『AFO』はアホ、ハッキリわかんだね   作:毎日健康黒酢生活

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『進化』

とある拠点の地下深く。

AFO(アホ)』が陰でスカルミリョーネ(部下)を使って趣味の拠点改造を進めるなか。

決して華美ではない、一室。

壁にはまるで水族館のようにアクリル板を隔てた先に多種多様な魚や鮫、甲殻類が飼われている。

それを眺めるように設置されるソファに『彼女』は凭れ掛かっていた。

『彼女』は『AFO(アホ)』に連れられて人型で地上に降り立ったはいいものの、当の『AFO(アホ)』は自分の趣味に夢中で『彼女』をここ最近は放置していた。

『ドクター』も『彼女』の細胞を調べるのに忙しく、このような休憩室のようなフロアには訪れることは無い。

 

つまりは、『彼女』は暇をしていた。

 

ふぁあ、と軽く欠伸を一つ。

欠伸。

本来ならば、『彼女』の生体機能には必要のない動作だったが、『AFO(アホ)』に暇つぶし用に渡された漫画で見たキャラクターたちが暇な時にそのような動作をしていたことを思い出して真似をしてみせた。

 

すると、丁度導かれるようにしてタイミング良く背後の扉がゆっくりと開いた。

『彼女』が一瞥もくれなかった背後の扉からは、体中傷のある、歪に吊り上がった禍々しい両目に、ゆったりと袴を着流した宮本武蔵が現れた。

 

「ここにもおらぬか。偉丈夫は何処にいるのやら。そこな(わらべ)よ。こう、『すーつ』とやらを着た良く笑う大きな男は見なかったか?」

 

声をかけられてようやく『彼女』は首をゆっくりと動かして、振り返る。

不気味に暗緑色に輝く死んだ魚のような瞳で背後の男を見つめる。

 

【知らぬよ。他を当たれ。】

 

宮本武蔵の脳裏にその言葉は届いていたが()()()()()()()()()()()()()くらいの衝撃を受けた。両眼をカアッと見開き『彼女』を見つめる。

 

宮本武蔵は見た。

『彼女』のその背後に()()と同じ『底なしの漆黒の闇』が広がっていることを。

 

底なしの高さ…。

 

底なしの深さ…。

 

底なしの奥行き…。

 

底なしの…。

 

広がり…。

 

そのくせ、一歩踏み出せば、高くも低くも広くもない閉ざされた闇を感じた。

 

「いやいや、()()だな。(あやかし)よ。」

 

【あぁ、()()?囀るなよ、ゴミムシが。】

 

ソファに凭れたまま首だけで、常人ならば発狂して自死を選ぶであろう鋭い殺気を含んだ眼光がボウっと光る。

しかし、宮本武蔵はそれを少しもひるんだ様子もなく受け入れ、興奮と歓喜に全身を震わせた。

 

「これほどの畏敬、さすがに俺でも理解(わか)る。さぞ名のある神仏か悪鬼羅刹の類なのだろう。俺でも()()のは難儀しそうだ。」

 

【ほぅ、この我を斬ってみせると言うのか。面白いぞ、やってみろ。】

 

「では、お言葉に甘えよう。いろんなものを斬ってきたが、戦国でも無かった『神斬り』やってみるか。」

 

『彼女』は両腕を広げて、ソファに座ったまま挑発するようにして顎先を少しだけ上げて不敵に嗤っている。その様子はあたかも聖母や聖人のように、母親が子供の悪戯を許すように優しかった。

瞬間、宮本武蔵が足を、腰を、腕を、手首を、全身くまなく力をいきわたらせ腰に二振りあるうちの大きいほう、つまり刀を抜刀した。斬撃に遅れてやってきたその勢いは大きな風切り音と共に『彼女』の髪を激しく揺らした。

 

『居合切り』

刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で放たれる一撃。

最大の特徴は「抜く」と「斬る」の二つの動作を完全に一体化させていること。

鞘から滑らせながら抜き放つ動作をそのまま斬りつける動きに転じさせ、相手を攻撃する。

重さが1.5kgほどもある鋭い鉄の塊を、一説にはマッハに迫るともいわれる速度で相手に放つ。

ただそれだけの動作であるにもかかわらず、その威力は想像するだけでも全てを断ち切ることができることが容易に考えられる。

 

横一文字。

 

その刃はまず彼女が背を預けていたソファを容易く斬ってみせる。

 

次に、キィンと刀が鋭い音を立て、透明な壁にぶつかる。

しかし、宮本武蔵は気にもせず目の前の神か妖かを斬るために腕を振るう。

この世のあらゆる手段を以てしても破ることが難しいその透明な壁を宮本武蔵はいともたやすく斬ってみせた。

 

そして勢いのまま刃が『彼女』に迫る。

 

『彼女』の胴体を一閃、刃が過ぎ去る。

 

一瞬遅れて、『彼女』の白衣が刃の後をなぞるかのように切れ、その地肌を見せる。

 

ややあって、その柔らかな肌から暗緑色の血液のような粘り気のある液体が流れ出す。

 

流れ出したかと思えばまるで時が遡ったかのように傷口が塞がる。

 

薄皮一枚。

 

それが宮本武蔵の全力で『彼女』に負わせた手傷である。

 

少し、驚愕に染まった相貌で『彼女』は腕の()()を解除して、無数の頭足類のような触腕で背に受けた傷痕に残る血痕をなぞり、その血を口元に持っていき弄る。

なめとった口元からはてらてらと光る暗緑色の触腕がぐじゃぐじゃと蠢く。

 

「…やはり(あやかし)か。にしても薄皮一枚とは偉丈夫と同じかそれ以上か。」

 

【……凄いな。愚者以外でも我を傷つけうるか。】

 

『彼女』は感慨深く呟きながらようやく宮本武蔵に向き合うように立って歩み寄る。

無数の触手がゆっくりと宮本武蔵の頬を撫でる。

無抵抗にその触手を受け、過ぎた先にはてらてらと粘り気のあるものが宮本武蔵の頬に残る。

その液体を宮本武蔵は愉快そうに右腕の中指でなぞって拭いとる。そして少し観察した後、何を思ったかちゅぽんと口に含んでしまった。それを味わいつつ宮本武蔵は愉快に笑う。

 

「―――にしてもだ。面白いな現世(ここ)は。」

 

【あぁ、()()()。少し、外を歩こうか。】

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

夜も更けた繁華街。

繁華街の酒気を感じさせる強い風吹き抜ける。

普段ならば車の音と人の声でごった返す街中を白衣を着た癖のある短い暗緑色の髪の毛が触手のように絡み合う少女と大柄で武骨な表情の歪に吊り上がった相貌を持つ袴の男が並んで歩く。

不思議と周囲は全くの無音で、それはあたかも草食動物(弱者)肉食動物(強者)を見つけて息をひそめている姿に似ていた。

 

【オマエのその姿、愚者に渡された『まんが』とやらで見た。(もののふ)というのだろう?】

 

「あぁ、そうだ。こんななりでも腕に憶えはある。街を見れば様々な異形が歩いて見えるが、俺が斬るのを手古摺るのは偉丈夫と(あやかし)ぐらいだろう。」

 

ゆっくりと周囲を見回してみると、魚のような見た目、鳥のような見た目、腕だけが明らかに発達して見える者、機械室な見た目の者、様々に見える者たちが息をひそめて自分たちの様子を観察しているのが見える。

 

『彼女』はその光景が当たり前だとでもいうかのように、道の真ん中を闊歩する。

そして、誰からともなく独り言ちる。

 

【あの愚者は我が超えられまいと思っている能力の壁を……人間は意外と容易く超えてみせた。】

 

(もののふ)よ。我は理解した。全ては同じ可能性なのだ。我がいとし子たちも。我を傷つけてみせた愚者も。万物を全て斬ってみせると宣うオマエも。】

 

【資質と欲望が……人間をどこまでも進化させる。】

 

【その進化こそがもしかしたら悠久の時を生きる我を……。ふむ、少しお喋りが過ぎたな。忘れてくれ。】

 

『彼女』が言い切ると同時に、まぶたが厚ぼったくなり瞬きをしない、首がたるんで大きな皺が出来たまるで魚のような醜い外見の集団が腕をだらりと垂れ下げて、左右にだらしなくゆらゆらと揺れながら歩きながら2人を取り囲む。その中から周囲の個体とは一回りほど大きな者が集団から抜け出して『彼女』に膝づく。

 

「おぉ!!!我らが神よ!!!穢れが満ちている地上にいてはなりません!!!我らの故郷に戻りましょう!!!」

 

男は『彼女』の様子も気にもせず、大声で自分の意見を捲くし立てる。やがて、周囲の魚のような見た目の者たちも同調して口々に帰郷を求め祈り始める。

その様子を街の人々は関わり合いたくもないカルトを見るかのように一瞥した後、気持ち悪そうに視線を逸らす。中には走り去って逃げるような者もいた。

そして、『彼女』がその集団に手を伸ばし、何かを言いかける。

 

【雑魚が勝手に我を……】

 

言葉が続くと思われた瞬間、ヒュンと軽い音を立てて空気が鳴る。

やや遅れて、首領とみられる男の頭部が重力に従いずり落ちていく。

 

「…はっ、え?」

 

それが狂信と思い込みに満ちた男の最後の言葉であった。

なんてことはない、宮本武蔵が『彼女』に跪いていた首領とみられる男の首を斬ったのだ。

その様子はあたかも江戸時代の処刑方法「斬首」や西洋の処刑方法「ギロチン」のようにも見えた。

 

さらに数瞬遅れて、集団が首領の異変に気付き宮本武蔵へと詰めよるが、鎧袖一触、すれ違うたびに次々と魚のような頭部が、道路のアスファルトに落とされていく光景が壊れてビデオのようにリピートされていく。

 

やがて、周囲には首のない胴体と魚のような顔が一面に並んだ。

辺りが血で染まり一面が目がくらむような朱に包まれて2人だけが立っていた。

『彼女』の白衣も鮮血で真っ赤に染め上げられてしまっている。

満足げな宮本武蔵から一言。

 

「ふむ、大きな魚を斬った時に(あやかし)と同じような壁を感じたがアレに比べるとなんてことはなかったな。後はそこらの魚を捌くのと一緒よ。」

 

【何故、斬った?】

 

純粋に疑問に思ったのか『彼女』から質問が飛んでくる。『彼女』の中では『AFO(アホ)』と同じくらいこの『(もののふ)』への興味の感情が生まれていた。

その質問にあっけからんと宮本武蔵は答えてみせる。

 

『だって、(あやかし)は困っていただろう?同僚への無礼は俺への無礼だ。ならば、無礼討ちするのが当たり前だろう?』

 

その回答に『彼女』はあっけに取れれた後、ややあって()()()

 

【そうか。そうか。ならば良し。我と汝は()()だ。今度、(もののふ)に何かあったら助けてやろう。】

 

「応よ。これだけの騒ぎだ。時期に『ひーろー』もやってくる。そろそろ、偉丈夫の元に戻るか。」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

迎えに来た『AFO(アホ)』の部下の車内にて。

宮本武蔵がビクビクと縮こまりながら運転手に文句を言う。

 

「もそっと……もそっとゆっくりと……。」

 

「無理っすよ!ヒーローと警察に追われてるんですよ!?」

 

 

 

【……アホか。】

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

『彼女』の名前の公募を締め切りました。
アンケートにて気に入った名前を投票ください。

合間に描いてる拙作ですがどこに向かってるんでしょうね?(白目)

次回はギャグ?のスカルミョーネパートです。

『彼女』の名前は?

  • クトゥ子
  • ナギニ
  • SCP-2662→ニムロイ→ニム
  • 水底 治架
  • All For Me 略してAFM
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