『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね   作:毎日健康黒酢生活

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刀の幻影が見えるって?お前正気か?

目覚めた『宮本武蔵』と『AFO(アホ)』が見つめあう。

先程は無意識に切ってしまった『宮本武蔵』だったが視線が合ったその刹那、『AFO(アホ)』の姿を見て垣間見えた(イメージした)もの、それは……。

 

周囲が小判の黄金で埋め尽くされた。

 

闇夜に怪しく艶めく遊郭の淫靡な街並みだった。

 

視界の隅では遊女が意味ありげに誘ってくる。

 

ほのかに甘く蠱惑的な香りすらイメージできた。

 

『目覚めは如何かね?』

 

「……ふふ。」

 

瞬間、またしてもイメージで『AFO(アホ)』を斬ろうとした『宮本武蔵』の身体が弾け飛んだ。

幾多の実験器具を巻き込みながら錐揉みしながら飛んでいく様はまるでロケット花火のようでもあった。

その衝撃で伸び切った爪は自ずとすべて剥がれてそこらに転がっていく。

壁に衝突するその瞬間、『宮本武蔵』は猫のように身を翻し、警戒を露に『AFO(アホ)』へと相対する。

 

『手癖が悪いね。』

 

「すまぬ、偉丈夫よ。知らずのうちに少年(ボン)に戻っていたようだ。ところで……ここは浄土か?」

 

『二度目は無いよ。一時休戦といこう、その説明がてら君の望む装備も全て揃えよう。』

 

こうして、『AFO(アホ)』に代わり『ドクター』が『宮本武蔵』に事の経緯を伝える。

AFO(アホ)』が何者であるか、ここが数世紀も後の世界であること、世界は『個性』という超常を当たり前に迎えていること、そして、『宮本武蔵(自分)』が呼ばれた理由。

しばしの沈黙の後、『宮本武蔵』は小さく唸りまとめる。

 

「つまり、偉丈夫と死合えと……?」

 

『あぁ、分かりやすくていいだろう? 

 僕を殺した暁には僕の持つ全てを君に譲ろう。人、女、金、酒、富、権力、そして名声何もかもが君の物だ。何をしても構わない。何者にも止められることの無い自由がそこにはあることを保証しよう。』

 

「死合いに必要なものがあれば私に言ってください。刀はもちろんのこと、槍、薙刀、弓矢、馬、手裏剣、毒なんでもご用意します。モチロン、公平を規する為に対戦相手には何を仕入れたかなどは言いません。」

 

そう言いつつ『ドクター』は道着を『宮本武蔵』に渡し、彼はそれを着こんだ。

死合いの説明に一転し態度が変わった『宮本武蔵』の姿に『AFO(アホ)』が尋ねる。

 

『いやはや、……これから死合うのにわくわくして見えるね。』

 

「ふむ、未熟ゆえ。込み上げる昂ぶりを止められぬ。()()()()()()()()()()。その者が何を武器として扱うのか、刀か、槍か、弓かはたまたその他か。しかし、()()()()()()()()()()。何を得手とするのか、なにが不得手なのか。先ほども、吹き飛ばされたことは分かるが、何故か見切れなんだ。それがあまりに可笑しくてたまらぬ。」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

『何が見えているか……。』

 

「ふむ、是非聞きたい。」

 

『……ただの人さ。(ロマン)というのは追っている時が一番楽しいというけど。かの『最強』、天下無双といわれた『宮本武蔵』も実際目の前にしてみると、なんと言うか……こう、不思議と昂るようなものが無い。』

 

ある種の諦観に似た、個として最高点の到達者は夢と現実のギャップに落胆を露にする。

確かに、『宮本武蔵』は脅威だ。

しかし、初撃のやり取りで理解した。幾千もの個性を宿すこの身には、かの天下無双も脅威(スリル)とはなっても命の危機(リスク)足りえないことを。

 

『あぁ、ちゃんと死合いはするから安心してくれ。初志貫徹、宮本武蔵(キミ)を作った意味が無くなってしまう。()()()()()()()()()()()()。』

 

AFO(アホ)』は両手の人差し指をそれぞれ口の端に持っていき、無理やりな作り笑顔を作って戯けてみせる。

その様子に『宮本武蔵』は空拍手を付けた感嘆を持って答える。

 

「なんと。」

 

「なんと。」

 

「なんと。」

 

「あぁ、凄まじいな。偉丈夫よ。この話の間に3度切り込んでいるが全てが失敗している。なんと強靭(つよ)き肉体よ。その身から何が出てくるのだ!?」

 

『ほら。天下無双というのに剣すら持たずに斬った斬らないなどのたまう。君はオママゴトが得意なのかね?』

 

飄々とした態度とは裏腹に声色には大きな落胆が見て取れる。

しかし、『宮本武蔵』はその落胆になんの反応も示さずその歩みを『AFO(アホ)』へと向ける。

 

「ふむふむ。ご期待に添えてないようで済まぬな。」

 

『……。』

 

自分の間合いへ『AFO(アホ)』を捉える。

やや大仰な動作で両腕を二振りの刀を持つようにして広げる。

その様子に『AFO(アホ)』と『ドクター』は大小二つの大きさの違う刃を夢想する。

息を吸い込み、後世でも有名なかの台詞を『AFO(アホ)』に向かっていう。

 

「そこな御仁!敗れたり!!!」

 

大声で威嚇をしつつ、その体は既に言葉とともに滑るようにして『AFO(アホ)』へと向かっていく。

 

そして繰り出されたのは……。

 

幻の斬撃でもなく、勢いを生かしたタックルの類でもなく、単純な蹴り上げ。

 

そう、金的である。

 

その不意打ちに『ドクター』が唸る。

 

「なんと卑怯な!しかし、合理的!睾丸、それは小さな玉・・・その認識は誤っている。睾丸とは内臓だ!脆く弱い―この上なく弱い存在。」

 

「心臓や肝臓や脳と同様に弱い・・・しかし彼等は守られている。厚い筋肉に、脂肪に、肋骨に、頭蓋骨に。」

 

「しかるに睾丸だけは精子の製造という大任を帯びている為冷却せねばならない。重大な責務を果たすため、皮膚一枚だけを纏い体外に出されておる。」

 

「もし仮に―」

 

「皮膚一枚に包まれた心臓が股間にぶら下がっていたら、戦闘時どれほどの弱みとなることか。これは超常が日常となった現代でも変わらぬヒトという種の弱点。流石のあやつも応えて……!?」

 

『済まんね。『ショック吸収』宮本武蔵(キミ)の時代にはなかったズルだよ。』

 

蹴り上げられた『宮本武蔵』の足をおもむろに掴み。

 

そして……。

 

『宮本武蔵』を振った。

 

身長六尺ほどの大柄な『宮本武蔵』を『AFO(アホ)』は無造作に、刀の素振りのように、大きな風切り音とともに地面に振り下ろし、手を離し勢いのまま叩きつけた。

室内の床は割れ、剥き出しになったコンクリートでさえも大きなクレーターに変化した。

渦中の『宮本武蔵』はその振りで脳を揺さぶられて、気絶したがすぐに来た衝撃により意識を取り戻した。

ややあって、大きく身を翻して『AFO(アホ)』へと向き直り、正座の姿勢になり、その手を突き出して静止をする。

 

「いやはや見事なり!偉丈夫よ!先ほどの無作法は失礼した!しかし、我が名は知っていても、こちらは名を存じ上げない!ここは戦さの作法!お互いに名乗ろうでは…――ッ!?」

 

()()()()()()。と言ったよ。』

 

『宮本武蔵』の名乗りも静止も止まらずにその距離を詰めて殴りかかる。その腕はひどく歪な破壊に特化した形に変形しており、その重量感とスピードを持ってして掠っただけでも常人では命が危ういものになっている。

しかし、『宮本武蔵』も()()グラつく体を上手く制御して宙に浮かぶ羽根のように『AFO(アホ)』の巨腕をいなしすれ違う。

 

そして、『AFO(アホ)』の首筋には左右一筋ずつ赤い線が引かれ、時間が経つに従い石榴の果粒のような赤が、その傷跡から流れ出す。その様子に『AFO(アホ)』は興味深そうに傷跡をなぞる。

 

『……へぇ。オママゴトかと思っていたが刀が無くても本当に斬れるんだね。傷を負うのは随分と久しぶりな気がするよ。』

 

「なんとなんと♡なんと見事だ!偉丈夫!我が奥義は『無刀』。刀なぞ無くても、道具など無くても、その身一つで全てを斬る。だが、なんだ現実(これ)は!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

『宮本武蔵』が興奮を隠さずに、戦略や次なる一手など考えずに、ありのままに感動する。

 

かつての自分が望んだ斬っても斬っても死なぬ好敵手(遊び相手)の存在に。

 

その好意(敵意)を向けられた『AFO(アホ)』も先ほどまでの遊びはやめて、1つの命の危機(リスク)として向き直る。

 

『『ドクター』、この計画は成功だよ。発想がロマンがあっていい。作る費用を考えても戦力として申し分ない。そして何より、()()退()()()()()。』

 

『ドクター』に語りかける『AFO(アホ)』の隙をつき、『宮本武蔵』は動こうとするが……。

体が動かない。

まるで周囲の空気が石膏のように固まり、『宮本武蔵』の型を作ろうとするかのように動かせない。

 

「むっ!妖術か!?」

 

『うん。『宮本武蔵』いや、……『SAMURAI』。今日から君の名前は『SAMURAI』だ。僕のことは……そうだな、頭領とでも呼んでくれ。』

 

「……。」

 

『僕は君を歓迎しよう。』

 

全く動かない『宮本武蔵』に対して、その掌を差し出す。

 

 

 

『ここが現世(キミ)の居場所だ。』

 

 

 

そして、その言葉とともに『宮本武蔵』を押し潰した。

見えない掌に押しつぶされるかのようにしてその体は地面に埋まり、暫しの抵抗の後、白目を向いて倒れた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

この件からしばらく経って。

悪の組織(ショッカー)』の戦闘員に新しく『SAMURAI』という武芸百般を修めた身の回りにあるもの全てを使いヒーローを妨害してくるトリッキーかつパワフルな一風変わった道着をコスチュームとする戦闘員が出てきた。

その戦闘員は戦さ場に大小二振りの刀を持ち大きな声で名乗りを上げてから悪事をなすという。

 

 

 

『我が刀に斬れぬものなど、あんまりない!!!』

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

どうしてこうなった。

オチの台詞を言って欲しかっただけなんだ。
すごく真面目に戦闘をしたけど、拙作はギャグだから!
本棚を見返してみて拙作の手本となるようなものが見つかりました。
そう。

『北斗の拳 いちご味』

最近ふとした時に、4作品もマルチ投稿していてどの作品から作者を知っていただけたのか気になってしまったのでアンケートいたします。ご回答いただけると読者層の把握、作者のモチベーションになる、他の読者様はどれをご覧になってるのかなど分かるので是非、お試しください。m(__)m

  • 英雄と敵の二重生活
  • 『風見幽香』な私。
  • 『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね
  • 個性:斬島
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