ハートに関して曇らせを発動しかけましたが、まだ早い!でもまだやるか迷う!そんな葛藤の中書きました。
第四巻では女の子女の子してるハートが見れると思います。もちろんそんなことになってる以上、尋常じゃないことが起きるでしょう!楽しみだな!
今回は過去最大級のボリュームでお送りします。
「「ハート──!!」」
「これで、私の勝ちね……!」
ハート達とケルベロスギルディの戦いは、ケルベロスギルディの優勢となっていた。
ケルベロスギルディの奥義によって、ツインテールどうしを三つ編み状に結ばれたブルーとイエロー。二人は息も会わず、行動を制限されるばかり。そうしているうちに二人の眼前でハートのツインテールは解かれ、三つ編みにされてしまい、その身は倒れ伏していた。
『テイルギア』を装着する戦士──ツインテールの戦士にとって、ツインテールを解かれるというのは、致命傷を受けるに等しい事である。変身は瞬間的にではないが解除されてしまい、その正体を晒すと同時に、戦闘能力をも失うからだ。
「さあ、次はあなた達の番よ! 平等に三つ編みにしてあげるッ!」
「こ、このままでは……!」
──だが、ハートが纏うのはテイルギアではない。
「隙ありっ!!」
「ぐうおっ!?」
ツインテールを解かれ、倒れ伏したたはずのハート。しかし彼女はやられたフリをしていただけだったのだ。ケルベロスギルディの油断の隙を突いた彼女の攻撃は、さしものケルベロスギルディといえど分離による回避もできず、ダメージを負ってしまう。
「ど、どうして……。ツインテールは、解かれたはずっ……!」
「確かに……。ワシはツインテール属性も力の源としておる。だが、それはワシを構成する一要素にすぎん」
ハートが纏うギアの名は、『ハートギア』。テイルギアとは全く異なる属性力で起動し、稼働するギアである。
その力の源となるのは、ツインテール属性だけではない。
「くっ! それでも、三つ編みにしてツインテール属性は封じたのよ! こんな力が……!」
「良いことを教えてやろう、ケルベロスギルディ。ワシが以前『ワシ』であった頃にはな、いわゆる三つ編みにしていたのだ」
「なんだとッ!?」
「
そう、この体になる前の習、つまりマスター・アジアとしての習は三つ編みだったのだ。今世でツインテールにしているのは、以前は今世での母親の影響であり、今は総二達の影響を受けてのこと。それ故、実は今でもツインテールよりも三つ編みを結ぶ方が慣れているのだ。
「……なるほど、あなたが三つ編みに相応の人物ということは解ったわ。でも! アタシの美技に敵うと思う!?」
「やって見なければわからぬだろう!」
深く腰を落とした構えから、跳躍し回転。猛烈な勢いで迫るハートに対し、ケルベロスギルディはどんな技が来るかと身構える。
だが、ハートから繰り出された一撃は予想外のものだった。なんとハートはケルベロスギルディの顔面に対して、
三つ編みそのものを武器にするなど、ケルベロスギルディの発想の中には存在しない。彼は自分が結んだ三つ編みにその顔面を打ち据えられた。
「ぐ……ば、バカな……。み、三つ編みが、アタシを……アタシを攻撃するなんて……!」
「古今東西の拳技の中にはケルベロスギルディよ、お主の想像を超える技も存在する。髪を武器とするなど、人が数千年は前に通った道ぞ!」
どうやら精神的ダメージが思ったよりも大きいようだ。ケルベロスギルディはなんとか立ち上がりはしたが、その足元はふらつき、ハートを見つめる視線の中には恐れが混じり始めている。
「どうした? ワシが恐ろしいか?」
「確かに、ハート……。アタシはあなたが恐ろしいわ。でもっ!」
次の瞬間、ケルベロスギルディは全力で火球を放った。──ブルーとイエローに向けて。
「!!」
「アタシはアルティメギルの将よ! 敵の頭数を減らすために──勝利のために! できることはさせてもらうわ!」
「…………っ!」
一瞬ケルベロスギルディを攻撃して火球を止めようと思考したハートだったが、そうなればケルベロスギルディは多少威力が削がれようと、火球への力の供給を断ち切ってハートを迎撃するだけだろう。ハートもケルベロスギルディの技で、
そこまでを一瞬で考えたハートの出した結論は、その身を呈してブルーとイエローの二人を守ることだった。
「ブルー! イエローッ!!」
(間に合うか……っ!?)
火球と二人の間に割り込もうと、駆け出すハート。だが、ケルベロスギルディの狙いはそこにあった。
「かかったわね!」
「なっ……!?」
ケルベロスギルディの狙いは、最初からハートだった。これまで情報を収集し、研究してきたのは伊達ではない。彼はハートの行動を最後まで読みきっていたのだ。
だが、完璧だったはずの予想には穴があった。それは仲間の危機を目の前にした時の、ブルーとイエローの行動である。
「イエロー!」
「ブルー、アレを今度こそ……!」
ツインテールを結び合せられ、マトモに動けるはずのない二人。だが仲間の危機に、二人の体は完全な同調を見せた。ハート自身が近づいてきていたのもあるが、彼女達は素早くハートの目の前に躍り出たのだ。
「二人とも!? 何を……」
「ブルー、早く!」
「う……くっ! え、
観念したように左腕を突き出し、
〈
「鉄壁の防御膜!? 押し切れないいいいいい!!」
「
続いて、イエローがブルーとは対照に高らかに発動を宣言。ブルーが展開した光の膜が硬度はそのままに巨大化し、ケルベロスギルディの火球を押し返していく!
「合わせて、ブルー! せーのっ!」
「「リフレクション・バースト!!」」
ブルーとイエローによる合体技が、ケルベロスギルディの火球を跳ね返す。それもただ返すだけでない、
「いやんっ、嘘ぉ!!」
驚愕のために行動が遅れ、ケルベロスギルディに火球は直撃、分離したその巨体が宙を舞う。しかも分離が遅れて大ダメージを負ったせいか、結ばれていたブルーとイエローのツインテール、そして三つ編みにされたハートの髪が元に戻る!
「今ですわっ!」
ケルベロスギルディの再合体を許せば、ダメージも癒えてしまう。それがわかっていて、この機を逃す三人ではなかった。
「「
「はああああああ…………かあっ!」
「サンシャイン! フィンガー────────────ッ!!」
「エクゼキュート! ウェー────────────ブッ!!」
「ヴォルティック! ジャッジメント─────────ッ!!」
イエローの放つ蹴りが、ブルーの投げた槍が、そしてハートの繰り出す貫手が、ケルベロスギルディの身体を貫き通し、その体を地に落とす。
もはや再合体する余力もケルベロスギルディには残されていない。だが力なく地面に落下したはずの彼は、最後の死力を尽くして立ち上がった。
「ステキね、あなたたち……。レッドなしでも、ここまでやれるなんて、思ってもなかったわ……」
だが、彼にもはや戦う意思はない。今にも爆散しそうな身体を、必死に抑えているだけだ。
「三つのツインテールが一つに……。まさに三つ編みね……。最期の最期に三つ編みを見て逝けるなんて、思ってもなかったわ……」
「ケルベロスギルディ……」
「レッドちゃんに伝えてくれるかしら、ハート……。消えゆく属性を、憂う者がいるって……」
「わかった。必ず……伝えよう」
「ふふっ、ありがとう……。そう、それと……ハート、あなたも自分の心の中の『男』の部分だけじゃなくて……『女』の部分にも、正直になった方がいいわよ?」
「!? どういう……」
ケルベロスギルディの思わぬ一言に、理解が及ばず動揺するハート。そんな彼女の姿を見て、ケルベロスギルディは穏やかな微笑みを見せていた。
「さて、ね。自分で考えなさい。でも、困ったら……。アタシの
そう言うと、今度こそケルベロスギルディは力尽き──爆散。ハートは自身の元に飛んできた
「やった、わね……。つ、疲れた……」
「ブルー、どうしましたの?」
「拒んでいた属性の力を受け入れたせいで、疲労に襲われたのだろう。だが、休む暇はないぞ二人とも! ワシらはすぐにレッドのあとを追わねばならん、急ぐぞ!」
「あっ、待ちなさいよ!」
「ま、待ってくださいまし〜」
ハートは
「これなら、迷うこともない……!」
「待っててよ、レッド……!」
♢
『総二様、上です!』
「はあああああッ!!」
「うううおおおおおおおおおっ!!」
ダークグラスパーとテイルレッドの戦いは、周囲の木々をなぎ倒し、焼き尽くし、切り裂き尽くしてもなお止まらないほどの激戦となっていた。
ダークグラスパーの攻撃はまさに苛烈の一言。かつてレッドが相対した、ドラグギルディやリヴァイアクラーケのような幹部級エレメリアンの誰と比較しても上をいく、まさにアルティメギルの執行者にふさわしい力の持ち主だ。
「この力……! 以前のデータより遥かに!?」
「データで俺のツインテールが測れると思うなよ!」
だが、レッドは日々進化し続けている。そのテイルギアはレッドの力を受けて変質し始めており、トゥアールでさえもハートブレス以上に理解の及ばない領域に達しかけている。
『次はそこの岩を盾に! 攻撃のスピードが一瞬落ちます、その隙を突いてください!』
「わかった!」
「くっ、レッドがここまでやれるとは……。いや、これはトゥアールの指示か!?」
そして、レッドにはトゥアールがついている。普段はツインテイルズ全員のオペレートを同時に行なっているうえ、エレメリアンの特殊能力は人の科学の埒外で、100%の支援を行えているとは言い難い。しかしテイルギアを元にして作られたグラスギア相手ならば、その戦闘能力をリアルタイムで解析し分析することで、レッドに対して的確な指示を行うことも可能だった。
『私への憧れとかは知ったこっちゃないですが、テイルギアを元にしてグラスギアを作ったのは間違いでしたね、イースナ!』
「おおおおおおおっ!!」
「くっ、的確に弱いところを狙ってきおる……! やはりトゥアールか、流石だ! じゃが、わらわとグラスギアを甘く見ないことじゃな!」
ダークグラスパーがその眼鏡を光らせると、次の瞬間そこから熱戦が放たれる。強大な
「ぐうううっ!!」
『総二様!? こんな技を隠し持っているとは……!』
「流石に効いただろう、この一撃は! このまま一気に……っ!?」
だが、ダークグラスパーにもトゥアールにも予測できないものが、この戦いには存在した。それはこれまで数々のエレメリアンを下してきたレッドが持つ爆発力だ!
「この程度で……止まれるかぁ──────────────────っ!!」
『これは……!? 総二様の
「こんなものが……この世界に存在していたとは……!」
ことここに至って、ダークグラスパーはその背筋に悪寒を感じていた。彼女から見ても、テイルレッドのツインテール属性は異常なほどに高まっている。ダークグラスパーの脳裏では、アルティメギル幹部としての彼女が、『手段を選ばず倒せ』と警鐘を鳴らしていた。
「レッド!」
「無事か、レッド!」
「っく! 他の色も追いついてきたか!」
レッドの
「ええい、正面からレッドを打ち破りたかったが……仕方あるまい!」
「! 三人とも気をつけろ! 何か──」
「遅い!
危機を感じたレッドの忠告も間に合わなかった。ダークグラスパーの眼鏡から放たれた光輪が∞の記号を描き、ツインテイルズの周囲を取り囲んでいく。
「な、なによこれ……!?」
「わからぬ! だが突破を──」
「無駄じゃ! その光に一切に攻撃は通じぬ! せめてもの情けよ、終わることのない幸福の中に消えてゆくがいい!」
「うわああああああああああああああああああ!!」
「ぐ、うおおおおおおおおおおおお!!」
抵抗も叶わず。彼女たちの意識は闇に溶け──────
♢
「……ここは、む……」
気が付いた時、ハートは────いや
穏やかな木漏れ日が射し、木々は風に揺れ、太陽は燦々と輝きつつも朗らかな暖かさを人に届ける。自然の祝福の中にいるかのような錯覚を受ける、そんな空間の中で、『彼』は自身の右手首を見つめていた。
(……何もないな。ワシは、何を────)
「師匠!」
「む……」
右手首を見つめ、思案するシュウジ。しかしその思考も、愛弟子ドモンの声によって中断される。
「ああ、師匠……。やはりここでしたか。ここは自然をよく感じることができますものね」
「どうした、ドモン」
「どうしたって……。今日は俺達と一緒に弟子達の稽古をつける約束だったじゃないですか」
「……そうで、あったな」
「レインが車を回してくれてますから、行きましょう」
ドモンに案内され、彼の恋人であるレインが運転する車に乗り込むシュウジ。車はかなりのスピードを出しているが、エンジン音はなく、聞こえるのはモーターの駆動音のみだ。
「……静かだな」
「100%太陽光で稼働するエコカーですから。師匠は俗世間から離れられていますからお知りでないかもしれませんが、最近は普及率も100%に近づいているようですよ」
「ほう……」
「しかしレイン……少し飛ばしすぎじゃないか?」
「あら、ごめんなさい。久々にみんなで出かけられると思ったら、つい……」
ドモンに言われ、少しスピードを落とすレイン。仲睦まじい様子だが、しかし彼らのやりとりを聞いていたシュウジの心には、違和感が生まれていた。
(皆で……? 誰だ? シャッフル同盟の者達か?)
「しかしキョウジ兄さんも悪い人だ。新しい自然再生のためのガンダムを作ってたからって、俺にも秘密でこの半年間……」
「喜ばせてあげたかったのよ。それにいい加減兄離れしなきゃだめよ? ドモン」
(キョウジ……。ドモンの、兄……。だが、奴はかつて……それに、ガンダム……)
「? どうしました、師匠。さっきから黙って」
「…………いや、少し景色を楽しんでおっただけよ」
車内から見える景色は、どこまでも自然が広がっていた。それは、かつて彼が夢見た景色。今は目の前に広がっているこの光景こそが、この光景の中で弟子とその大切な者達と共にいるという事実が、彼の願いそのものだった。
「見えてきましたよ、師匠」
「む、もうか……」
陽光が朗らかに照らす大邸宅。これこそがシュウジ・クロスが一番弟子ドモンと共に開く流派東方不敗の道場である。
流派東方不敗の教えは武術だけではない。兵法、哲学、そして何より自然を愛する心。健全かつ強い精神と肉体を得るための教えがそこにはある。自然を大事にしようとする者で溢れたこの世界において、今や流派東方不敗は世界に誇る学問となっていた。
そして、この道場の中心部に存在するのが────
「いやあ、いつ見ても壮観ですね……」
「ええ。この地球を再生したアルティメットガンダム……。キョウジさん達の努力の結晶ね」
「アルティメット、ガンダム…………だと?」
その『ガンダム』の姿を見た瞬間────シュウジの思考は、憤怒に包まれた。
♢
「俺たちのために……自分の世界への罪滅ぼしのために、ツインテールを捨てたトゥアールが、笑顔でツインテールにしようとした! たとえ幻覚でも……やってはいけないことをしたんだ、お前は!!」
『総二様……』
「……それを。はは、貴様は……許せなかった! 仲間への侮辱が、貴様の心に火をつけたというのか! ふはははははははははははは!!」
カオシックインフィニットによる幻覚から覚めたハートがまず知覚したのは、怒りに満ちた声を上げるレッドに、高笑いするダークグラスパー、そして、ずっとレッド達に呼びかけていた、トゥアールのかすれた声だった。
「ダーク、グラスパー……!」
「ハート! お前も目が覚めたか!」
「! 二人目じゃと……!? まさかわらわのカオシックインフィニットの幻影から、日に二人もが目覚めようとはな!」
ハートが目覚めることも予想外だったのか、驚愕するダークグラスパー。しかし今のハートにとって、ダークグラスパーの驚愕などどうでもいいことだった。
「貴様……! 貴様! よくも悪夢を見せてくれたな……!」
「悪夢? 何を言うか! わらわの幻覚は相手に絶望、もしくは希望を見せつけるもの! 貴様が見た光景が悪夢というなら、それは貴様の願望が貴様にとって『悪』だったということよ!」
「その通りだ!! ワシにとって、かつての過ちは……。決して拭えぬ罪! それを、それを幻覚でもあのように……! ええい、ワシは自分の愚かしさに反吐が出そうだ! まさか、まだあのような都合のいい幻覚を見るような心を持っておったとは!!」
「ハート……?」
ハートは憤怒していた。ダークグラスパーの対してもそうだが、それ以上に自分に対して怒っていた。
怒りに身を任せ、自己否定するような発言を繰り返すハートに、レッドも困惑する。レッドから見た今のハートは、かつてないほどに取り乱しているようにも見えた。
常に心の余裕は失うまいとしていた彼女が、我を忘れている。その衝撃はレッドの怒りを冷ましていった。
「ハート、落ち着け!」
「これが落ち着いていられるかあッ!! ワシは……ワシは悪魔の兵器と落ちたデビルガンダムが起こした所業を、人類滅亡計画を本気で自然再生のためになると信じ込み、自然の一部たる人類を滅ぼそうとしたのだぞ!! その途上で愛弟子ドモンをも邪な思いで巻き込み、あまつさえ奴に兄殺しの業までをも背負わせてしまった!! その罪も……この世界での使命も忘れて!! こんな夢を見るなど……!!」
「ハート……」
ハートの怒号の凄まじさに、レッドは逆に哀しみを感じていた。ハートから彼女の世界などの事情は聞いていたレッドだったが、その詳細に関してはアルティメギルとの戦いには関係ないとして、聞くことができていなかった。その時は納得してしまっていたが、今のレッドにはわかっていた。あれは、ただ自分の罪を話したがっていなかったのだと。
「フン……。貴様の事情など知らぬ! だがそこまで吠えていられるとは、貴様らはわかっておらぬようだな、カオシックインフィニットの真の恐ろしさを!」
「何!?」
「恐ろしさだと……! そんなもの感じることなどない! 貴様を────むっ!?」
怒りのままにダークグラスパーに向かおうとしたハートだったが、すぐに異常に気づく。
走っても、走っても、手を伸ばしても、拳を振ろうとも、すぐそこにいるはずのダークグラスパーに届かないのだ。
「カオシックインフィニットは相手を完全に飲み込むまで、決して消えることはない! だが貴様達は『世界』を拒絶したのだ! その闇は宇宙そのもの! いかに貴様達が太陽のごとき輝きを放とうと、宇宙の前ではちっぽけな光よ!」
「ッ……うおおおおおおおおおお……!!」
「無駄じゃレッドよ! いかに手足を動かそうと、その絶望からは逃れられぬぞ!」
レッドが足掻いても、ハートが次々に攻撃を繰り出しても、全ては無限の闇に呑み込まれる。
だが、彼女達の心に『諦め』は存在しない。そして彼女達とって、宇宙相手など絶望ですらない。
「絶望、だって……?」
「こんなものが、絶望だと!?」
「む……?」
レッドとハートのツインテールが共鳴し、闇の中に細い光を放つ。その光が大きくなると同時に、二人の右手の甲に浮かぶ紋章。
キング・オブ・ハート────シャッフル同盟の盟主を示すその紋章は、彼女達の信念のように輝き、凍える闇の中に炎を灯す。
「偽りのツインテールに心を飲み込まれることの方が、俺にとっては耐え難い絶望だ!」
「弟子に自身の行いが偽りだと言い放たれたあの瞬間を上回る絶望など! あってたまるものかあ!!」
世界──宇宙の壁など、存外薄いものだ。それは他でもない、テイルギアの制作者たるトゥアールと、ハート自身が証明している。
「「ううおおおおおおおおおおおお!!!」」
二人の共鳴が光を生み、やがて太陽となり、徐々に闇を押し返す。光があるから闇が生まれるのではなく、闇があるからこそ、それに抗うために光が存在するのだとでも言うように。
「ワシ達の!」
「そう……俺達のツインテールは!」
「「
レッドとハートの共鳴が生み出した炎が光となり、その光が無限の闇による支配を打ち砕く。
「ウ……ウオオオオオオオオオ!!」
放たれた光に翻弄され、吹き飛ばされるダークグラスパー。まばゆき太陽の光は、ブルーとイエローの意識も覚醒させる。
「待ってそーじ、明かりつけちゃ…………はっ!?」
「ああ……。ご主人様にお預けを……習さん、そんなに鞭打っては………………あれ?」
「む、むうこれほどのツインテールとは……って、そこの
正気に戻った二人の肌はつやつやと輝いていた。それが何故かは彼女達の名誉に関わることだが、ともかくツインテイルズ全員が、ダークグラスパーの支配から覚醒したのだ。そのことに驚愕してか、それともブルーとイエローの様子にただならぬものでも感じたのか、ダークグラスパーは大きく距離をとる。
「……ええい、そこのおな……いや雌どもはどうでもいい!」
「ちょっと待ちなさい、なんでその呼び方にしたのよ!」
『愛香さんにはぴったりじゃないですかね』
「め、雌……? あうんっ」
「トゥアールは黙ってて! イエローあんたはしっかりしなさい!」
復活して早々、怒涛のツッコミ芸を見せる愛香。その勢いを眺めながら、レッドとハートは互いの無事を確認し合う。
「ハート、大丈夫か?」
「……うむ。お前とのツインテール属性の共鳴か。あれで落ち着いたわ……。怒りのままでは明鏡止水には至れぬ。それはワシ自身がよく知っておったことだというのに……」
『それよりほら、今はダークグラスパーですよ!』
「わかってるわよそんなこと!」
どうやらハートも落ち着いたようだ。ブルー達も言い争いを止めると、改めてツインテイルズはダークグラスパーと相対する。
「闇を砕き散らした瞬間……レッドとハート、貴様らのギアが進化したように見えた……。レッドよ、貴様は自身だけでなく、周囲のツインテールにもさらなる進化を促そうというのか……?」
「テイルギアが……!?」
『確かに、一瞬だけ未知のデータを感知しました。恐らくは彼女の言う通り、一瞬だけの変化だったのでしょう』
レッドとハート本人さえも気づかないほど刹那の間に、彼女達のギアは進化の兆しを見せていた。そしてそれは、ただでさえ強大なレッドのツインテールと、未だ未知数のハートの
この事実は、ダークグラスパーを本気にさせるには十分だった。
「貴様の力を少々侮っておった……。かくなるうえは、我が
マントを脱ぎ捨てると、ダークグスパーはその背にある傘の骨のようなパーツを展開。まるで翼のようにそのパーツが広がるのに呼応して、ダークグラスパーが携える大鎌が
まるで弓のような形態に変化した大鎌は、その先に眼鏡より湧き出た闇の力を、矢の形に一極集中させる。レッド達の絶滅のみを考えた、まさに全力の一撃だ。
「オーラピラーが来るぞ! みんな、散れ!」
「フン、オーラピラーなど不要! 我が全霊の一撃は、眼前の全てを的とし、闇に滅する!」
「レッド、どうする!? あれを受けきる力はないぞ!」
「あたしも……。もう力、入んないわよ……」
「わたくしもですわ……。あの幻覚は、体力も根こそぎ奪ってしまったようですわ」
ダークグラスパーの全力に対して、ツインテイルズは全員が疲弊しきっていた。今の彼女達がそれぞれ必殺技を放とうとも、闇の前に呑まれて消えるだけだろう。
かすかな諦念が彼女達の中に生まれようとした、その時────ハートは自らが左手に握りしめていた、
「……レッド!」
「ハート? わっ……これは?」
「ケルベロスギルディの形見だ。……奴は言っていた、消えゆく属性を憂う者がいると」
「!」
「レッド、お前が
「俺が……
『消えゆく属性を憂う者』──ケルベロスギルディの遺言を聞き、ダークグラスパーの主張を思い返すレッド。彼女もまた、眼鏡という消えゆきつつある属性を憂い、そのために邪道に身を染めた者である。
そんな相手と戦う────彼女が人間であるということを差し引いても、レッドの心にただ倒すだけでいいのかと、そういう迷いがあったのは事実だ。
だが、ハートから託された
「……決心は、ついたか?」
「ああ。……皮肉なもんだな。ツインテール以外の力を拒んでいたはずの俺が、初めて使う
(でも……この力はきっと、俺達の力を一つに編んでくれる)
レッドは左腕を構え、そこに
「ケルベロスギルディ……お前の力、使わせてもらうぞ!」
「
レッドの左腕から、激しい光が放たれる。その光はまずイエローに降りかかると、その全身の装甲を
「そ、そんなに強引に脱がさなくても……」
「レッド……!」
「違う! 俺じゃないぞ!?」
イエローが脱衣の快楽に悶える間に、次にブルー、そしてレッドにも光は注がれる。彼女達の武装も
「そうか! レッド、ブルー! 互いの武器をユナイトウェポンに近づけよ!」
「えっ!? こ、こう!?」
「わ、わかった!」
ハートに促されるまま、慌ててレッド達はユナイトウェポンに近づき──瞬間。
ブルーのランスがユナイトウェポンの下部に、レッドのブレイドが上部に、それぞれが普段とは異なる変形を行い、それぞれユナイトウェポンと合体。新たな武装と化す。
「こ、これは……! これぞフュージョニックバスター! 完成ですわ!」
「フュージョニック……え?」
「こ、子供の玩具みたいなごちゃごちゃ具合ね……」
あまりの強引さに困惑するレッドとブルー。しかし溢れ出るその力は本物だ。
「三体合体じゃと!? おのれこしゃくな!」
(……あいつ、まだ力を溜め……。いや、あれ俺たちの武装完成を待っててくれてるだけだな……)
(あやつもアルティメギルの一人か……)
そうこうしている間にも、ダークグラスパーは力を溜めていた。正確にいうと、ツインテイルズの奥の手を待っていた。侮っている訳でも打ち砕くためでもなく、単純にアルティメギルの一員として様式美をわきまえているだけである。
「レッドがこう! トリガーを持つ! ブルーとわたくしは左右からこうして、レッドの肩を! そしてハートはレッドを後ろから支えるのですわ!」
興奮した様子のイエローの言葉に従い、言われるがまま位置につき、巨大砲────フュージョニックバスターを支える四人。そしてこの瞬間、レッドの左腕からハートに向けて光が放たれた。
「むっ!?」
その光を受けたハートはツインテールが解け、三つ編みとなる。そしてハートのツインテールを結んでいたリボンはフュージョニックバスターと融合し、砲身を地面に固定するアンカーとなる。
「フッ……ワシにツインテイルズを支えろと言うか、ケルベロスギルディ! ならば全力でその役目を全うしよう!」
背後からレッドの両肩に手を置き、そう高らかに宣言するハート。準備は整った、あとは撃ち放つだけだ。
「ファイヤー! で発射ですわよ、せーの、フ」
「え」
「ん?」
「む?」
イエローの掛け声に反応し、バスターの引き金を引くレッド。意図せぬタイミングで放たれた一撃は、三色の力の螺旋と、それを包む桃色の光によって織りなされるまさに
「受けよ、ダークネスパニッシャー……何!? 早いのじゃあああああああああああ!!」
「フライングですわ──────っ!!」
ダークグラスパーの体が膨大な光の中に呑み込まれ、ツインテイルズは強大な力の反動を受ける。本来ならば彼女たちに巨大ま負荷をかける一撃だが、ハートの力も加わり、それが制御に使われることにより、初使用であったにもかかわらず、全員が反動に耐えきっていた。
「こ、こうまでお膳立てを……貴様ら、普通……中間で撃ち合いっこを…………! のああああああああああああああ!!」
爆発が目を焼き、あたり一面を照らし、大気を揺らす。空間をも揺るがす莫大な力の奔流を受けたダークグラスパーは、力なく落下した。
「や……やったか!?」
全力を使い果たし、一様に膝をつくレッド達。しかし晴れていく爆煙の中で見えたのは、両の足で立つダークグラスパーの姿だった。
「そんな……!」
「あれをまともに食らって……!」
「無傷か……!?」
彼女の姿に、慄然とするダークグラスパー。しかし煙が完全に晴れた時、見えた彼女の姿は──
「……へ?」
────全裸の仁王立ちだった。
「何で全裸になってんのよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「それは、テイルレッドの願いだからですわ」
「そうか。人間を相手にして……レッド、お主は武装解除を答えとしたか」
『いやああああやめなさいイースナ! そんなギリギリ私のストライクゾーンから外れた体を見せつけるんじゃありません! この変態! 色情魔! 露出狂!』
フュージョニックバスターの一撃には、レッドの意思がダイレクトに反映される。レッドがダークグラスパー……イースナとの決着に血を求めなかったからこそ、この結果となったのだろう。
「早出しではあったが……。満身創痍の決着じゃ、そこには目をつぶろう。だが……フッ、わらわを裸にできても、眼鏡までは取れなんだか」
「ダークグラスパーさん……あなたはそれほどまでに、眼鏡を……」
「
「くっ、敵ながら見事な心意気だ……!」
「うむ……」
「あんたら目の前に素っ裸の女がいるのよ!? 何でそんなリアクションなのよ!」
ブルーの抗議にも耳を貸さず、その眼光に正義をにじませて強敵を見据える二人。その視線を全裸で受け止めてなお、イースナはダークグラスパーとして揺るがない。彼女にとって重要なのは、眼鏡なのだから。
「ダークグラスパー……いやイースナ! お前はもう戦えないはずだ。戦いはこれで、終わりじゃないのか」
「たわけが! 先ほど言ったばかりだろう、わらわにとって、眼鏡とは心の臓に等しきものだと! それを外すことができなかったのだ。これが今のわらわと貴様達の間にある力の差よ!」
『なんて言ってますが、今ダークグラスパーは戦闘不能のはずです! さあ愛香さん、いつものごとくやっちゃってください!』
満身創痍のツインテイルズと、武装を失ったダークグラスパー。条件では互角に見えるが、実際にはダークグラスパーもかなり消耗しているうえ、彼女自身はグラスギアの機能があって初めて戦闘が可能なニートである。ブルーに野獣のごとく襲われれば、羆に襲われる一般人のようになるだろう。
「……わかったわ。勝負の後で悪いけど……あんたを拘束させてもらうわよ」
そう言って、ブルーが一歩を踏み出した瞬間だった。
「ッ……な、何だ!?」
突如として、レッド達の耳に大気の咆哮が響く。まるでジェット機のエンジン音のようなその音は、ダークグラスパーの遥か後方から響いていた。
そしてすぐ、その音の主が現れる。銀色のボディに、まるでステルス機のようなシルエット。突如として飛来した飛行物体はその両翼から光線を放つと、ブルーの眼前に着弾させる。
「きゃっ!?」
ブルーの脅威からダークグラスパーを救ったその機体は、自身の主人の頭上に変形。その目の前に着地する。
「……ロボット……!?」
銀色の体躯に、ダークグラスパーのものと対になるようなデザインの片翼。エレメリアンではない無機質な体躯でありながら、エレメリアンにも匹敵する威圧感──いや、その力は彼ら以上のものだ。
「健闘を讃え、紹介しよう。ツインテイルズよ」
人型に変形した機体は最後に、その頭部の左右から逆三角形のパーツをそれぞれ飛び出させる。それは紛れもなく、ツインテールだった。
「彼女の名は、メガ・ネプチューン=Mk.Ⅱ……わらわの、唯一のバディじゃ────」
アンケート協力お願いします
習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?
-
構わん、やれ
-
断固として拒否する
-
メス落ちまだ?
-
習側が記憶失ってたらいいよ
-
トリニティ!