うん、『また』なんだ、すまない。
でも、わかってほしい。このツインテール……じゃなくて、戦闘シーンは長くならないけど、諸々の事情で次回に持ち越しという事実を。
あ、タイトルの『双対』の部分は『ツインテール』と読みます。最近頭の中がツインテールになってきたので、たぶん自身の中のツインテールと対話する日が近いんでしょうね。
──オウルギルディとの戦い、その翌日、ツインテイルズ基地にて。総二はテイルレッドに変身し、その状態でトゥアールによるコンディションチェックを受けていた。ハートとの戦いで万が一があってはいけないと、そう総二自信が判断したからだ。
「……コンディションは抜群です。これなら、ハート相手でも……」
「ねえそーじ、本当に大丈夫なの? もしハートの正体がそーじの言う通りだとしたら、なおさら……」
「わかってる。でも、今回俺はあいつを倒すために戦いに行くんじゃない。……昨日の戦いを見て確信したんだ、あいつの中には不安と迷いがあるって。だから、それを晴らすために戦いに行くんだ」
不安がる愛香に向かって、レッドに変身したまま総二は微笑みかけ、自身の決意を語る。それに対して愛香は何も言えなくなってしまうが、レッドの言葉を否定いたのは、意外にもトゥアールだった。
「甘いですよ、総二様。もしかしたら、テイルハートがエレメリアンと結託している可能性も、わずかながらあります。それに、やはりこんな戦いに総二様を出すわけには──」
「わかってるよ、トゥアール。でも、俺には意地があるんだ。だから……」
しかし、トゥアールも総二……テイルレッドの真っ直ぐな視線を受けると、黙ってしまう。惚れた弱みとはいうが、その言葉はまさにこの状況のためにあるといえるだろう。それほどに、総二の言葉と存在は、彼女達の心を容易く突き動かせるのだ。
「……わかりました! 仕方ないですね。ですが、これだけは約束してください。絶対に、無理はしないと」
「ああ。絶対無事に戻ってくるよ。……それじゃあ、頼む」
「はい……。目的地は南アメリカ、ギアナ高地。転送装置、作動!」
転送装置が作動し、レッドがギアナ高地へ飛ぶ。レッドの装着するテイルブレスを通じて、その状況や状態はトゥアール達の側からでも把握は可能だ。しかし、一度行かせてしまえば、直接のサポートはかなわない。せいぜい、役に立つかも不明なアドバイスを送るだけとなる。
「総二…………」
(…………嫌な予感がしますね。万が一の事があれば、愛香さんにアレを──)
♢
愛香とトゥアールがそれぞれに総二の無事を思うなか、肝心要のレッドはギアナ高地の中を、自身の直感に従うまま彷徨っていた。
(……感じる。あいつの属性力を……誘ってる、この先にいるんだな)
森の中を駆け抜けると、レッドの眼前には滝が現れていた。そして、その巨大な滝を挟むようにして、レッドの反対側から──テイルハートが現れた。
「……まさかお前から決闘を持ちかけてくるなんてな。意外だったぜ、テイルハート」
「これまでワシは、お主と拳と剣を交えてきた。たったの数回だがな。だが、我が心の惑いは小競り合い程度では晴れぬ…………。やるならば、こうでなくてはな!」
「かぁぁぁぁぁ……はあっ!!」
テイルハートが両腕を腰だめにし、気合の咆哮を上げると、彼女の属性力が凄まじいまでに増大した。そのツインテール属性は、現在のテイルレッドにも匹敵しうるだろう。しかし、レッドは恐れを抱くどころか、彼女のツインテール属性を大量に感じる事で、心の中で抱いていた疑念を、完全に確信へと変えていた。
「そうか……そういう事だったのか!」
「なにを得心したか知らぬが、思考にかまけている暇などないぞぉ!」
「っ!」
その防御が間に合ったのは、レッドの類いまれなるツインテールへの愛、それによって、ハートのツインテールの動きが察知できたからだろう。オウルギルディに襲いかかった時とは比べものにならないほどの速度、比べものにならないほどの気迫で迫ってきたテイルハートの拳を、レッドは瞬時に現出させたブレイザーブレイドで防ぐ。両者の激突によって周囲の空気は震え、爆ぜる属性力は滝をも押し返し、空へと舞い上がった水は、雨となって降り注ぎ、ハートとレッドを濡らす。
「くっ! ツインテールが……!」
「思考にかまける暇などないと言ったであろうが! この阿呆があ!」
「うわっ!?」
ツインテールが濡れたことに一瞬気を取られたレッドの腹を、ハートの蹴りが捉えた。流れる滝の勢いは凄まじいが、その滝を貫く勢いで飛んでいくレッド。普通なら決着がついてもおかしくない一撃、しかし、ハートはむしろ警戒心を強める。レッドの中に眠るツインテール属性……その増大を感じたからだ。
滝に打たれながら、起き上がるテイルレッド。レッドの体には熱が宿り、やがてそれは爆熱へと変わる!
「ツインテールが濡れるなら……!」
「む!」
「ツインテールを濡らす水を、蒸発させればいい! そう……俺のツインテールは…………爆熱だーーーーーっ!!!」
流れる滝の水が、レッドの周囲だけ流れていない。レッドが放つツインテールへの愛という名の熱が、ツインテールに振りかかる水を蒸発させているのだ!
「今度は……こっちから行くぞ! ハートッ!!」
「……っ! ハートクロスッ!!」
レッドはその場でブレイザーブレイドを振りかざすと、裂帛の気合いとともにそれを振り下ろす。するとブレイドの剣先から赤い斬撃波が出現し、恐るべき速度と熱量をもってハートに襲いかかった! この攻撃を前にして、流石のハートも徒手空拳では受けきれないと悟ったか、レッドと同じく自らの武器を現出し、斬撃を受け止めた!
「なら……もう一撃だーーーっ!!」
「馬鹿な!? このテイルハートが!」
しかし、ハートが全力の一撃を受け止めることを、レッドは予測していた。だから、ハートの防御を確認した瞬間に、次の斬撃波を放つ事が出来たのだ! これには流石のハートも耐えきれず、驚愕の声をあげて膝をつく。それでもなんとか、斬撃波を逸らせはしたが……!
「ぐっ!? くっ…………」
『!? 総二様……あのテイルハートの姿は!』
膝をついたハートの姿、その髪を見てトゥアールは衝撃の声をあげる。何故なら、ハートの髪はツインテールでは無くなっていたからだ。そう、ハートはレッドと異なり、フォースリヴォンそのものを布状の武器として使う。だから、ハートクロスを現出させてしまうと、ハートはツインテールで無くなってしまう。そうなれば、テイルギアと同じなら変身は解除されてしまうはずだ。しかし、そうはならなかった。
「そうか……。ハート、やっぱりお前は、ツインテール属性で変身してるわけじゃないんだな! だから、ツインテールが解けても変身が解除されないんだ!」
レッドの言う通り、トゥアールの観測結果に反して、ハートは変身とその維持に、ツインテール属性を用いてはいなかった。戦闘には何故かツインテール属性を用いてはいたが、それは彼女本来の属性力ではない。
「…………気づいておったか、テイルレッド。ならば、ワシの心の迷いも見抜けよう!」
「……お前、もしかして自分の属性力に……自分自身のなにかを好きだって気持ちに、疑問を抱いてるのか? それとも、迷っているのか!?」
「……スゥ──…………」
「答えろ! テイルハート!」
レッドの問いを前にして、ハートは目を閉じ、深く呼吸を行う。その心は止まった水面のように穏やかで……しかし、その心の底には泥のように溜まったものがあった。
(……! ハートの雰囲気が変わった! これが本来の属性力か……!?)
「……そうだ。これが、ワシ本来の属性力……
「……この属性力は!?」
レッドが感じたハートの属性力……自然愛属性、それは異様なものをレッドに感じ取らせた。
「マスター……字面からはなんの属性力かわからないな……」
「教えてやろう。それは、自然を愛する心……。そしてその自然とは、そこより生まれたもの……つまりは人間もその対象のうちよ。だからこそ、ワシはツインテール属性をも扱えたのだ」
そう、ハートは複数の属性力を扱っていたわけではない。彼女の属性力は地球自然より生まれた全てのものを愛し、それを害するものを憎むことによって生み出される。だからこそ、ツインテールもその対象となっているのだ。
無論、それだけではツインテール属性は扱えない。ハートがツインテール属性の力を扱えているのは、彼女の両親がツインテール好きであり、無意識のうちにそれに影響されたのもある。しかし、レッドはおろか、ハートでさえも今はまだ、自らの中にあるツインテール属性の萌芽を知らなかった。
「でも……なら、ならなんでお前の属性力はこんなにも……!」
「……それは「それは、貴様の心が弱いからだ」……何奴!?」
「属性力のぶつかり合い……その気配を感じて来てみれば、テイルハート、まったく、まったく期待外れだなお前は」
それは、突然だった。まるで夢の中に現れる幻影のように、ハートとレッドの前に唐突にそのエレメリアンは……ゴートギルディは現れた。その山羊のような外見は、一見すれば普通のエレメリアントなんら変わりがない。しかし、その全身に漲らせる異様な属性力のオーラは、ハートとレッドが警戒心を通り越して、危機感を抱くほどだ。
「貴様は!?」
「名乗ろう。我が名はゴートギルディ! 首領様より直々にテイルハートの調査を命じられたが……どうやら俺の眼鏡にはかなわなかったようだ」
「言ってくれるではないか!」
ゴートギルディに二の句を告げさせまいと、ハートは一瞬で自らのツインテール属性を練り上げる。そしてゆらゆらと舞うような動きと、オウルギルディに叩き込んだ時以上の威力をもって、自らの属性力をシープギルディに流し込んだ!
「デッドリーウェェェイブ!!」
「……なるほど。ドラグギルディの部下を瞬殺しただけの事はある。だがっ!」
しかし、ゴートギルディには通用しなかった。むしろ彼は自らに打ち込まれた属性力をも取り込み、そのオーラを増大させてしまった!
「馬鹿な!?」
『あり得ません! 無効化するならばともかく、吸収するなど!』
「わからぬか? ならば教えてやろう。俺は生まれつき数多の属性力を持っている。エレメリアンならば、ツインテール属性に加え、複数の属性力を持つなどままあることではあるが──俺はその桁! 性癖の数が違う! それ故に、あらゆる属性を受け入れることが可能なのだ! 純粋な属性力のみによる攻撃……それは通用しない! そしてテイルハートにテイルレッド、貴様らでは俺は倒せない!」
そう高らかに宣言すると、ゴートギルディはその羊の如き体毛に覆われた体躯を揺らめかせる。そして次の瞬間、その巨体はハートの背後に現れていた!
「ハート、後ろだっ!」
「遅いっ!」
「ぬうあっ!?」
自身がレッドに放ったものより遥かに痛烈な一撃が、ハートを襲った。それでも咄嗟の防御態勢をとれていたのは、もはや本能だろう。だがハートの身体はゴートギルディに比べて小柄だ。その身体は防御のうえからでも宙に浮き、崖に向かって吹き飛ばされてしまう!
(い、いかん! これほどの速度で崖に叩きつけられれば──っ!?)
「うおおおおおおおおおっ!!」
戦闘不能──それをハートが覚悟した瞬間、崖と彼女の間にレッドが割り込んだ。テイルギアには短時間の飛行能力があり、それを用いたのだ。レッドは全力で飛ぶと、ハートの身体を彼女よりも小さな幼体で抱き抱え、地面へと墜落した。ハートもレッドも地を転がるが、崖に叩きつけられるよりはマシだろう。
「ぐっ……レッド! なぜワシを助けた!?」
「なぜって……。あんな不安そうな属性力を発しておいて、言うことかよ!」
「不安……不安だと!?」
「ああ! ……お前の属性力を感じて、わかったよ。お前は心のどこかに迷いとか、不安を抱えてて……! それが障害になってるんだ!」
「…………!」
(人間もまた自然の一部! それを排除しようなどと、愚の骨頂!)
レッドの言葉を聞いて、ハートの脳裏に浮かんだのは、かつての愛弟子ドモンの言葉だった。
『人類もまた自然の一部』……この言葉は、ハートの中に深く刻み込まれていた。しかしそれ故に、その人間を排しようとしたという事実もまた、ハートの心に暗い影を落としていたのだ。
『自分は、人を排除しようとしていた……。ならば、いつか自然をも害する存在になってしまうのではないか』。この考えこそが、ハートの属性力を蝕む不安の正体だったのだ。
「そう……人類もまた自然の一部。だが、ワシは……!」
「ハート! おい、どうしたんだ!?」
「話は終わりか? ハートにレッド……! ならば仕留めてやろう!」
動揺し、動きの止まるハートと、そのハートを気遣ってしまうレッド。2人の隙を見逃すゴートギルディではなく、彼は自らの全身に属性力のオーラをみなぎらせたまま、2人に向かって駆け出した!
「っ!? サンシャインフィンガー!」
咄嗟に迎撃としてサンシャインフィンガーを放つハート! その右手に爆熱的なエネルギーをたたえ、手刀のようにして、ゴートギルディに向かって跳躍する! だが、ゴートギルディはなんとハートのサンシャインフィンガーを、上体を地面スレスレまでに反らすことで、躱しきった!
「なんだと!?」
「ふううう……はあっ!」
「ぐおっ!」
「うわっ!?」
『総二様!』
『そーじ!』
今度はその無防備な胸部に、ゴートギルディの拳が直撃する。再び飛ばされたハートは射線上のレッドに激突! そのままレッドも巻き込んで、背後の岩壁に衝突した!
「ぐっ、がはっ………こ、このハートをここまで追い詰めるとは……!」
「つ、強い……! こいつ、これまで戦ったどんなエレメリアンよりも、強い!」
「言っただろう、テイルハートにテイルレッド! 貴様らにこの俺は倒せないと!」
さらに属性力をオーラとして高め、2人を威圧するゴートギルディ。複数の属性力が混ざったそのオーラを受けて、ハートとレッドは自身の肌だけでなく、心までひりつくような感覚を覚えた。
「レッド、手を貸してはくれんか。今のワシ1人では……悔しいが、奴の打倒は不可能!」
「当然だ! 俺は今日、そもそもお前と戦うためじゃなく、お前の中の不安を晴らすために来たんだからな!」
「なに……!?」
「話は後だ! なにか策があるなら、やってくれ!」
「策ではなく、力押しだが……合わせろ、レッド!」
「応!!」
『これは!? ツインテール属性の共鳴……! 危険ですが、これならば!』
瞬間、ハートの属性力が増大し、レッドのツインテール属性と共鳴を起こし始める。共鳴するツインテール属性はまさに
「ぬうっ!? なにをするつもりだ!」
「超級! 覇王! 電影だぁぁぁぁぁんっ!!」
ハートがその場で猛烈に回転! その回転は嵐となり、雷を纏ったエネルギー体となる! 自らの身体に雷を纏い、覇王のごとく、眼前の敵ことごとくを打ち破る奥義……これぞ流派東方不敗の奥義が一つ、超級覇王電影弾なり!
「打てっ! レェェェッド!!」
「おおう!
そして、超級覇王電影弾はこの技に負けず、打ち出せる者がいれば倍に倍を重ねた威力となる! ハートとツインテール属性を共鳴させたレッドは、自らの武装……ブレイザーブレイドを
「「いくぞっ!! 超級覇王……日輪だぁぁぁぁぁんっ!!」」
そして、テイルレッドの炎を纏ったハートは日輪となる! 炎と雷、まさにツインテールが如く双つの力をもって、レッドに全力で打ち出されたハートは、絶叫と共にゴートギルディに激突した!
「うわああああああああああああ!!!」
「こ、この力は……!? ぐ、ぐおおおおおっ!!」
──爆発! それが巻き起こり、火柱が上がる。ゴートギルディは炎の中に包まれ、ハートは有り余るエネルギーを自らのうちに取り入れ、レッドの元へと舞い戻った。
「やったな、ハート!」
「ああ……しかし…………」
「っ!? 仮面が……!」
しかし、この一撃の代償は少なくなかった。ハートのテイルギアの破損はもちろんのこと……その仮面が砕けてしまっていた。そして、レッドは見てしまった。その仮面の下に隠れた素顔を。
「やっぱり……習、さん………って、あっ! い、いや違うんだ、これは──」
「いい。ワシも、お前との戦いで感じていたものと、同じものを総二にも感じていたからな……。お前の正体は、さっきお前の属性力を受けることで感づいたわ。だが、その話は後だ!」
『総二様! これは──嘘!? ゴートギルディの属性力が、どんどん強まって……!』
「なんだって!?」
「……前言を撤回させてもらおう、ハート、そしてレッド! これより俺は貴様らを──我が生命を脅かしうる強敵として扱おう!」
──その姿は、まさに絶望の化身、地獄に君臨する悪魔のようだった。
その雄々しき二本角さえも、焦げ付かせながら──それでも、ゴートギルディはその両脚で、その体躯で、自らを支え、立っていた。
「……日輪弾でも、倒せなんだか…………っ!!」
「わかる……わかるぞ、ハート。先ほどの一撃、貴様の全霊だっただろう! だが、見よこの体躯を! 俺は全身の体毛をパージさせ、それによって貴様の炎によるダメージを最小限に抑えた! これぞ、俺が持つ属性力のひとつ、
「散髪属性……!?」
ゴートギルディの言葉を聞いて、レッドは無意識のうちに自らのツインテールを抱きしめた。自身のツインテールを切られるかもしれないと恐れたためだ。
「案ずるな、テイルレッド!
そうゴートギルディが言い放った瞬間、彼の姿がかき消え、瞬きよりも速く──その巨腕が、レッドとハート、両者を吹き飛ばしていた。
「「ぐああああああああああっ!!」」
『体毛をパージして、速度を!? なんて速さ……! 総二様、離脱を! このままでは勝てません!』
「させるか! 喰らえっ!」
レッドとハート……2人の戦士といえど、消耗しきった今、幹部級のエレメリアンには太刀打ちできない。トゥアールが歯噛みする間にも、レッドとハートはその装甲を次々に削り取られていく。
「逃げようとしても無駄だっ!! 俺の
ゴートギルディの言葉に反論する余裕さえ、今の心に迷いを抱えたハートと、疲れ切ったレッドには存在しない。彼女達にいま出来るのは、座して死を待つこと、それのみである──。
♢
そして、この光景を観束家地下の基地にあるメインルームのモニターで見ていたトゥアールと愛香は、血相を変えて慌てていた。
「そーじが! そーじが!! トゥアール、あんたなんとか出来ないの!?」
「…………っ! やはり、こうなってしまいましたか……! 嫌な予感は、ありましたが……! 当たってほしくは、なかった……!」
コンソールの上で拳を握り締めるトゥアール。彼女の身体は震え、その唇からは血が滲んでいた。
「トゥアール……!?」
苦渋の決断──その気配を感じ取った愛香に、トゥアールはあるものを手渡した。
「……!? トゥアール、これって!」
「テイルブレス……。前に言いましたよね、もう1人、この世界には変身候補者がいると。それが、愛香さんなんです」
「で、でも……! 嘘! この世界に2人しか……って、言ってたのに……出来過ぎじゃない!」
「同じツインテール属性を持つもの同士、引かれあった……とも考えられます」
「ツインテール……属性……」
そう、かつてトゥアールは総二と愛香に、もう1人テイルギアを扱える適格者がいることを話していた。その時のトゥアールによれば、その適格者は悪魔のような蛮族という話だったが、その蛮族こそが愛香だったわけである。
「……とういうか、ちょっと待って、トゥアールあんた、前に蛮族とかなんとか──」
「えっ事実でしょう?」
愛香の言葉が終わる前に、真顔で彼女の蛮族性を断じるトゥアール。その頬に鉄拳もかくやというほどの愛香の拳が突き刺さった。
「おごごご……」
「……確かにあたしは蛮族かもしれないわね。でも、それだけじゃないんでしょ? あたしにブレスを渡さなかったわけ。というか、それだけと思いたくはないわ」
「……愛香さんを、危険に巻き込みたくはなかったんです。この世界で出来た、初めての大切な友達ですからっ……!!「本当は?」えっとー…………いえ、照れ隠しにふざけている場合ではありませんね。……あなたのためではありません。総二様が、悲しまないようにするためです」
てっきり、茶化したようなふざけた答えが返ってくると思っていた愛香は、硬く握り締めた拳の行き先がなくなってしまったことに呆けてしまう。その間にも、トゥアールの独白は続く。愛香を蛮族と断じた時よりも、はるかに真剣な表情で。
「もしも、もしも愛香さんが負ければ、愛香さんのツインテール属性は失われてしまうでしょう。そうなれば、総二様は悲しみます。これ以上なく。だから──」
「だから、渡さなかったっていうの? ……なーんだ、そんな理由? 心配して損したわ」
「そんな理由……って。あなたは怖くないんですか!? 自分のツインテールを……総二様との絆を失うことが! あなたのツインテール属性は、自分のためのものではないでしょう!?」
愛香の発言に、トゥアールはこれまでにないほどの剣幕と必死さで彼女に詰め寄った。総二のためとはいうが、それだけでここまで必死にはなれない。トゥアールは恐怖しているのだ。この世界での友人を……愛香を戦いに駆り出すことと、その結果起きる最悪の結末を想定して。
「怖いわ……恐ろしいわよ、私だって。この髪型ともう何年付き合ってきたと思ってんの? それを奪われるなんて、怖いに決まってる」
「っ、だったら!「だけど!!」!?」
「だけど──だけど私は、そーじがツインテールを失うことの方が怖い! あいつが無事に戻らないことの方が怖い! だから──!」
……トゥアールにはわかった、わかってしまった。愛香の決意が本物であるということが。彼女と同じ男に惚れたからこそ、その男とともに戦いたいという気持ちも、彼を守りたいと思う気持ちも、痛いほどトゥアールにはわかってしまった。
「愛香さん、あなたは本当に、ツインテールを失うことが──」
「くどいわよ、トゥアール。それに……あたしがもしもツインテールを失っても、そーじは悲しんでも……あたしを嫌いにはならないわ。だって、優しいもの。……あんただって、それはわかってるでしょ?」
「……愛香さん、あなたよく、『ずるい女』だって言われません?」
「──言われないわね。少なくとも、あたしが覚えてる限り、そんなこと言ってきたのはあんたが初めてよ、トゥアール」
「……そうですか、じゃあ、私は愛香さんの初めての女ってことですね」
「なによそれ。……それで? レッドとハートの戦闘場所には行けるのよね?」
「もちろんです。この天才トゥアールちゃんを侮らないでください」
この時、トゥアールは内心で愛香に嫉妬していた。
なぜ、私にはツインテール属性がないのか。
なぜ、私はツインテールを結べないのか。
なぜ、私は総二様とともに戦えないのか。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ──トゥアールの天才的な知能でも、答えの出せない疑問ばかり。
(ああ、でも、だからこそ──)
「──それじゃ行ってくるわ、トゥアール」
「ええ、変身コードはわかってますね?」
「もちろん、伊達にあいつの戦いを見守ってきたわけじゃないもの」
そう言うと、愛香は右手をゆっくりと握り──まるで清らかな乙女が愛を誓う時のように、穏やかな気持ちで、しかし語気は勇壮に、その言葉を口にした。
「──テイルッ……オン!!」
愛香の体を青色の光の帯が取り巻き、やがてそれは繭状に形成され、愛香の肢体を輝かせる。その輝きの中で、愛香はまるで祈るような
だが、彼女は神には祈らない。祈るのは、願うのは、ただ自分のツインテールに対してのみ。
明鏡止水──その無我の境地を超え、ただ一つを思い、雑念を捨てた今の彼女は、無我を超えた無一へと達していた。
「どう? 似合う?」
「ほんっと〜〜に、似合ってませんね! 特に胸の部分が!」
「……帰ってきたら、鉄拳ね! それじゃ、行ってくる!」
その顔に満面の笑みを浮かべて、愛香……いや、新たなるツインテイルズの戦士は、地下基地に設置された空間跳躍カタパルトへ駆ける。そこで彼女の体は弾き飛ばされ、極彩色の光を抜けると、戦場へと降り立つのだ。
(そう、だからこそ──愛香さん、あなたに私のテイルブレスも、総二様の隣で戦うことも、任せられます)
トゥアールより愛香へ、今この瞬間、彼女の祈りとともに──戦士の魂は受け継がれた!
♢
『総二様、いま援軍がそちらに向かっています、それまで耐えてください!』
「援軍!? ──わかった!」
(でも、正直きついな……!)
ハート、レッドの両戦士と、ゴートギルディの戦い──それは新たな局面を迎えようとしていた。
「ぬうおおおおおおおおおお!!!」
「なるほど、なるほど、なるほどっ!! この俺の攻撃領域の外へ出るのではなく、あえて飛び込む……あまりに幼すぎるものはさすがに我でも愛せない! それと同じように、我の懐へ飛び込もうと言うわけかっ! テイルハートォォォォ!!」
あまりに速く、そして苛烈なゴートギルディの攻撃──しかし、そこに突破口がないわけではない。
あえて攻撃の嵐の中に飛び込み、至近距離で戦闘を行う──1人では一撃離脱で対処されるが、二人ならば、ゴートの動きを制限しつつの攻撃も可能!
「ハートだけじゃないっ! 俺もいるぞっ!!」
「レッド、貴様も……! なるほど、これは後でダークグラスパーに叱られるやもしれん! 『お前の眼鏡はそこまで曇っていたか』とな!」
「誰だ、それっ!」
「同僚だ!!!」
言葉を交わしあいながら、加速していく熱と激しさに置いていかれないように、ますます熱くなっていく三人の戦士。この地球大地に刻み込まれるだろう一戦の中、レッドは自らの不甲斐なさを恥じていた。
(ハートは、技でなんとかしてる……でも、俺にはゴートギルディを一撃で仕留める攻撃力も、あいつを追い越せるスピードもない……! これじゃ、いつまでたっても、あいつを倒せない!)
「どうしたどうしたテイルレッドォ! 勢いが落ちてきたぞ! ハハハハハ!!」
「っ! 言ってろ! 俺のツインテールは……まだこんなもんじゃねええええっ!!」
ゴートギルディの挑発に応じ、テイルレッドの属性力が増大。そのスピードが大きく上昇する!
「なんと! まだ加速するか!」
「うう、おおおおおおっ!!」
(!? あれは!)
その時、ハートはレッドの右手の甲が赤く光るのを目にした。いや、全身がツインテール属性によって赤く光っているのだが、そこがひときわ赤く輝いていたのだ。
「レッド──それはっ!?」
「ほう、余所見する暇があったとはな!」
「!!」
「ハートッ!」
ほんの一瞬、レッドの輝きに気を取られたハートは、その隙を見逃さなかったゴートギルディに殴り飛ばされる。なんとか防御は間に合ったが、片膝をつくハート。そのハートに対して駆け出そうとするレッドだったが、その前にゴートギルディが立ちはだかる!
「元々、俺の任務はハートの実力調査のみだったが……ここまで楽しませてくれた礼だ! 俺の全霊でもって、お前たちを倒してやろう!」
「上から目線で語るなよ! まだ……まだだっ! そんなもんじゃねえだろ、俺のツインテール!」
「……これは! このツインテールの高まり……まさか、まだ先があるといのか!?」
ゴートギルディの挑発に対し、その感情をみなぎらせて応えるレッド。そのツインテール属性は更なる高まりを見せ、流石のゴートギルディも驚愕を禁じ得ない。だが…………
『いけません、総二様! それ以上は──ギアの方が耐えきれません!』
「っ!? ぐっ……ううっ!?」
そう、レッドのツインテール属性は間違いなく最高のもの。だが、テイルギアの方はそうもいかない。独自の進化機能を備えているとはいえ、いきなりこれまでの倍、さらに倍と属性力を高まらせ続けては、戦いで酷使されたテイルギアでは、その過負荷に耐えきれないのだ。
「…………どうやら、我らの技術であろうと貴様のツインテール属性、その高まりには耐えきれぬか」
『……っ!』
「我らの技術……? お前、なにを…………」
「……このゴートギルディ、容赦はせん! 貴様の動きが止まったというならば──全力でもって、その鎧を打ち砕くまで!」
ゴートギルディはその属性力を練り上げ、一つの巨大な球体とする。その塊を見た瞬間、レッドもハートも、自らの背筋に悪寒が走るのを感じた。
──やられる!!
「これで、終わりだ! テイルレッド!」
「レェェェッド!!」
「ハート……!?」
ダメージのため、その場から動けないレッドには、ゴートギルディの放った属性力から逃れる術はない! それを悟ったハートは、残った力を振り絞り、跳躍! せめてレッドだけでも守るため、その幼い体躯を抱きしめた!
「ハート、どけ! お前まで──」
「ならん! キング・オブ・ハートの紋章……それが、お前に宿っているというなら、ワシは……!」
「え……!?」
「ハート、レッド! 諸共に消えろ!」
レッドがハートに対し、彼女の発した言葉の意味について聞こうにも、もう残された時間はない。ゴートギルディの放った属性力……エネルギーの球体は、レッドとハートに──
「させないわよっ!」
「!? 何奴!」
「ブレイクレリーズ!」
「エグゼキュート……ウェェェイブッ!!」
──着弾する、その直前! レッドの背後、つまりはゴートギルディの真正面から青い閃光が飛来した! いや、それは閃光ではない。槍だ! 水流を纏った槍が、まるで矢のようにして投擲されたのだ!
そして放たれたその槍は、ゴートギルディの属性力と拮抗し……相殺! ゴートギルディの放った属性力の球体は消え、弾かれた槍は宙を舞う。
「はっ!」
そして、宙に弾かれた槍は──太陽を背に、1人の戦士の手に取られた!
「くっ! 眩ゆい……!」
「よっ……と!」
槍をキャッチし、戦士はレッドとハートを守るようにして、ゴートギルディの前に立ちはだかる。
その、戦士の名は──
「ええい、貴様は何者だ!?」
「あたし? あたしは──ツインテイルズ第3の戦士!」
「テイルブルー! 死にたいなら、かかってきなさい!」
テイルブルー……愛香は自身の武器、水の槍ウェイブランスを片手に、ゴートギルディの気迫にも負けず、真っ直ぐに叫ぶ。
「あい、か……?」
「待たせてごめんね、レッド。それと、今は『ブルー』よ」
「……テイルブルー……ワシは…………」
「いいの、わかってるわ。……まあ、ここは任せときなさい。さっさと片付けて──」
ゆっくりと、ブルーはまるでハートとレッドを落ち着けるように、勇気づけるようにして言葉を紡ぎ──ウェイブランスの穂先を、ゴートギルディに突きつけた。
「──みんなで一緒に、帰るわよ。私たちの学園にね」
お前の深層意識──なるほど、ツインテール(マリキータ並感)
最近属性力の設定が死ぬほど便利すぎて、俺ツイってたいがいどんな作品とも合うなと思いました。キン肉マンなら友情パワーも属性力の発露とこじつれられるし、なんならツインテールにもこじつけられる。仮面ライダーでもアギトとか、俺ツイ原作でも究極のツインテールは宇宙を揺るがす力なので、アギトの力もツインテールということにしましょう。つまり人間はみんなツインテール……?
あと、ジオウも合うかな? ジクウドライバーはウォッチを2つ刺せる…………これぞまさにツインテール……ウォズの口上も相性がいい……。
みんなも、俺ツイ×自分の好きな作品のクロスを書こう! 今ならツインテールとお好きな原作キャラTSもついてくるぞ☆
習と総二のデートって(番外編以外で」見たい?
-
構わん、やれ
-
断固として拒否する
-
メス落ちまだ?
-
習側が記憶失ってたらいいよ
-
トリニティ!