全新系裂! 究極東方不敗伝テイルハート   作:天地優介

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※連続投稿なので前話からお読みください。

ついに!ついにハートとレッドが……!正直この話のせいで3ヶ月以上間が空いたと言っても過言ではありません。次話?明日の私がなんとかする!

いやどうしようマジで


第32話 我が心、そのままに

『トゥアール、なんで基地が!?』

「…………わかりません。ですが、このままでは確実にアドレシェンツァまで……!」

 

 ──こう言ってはいるが、トゥアールの脳裏には襲撃の理由として、ある一つの可能性が浮かんでいた。

 

(DG細胞……おそらく、習さんが──『シュウジ・クロス』が元いた世界にあったモノ……。習さんの手の甲の紋章が反応しているのも、恐らくは、彼女の中に眠るものが反応している……)

「くっ……どうする、トゥアール」

「……待ってください。今、基地に迫るエレメリアンの姿を……」

(そしておそらく、今基地に迫るエレメリアンは、紋章の力で活性化した習さんのわずかな属性力(エレメーラ)を探知しようとしている……。この基地の位置はわからなくても、手当たり次第にあたりをつけて……)

「こんな芸当ができるエレメリアン……まさか!」

 

 最悪だが、最も確実なトゥアールの予想は的中していた。

 

 ツインテイルズ基地のモニターに映し出される、街中の様子。そこには、習の僅かな属性力(エレメーラ)を感じ取り、手当たり次第に破壊行為を繰り返すエレメリアン……ゴートギルディの姿があった。

 

「…………っ!」

 

 幹部級怪人二体を相手にした前例はある。だがリヴィアギルディとクラーケギルディの時とは違い、レッドは不調で、アラクネギルディの能力によって数の上でも不利。そして習は変身できたとしても、東方不敗としての記憶が眠るままのテイルハートでは、ゴートギルディに勝てる可能性は万に一つも無い。

 

(どうすれば……!)

 

 かつてない窮状に追い込まれ、トゥアールは思考の袋小路にはまっていく。ゴートギルディがこの基地を見つけられなくとも、周辺の被害は確実に大きなものになる。下手しなくとも、未春の喫茶店は壊滅してしまうだろう。

 

(幹部級怪人は二体、総二様達も強くなっている……。それでも、ゴートギルディ相手に1人では……)

 

 悩んでいた時間は、常人からすれば非常に短く────だがトゥアールの脳裏には、あらゆる可能性が浮かんでは消え……やがて、意を決して立ち上がった。

 

「トゥアール……?」

「……習さん、これを」

 

 トゥアールは白衣のポケットからハートブレスを取り出し、習に手渡す。ブラックボックスまで全て解析とはいかなかったが、修理は完全なものだ。

 

「これは!」

「……すみません。あなたが万全な状態でないことは、あなたよりも理解しています。ですが……もうこれしかないんです」

「私に、死地に迎えと」

「………………すみません」

 

 最も勝利の可能性が高く、最も習の生存確率が低い作戦。申し訳なさと無力感とに苛まれたトゥアールに対して、習はハートブレスごと、彼女の手を優しく握りしめる。

 

「習さん…………?」

「そんな顔するな、トゥアール。私とお前は友だ。友達の頼みを断るような、そんな女か? 私は」

「習さん……いえ、そういう、問題では…………」

「だとしても、だ。……それじゃあ、行ってくる」

 

 そう言うと、習はハートブレスを握りしめたまま、駆け出していった。向かう先は、ゴートギルディの待つ戦場。

 

「あ…………」

 

 遠ざかっていく習の背中を、トゥアールはただ見送ることしかできなかった。戦闘能力を持たない彼女では、習の横に立つことは出来ないからだ。

 

「……いえ、まだ私にはやれることが残っています!」

 

 だが、横には立てなくても────その背中を押すことも、守ることも、トゥアールには可能なはずだ。

 

「愛香さん、聞こえますか────」

 

 彼女もまた、ツインテイルズの一員なのだから。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

『愛香さん、聞こえますか』

「なによ、トゥアール!! コイツらの弱点でもわかった!? それとも──」

『習さんが、怪人の迎撃に向かいました』

「────っ!?」

 

 小旅行の際、前もってトゥアールから習の状態について聞いていたテイルブルー。そんな彼女にとって、この報告は衝撃的なものだった。無数のスパイダギルディに対して隙を見せなかったのが、奇跡的なほどに。

 

「どういうこと!? 返答次第によっては──」

『……あらゆる可能性を考慮して、この結論しか、私には導き出せませんでした。ゴートギルディを放置していれば、そちらに向かう可能性も十二分にありますから』

「だから、習を!? でも、今のあの子はまともに戦えないって、あんた言ってたでしょ!?」

 

 ブルーは怒る。トゥアールが習を向かわせたこと以上に、2人が一言も相談してくれなかったという事実に。

 

「あんたにとって、あたしは……あたし達は、そこまで頼りないの!?」

『いいえ。あらゆる世界で最も、私が頼りにする存在が愛香さん達です』

「だったら……!」

『だから、今から頼ります。……愛香さん、すみません。習さんのフォローに向かってくれますか』

「!?」

 

 トゥアールの提案に驚愕するブルーだが、それも無理はない。今の彼女達は周囲を敵に囲まれた状態。そのうえ、アラクネギルディと刃を交わすレッドはどうにも調子が悪く、段々と押し込まれていた。

 

「ぐっ……くう!?」

「我が剣の煌めきを! 我が感情の爆発を見ろおおおおおお!!」

「くっ、こいつの刀……滑る!?」

 

 実際にアラクネギルディの刀に仕掛けが施されているわけではない。ただ単純に、彼がレッドの技量を上回っているだけなのである。DG細胞の力で理性を失っているにもかかわらず────いや、だからこそ彼の刀に迷いはなく、純粋な本能のみでレッドの隙を突いていた。

 

「男の娘……貴様からその匂いがする! 言え! どこに男の娘を隠したァァァァァ!!」

「こ、こいつ……! わかっちゃいたけど、正気を失ってるのか!?」

「レッド! ……トゥアール、本気なのね?」

『はい。正直な話、最も勝てる可能性が低い愚策だとは、自分でも自覚しています』

「それでも……あんたのことなんだから、勝算はあるんでしょ!?」

『……はい。1%……いえ、それよりも下ですが』

「0じゃないなら十分! これでも信じてるから、あたし。あんたのこと!」

 

 飛びかかってきたデビルスパイダギルディの一体をかわしつつ、ブルーは属性力玉(エレメーラオーブ)を発動。発動したのは重力を操る体操服属性(ブルマ)だ。

 

「むっ!?」

「レッド、離れて! イエロー!」

「ええ! 属性玉(エレメーラオーブ)──髪紐属性《リボン》!」

 

 アラクネギルディの動きが止まるのは数秒程度に過ぎない。しかしその間にイエローは飛翔し、全武装を眼下に向けて撃ち放つ。

 

「はあああああああああ!!」

 

 ともすればレッドすら巻き込まれかねない攻撃だったが、無数のデビルスパイダギルディがうまく盾となったようで、イエローの射撃が終わった後には無傷でレッドとブルーが立っていた。

 

「む、無茶するな……!」

「これぐらいしなきゃダメよ。それに、ほら」

「むうううううううう!! この程度で我が武士道を断ち折れはせぬ!」

 

 射撃の雨の直撃を受けても、アラクネギルディは健在だった。そして彼の傷口からは、再び無数のデビルスパイダギルディが産み落とされる。

 

「これじゃ、キリがないわね……!」

「ええ。ですが、ブルー! ここはわたくし達にお任せを! ハートがピンチなのでしょう?」

「えっ……あんた達、さっきの聞いてたの!?」

『それはまあ……いきなり愛香さんが離脱すれば、二人とも混乱しますから。お話は聞いててもらいました』

「ってことは……まさかあたしの……」

 

 トゥアールに対しての言動を思い返し、顔を真っ赤にするブルー。そんな彼女を見てレッドは気まずそうにしていたが、イエローはむしろさらにノリノリになっていた。MとSは紙一重というが、彼女もその例に漏れてはいないようである。

 

「そ、それはまあ……」

「不可抗力、というやつですわ。でもわたくし感動しましたわ! 仲間との信じ合う心、友情……! その邪魔をする相手は……許しませんわ!」

「イエローの言う通りだ。ハートを頼んだぞ、ブルー!」

 

 相手は数多く、戦力の差は歴然。しかしレッドにもイエローにも、諦めの意思はない。信じているのだ、自分達の闘志と、仲間達の力を。

 

「……わかったわ」

 〈髪紐属性(リボン)

 

 属性玉(エレメーラオーブ)の発動を告げる電子音が静かに響き、ブルーに翼を与える。

 

『急いでください、愛香さん』

「わかってるわよ」

 

 すでにハートとゴートギルディの激突は起こっている。強大な属性力(エレメーラ)の激突は天地を揺るがし、町からは人の悲鳴が聞こえてくる。

 

「待っててよね────今、行くから」

 

 属性力(エレメーラ)の激突の中心点──そこへ向けて、ブルーは飛んだ。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

「ぐうっ! ああっ!!」

「どうした、テイルハートよ! 以前よりもさらに弱くなっているな!」

 

 ハートとゴートギルディの戦いは一方的だった。属性力(エレメーラ)の力が弱まったハートでは、ゴートギルディの猛攻に耐えきれるはずもなかったのだ。彼女自身の意思は尽きていないが、肉体の面ではすでに限界を迎えようとしていた。

 

(ここが、死に場所と……!)

「目は死んでいないか……! だが貴様のような手合いは、これまで幾度となく目にしてきた!」

 

 ハートの役割は、足止めである。ゴートギルディが万が一にもレッド達と町の人々の方に向かわないようにしつつ、最大限相手の体力を削る。それが彼女の役割だ。

 

(トゥアールはこれが、『最も勝てる可能性が高い』作戦だと言った! 友として、応える!)

「考え事をしている暇はないぞ!」

「これなら!」

 〈学校水着属性(スクールスイム)

 

 ゴートギルディの大木のような脚から繰り出された一撃を、ハートは地面に潜ることで間一髪で回避。そのまま潜土と浮上を繰り返し、ゴートギルディに対して打撃を与えていく。

 

「ええい、鬱陶しい!」

 

 だが、ゴートギルディにその戦法は通用しない。彼はなんらかの属性力(エレメーラ)の応用によって全身の毛を伸ばすとそれを硬化させ、地面に向けて触手のようにして伸ばし、そのまま大地を突き刺した。

 

「……そこか!」

 

 直後、ゴートギルディは背後に向かい裏拳を放つ。全身の体毛による探知でハートの動きを感知した攻撃は、寸分の狂いなくハートの腹部に直撃。彼女の軽い身体がミシリと、軋んだ音をたてて吹き飛んだ。

 

「ぐっ! あっ……がはっ。…………っく」

 

 吹き飛んだ後、ハートは立ち上がろうと全身に力を込めて──だが、出来なかった。

 

「ごぶっ……」

「それが……貴様の正体か、ハート」

 

 黒い血の塊をハートが吐き出すと同時、彼女の変身は解除された。今のハートは、もはやただのか弱い少女……十文字習でしかない。

 

「時間稼ぎに徹していたようだが、終わりだな」

「ま、だ……!」

「もういい。……貴様とテイルレッドは危険因子だ。あのお方……首領様は生かしておけ、と言っておられたが……!」

 

 ダメージで動くことのできない習の眼前に立ち、高々とその右手を掲げるゴートギルディ。彼が持つ属性力(エレメーラ)の1つ、散髪属性(カット)の力を用いた一撃を、習の脳天に叩き込むつもりなのだろう。その異様な属性力(エレメーラ)の集中は、まさに絶望の具現化。ただの少女の習では、到底防ぐことのかなわない一撃……。

 

(ここまで、か。トゥアール……みんな……すまない……)

 

「容赦はせん! ここで散れ! テイルハート!」

 

 自分の運命を受け入れ、ゆっくりと目を閉じていく習。その直後、彼女にゴートギルディの拳が振り下ろされ────

 

 

「エクゼキュートッ! ウェェェイブッッ!!」

 

 

 ────刹那、怒りの一撃がゴートギルディを貫いた。

 

 

「ぐっ!?」

「ハァ、ハァ……。どうやら、間一髪……間に合った、みたいね!」

「ブ、ブルー? どうして、ここに……」

「どうしてって……仲間だからよ。あたしとあんた……ううん、ツインテイルズの全員があんたと仲間だから、あたしはこうして助けに来れた!」

 

 かつてレッドとハートをゴートギルディの襲撃から助けた時のように、颯爽と現れて啖呵を切るブルー。しかし、その頬には冷や汗がつたっていた。

 

「テイルブルー……。貴様、いつぞやのように、味な真似を!」

「あの時は決着つかずだったけど、今度はどうかしらね!」

(嘘でしょ? こいつ……エクゼキュートウェーブを食らって、ピンピンしてる……!)

 

 ブルーが放った必殺の一撃も、今のDG細胞に侵されたゴートギルディ相手には効果が薄い。だが、今の彼女は引くこともできなければ、負けることも許されない。

 

「……習。ホントにヤバくなったら、すぐに逃げて」

「ブルー! 駄目だ、1人では……! 私も……」

「あんたは今、色んな意味で戦える状態じゃないでしょ。安心して、あたし、死ぬつもりないから」

 

 習を庇うように位置どり、改めてゴートギルディと向き合うブルー。以前戦った時とは比較にならない殺気を前に、ただ彼女は静かに息を吸い、拳を構える。

 

「ほう、武器は使わぬか」

「あたし元々、こっちの方が慣れてんのよっ!」

 

 通じない槍で攻めるよりも、身軽な方が良いと判断してのことなのだろう。ブルーはウェイブランスしかし今のゴートギルディ相手では、数多のエレメリアンを沈めてきた彼女の鉄拳でも粉砕できるかは怪しい。

 

(ダメだ、ブルー……。今の、ブルーの拳では……っ!)

 

 倒れ伏したまま、ブルーの背中をただ見るだけしかできない習。やがて彼女の意識は、闇に溶けていった……

 

 

 

 ♢

 

 

 

 ──ブルーが決死の戦いに挑む一方で、レッド達もまた、この上ない窮地に陥っていた。

 

「テイルギアが、あっさり砕けた……!?」

『総二様、おかしいです、テイルギアに流入しているツインテール属性がどんどん弱くなっています! このままでは……!』

「そんな……でも……!」

 

 デビルスパイダギルディの群れをかき分け、アラクネギルディまでたどり着いたレッド。しかしその剣は、アラクネギルディの刀と数合打ち合っただけで砕け散ってしまった。

 

「俺は……ツインテールそのものに、見放され始めたのか……!?」

「レッド!? ……っく、いきますわよ──喰らいあそばせっ!!」

 

 完全脱衣形態(フルブラストモード)で突破口を開こうとするイエローだったが、無数のデビルスパイダギルディに阻まれ、その嵐がアラクネギルディにまで届くことはない。むしろ、後から後から這い出てくるデビルスパイダギルディに呑み込まれかけている。

 

「仲間の助けは届かぬ! テイルレッドよ……まずは貴様だ!」

 

 狂乱状態のアラクネギルディだが、その行動はあくまで冷静かつ冷酷。レッドが動けないと見るやすかさずその腕を天にかざし、エレメリアンが属性力(エレメーラ)を吸収するときに使う大きな光輪を呼び出すと──

 

「行け!」

 

 すぐさまレッドに向けて、それを射出した。

 

「レッド!」

 

 イエローの叫びも届かず、レッドの視界は光に包まれ────

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

「……ここは?」

 

 光から目が覚めると──総二はあたり一面真っ白な、謎の空間に漂っていた。

 

 もしや天国か、それとも夢でも見ているのか? そう困惑する総二がキョロキョロと周囲を見渡していると、その眼前に赤い輝きを伴った『何か』が神々しく現れる。

 

「観束総二よ……」

「……っ!? 誰だ?」

 

 突然のことに警戒しながらも、しかし総二の足は赤い光へと近づいていく。

 

「お前は……?」

 

 そう尋ねる総二の声に、『何か』は答えた。

 

 

「私は、お前のツインテールだ」

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

「……ここは? 私は、気を失って……」

 

 総二と同じく習もまた、摩訶不思議な空間へと誘われていた。だが総二とは異なり、彼女の周囲は暗闇が広がっている。しかしその暗黒の中にもわずかな光が点々とあり、それが暖かな光を放っている。

 

「まるで、宇宙だ──」

 

 生身で宇宙空間に浮いているかのような錯覚の中漂う習。その眼前に、ひときわ眩しい光が近づいてくる。

 

「……なんだ?」

 

 その光に対して、習は自ら近づいた。そうしなければならないと、何故かはわからないが、そう感じたからだ。

 

「……総二!?」

 

 そして、その光を通して習が見たものは──内なるツインテールと対話する、観束総二の姿だった。

 

『私はお前のツインテールそのものだ。その私が、お前を見捨てる……それはすなわち、お前が自分自身を見捨てることに他ならない。人はそれを──諦めと呼ぶ!』

『っ……!!』

 

『あれは────ツインテール、か?』

 

 総二と対話する、ツインテールの姿。その姿に対して、習は奇妙な既視感を覚えていた。

 

(なんだ……? 私はあのツインテールを、知っている──?)

 

『だが、お前は諦めたのではない。自分の愛を見失っているに過ぎないのだ』

『!?』

『ツインテールを愛することと、人を愛することは別のものだ。混同してはならない』

「人を愛することと、ツインテールを愛することは、別────」

『お、俺だってそれぐらいはわかる!』

 

 光を通して他人の心の中を覗き込んでいるという、非常に奇妙な状況であるのにもかかわらず、総二と内なるツインテールの対話に、習はいつのまにか聞き入っていた。

 

『だが事実、女性の温もりを知った時、お前は後ろめたさを感じてしまった。ツインテールへの愛が、揺らいでしまうのではないかと。あの男……いや、あの少女がそうなってしまったように』

「…………!?」

『あの少女……?』

『十文字習のことだ。お前も薄々感づいていただろう、あの少女の不調と変化に。彼女もまた、この世界で得た新たな繋がりによって、揺らいでいたのだ。お前と同じようにな』

『俺と、同じように────』

『そうだ。お前は自分自身を許せず、より強いツインテールとの結びつきを求めた。決して解けない、決して消えないツインテール────。ソーラという少女は、その具現化だ』

 

 総二はツインテール属性を弱めていたのではない。ただ、彼が彼自身のツインテール属性を制御できず、暴走させてしまっていたのだ。

 いくら馬力が強くとも、扱い方を知らなければスポーツカーも乗用車には及ばない。それどころか、事故の危険性さえある。今の総二の状態は、まさにこう形容されるべきものだった。

 そして、習もまた────

 

『あの習という少女の状態も、それに近い。トゥアールという少女は少し勘違いをしていたようだが……あの少女は今も紛れもなく、東方不敗なのだ。この世界に来て、お前達と共に戦った』

『ああ、今ならお前のいうことがわかる。習は俺と同じように、ツインテールであろうとしたんだな』

『その通りだ。彼女はお前達と共闘し、その中で何度もお前とツインテール属性を共鳴させていた。その影響で、本来自分が持つ属性に比肩するほどに、ツインテールを愛するようになっていった』

「ツイン……テール……」

 

 習が思い返すのは、総二との共闘の記憶。彼女はこれまで、多くの強敵を総二との共鳴によって撃破してきた。しかしツインテール属性の共鳴とは、本来何が起こるかわからない、非常に危険な行為だ。元から強大なツインテール属性を持つ総二は影響をほぼ受けなかったが、ツインテール属性を僅かにしか持っていなかった習の心は、総二の影響を受けて徐々に変わっていたのだ。

 

『彼女の過去に起きた出来事が原因なのだろう。彼女は何かを愛することを、非常に恐れている。自分の愛が間違ってはないか、見当違いなのではないかと、常に自身に問いかけていた。そうして思いつめた結果、彼女はこの世界で得た記憶と、彼女の世界での記憶とを天秤にかけ──自分の使命を果たすため、より強大な属性力(エレメーラ)を求めた』

「私が────」

 

 2人の対話を聞き、自分の中にあるはずの記憶を思い出そうとする習。だがその瞬間、彼女を酷い頭痛が襲った。まるで、思い出すことを拒否するかのように。

 

「ぐっ……!?」

『記憶を……。でも、それじゃこれまでの自分を捨てるってことじゃないか! どうにかできないのか!?』

『我らにできることはない。彼女の意思に委ねるしかないだろう。……それに、観束総二。貴様こそどうなのだ?』

『俺……? どうって……』

『時として人は、形なきゆえ愛を恐れる。お前が身を以てその愛を形にしなければ、不安に押しつぶされそうになったように。彼女が記憶を捨てたように。……だが、それを乗り越えた先にこそ、本当の愛がある』

「ぐっ、うう…………!」

 

 いつの間にか、習の周囲の空間はほぼ完全な暗闇となっていた。点々とあった光は消え、残るのは眼前に輝く、総二達の姿を映す光のみ。その光も、闇に呑まれかけている。

 

『思い知ったはずだ。たとえ身体が女になっても、自分のツインテールは輝きはしないと』

『そうだ……。俺は男の娘でも、性転換者(トランスセクシャラー)でもない。どこまで行っても、ツインテールを愛する男、観束総二なんだ』

「そう、だ……。私も、いや、()()も……」

 

 暗黒の中に、新たな光が灯る。それは、習の右手に輝くシャッフルの紋章が放つ光。無限の愛を象徴するキング・オブ・ハートの紋章が、暖かで確かな光を放っている。

 

(俺は、世界から爪弾きにあって当然の人間だ)

(ワシは、この世界の外から来た。言わば外様の人間だ)

 

 観束総二と十文字習。2人の心が、いつしか重なっていく。まるでツインテールのように対照的に、しかし強く繋がっていく。

 

((だが、そんな俺/ワシだからこそ、人の心を守るために戦うことができるはずだ!))

 

 意を決して総二が立ち上がった時、習を襲っていた頭痛も消え──

 

『俺は────』

「ワシは────」

 

「『俺/ワシの愛を────信じる!』」

 

 

 2人の叫びが重なる瞬間、その右手に宿る紋章が強く輝く。両者の右手にはいつの間にか、あの日お互い買いあった髪留めとリボンが、それぞれ握られていた。

 

『これは……!』

『フッ、どうやらまた新たなツインテールを見出したようだな……』

『ああ。この力なら……!』

「これならば……やれる!」

 

 握り締められた髪留めとリボンが、2人の手の中で変化していく。純粋な属性力(エレメーラ)の影響を受けて、2人の力を最大限に活かすためのアイテムへと進化する。

 

『その力で……戦え! 観束総二よ!』

『いい加減、水臭い言い回しはやめろよ。お前は、俺なんだからさ』

『フッ……そうだな。訂正しよう。観束総二よ、共に戦おう!』

 

 ツインテールがその右の房を差し出し、総二が手を伸ばす。そして習もまた、眼前の光へ向けて手を伸ばしていた。

 

『ああ、俺が』

『そうとも、私が』

「そうだ、ワシも」

 

 

『『ツインテールを、愛する限り────!!』

 

「ツインテールを、愛そう────!!」

 

 

 その瞬間────世界は白滅した。

 

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

「「何ッ!?」」

 

 アラクネギルディとゴートギルディ。全く異なる場所の両者が、全く同時にそう叫んだ。

 

「一息の間も許さぬ、この一瞬で──?」

 

「なんだ……!? 奴の変わりようは……!」

 

 アラクネギルディは、自分が放った光輪を断ち切られたことに驚き。ゴートギルディは、息も絶え絶えだったはずの少女の全身に、活力が漲っていることに驚愕し────そして2人とも、目の前の少女の属性力(エレメーラ)が変貌を遂げていることに慄いた。

 

「レッド!」

 

「ハート!」

 

 2人の耳朶を打つのは、共に戦う仲間の声。どちらも満身創痍だが、その瞳は勝利を確信している。

 

「くっ、ツインテール属性を究めていたとでもいうのか!? ……こうなれば、首だけでも落とす!」

 

「その力は……なんだ!? ツインテール属性を満足に扱えない貴様に、そんな力は!」

 

 この事態に、アラクネギルディは咄嗟に自らの刀でレッドに切り掛かり、ゴートギルディはブルーを捨て置いてハートに突撃するが────

 

完全開放(ブレイクレリーズ)! グランドブレイザー!!」

 

「ハートオンッ! サンシャインフィンガー!!」

 

「「ッ!?」」

 

 レッドは完全開放(ブレイクレリーズ)から必殺技を即座に放ち、ハートは再変身から素早く必殺技を発動。音速に近い速度で放たれた両者の一撃は────浅かったが確実に、アラクネギルディとゴートギルディにダメージを与えていた。

 

「ぐっ……!? き、傷が……!」

 

「馬鹿な……! 治りが遅い……!」

 

 そして両エレメリアンにとって予想外なことに、喰らった傷はDG細胞の力を持ってしても再生は遅々として進まず、それどころか細胞が焼かれていくような感覚さえ、その身に覚えていた。

 

「……俺は、まだツインテールを究めてなんていない。むしろ、まだその麓にたどり着いた程度だ……! それでも!」

 

()()はまだツインテール属性はおろか、自らの属性でさえ、未だその麓に立ったばかりよ……だが!」

 

 

「「それでも、お前たちには屈しない!!」」

 

 

 2人がそう言うと同時、突如としてそれぞれの胸から光が飛び出した。その光はまばゆく輝き、何かを包んでいる。

 

「何だ!?」

 

「この光は……!」

 

 突然の出来事に驚きながらも、2人は手を伸ばし、光に包まれたモノへと手を伸ばす。

 

 レッドの手に触れるのは、2人の少女から送られたバレッタと髪留め。

 

 ハートの指先が捉えたのは、1人の少年から送られたリボン。

 

 変身時は分解収納されているはずのそれらが今、輝く属性力(エレメーラ)を受け、進化しようとしていた。

 

(でも、これは……トゥアールに残った、僅かな日常の思い出……。それに、これは習が……)

 

(総二から送られたものを……戦いの中で使っていいのか!?)

 

 しかし、この進化を前に2人は躊躇する。それぞれ大切な仲間から送られた、日常の象徴とも呼べる物である。日常の尊さを知った2人だからこそ、その象徴を戦いに使うことに、躊躇してしまう。

 

『総二様!! 習さん!!』

 

 だが────他ならぬ誰でもない、トゥアールの叫びが、2人に響く。

 

『いいですか、属性力(エレメーラ)とは心の力です! あるがままに、心を委ねてください』

「「…………!」」

 

 トゥアールの言う通り、バレッタも、髪留めも、リボンも、それぞれが属性力(エレメーラ)の光を受け、進化を遂げようとしている。つまりそれは、他ならぬレッドとハートの2人が、進化を望んだという事に他ならない。

 

「わかった……! 2人とも、使わせてもらうぞ!」

 

「総二……お主の想いを借りるぞ!」

 

 不意な光に警戒していたアラクネギルディとゴートギルディが、再びその剣と拳を構える。

 

「辞世の句でも詠んでいたでござるか? ならば、そのまま切り捨ててくれる!」

 

「死に損ないが……! もう一度叩きのめす!」

 

 バレッタと髪留め、そしてリボンをそれぞれ包み込んでいた光が、その中に吸い込まれていく。

 そして2人が手にとった瞬間、それぞれ形を変化させ、属性力(エレメーラ)を迸らせる! 

 

「クロスプログレスバレッター!」

 

 バレッタと髪留めが融合・合体した装備、クロスプログレスバレッター。フォースリヴォンと合体したバレッターは、その光でテイルギアを新たな姿へ再生させていく。

 

「ブレイザーリボン!」

 

 ブレイザーリボンは2つに増殖。彼女のフォースリヴォンに代わってツインテールを結んでいき、解かれたフォースリヴォンはまるで天女が纏う衣のようになって、ハートの身を守る装備へと進化する。

 

「「これは…………!!」」

 

 かつてない力を感じ、思わず嘆声を漏らすアラクネギルディとゴートギルディ。その目の前で、レッドとハートは進化を果たす。

 

 破壊されたパーツは更に強靭なパーツへと変化し、さらにその肩から胸へ、背中へ、そして腕へも、新たなパーツが追加されていく。さらにレッドはそれだけにとどまらず、胸部から腹部にかけて、まるでレッドを守護するように強靭な装甲が装着される。

 

「「これが、俺(ワシ)の新たな(ツインテール)!!」」

 

「ハートライザーチェインだ!」

 

「グランドチェインよ!」

 

 赤く灼熱に燃えるテイルレッドと、黄金に光り輝くテイルハート。

 

 今、新たな2人(ツインテール)が降臨した──! 

 




2人の新形態については設定に近日中に追加します。

習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?

  • 構わん、やれ
  • 断固として拒否する
  • メス落ちまだ?
  • 習側が記憶失ってたらいいよ
  • トリニティ!
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