さりげなく人類最強格が異世界から来るそうですよ?   作:我楽多零號

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お久しぶりです。
最近、ありふれた職業で世界最強にどハマりしている者です。
めっちゃ勢いで書きました。
予定では、原作2巻まで、その気になったら4巻までを物語として描きます。
どうぞよろしくお願いします。



第1話:すでに心が折れそうです。

 

 

 

 

 

帰還者。

それは、高校二年生でありながら、異世界トータスに召喚され、邪神とその使徒達との世界の存亡をかけた大戦を制し、そして地球へと生還したという尋常ならざる経験を経た者達。

 

その最たる者の名を、南雲ハジメ。

かつて“無能”または“最弱”という不名誉な称号を与えられた彼はしかし、地球に帰還する為の手がかりを探す旅の過程で、“世界最強”となり、最終的には“神殺しの魔王”となった。

最愛(ユエ)をはじめとし、今や多くの者達から信頼を集めている。そんな彼には、嫁達を除けば、最も信頼を寄せている男がいた。

 

仲間からは“魔王の右腕”、“さりげなく人類最強格”、“あいつ最近自動ドアが全く反応しないんですけどマジで” 等と賞賛されるその男の名はーーー遠藤浩介。

 

 

 

 

 

 

 

 

地球に帰還して、9ヶ月以上経過した頃のことだった。

 

バチカンでの一件を経た遠藤浩介は、自室で一人、机に向き合っている。より正確に言えば、机の上に置いてある一枚の封書に、だ。

そこには、『遠藤(えんどう)浩介(こうすけ)殿』と書かれている。

 

「………手紙…だよな?」

 

そう、どこから見てもただの手紙。それ以上でもそれ以下でもない。本当に、ただの手紙だ。しかし、浩介は訝しげに首を傾げる。なんなら少し警戒しているまである。通常なら手紙を見ただけでこのように警戒するなどありはしない。

ただ、この手紙はおかしいのだ。

なにがおかしいのかと言えば、この手紙は彼の家のポストから取り出したものではなく、なんの前触れもなく、気がつけばそこに突然現れていたのだ。

 

今の浩介に全く気づかれることなく、手紙を置き去る。彼の知る限り、そんなことができるのはただ二人。

 

「また南雲がなにかしでかしたんじゃないだろうな?」

 

元の世界に帰還して以来、トータスにて『敵・絶・滅』を信条にしていたハジメはかなり丸くなった。どのくらい丸くなったのかと言うと、親しくなった友人相手に悪ふざけをするくらいに丸くなった。ただの悪ふざけならばまだいいが、魔王クオリティとなれば話は別だ。される側にしてみればたまったものではない。

手紙を開いたら、訓練用アーティファクトであるゲームの世界(遊園地のアトラクションをハードモードにしたレベルです。危険性はあんまりありません)に飛ぶ。なんてこともあるかもしれない。

もちろん確証はない。…が充分に有りうることだった。というか、すでに前科がある。

無視するという選択肢はあるにはあるが、万が一、通常にして重要な手紙だったとしたら、まずい。

ならば、全て覚悟の上で封書を開けた方がいいと判断した。

ただの手紙なら儲け。ハジメからの素敵な贈り物だとしたら、ドンマイ。

そんなことを半ばなげやりに思いながら、とりあえずハジメから貰った“宝物庫II”を身につけ、封書を開けるのだった。

 

ただ、浩介はもう少し視野を広げるべきだった。

自分を今の自分たらしめることとなる始まりが果たしてどのようなものであったかを、よく思い出すべきだった。

自分達(帰還者)が、すでに理不尽に、非日常に好かれる存在になってしまっていることを考慮すべきだった。

 

 

 

 

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』

 

 

 

 

 

「………ほぁっ!?」

 

気づけば、唐突な浮遊感。

急転直下、上空4000mほどの位置で投げ出されていた。焦って変な声をあげても仕方の無いことだろう。ついでに今のような状況でもハジメ作のアーティファクトを使えば、全く問題ないことを忘れても仕方ないことだ。

 

パラ無しスカイダイビングがいつまでも続くわけもなく、真下の湖に着水する。いくら浩介の身体が一般人より多少頑丈だとしても、4000mから水面に激突すれば即死必至だ。しかし、落下地点に幾重にもある緩衝材のような水膜によってそれは防がれた。

 

湖には大きな水柱が四つ立ち上った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うまく呼び出せた?黒ウサギ」

 

「みたいですねぇ、ジン坊っちゃん」

 

「何から何まで任せて悪いけど……彼らの迎え、お願いできる?」

 

「任されました」

 

「彼らの来訪は………僕らのコミュニティを救ってくれるだろうか」

 

「………。さぁ?けど“主催者(ホスト)”曰く、これだけは保証してくれました」

 

 

 

 

 

 

 

「彼ら()()は………人類最高クラスのギフト所有者だ、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水中にて、身体の力を抜き、浮力に身を任せる浩介の姿があった。

 

(ふ〜、マジで焦った。なんかよくわからんけど、助かったみたいだ)

 

理不尽や非常識にいつまでも囚われているほど浩介はヤワな男ではない。一旦落ち着き、水中ながら周りを確認する。

すると、浩介とは別に三つの水泡に包まれた人影を発見した。

 

(そういえば、空中でもチラッと三人の人影が見えたっけ)

 

ほんの一瞬だったが、男一人と女二人。それと………。

 

(いたいた)

 

犬かきならぬ猫かきをしながら、その努力虚しく溺れている三毛猫の姿があった。

浩介は、三毛猫をすくい上げ、諸共に水面から顔を出した。

 

浩介がひと手間かけているうちに先に陸地に上がった二人の男女がそれぞれ悪態をついていた。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。身勝手ね」

 

二人の男女が互いにフン、と鼻を鳴らして服の端を絞っている。

 

(おいおい、なんでいきなりピリピリしてんだ?)

 

いきなりどこかもわからない土地に召喚された不安感によってピリピリはするだろうが、あの二人の場合は違うだろう。二人から不安感など微塵も感じないからだ。

 

「あれ? 三毛猫?」

 

もう一人の少女は、腰ほどの浅瀬でキョロキョロと辺りを見渡している。どうやら溺れていた三毛猫の飼い主らしい。

 

「ほら、この猫あんたのだろ?」

 

浩介は少女の隣まで歩み寄り、びしょびしょの猫を突き出した。

するとーー、

 

「…?………ッ!!!???」

 

声がした方を向いたもののすぐには浩介の存在を認識しきれなかったらしい。そしてその一拍後ビクッと少女の肩が震える。

どうやら突然浩介が隣に現れたと錯覚し、驚いたようだ。

遠藤浩介は、自動ドアすら反応しない(かつては3回に1回はちゃんと反応していたらしい)ほど影が薄い男だ。そんな彼は一部の例外を除けばほぼ誰からもその存在を忘れられるのだった。……例え、神の使徒であっても。

……毎度のことながら、そのような反応をされるとちょっぴり傷つく浩介くんであった。

そんな浩介から僅かに漏れた悲しそうな表情を察した少女は、無表情ながらも少し慌てて謝罪及び感謝の言を述べた。

 

「………あ、ごめん。…ありがとう」

 

三毛猫を受け取り、少女は岸に上がった。

 

浩介もまた、それに続いた。その時、浩介は改めて周りを見渡す。

先程見えた、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。そこは完全無欠にーーー、

 

(また………異世界に来ちまったんだな…。とはいえ、()()()()()も、今更だよなぁ…)

 

自分の不注意を軽く呪いながらも、やってしまったものは仕方ないと割り切ることにした浩介であった。

 

 

適当に服を絞り終わった少年は軽く曲がったくせっぱねの髪の毛を掻きあげる、

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて」

 

(久遠、か。なんか見た目や口調といい、ちょっとした威厳を感じさせる雰囲気といい、いいとこのお嬢様なのかな?)

 

「それで。そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

「………春日部耀。以下同文」

 

(さっきの猫の飼い主。春日部っていうのか。ちょっと物静かだし、俺的には珍しいタイプの()かも)

 

「そう。よろしく春日部さん。次に、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

(やべぇ…。なんか逆廻(こいつ)、南雲と似た雰囲気を感じるんだけど…。こいつら絶対“混ぜるな危険”だよなぁ………)

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

心からケラケラ笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

我関せず無関心を装う春日部耀。

 

そんな彼らを見て、一応自分も名乗っておくべきかと、満を持して浩介が自己紹介をしようと、一歩前に出た。

 

「俺はえ……」

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

十六夜が苛立たしげに言う。浩介のことはガン無視で。

 

「いや、うん。俺もそう思うけど、とりあえず俺自身の説明をさせ……」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

飛鳥もまた()()()に同意する。浩介のことはガン無視で。

 

「うん、そうだね!だからちょっと踏みとどまって後ろ見ようか!まだ俺のじこ……」

 

「この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

どうやら一度顔や声を見聞きしているはずの春日部も浩介の存在はすでに意識の埒外らしい。

 

「……………………………」

 

とうとう黙り込んでしまった浩介は三者三様に悪態をついている様子をしばらく死んだ魚のような目をしながら眺めていた。

ホロリと、浩介の眼から光るものが落ちた。どうやら、雨が降り出しているらしい。雨と言ったら雨だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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