鬼殺隊をやめてから幾何か
私も少女と呼ぶには相応しくない年齢になってきた
それでも月日は流れていく
私の人生から大切なものが奪われることはそれからは無くなり安堵する
此度、継子であったカナヲが嫁ぐ事になった
この前アオイを見送ったばかりではあったが寂しいものではある
鬼殺が必要じゃなくなった世の中になり女の子も戦わなくても良くなったのかもしれない
あの三人娘も年頃の少女となり私の仕事を手伝ってくれていた
柱ではない私は薬学の知識を生かし薬屋をいとなんでいた。剣士時代の蓄えはあるけど隠居するのは性には合わなかったから人の助けになるようにと始めた事だ
「師範、入って良いですか」
「もう師範はやめてねカナヲ」
「ならしのぶさん、…失礼します」
「綺麗ねカナヲ」
「あ、ありがとうございます」
照れ隠しに笑うカナヲ。姉さんと一緒に引き取ってからに比べ大分表情が豊かになった
「銅貨を投げれなきゃ決められなかった貴女がねぇ」
クスクス笑う
「彼のお陰かしら。まぁカナヲ御家族の方とは仲良くね。」
はいと笑いながら涙を流すカナヲ
ああ、皆は幸せをつかんでいっている
鬼舞辻無惨との激闘を勝利に収め鬼は潰えこれからは誕生しないだろう
いつ第二の鬼舞辻が現れるかは分からないから鬼殺隊制度自体は産屋敷家を中心に残るが今代の剣士達の役割は終えた
立役者の竈門炭治郎達や柱達は生き残り喜んでいる
彼以外は
姉の墓参りに来ている。命日にはかかしていなかった
「こんにちは姉さん。ついにカナヲが嫁ぎに行きましたよ。ふふっ拾った時には想像出来なかったね」
「姉さんのいう通りだったわ。恋すれば変わるって…まぁ私自身もそうだったみたいだけど」
墓石に水を掛ける。姉に話しかける
「姉さん。……彼が目覚めないまま大分立ちました。」
そう、最愛の人の宵鷺逢魔は上弦の弐の戦闘を終えた後重傷で蝶屋敷に私自身が運びました
決戦を離脱していた事は申し訳無かったが私も必死でした
なんとか一命を取り留めました
けれどいくつ待っても目覚めませんでした
身体的には大丈夫かと思いますが目覚めませんでした
「私はいつまでも待つつもりでした。こんな私を愛してくれたあの人を……でも」
『……弱気になっては駄目よしのぶ』
「…そう……ね、ありがとう姉さん」
背中を押されている気がした
幾度の季節を巡る。
私は眠る彼の側に居続けた
「逢魔くん、アオイ出産控えてるんですって。男の子か女の子ですかね。ふふっ羨ましいですね。私は女の子が欲しいですよ?」
幾度の時は巡る
「カナヲってば料理に挑戦してるらしいですよ。剣士としてはまぁ覚えは良かったけれど女子力にやや不安がありましたからね」
幾度の時は巡る
「カナヲの所三人目ですって。まぁ長男が旦那様に似てしっかり者らしいですから大丈夫でしょう」
幾度の時は巡る…
「あれからどれくらい経ちましたかね…あ、今日は綺麗な夜ですよ。窓開けますね……今は逢魔が時なんて時間ですけど。昔はこんな深夜にこうして開けれませんでしたね鬼がいて」
「すいません。ちょっと目が覚めちゃいまして……貴方の顔を見に来ました」
「ちょっと、ここにいますね」
もう一方的な声かけには慣れた。むしろしない方が落ち着かないくらい
「………懐かしい夢を見たんです」
側の椅子に腰をかけて呟く
多少老け込んでしまっている彼の顔を覗き込む
「初めて会った日じゃなくて貴方を助けても目覚めた日…目覚めていきなり手を握られて告白してきましたよね。最初はびっくりしました。助けた男の人に告白されるというのは中々ありませんしね。だから何言ってんだろうこの人はって邪険にしましたよね」
懐かしむかのように呟く
「けれど貴方はめげずにアプローチしてきましたよね。ふふっだからかな本気なんだなーなんて私もそういった経験無かったですから。周りも女子ばかりですし鬼殺隊の面々も個性的でしたから私のお眼鏡にかなう男性も中々ね」
「逢魔くん見た目は良かったですし悪くは無いかなーって……それからは私も気になり始めて…いつの間にか私の心に居座っていました」
外を眺めていると蝶が一匹飛んでいた
あれ、夜更かしはいけませんよ?
「……そんな当時の夢を見たんです」
「だから…その……そろそろ目覚めてくれませんか…?」
「声を聞かせて下さい。貴方の優しい声を聞かせて下さい。抱き締めて下さい。愛して下さい。」
「胡蝶しのぶはこんなにも貴方を愛しているのです。……もう、こんなにおばさんになっちゃいました…だから責任を取ってください」
もうだめだ。感情は決壊する。明日になったらまた頑張りますから。いつも通り笑います。声をかけます
だから今は今だけは許して下さい
「……っ」
声を抑え嗚咽する
「……………ゴメン…」
え……?
「逢魔くん…………?」
「…おはよう…………待たせちゃって…ゴメン……しのぶだよね………?」
「は、はい…………しのぶですよ…?」
手が震える。彼が…目を開けている
「……びっくりするくらい美人さんになっててびっくりした……」
「え、いや……もう、こんなにおばさんになっちゃいましたよ?」
「ううん。美人さんだ……けれど相変わらず可憐で可愛くて……」
「……バカバカバカ……逢魔くんのバカバカ……いつまで待たせるんですか……女の子の大事な時期に寝過ごすなんて……」
「ゴメン…でも待っててくれたんだ」
「当たり前です。…貴方の胡蝶しのぶですよ。」
「……宵鷺しのぶで良いかな?」
「遅すぎます。…不束者ですがよろしくお願いします」
駄目だ涙が止まらないしニヤケも止まらない
責任を取ってください逢魔くん
「……………ただいましのぶ」
線が細く弱り切った貴方はかつての優しい声で言ってくれる。待ちに待った変わらない声音
「……お帰りなさい逢魔くん」
泣き笑いで微笑み返す。
これから待たせた時間を取り戻させてくださいね
私の最愛の人
これにて完結です
しのぶさんのキャラ崩壊は許してください…