薄暗い部屋に白い木片のような物を組み合わせた椅子に座る人物が1人。
その椅子は所々に髑髏が埋め込まれており、白い木片のように見えたそれは人骨だった。しかしながら、細部にまで細かい意匠が施されたこの椅子は無数の人間がこの椅子に座る人物に搾取されていく様を表しているかのようだった。
文字通り、
『あぁ、並び立つ者が居なくなると退屈だ。』
そう、我らが『
彼はついこないだまで5代目『
『
つまり、そんな『
無数の個性を持つ『
しばしの思考の後、『
その表情は悪戯を思いついた無邪気な子供のように純粋で、この世の悪徳の全てが詰まった瞳で、個性が広く波及した現代医学においても禁忌とされる『神の領域』に踏み込んだ一言を放つ。
『そうだ。
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とある町の郊外にある病院『ツバサ医院』。
医院長は若いながらも評判も良く通常の医療行為に加えて、地域の子供たちの個性診断なども対応した医院である。
時間は午後3時。
学童が帰宅後に体調不良を訴えて外来としてやってくる一日の終わりのピークの時間帯にも関わらずその日は診察客が来ず、不審に思い医院長が看護婦を呼ぼうと廊下に出ようとしたところで進路を塞ぐようにして立っていた巨漢の男にぶつかった。
「あぁ、すいません。外来の方ですか?待合室はあちらですよ。」
『大丈夫、君に用があってきたんだよ。医院長……いや、『ドクター』とでも呼んだ方がいいかな?』
「…――ッ!? あなた、どこでその名を!?」
『
警戒を露にする医院長を気にも留めずに巨漢の男は我が物顔で診察室へと入っていく。
そして、部屋の奥の本棚にまとめられたカルテを指でなぞりながら『ドクター』に語り掛ける。
『ふむ……いまではこんなにも多くの人を助けているようだけど、その手はいったい何人殺したんだい?』
「いくら欲しい?」
後ろ暗い過去でもあるのか、医院長は巨漢の男に向かって侮蔑を込めて金でその口を封じようとする。
しかし、男は全てを許す様に、蟲毒のように陰湿で甘い誘惑を放つ。
『君が軍に雇われて『個性』について人体実験していたことなんてどうでもいいよ。』
『君は医者としてではなく、一人の科学者として『個性』という物の謎を知りたかったんだろう?』
『モチロン、その影には多くの試行、モルモットの犠牲があったんだろう。「人道に反する」なんてバカみたいな理由で計画が凍結されなければ、今頃は『個性』の謎が解明できてたかもしれないのに。』
『その手で犯してきた非道の数々。むしろ、僕はその実績を高く評価したい。』
『何故、『個性』は生まれた?』
『何故、『個性』は人間にしか宿らない?』
『何故、『個性』は人体から生み出せない化学式のモノを生み出せる?』
『『
『その疑問に答えるシンプルな方法を君はやっただけだ。』
『
『分かりやすくていいじゃないか。壊してみて、中身を確かめて、その規則性を辿る。これを何千、何万通りもこなせば答えが見えてくると思ったんだろう?』
その言葉に医院長は『ドクター』として活動していた、この国に来る前にいた国でしていた実験の数々を思い出す。その記憶を書き換えるかのように、この国に来てからはより良く患者に寄り添うように努めてきた。
過去の贖罪をするかのように。
『醜い本当の自分』を隠す様に、善良な医師の皮を被って紛れていた。
しかし、この男によって凄惨な過去は肯定され、『醜い本当の自分』が認められたかのような安心感に包まれている。気が付くとその視界は滲んで男の像がぼやけていた。
男は手を『ドクター』に差し出し、囁く。
『なぁ、やりたいことをしよう。僕が全部手伝ってあげる。』
『手始めに……そうだな。
暗闇の中、強く輝く街灯にに惹かれる虫のように『ドクター』はその手を黙って取った。
ここに最悪と最悪が手を取り合った。
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数か月後。
無数の実験器具と実験体に囲まれながら、『ドクター』はその狂相を歪めて歓喜に打ちひしがれていた。
そして、報告を聞いた『
『やぁ、『ドクター』。成功したのかい?』
「おぉ!やっと来たか!無論、成功したぞ!かつてのこの国、最強の男の複製に!!!」
古今東西、今も昔も変わらず、その時代、地域に『最強』は存在する。古くは神話の時代からヘラクレス、中国大陸では項羽や呂布、など名前を挙げればきりがないであろう最強論争だが、『
培養カプセルから取り出され、手術台に寝かされた清廉な顔つきをした男を『
そこには髪や髭が伸び切り、爪でさえも長く渦を巻くように伸びた、文字通り数十年肉体を維持したままの姿で成長をした男が横たわっていた。
『へぇ、これが天下無双と呼ばれた剣豪『宮本武蔵』か。随分と……修羅場を潜ったことの無さそうな甘い顔をしてるね。』
「バイタルサインは至って健康そのものなのに、どうしてか目覚めん。だから、別の方向からのアプローチをしようと思ってたんだ。……つまり、キミの個性で何とかなりそうかね?」
『ふぅん、じゃあ、この呼び覚ます個性を試してみようか。普通は寝ている人間を無理やりに目覚めさせる没個性なんだけどね。こんな仮死状態の人間には試したことが無いから使ってみるよ。』
そう言って『
みるみるうちに『宮本武蔵』の相貌は変化していき、眉毛が抜け落ち体中に傷が現れ、閉じられた双眸は歪に吊り上がり禍々しいものへと変わっていった。
その様子を『
そして、『宮本武蔵』がその両目をカァッと見開く。
斬ッッッ!!!
『……いいね。』
「……え?」
その一瞬で、『
『ドクター』は思わず自分の首に手を当てて先ほどの光景の真偽を確かめた。無論、その肌にはかすり傷一つなく、しっかりと繋がっている。
しかし、あの一瞬。
『ドクター』は確かにその首筋から吹き出す温かな血液、視界の端に掠める己の髪、そして頭部を失いただ屹立する己の胴体を幻視した。
手術台の上にいる『宮本武蔵』が手をついて起き上がる。
「スマンな、お二方。つい切ってしまった。……ところでここは何処だ?」
この瞬間、神をも畏れぬ所業。
失われたはずの人体の複製は成功した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
メインの方がシリアス続きでギャグに逃げようとしてこの作品の続きを書いていたら勝手に『
最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m
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英雄と敵の二重生活
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『風見幽香』な私。
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『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
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個性:斬島