全新系裂! 究極東方不敗伝テイルハート   作:天地優介

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デモンエクスマキナをやり続けてたら遅くなりました。
ので!
今回は話を一気に進めました!これで4巻の10分の1は書きましたよ!

………………長いっすね!まあ4巻からはオリジナル成分出しまくりだから仕方ないね!


第4章・テイルハートオン!
第26話 ツインテールを求めて


『ダークグラスパーを出しなさい……!』

『エグゼキュートウェェェイブッ!!』

『ダークグラスパーに伝えなさい……! あんたが出て来なければ、雑魚どもが磨り減っていくだけだってね』

 

 

「……以上が、テイルブルーとの戦闘記録です」

「ええい! 他のツインテイルズが映っておらぬではないか! これでは役に立たん!」

 

 ダークグラスパーとツインテイルズの決闘、あれから二週間の時が経ち──アルティメギル基地はブルーの恐怖に怯えていた。

 その原因は、ダークグラスパーがレッドにかましたキスである。幼馴染の初めてを奪われたブルーの目には、ダークグラスパーはもはや不倶戴天の敵を通り越して、必ずや打倒せねばならない悪鬼として映っていた。

 だが皮肉なのは、その悪鬼を討ち亡ぼすために、自らも悪鬼と化してしまったことだろう。一切の情け容赦なく刺客として現れたエレメリアンを滅ぼし、ついてきていた戦闘員(アルティロイド)に、ダークグラスパーへの伝言──恨み節を伝えさせる。この二週間のツインテイルズとアルティメギルの戦いは、そのパターンが続いていた。

 

「な、なんという殺気……!」

「お、俺は人を恐れたことなどないが……ブルーだけは例外だ! 俺は奴が怖い!」

「ダ、ダークグラスパー様! 本当にあのような悪鬼を倒したのですか!?」

「そ、そうです! 是非ともあなた様の口から、その時のことを聞きたい!」

 

 口々にブルーへの恐ろしさを漏らす部下達からの要望に、ついにダークグラスパーは激昂した。この2週間の間、一般のエレメリアンはブルーを恐れ出撃せず、死地へと向かった美の四心(ビューティフルハート)の戦士5人は、皆一様にブルーの残虐戦法にねじ伏せられている。これでは、せめて口伝でもいいから対策を知りたいと思うのも無理ではない。無理ではないが、流石に四六時中ブルーについて問われては、ダークグラスパーの堪忍袋の緒も切れようものだ。

 

「ええい、言っておろうが! 先日の戦い、わらわの圧勝であったと!」

「ですが、映像記録などは残っておらず……!」

「乙女の柔肌が露出したから下がらせたのじゃ! そうでなくとも、わらわとレッドの接吻など貴様らの目に見せられるか!」

 

 ダークグラスパーが思わずこぼした一言を聞き、先ほどまでのブルーへの恐れが嘘かのように、その場にいたエレメリアン達の目に光が宿る。

 

「そ、それは真ですか!?」

「ぬううううううううう!! ならば仕事中常にあなたの唇だけを見て過ごしていたものを!」

「キス!? 接吻!? 口付け!? くっ羨ましい限りでございますッッ!!」

 

 次々に騒ぎ立てるエレメリアン達。彼らが羨むのに気を良くしたのか、ダークグラスパーの声音は打って変わって明るいものになっていた。

 

「わかったわかった。そんなに羨ましいというなら、ほれ、飴をくれてやろうではないか。やる気も出よう」

 

 そう言うと、ダークグラスパーは渾身の投げキッスを放った。

 

 

「ん〜………………まっ」

 

 

「あー……多分光栄です」

「身にあまる幸せ……?」

「むっ!? 私のバリアが発動を!? これはもしや、なんらかの……」

「貴様らああああああああああああああああああ!!」

 

 ブルーの凶行は、未だ実を結ぶには遠いようである。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 アルティメギルがいつも通りである一方、ツインテイルズには異変があった。

 

 

「……大丈夫、習? 最近調子がおかしいみたいだけど」

「愛香、お主に言われたくはないぞ。……己の中にある獣性を制御しろと、口を酸っぱくして言っておろうに。それに、不調というならレッドの方こそ……」

「いや、習の修行が、厳しすぎるだけだって……」

「ハァ、ハァ…………。愛香さんは、すごいですわね……。あそこまでの、修行に、ついていけてますわ……」

「蛮族だからでしょうねえ。最近はさらに凶暴になりましたし、アドレナリンがプンプンしてます」

 

 ダークグラスパーとの戦いから、習の修行はさらに激しいものとなった。その原因は習曰く、レッド──総二の不調と、愛香の凶暴性の発露にある。

 

 キスを受けてからというもの、総二は戦闘中もどこか心ここに在らずといった様子だった。ブルーが速攻を仕掛けるためトゥアールでさえも気づいてはいなかったが、習の目は事実を捉えていた。そして同時に、ダークグラスパーの凶行をきっかけに発露したブルーの凶暴性、これを抑えなければ今後の戦いのどこかで引っかかるだろうと、習は感じていた。

 故に、修行をより厳しく、より効果的にしたのである。トゥアールによる全面的なバックアップのもと、この世界の科学力をも超えた超最先端設備による習の流派東方不敗流の修行は、総二達に確かな成長をもたらしていた。

 

「……それはそうと、習さん。訓練メニューのことでお話が……」

「む……。ならば休憩室で話すか。総二、愛香、慧理那! お前達は指示したメニューをさらに3セットだ!」

「わ、わかった……」

 

 だが────習が総二達への修行を激しいものにしたのは、総二の不調などだけが理由ではない。

 

「検査結果が出ました。……テイルハートに変身している時の習さんの属性力(エレメーラ)ですが、確かに徐々に弱まっています」

「……やはり、か」

 

 ダークグラスパーとの戦い────いや、それ以前から……それこそドラグギルディやリヴァイアクラーケとの戦いの時も、習は自身の限界を遥かに超えた属性力(エレメーラ)を絞り出してきた。

 レッドとは違う。レッドのツインテールは未だ進化の過程にあり、そこに限界は存在しない。だが、習は別だった。

 

「ハートブレスを解析した結果ですが……。あれはテイルハートへの変身アイテムであるという以前に、習さん、あなたの『魂』を維持する役目も負っています」

「…………やはり、そうか」

「ええ。限界を超えてハートブレスの力を引き出し続け、ダークグラスパーとの相対で心のバランスを崩してもなお、属性力(エレメーラ)を引き出し続けた結果でしょうね……。習さん、あなたはあと数回の変身で、完全に『シュウジ・クロス』としての記憶を失います」

 

 習は元より死人であった。それが時空と次元を超えてここに在るのは、盟友であるシャッフル同盟がその魂の炎で錬成した、ハートブレスの力があったからだ。

 だが──幾度とないレッドとのツインテール属性の共鳴、そしてそれに対しての習本来の属性──自然愛属性(マスター)の揺らぎが、ハートブレスの『バランス』を崩した。

 

「今後は適当に理由をつけて、ハートへの変身は避けてください。その間に、私が対策を見つけます、必ず」

「気休めはいい、トゥアール。……ハートブレスの全容、ほとんど解析できておらぬのだろう」

「…………!」

 

 習の言葉に、トゥアールははっと顔を上げる。いつのまにか、本人も気づかぬうちに俯いてしまっていたようだ。

 

「見抜かれていた、とでも言いたげな顔だな。……ワシ自身のことは、ワシ自身がよくわかっておる。戦いの中でこの心が消えると言うならば、それも宿命よ……」

「まっっっっったく理解できませんね! 簡単に諦めないでください! 総二様たちの修行はあなたがいなければ成り立ちませんし、これからの戦いも……!」

「総二は強い……愛香も、慧理那も、そしてお主も。ワシがいなくとも───」

 

 

 パァンッ! 

 

 

 トゥアールの平手打ちが、習の頬を叩く。

 

「…………っ」

「それ以上、言わないでください。……属性玉変換機構(エレメンタリーション)の実装までは、こぎつけたんです。ここからそれを足がかかりに、ハートブレスの解析も進めます」

「……すまぬな。ワシらしくもなく、気弱になってしまっていたようだ」

「わかったならいいんです」

「しかしトゥアール、先ほどの平手打ち、いい一撃だった。どれ、お主にも流派東方不敗の修行をつけて────」

 

 トゥアールの平手打ちによる効果か、それとも今の自分を恥じたのか、習はすっかりと元の調子を取り戻していた。

 

「私は科学者です戦闘員ではありません養生してくださいそれでは!!」

 

 足早に去っていったトゥアールの背を見送り、習は自身の右手の甲を見つめる。

 そこに輝くシャッフルの紋章は、シャッフルの紋章全てを重ね合わせたかのようなもので────その輝きは今、弱っていた。

 

「この世界になぜか存在する、キング・オブ・ハートの紋章……。他のシャッフルの紋章も存在するならば──その発見と育成を、早く進めなければ……」

 

 誰にも明かさない使命感を抱えた習の心は────かつての東方不敗マスターアジアのものに近づいていた。

 かつて、デビルガンダム四天王として目的を遂行しようとしていた、あの時の心に。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 観束総二は夢を見る。

 彼女の夢を、彼として。

 

 

「…………ツ…………」

 

 

 テイルレッドは夢を見る。

 いつか『彼女』が目覚める日まで。

 

 

「ツ…………!」

 

 

 そして彼女は夢を見る。

 やがて少年が────ツインテールとなる日まで。

 

 

 

「ツインテール!」

 

 

 

 ツインテールの名を叫び、飛び起きる。観束総二のその日の朝は、そうして始まった。

 

「変身してる!? ……いつからだ?」

 

 いつもと違うのは、彼がテイルレッドに変身しているというところだろう。

 夢──テイルレッドが悲しみ、ツインテールを解くという夢。それを見たためなのか、勝手にテイルギアの変身機構が働いてしまったようだ。

 

「おはよーそーじ、今日は習の特訓が朝から──」

 

 そしていつも通りに愛香が起こしにくる……が、タイミングが悪かった。未だ総二がテイルレッドの姿のままベッドにちょこりと座っているのに、それを目撃してしまったのだ。

 

「またあんたは! ツインテールのまま寝てみようとか、意味不明なこと考えてたんでしょ!」

「い、いや違うって! なんか勝手に変身してて……」

「勝手に変身……って、おねしょするみたいにツインテールになってどうすんのよ!」

 

 愛香はそう形容するが、これは彼女が思っているよりも重大な異変である。普段からテイルレッドと接する彼女ならともかく、例えば授業中総二が居眠りをするだけで、それだけでテイルレッドという正体が発覚してしまうかもしれないということなのだから。

 

「ふむう、これはいかんな……もっと修行を厳しくせねば」

「そうですねえ、しかし愛香さん、男性の『あやまちモーニング』にはもっと別の言い方があると思いますよ? 思春期の男子高生じゃあるまいし」

「習!? いつの間に……」

「遅かったのでな、呼びに来たのだ」

 

 愛香が習に驚く一瞬の間に、彼女の拳でトゥアールは天井に突き刺さる。

「暗殺者に狙われることが日常の人の部屋でも、俺の部屋よりは損耗は少ないだろうな……」そんなことを考えながら、総二は制服に着替える準備を始めた。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 アルティメギル基地では、これまでに有り得ない光景が広がっていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに加え、戦士たちがそれを囲んで佇んでいる。

 無論、テイルブルーの恐ろしさに発狂したわけではない。それを示すように、ブルーのフィギュアは素晴らしいツインテールを備えている。それ以外の部分は、どんな評論家でも褒めるべき点をこじつけられないほどに酷い出来だったが。

 

「……では、これよりツインテイルズ対策会議を始める。前もって言っておくが、今回議題の中心となるのはテイルブルーだ」

 

 会議の進行役を務めるのは、舞台最古参であるスパロウギルディ。かつてのドラグギルディ達が率いていた部隊──その残存戦力を纏めた混成部隊を指揮するのがスパロウギルディであったのは、自明の理と言える。なおドラグギルディの後継と目されているスワンギルディだが、彼はダークグラスパーとうっかりメアド交換をしてしまって以降、厳しい修行と並行してメール相手をしているので会議の場には出なくなった。

 

「はじめに、ブルーの前に他のツインテイルズの強さを分析する。こうすることで、ツインテイルズ内でのブルーの立ち位置も見えてくるだろう」

 

 美の四心(ビー・ティフル・ハート)から出向してきた参謀役のホッパーギルディがそう唱えるが、これはせめてブルーだけに意識を向けることがないようにと考えての方便である。

 

「よろしいですか、ダークグラスパー様」

「ホッパーギルディ、マンティスギルディ、そしてスパロウギルディ。今日の会議は貴様らに任せる。わらわは1/1スケールテイルレッドフィギュア・メイド服バージョンの設計で忙しいのでな」

 

 こう言っているダークグラスパーだが、会議中はだいたいこの3体に進行役を任せている。

 

「は。……ではまずレッドだが────」

「いやああの可愛さはまさに満点の星空の中、ひときわ強く輝くツインテールの星といった風情で──」

「剣を構える姿など凛々しさと戦士らしさが合わさり最強に──」

 

 レッドの話題になった途端、しんと静まり返っていたエレメリアン達が一斉に饒舌になり、口々に自らの思いのたけを吐露していく。人間達に大人気のテイルレッドだが、人間の心から生ずるエレメリアンにとってもその魅力と人気は変わらないものがある。

 なのでエレメリアン達が語るレッドの評は、ほとんどがその可愛さとツインテールの素晴らしさを褒め称えるようなものだった。しかし中には、「初めは大振りだった動きが最近は洗練されてきている」「爆発力に頼らずとも素で幹部級にも匹敵してきている」と真面目な意見もあった。

 

「なるほど……つまり皆の意見をまとめると……」

「いまだ幼子ゆえか戦いの最中に怯えることもあるが、基本的には勇敢で仁義に篤く、真っ向から我らと向かい合ってくれる戦士……」

「そして、最近は急成長を遂げてきている。以前は一旦守勢にさせれば、我ら一般的なエレメリアンでも押せはしましたが……近頃は精彩を欠いていますが、ダークグラスパー様との対決までは見事な技を披露していました」

「単にブルーのせいで技を披露する機会がないのではないか?」

「そうかもしれぬ。ええいブルーめ、ここでも邪魔を!」

 

 レッドがエレメリアン(変態)変態(エレメリアン)らしさに怯えるのが、どうやらエレメリアン達からは戦いに怯えているように見えているようだ。しかしその勇敢さと習との秘密特訓の成果は、四頂軍のエレメリアンから見ても驚異的にうつるようである。

 

「では、レッドはそこまでにして、イエローだが……」

「……語ることなど、あっただろうか」

「露出狂の変態、ですな」

「クラーケギルディ様を真っ向から下した火力と、すぐ脱ぎ捨てるが堅牢な装甲。そして必殺の一撃。……まあこれぐらいでしょうな」

「そうだな、では次」

 

 エレメリアンからも一般世間からも、「しっ! あの人にあまり関わっちゃいけません!」に近い、あるいはそれそのものの扱いを受けるイエローは、ある意味ブルー以上に不憫だろう。

 

「次というと、ハート……ですか」

「なんと言いますか……。容赦はないのですが、熱い乙女であり、確かな強者でもあり……」

「若いエレメリアンの中には、彼女を心の師と目する者もいます。属性力(エレメーラ)の絶対量は低いですが、ドラグギルディ様とリヴァイアクラーケ様……あの方達を葬った一撃は、レッドとハートの合体技によるものです」

「うむ……ハートこそ、ツインテイルズの精神的支柱でもあろう。率先して狙うべきかもしれぬな」

「……そうですな」

 

 ハートに対してのコメントに困っているエレメリアンが多いのは、ハートが強者であることは確かだが、属性力(エレメーラ)が幹部級に対して勝つには少ないことや、ハート自体に対して複雑な感情を抱くエレメリアンが多いのもある。

 率直に言ってしまえば、ハートは大体のエレメリアン達から見て『好み』なのである。レッドは幼すぎるため愛でる対象となるが、ハートを見ると人間の童貞のような反応を見せる一般エレメリアンも、少なくはない。

 

 ここまでの話し合いからもわかるように、ツインテイルズはエレメリアンにとって倒すべき相手であっても、憎む対象でも恐怖の対象でもない。同胞をあれだけ倒されたというのにである。無論、仲間の無念を晴らしたいという気持ちは彼らにもあるが、人間とは根本的な部分で価値観が異なっているのだ。

 

「さて、いよいよブルーだが──」

「む、それがし少し腹痛が……」

「わ、わたしも……」

 

 だが、エレメリアン達にとってもブルーは人間と同じく────いや、実害を存分に受けているぶん、彼らの方が恐れていると言っても過言ではなかった。

 

「ええい逃げるな貴様ら!」

「し、しかし奴は我らエレメリアンの力も積極的に使ってきます!」

「そうです! 人の子かどうかも怪しいのですぞ!?」

「悪鬼羅刹……善悪無用の修羅! 奴にこそ魔物の名はふさわしい!」

 

 ひどい言われようだが、これが現実である。ブルーとは、修羅であり悪魔。エレメリアンの天敵なのだ。

 

「ええいそこまで言うなら……何か、こう、弱点とか探して見てはどうじゃ」

「弱点……ですか?」

「胸……いや、あの部位の薄さを指摘したが最後、数分と持ったエレメリアンはいない……」

「パワーアップさせてどうするのじゃ。だから弱点はないのか、弱点は」

 

 ダークグラスパーにとっても、ブルーはトゥアールがかつて纏っていたテイルギアを受け継いだ戦士。レッドに心変わりしたとはいえ、未だ彼女はトゥアールを慕っているのだ、ブルーがトゥアールのギアを纏うという現状は許せないのだろう。エレメリアン達へのツッコミも、多分に苛立ちを含んでいる。

 

「うーむ……心当たりがあるとすれば、うねうねとしたもの……ですか」

「なんじゃスパロウギルディ。貴様、奴の弱点を知っておるのか?」

「は、奴はかつてクラーケギルディ様と対決しましたが、その際にクラーケギルディ様の触手をたいそう嫌がり、恐れておりました。しかしクラーケギルディ様が奴の貧乳を褒め称えたことが原因で、恐れより胸のことに触れられた怒りが勝り、間に入ったリヴァイアギルディ様を、撲殺寸前まで追い込んでおりました」

「なるほど、つまりブルーの弱点を突くには、奴のつい指摘したくなる貧乳度合い……そこを堪え、目の前でうねうねし続けられればよい、と」

 

 スパロウギルディの提言を聞き、ダークグラスパーはそう判断を下す。ブルーにとってこれ以上なく不名誉な対策方法だが、全てが的確な対処法である。

 もっとも、クラーケギルディの触手ほどうねうねしたものは少ない。リヴァイアギルディの触手ですら、ブルーはなんとか我慢できていたのだ。

 しかし────運悪く、ダークグラスパーの()()に敵うほどうねうねとしたエレメリアンが、この場には存在していた。

 

「おい、そこのミミズ」

「ミミズ!?」

 

 ダークグラスパーからミミズ呼ばわりされたのは、細長い体に手足の生えた愛嬌あるビジュアルを持つエレメリアン、ワームギルディである。

 

「お前、うねうねしておるな。よし、今日からテイルブルー対策班隊長に任命する」

「えっ!?」

 

 その一言は、まさに青天の霹靂。もしくは赤紙。その場に集う全エレメリアンが絶句した。

 それもそのはず、このワームギルディは美の四心(ビー・ティフル・ハート)の一員でこそあるが、まだ若輩の新兵。新入りである。そんな者が対テイルブルーの対策を命じられたのである。

 

「む、無理です僕には……」

「お前の師匠、アラクネギルディはわらわも認める美の四心(ビー・ティフル・ハート)の副官。それにお前は仮にもわらわの直轄軍の一員であるのだぞ。……そのように縮こまっていては、いつまでも師匠を超えることもできぬぞ」

「し、師匠を超えるなんて……。僕には無理です!」

「ダークグラスパー様、ここは一度お考え直しを!」

「そうです! ワームギルディにはただ一度の実戦経験もないのですぞ!」

 

 完全に萎縮したワームギルディを見て、さすがに他の戦士達も彼の擁護に回る。しかし、ダークグラスパーは聞く耳をもたない。

 そこに、一人の戦士が進み出た。

 

「……ツインテイルズを相手取るには、一人の手では余りましょう。ダークグラスパー様、わたくしめを。ワームギルディの補佐役に」

「スネイルギルディか……お前もアラクネギルディの弟子であったな」

 

 カタツムリをモチーフにしたようなそのエレメリアンが背負うのは、大きな殻。ここに集うエレメリアンの中でもトップクラスの防御力を持つスネイルギルディは、その精神もまた堅牢なものであった。

 

「よかろう。だがわざわざ名乗り出たのだ、何か策はあろうな?」

「……テイルブルーは、男の娘です。少なくとも、私の見立てでは」

「何、男の子!?」

 

 全くの見当違いであるスネイルギルディの見立てだったが、その場にいたエレメリアン達は一人残らずこの意見に納得した。

 

「あの胸の薄さ……もしやとは思っていたが!」

「それに、あのあふれんばかりの獣性……。とても女性のものとは思えぬ!」

 

 周囲が思わぬ事実(見当違い)にざわめく中、とうのスネイルギルディはワームギルディの肩をぬめっとした手で叩き、そのぬめっとした頭でワームギルディを見下ろし、ぬめっとした雰囲気を形成していた。

 

「どうだ、ワームギルディ。テイルブルーが男の娘と知れば、貴様もやる気が出てきただろう」

「う、うん……! テイルブルーが男の娘……!! ぼ、僕頑張るよ!」

「その意気だ。奴こそは、エレメリアンの天敵──最凶のツインテール。それを打ち破れば、お前の男の娘属性(ガールズボーイ)も必ずや、多くの理解を得られるはずだ」

「スネイルギルディくん……そうか、君も」

 

 エレメリアンの中においても、忌避される属性というものは存在する。ケルベロスギルディの三つ編み属性(トライプライド)のような、ツインテール以外の髪型の属性。そして、エレメリアンでも不快感を示す者が多い属性である。

 中には、危険すぎて封印された属性も存在するが────彼らの属性は、そういった理解を求められない属性の中では、まだマシな方であった。だからこそ、今回の任務という一縷の希望に賭けられたのだろう、自身の願いを。

 

「俺の属性……性転換属性(トランスセクシャル)。現実には目にかかれないと、そう思っていたが──ブルーこそが、俺の求め続けた者であるのかも知れん」

「スネイルギルディくん……! 頑張ろうねっ!」

「ああ……!」

 

 こうして総二の思いもよらぬところで、テイルレッドは最大の危機を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

「……まったく、あやつらめ。ブルーごときであれほど慌てふためきおって……」

「しょうがないわあ。だってブルーちゃん強いし、恐いもん。ウチかて戦ったらぜっったい苦戦するわ」

「まあ、それはそうかも知れんが……」

 

 会議を終え、自室に向けアルティメギル基地の廊下を歩くダークグラスパー。側にはメガ・ネもついている。周囲には、エレメリアンはおろか、チリひとつ見受けられない。彼女達以外は、とても静かな空間だ。

 だが、ダークグラスパーの眼鏡は、見逃さなかった。

 

「何用じゃ。──いや、遅かったな、と言うべきか? ゴートギルディ」

「……散髪属性(カット)の応用で、気配を絶っていたはずなのだがな」

「うおわっ!? びっくりするわ、もう」

 

 物陰から現れたのは、メガ・ネ以上の体格を備える山羊型のエレメリアン、ゴートギルディ。ダークグラスパーとは、数日前に合流するはずだった男である。

 

「遅参の詫びにでもきたか?」

「ああ。すまなかったな……少し用があってな。ツインテイルズ対策に必要だった」

「ならば良い。貴様のことは、信用しておるからな」

「ゴートギルディはん、すごいもんなあ。ただ一回を除いて、任務達成率は100パーセント!」

「その『一回』が問題なのだがな……。わらわとて詳細までは知らぬが、首領様から聞き及んではいる。面倒を起こしてくれるなよ」

「ふん……わかっている」

「い、イースナちゃん?」

 

 険悪な雰囲気を察し、うろたえるメガ・ネ。彼女を差し置いて、無言で睨み合うダークグラスパーとゴートギルディ。

 静寂を破ったのは、ゴートギルディの方からだった。

 

「……貴様を見ていると、反吐が出そうになる。私自身の禁忌を思い出して…………」

「わらわですら知らぬ……貴様の()()()|()()()()()()()()()()》か」

「そうだ。散髪属性(カット)をはじめ、脱衣属性(パージ)夢想属性(ファンタジー)……複数種の属性を備えたエレメリアンは少なくはないが、私はそのいずれをも実戦レベルで鍛え上げた。だが……私自身の本来の属性は、首領様によって封印された」

「わらわに対し、貴様が嫌悪感を示すのも、その属性ゆえ……か?」

 

 ダークグラスパーの問いに、ゴートゴルディは首肯する。

 

「その通りだ。私は、貴様がコンタクトを嫌悪するように、ダークグラスパーである貴様を嫌悪しているのだ」

「それは、どういう────」

「…………少し、話しすぎたな。……次の出撃、機を見て私も出る。……ツインテイルズを潰すためにな」

 

 さらに踏み込んだ話を聞こうとするダークグラスパーだったが、ゴートギルディはそれを察知したのか、それともはじめからそのつもりだったのか。言いたいだけ言うと、その姿を消した。

 

「……ゴートギルディ、か。奴を信用はしているが……信頼は、できぬな」

「初めて会うたけど、なんか恐い人やったなあ……」

 

 危機を迎えるのは、テイルレッドだけではない。

 テイルハート──十文字習。彼女にもまた、ゴートギルディという悪魔と、彼女の過去からの悪魔。二つの悪魔が襲いかかろうとしていた。

 




感じる……ゴートギルディの本性への期待が!
それに応えられるよう頑張る!あ、彼の本性である属性力に関しては、今話中で察しのいい人はだいたいは察せるかもしれませんね。

習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?

  • 構わん、やれ
  • 断固として拒否する
  • メス落ちまだ?
  • 習側が記憶失ってたらいいよ
  • トリニティ!
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