、ダークグラスパーはここで決着をつけるつもりのようですわね!」

「なら、こっちにとっても好都合よ。ケルベロスギルディごと、ここで粉砕してあげるわ!」

「ハッ! やれるものならやってみるがいい!」

 

 ダークグラスパー相手に啖呵を切り、果敢にも突撃しようと構えるブルー。しかしそんな彼女を、レッドは片腕を前に出すことで止めた。

 

「待ってくれ、ブルー」

「レッド……?」

「……ダークグラスパー! お前の相手はこの俺だ!」

「…………!」

 

 レッドからの思わぬ提案に、一瞬目を見開いて驚くダークグラスパー。しかしすぐにその顔には邪悪な笑みが浮かび上がり、憎しみの視線でレッドの体を見据える。

 

「……いいだろう! ついてこい!」

「ちょっとレッド!?」

「ごめんブルー! 行かせてくれ!」

 

 レッドの申し出を承諾し、その背を翻すダークグラスパー。戦いにふさわしい場所へ案内しようということなのだろう、レッドもブルーの制止を振り切り、ダークグラスパーを追って走り去っていく。

 

「ちょ……ッ! こうなったら、私も……!」

 

 レッドの身を案じ、自分もその後を追おうとするブルー。しかし彼女の肩をハートは掴み、制止する。

 

「ブルー! ……行かせてやれ。それにワシらが戦わねばならぬ相手も、一筋縄ではいかん相手だ。……お主の力も欲しい」

「ハートの言う通りだな。貴様らの戦力を過小評価するつもりはないが、先日の無様な決着といい……テイルブルー、貴様こそがツインテイルズの連携の弱点とみた!」

「……なるほど。確かに前イエローと二人じゃ倒せなかったわね」

「いいところまで追い詰めていたのですが……」

「追い詰めていた? フフッ、笑わせてくれるわね……。ならばアタシの本気、見せてあげるわ!」

 

 どうやらケルベロスギルディは感情が高ぶるとオカマ口調になるようである。そして感情の高ぶりは属性力(エレメーラ)の高まり。ケルベロスギルディは自身の属性力(エレメーラ)である三つ編み属性(トライプライド)の力により、一瞬にして三体に分離した。

 

「本気って……。三対三のつもりなんでしょーけど、初めから分離したところであたし達には勝てないわよ!」

「分離して、そのまま属性力(エレメーラ)の力を保てていられる訳ではあるまい。一人一体ずつならば、やれる!」

「それに、分離して首が一つになればただのドッグギルディですわ!」

「そこの黄色いのうるさいわよ! 演出家の真骨頂……三つ編み属性(トライプライド)の神髄を、たっぷりと味わいなさい!」

 

 三体のケルベロスギルディとハート達の戦いは、イエローの銃撃が開始の合図となった。彼女の攻撃を避けると、三体のケルベロスギルディはブルーに向けて一斉にダッシュ。まず『弱いところ』から潰そうという魂胆なのだろう。

 しかし、前回のブルーの失態は巨乳への嫉妬ゆえのことである。ケルベロスギルディは、三つ編みが滅びかかってもツインテールを憎悪まではできない自身の性格がために、彼女の実力を測れていなかったのだ。

 

「ハート!」

「任せろ!」

 

 ブルーは出現させていたウェイブランスをハートに向かって放り投げると、身軽になった体を活かして突撃。強引に三体のケルベロスギルディの間に割り込むと、得意の空手殺法と野生的な動きを駆使してそのうちの一体を攻撃。正拳突きを繰り出し、相手の腹筋を打ち貫く。

 

「ふんッッ!!」

「何っ!? でも……」

 

 しかし、ケルベロスギルディも只者では無い。攻撃を食らった一体もすぐさま体勢を整えると守りを固め、他二体はブルーを背後から掴みかかろうとする。

 

「それをさせると思う!?」

「分離したのが間違いでしたわね! この程度の攻撃でも……通りますわ!」

 

 しかし、それをさせないのがハート達の連携である。ハートがウェイブランスのリーチを活かして攻撃、ケルベロスギルディ達の動きを乱すと、そこにイエローがヴォルティックブラスターを撃ち込んだ。ブルーを巻き込まないように配慮した攻撃のため、合体時のケルベロスギルディにはあまり効果がない。しかし分離しているならば、十二分に脅威になるのだ。

 

「ぐうっ!?」

「分離して、一体一体の力は下がったみたいね! 武器なしでも攻撃が通るわ!」

『いや、愛香さんの殴打は元々エレメリアンにとってもすごい脅威では……』

「でや──────っ!!」

「ブルー、今度はこちらが!」

 

 トゥアールのツッコミをスルーし、ブルーは全力で相手を仕留めるべく攻撃を重ねる。そこにハートも飛び込むと、今度はブルーにランスを手渡して跳躍。ケルベロスギルディ達の連携を乱すべく、攻撃を仕掛ける。

 

『習さん、属性玉変換機構(エレメンタリーション)の搭載は間に合いませんでした、すみません!』

「こっちのことはいい! トゥアール、お主はレッドとダークグラスパーの戦いに注力しろ!」

『ですが……』

「こっちにはあたし達もいんのよ。あんたもツインテイルズの一員なんでしょ。だったら、レッドとあいつの戦いを見てやりなさい!」

『……わかりました!』

 

 トゥアールがレッドの支援に集中したことで、彼女とハート達の通信は切れる。それを確認したハート達は顔を見合わせ頷きあうと、ケルベロスギルディ達にさらなる猛攻を加えていく。レッドの元に万が一にでも向かわせることがないよう、彼女達も必死だ。

 だが、それはケルベロスギルディも同じである。彼もまた、自らの本性をさらけ出すほどに必死なのだ。

 

「いい……いいわよあなた達! レッドちゃんも似合いそうだったけど、あなた達も三つ編みが似合いそうじゃない!」

「それはどうも! さっさと倒れなさいよ!」

「ブルー、その野蛮なトコロはマイナスね!」

「この……当たりなさい!」

「イエロー、あなたは少し焦りすぎかしら!」

 

 しばらくはハート達の連携に驚いていたケルベロスギルディだったが、連携に関しては、やはり三体ともが同個体のケルベロスギルディの方に一日の長がある。彼らは徐々に自らのペースを取り戻していくと、ブルーとイエローを少しずつ直線上に並ぶよう、誘導していく。

 

「っ、いかん! 離れろ二人とも!」

「遅いわよ、ハート!」

 

 相手の狙いを察知し忠告の声を上げたハートだったが、一歩遅かった。

 

「「はあッ!!」

「うっ!」

「きゃっ!」

 

 二体のケルベロスギルディは直線上に立ったブルーとイエローを挟み込むと、両者をそれぞれ正面から蹴り入れ、背中合わせに追い込む。そうして背中合わせになった二人の間を、残り一体のケルベロスギルディがすり抜けていく。

 

「奥義! ツインテールの聖花輪(フラワーリング)よ!」

 

 そしてその後には、お互いのツインテールがそれぞれ相手の房とで編み込まれ、固く緊縛されてしまったイエローとブルーの姿があった。

 

「くっ! このような大技を狙っていたとは!」

「さあ、これで二人の動きは封じたわ! 後はハート! あなたの髪を──」

「二人とも、今助ける!」

「いけませんわ! ハート、逃げてくださいまし!」

「っ、三つ編みで固められた!? 動けない……!」

 

 仲間が危機だというのに、ハートが逃げるはずがない。そう読んでいたケルベロスギルディは再合体。ハート以上に素早く動くと──

 

 

「──三つ編みにしてあげたわッ!! アタシの勝ちねっ!」

「「ハート!!」

 

 

 ────次の瞬間にはハートのツインテールは解かれ、三つ編みとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 一方、レッドとダークグラスパーは数分に渡る移動の末、草木が茂る山林の中に移動していた。ここでなら、存分に戦えるということなのだろう。

 

「ここが、決戦場か──! なら!」

「……少し待て、テイルレッド」

 

 しかしレッドが戦闘体勢に入る直前、突如としてダークグラスパーはその変身を解いた。彼女が返信を解いた後に立っていたのは、アイドル善沙闇子──ではなく、ただのイースナだった。

 

「君は……」

「雰囲気、違いますよね? 変身を、解除して、いますから……」

「じゃあ、善沙闇子はイースナそのままじゃなく……ダークグラスパーに変身した姿だったのか!?」

「そうしないと、私、人前で笑えないから……」

 

 変身した状態、支配者としての自分こそが本当であるとでも言いたげに、自重するイースナ。眼鏡越しにうつるその瞳は全てを確信し、あらゆる負の感情をみなぎらせている。

 

「…………やっぱり、貴女はトゥアールさんじゃないんですね、テイルレッド」

「……君も、俺の正体に気づいていたのか」

「許しません……。貴女はトゥアールさんの……私の大切な人の属性玉(エレメーラオーブ)を……無理やり奪ったんですね!!」

 

 激昂したイースナに、もはや説得は通じない。彼女は眼鏡のブリッジを押し上げ、絞り出すようにその言葉を紡いだ。

 

「グラス・オン……!!」

 

 テイルギアと同じく光がイースナの身を包み、それが装甲へと変化していく。だが、テイルギアと決定的に違うのは、纏う光が漆黒であること。闇より涌き出でるその力は、まさに彼女の心中か。

 

「わらわはトゥアールを追い求め、世界を渡り、戦士となった! だから答えよテイルレッド! なぜ貴様がトゥアールのツインテール属性を持っている!」

 

 トゥアールが仮面ツインテールとして全てをさらけ出したドラグギルディとの戦いだったが、それは記録されていないようだ。トゥアールとレッドの間に結ばれた絆を知らないダークグラスパーにとって、目の前のレッドはただ憎い相手でしかない。

 だが、レッドは信じていた。相手も同じツインテールであるならば、今もトゥアールを思うものならば、必ず自分の言葉に耳を傾けてくれるはずだと。

 

「トゥアールは、自分の世界を守れなかった罪滅ぼしに、他の世界を守ろうとしてくれた。この世界で一番強いツインテール属性を持つ俺に……自分のツインテール属性で作ったテイルギアを託してくれたんだ!」

「奪ったのではなく、託されたのだと。そう言うのじゃな」

「そうだ」

 

 両者のツインテールがわずかに鳴動する。それが共振の前触れなのか、それとも激突の予兆なのか、それはダークグラスパー次第だろう。

 

「今度は俺にも聞かせろ! なんでトゥアールのことを慕っているお前が、アルティメギルに加担する!?」

「……わらわが最も守りたいと思うのは、ツインテールではなく眼鏡じゃ。無論トゥアールとわらわを引き合わし、トゥアールも愛したツインテールをわらわも愛しておる。じゃが、それでもわらわは眼鏡こそが最も愛おしい」

「……それが、どうお前の行動に繋がるんだ。アルティメギルは、その眼鏡だって────」

「わらわがアルティメギルに与するための条件────それは、眼鏡属性(グラス)だけは奪わぬことじゃ」

「何だと……!?」

『そんな条件を、奴らに呑ませられたのですか……!?』

 

 ダークグラスパーによる衝撃の告白に、レッドもトゥアールも驚愕した。アルティメギルは表面上は変態の集まりに見えても、その実態は非常の軍団。譲歩などあり得ず、ただ属性力(エレメーラ)を奪う存在……そう思っていたからだ。

 

「……眼鏡属性(グラス)はな、奪うまでもなく消えかけておる。コンタクトにレーシック、眼鏡の美しさを阻む邪法が世に蔓延っておるからだ! それに加え、眼鏡を外せば大人の女性になれるなどと言うふざけた方便まで……。貴様にもわかろうレッド! テイルギアを纏えるだけのツインテールを持つ貴様が、この思い味わったことがないなどとは言わせぬぞ!」

「…………っ!」

 

『ツインテールは子供っぽい髪型』という心無い一言が、レッドの脳裏に蘇る。誰が発したのでもない、テインテイルズがこの世界に現れる前には蔓延っていたその風潮は、レッドにとって悲しいことだった。

 

眼鏡属性(グラス)もまた、ツインテール属性と同じく強力な属性! それはあるいは、同じ悲しみを抱えるからやも知れぬ! 似ておるのじゃ、眼鏡とツインテールは!」

「似ている……。眼鏡と、ツインテールが……」

 

 なおも衝撃冷めやらぬレッドに対し、ダークグラスパーは淡々と自らの事情を語り続ける。まるで、レッドを通じてトゥアールに語りかけるように。

 

「奴らは一度も約束を違えておらぬ。侵略された無数の世界の中で、眼鏡だけは生き残っておるからな」

「っ、じゃあ……お前がアイドル活動をしていたのは!」

眼鏡属性(グラス)とツインテール属性の拡散。それを同時に為し、効率的にアルティメギルの侵略を進める。本来ただ利用されるだけのツインテールの戦士が、自らの目的のため積極的に手を貸している。ただ、それだけじゃ」

「それだけ、だと……!? 本気で言ってんのか!? お前がやってることは、トゥアールやお前の世界を滅ぼした作戦の再現なんだぞ!?」

 

 レッドにとって、ダークグラスパーの行動は決して許せるものではない。だが、ダークグラスパーはレッドから発せられる煮えたぎる灼熱のような怒りにわずかに動揺を見せるが、すぐに顔をあげると、凍てつくような氷の視線をレッドに浴びせかけた。

 

「よく吠えるわ。その道程、貴様も再現しておろうに」

「何!?」

「善沙闇子の台頭から、急激に世界に浸透してゆく眼鏡。それに違和感を覚え、わらわの正体を貴様だけが見破れたのは、貴様にも覚えがあるからだ。認識撹乱を打ち破るほどにな」

 

 総二は以前、自分だけがダークグラスパーの正体に気づけたのには何かの意味があると思っていた。しかしその意味とは、予想外に重いものだったのだ。

 

「アルティメギル最強の演出家の力を借りても、この世界でのわらわはせいぜいが一過性の人気アイドルどまり……。雑多なアイドルと同じ存在よ。それがなぜだかわかるか? テイルレッド」

「……もしかして、俺がいたからか?」

「そうじゃ。この世界にはすでに、ツインテール……。いや、テイルレッドという『偶像』が支配を敷いているのじゃ。テイルレッド! 貴様もまた、支配者(グラスパー)なのじゃ!」

「俺が、支配者……?」

「貴様とわらわの違いなど、奪うか押し付けるか、それだけでしかない。自身が愛する属性を強制的に世界に芽ぶかせようとしているのは、同じなのだからな!」

 

 ダークグラスパーの痛烈な言葉のナイフに貫かれるレッド。それを見かねたトゥアールは、必死になって彼女を励まそうとする。

 

『総二様、耳を貸さないでください! 彼女の言っていることは──』

「いや……わかってるよ、トゥアール」

『総二様……?』

 

 だが、レッドは誰かに言われずとも気づけていた。自分とダークグラスパーの違いに。

 

「ダークグラスパー……。確かに、俺とお前は似てる部分があるのかもしれないな」

「認めたか、自身の業を!」

「だけど決定的に違う部分がある! それは……俺は奪いも押し付けもしない、ただ守るだけってところだ!」

 

 支配者ではなく、守護者。それこそがレッド……総二のツインテールの本質であり、彼がトゥアールに託された意志であり、彼自身の願いなのだ。

 

「……揺るがぬか。神となる覚悟はできているようじゃな」

「なんでそこまで話が広がるんだよ! 俺はただ、ツインテールが好きなだけだ!」

 

 ブレイザーブレイドを両手に持ち、正眼の構え。臨戦体制に入ったレッドの耳に、トゥアールからの通信が届く。

 

『総二様、ここからは私は総二様につきっきりでオペレートします。()()()ダークグラスパーを倒しましょう!」

「おう、頼りにしてるぞ、トゥアール」

「トゥアール……? なるほど、トゥアールはレッド、貴様の援護を……。ならばちょうどいい!」

 

 対するダークグラスパーは、一人高らかに吠える。その目も、声も、レッドには向けられていない。ただトゥアールに向けて、彼女は自らの思いを叫ぶ。

 

「わらわの姿も、声も、見えておるのだろう!? 聞こえておるのだろう! ならば言わせてもらうぞ、トゥアール! ……わらわはそなたが託した戦士を、今日ここで粉砕する!」

『イースナ、あなたには私の姿も、声も、見えもしなければ聞こえもしないでしょうが────それでも、言わせてもらいます』

 

 先に動いたのはダークグラスパーだった。彼女はその比類なきパワーで大地を蹴ると、両手に携えた大鎌でレッドに向け、鋭く重い一撃を叩きつけてくる。

 だが、レッドは引かない。その一撃を真っ向からブレイドで受け止めると、即座に切り替えし、ダークグラスパーに一撃を与えた! 

 

『総二様は……テイルレッドは、あなたには負けません!』

 

 光と闇のツインテールの戦いの幕が、切って落とされた……! 

 

 

 

 

習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?

  • 構わん、やれ
  • 断固として拒否する
  • メス落ちまだ?
  • 習側が記憶失ってたらいいよ
  • トリニティ!
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