さりげなく人類最強格が異世界から来るそうですよ?   作:我楽多零號

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第2話:影の薄さ? 素ですが、なにか?

 

 

 

 

 

進展しない状況にフラストレーションが溜まっていく問題児三人組は、わずかながら苛立たしげだ。

相変わらず浩介の存在に気づいてないようだ。彼らはキョロキョロと周りを見渡しているわけなので、浩介を視界に捉えているはずなのだが…。

 

(うん、俺の存在に気づいてないんだよな。そうなんだよな…。分かってる。へへ、慣れてるさ。例え、今さっき対面した筈なのにすでに忘れられてたって、ぜ、全然気にしてないし?俺ってば元の世界じゃリア充だし?だから、ホント、全っ然気にしてないし?)

 

などと、浩介は自分に言い聞かせながら精神を必死に取り繕う。全然取り繕えていないが。

 

(はぁ……それにしても、逆廻の言う通り、この場に誰もいないのはおかしいよな。この召喚って要は“招待”ってわけだし)

 

あの手紙の文を鵜呑みにするというのなら、の話だが。

 

(といっても、多分、()()()()()()()()()()()がそうなんだろうけど…)

 

浩介には、優秀な聞き耳技能である[伝振]がある。空気の振動や壁の振動などから離れた場所の会話や音を拾うことができる浩介の前には生半可な隠形など無意味。

 

そこへふと十六夜がため息交じりに呟く。

 

「仕方がねぇな。こうなったら、()()()()()()()()()()()()聞くか?」

 

その途端、茂みからザザッと葉が擦れる音が漏れた。四人の視線が茂みに集まる。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気づいていたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「………へぇ?面白いなお前」

 

そんな三人に浩介は素直に感心する。

 

(やっぱこいつらもわかってたのか。なんとなく只者じゃないって気はしてたけど)

 

四人にあっさりと気づかれたせいで、隠れている側が下手と思われそうだが、実は普通の一般人なら全く悟らせることがない程度には上手く隠れていたのだ。

 

(そんな奴のことは気づいて、なんで俺の存在には気づけないんだろう……)

 

隠形Lv:素の浩介>わりと本気の茂みのウサミミさん、という誇るべきなのか、哀しむべきなのかわからない微妙な現実に、とりあえず遠い目になる浩介であった。

 

三人の殺気の籠った冷ややかな視線を浴びつつ、ウサミミさんはやや怯みながらもその姿を現した。

 

「や、やだなぁ。そんな怖い顔で見られても……」

 

「よぉし、出てこねぇんじゃ仕方がねぇ」

 

「へ?」

 

痺れを切らしたのか、十六夜は常人ではありえないほど跳躍し、ウサミミ少女の元へ着地。同時に地面を大胆に抉った。

 

(うわっ、あの手紙から察するにこの三人もなんらかの力を持ってるとは思っていたけど、逆廻ってヤツもしかして普通に俺より強いんじゃないか? 世界って広いなぁ…)

 

まるで他人事のように十六夜に対する推測をする浩介。

浩介は、別にプライドの高い人間ではない。むしろ、生来の影の薄さで、あまり周囲から高い評価を受けないせいで、基本的に自己評価が低い。いつだってとんでもない成果を出しているというのに…。

ウサミミ少女の姿が完全に顕になる。

 

「なにあれ?」

 

「コスプレ?」

 

「ち、違います! 黒ウサギはコスプレなどではなく!」

 

(ウサミミかぁ…。服装や髪色はともかく、なんとなくシアさんに似てるかな? まさかハウリア族みたいなヤツじゃないだろうな?)

 

女性陣が各々疑問系を口にしている間、彼女が着ている若干のいやらしさと痛々しさを感じさせる服装に浩介はまったく見当違いなことを考えていた。

ハウリア族とは、トータスに住む兎人族の一族のことである。かつてのハウリア族もとい兎人族は、亜人族一穏やかで、臆病な種族だった。しかし南雲ハジメの訓練(魔改造)によって、今や亜人族一危険で、最凶の、ついでにゴリゴリの厨二病種族となったのだ。

そんなハウリア族には疾影の()()インフェリナ=ハウリア(本名:ラナ、ただのラナ。大事なことなので三回言うが、ただのラナ)。という浩介の恋人がおり、将来的には浩介がハウリア族の族長になる予定なのだ。

さて、そこでなにが浩介の頭を悩ますのかと言えば、浩介の内に眠る“アレ”が関係しているのだが……それはまた後の話。

 

十六夜の攻撃をあたふたしながらも躱し、木の枝に跳び乗る。が、しかしそのすぐ後ろにはいつの間にか黒ウサギ同様に木の枝に跳び乗っている耀の姿がある。そして、追い回し始める。

 

(春日部、だっけか。女の子にこう言っちゃなんだけど、まるで猿みたいな動きだな。さっきも風上に立たれたら嫌でもわかるって言ってたし、なんか野生児というか、アニメでよくある動物に育てられた人間って感じだな)

 

浩介が耀のついて推測をしている隣で、飛鳥は空の鳥を視界に捉え、威厳ある声音で鳥達に指示した。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「え? ちょっ、わぁ!」

 

空を飛ぶ鳥は、飛鳥の指示通り、黒ウサギを取り囲み、黒ウサギはその場に落下。

 

(今、久遠の指示に鳥が機械的なまでに忠実に動いたな。ユエさんの《神言》みたいな能力ってところか…)

 

「あぅ〜痛いです〜」

 

尻餅をつく黒ウサギは問題児三人組+浩介(ただそこに突っ立っているだけ)に囲まれ、四面楚歌となる。

黒ウサギは三人とどう接するべきか冷静に考えを巡らせていると、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサミミを根っこから鷲掴み、

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へぇ?このウサミミって本物なのか?」

 

「じゃあ私も」

 

「ちょ、ちょっと待………!」

 

右耳に十六夜、左耳に飛鳥がグリップポジションをとり、左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。

学級崩壊とは、まさにこのようなカオス状態のことを指すのだろう。

 

「はぁ………」

 

そんな状況に見かねた浩介は黒ウサギに助け舟を出した。己の精神を犠牲にしてーー。

 

「なぁ、もうそろそろ話を進めてもいいんじゃないか?あんたら」

 

「「「「?」」」」

 

ピクリと問題児三人組と黒ウサギが反応。ようやく浩介の声が彼らに認識された。

 

が、その反応からの第一声は言わずもがな、である。

 

 

 

 

 

 

 

「誰だ、お前!?」

「誰、貴方!?」

「誰ですか、貴方は!?」

 

全く同時に、三者三様に「Who are you?」。

ついでに耀があ、と気まずそうに小さく声を漏らした。

ですよねぇ、と諦観に満ちた表情を浮かべる浩介。

 

「いや、そんなお前いつからそこに!?って顔されても、俺、あんたらと一緒に空から落ちてきたし、流れに乗って自己紹介しようとしたら普通に無視されたし」

 

ははっ、と乾いた笑い声をあげ、遠くを見つめる浩介。改めて、今の今まで気づいてもらえなかったことを思うと精神的ダメージがジワジワと効いてくるようだ。

 

「ええっと、その、なんか、ごめんなさい」

 

そんな浩介の悲痛な雰囲気に流石の飛鳥もしどろもどろに謝罪を述べた。

 

「へへ、いいって。よくあることだし、気にしてないし」

 

場がだんだん居た堪らなくなってきた。

 

「畜生っ、かくれんぼじゃ負けなしだったってのに!」

 

十六夜は、間近にいたはずの浩介の存在に気づかなかったことをわりと本気で悔しがっている。

 

「おいやめろ。そんな本気で悔しがるな。なんか泣けてくるから」

 

別に隠れていたわけでもないのに、かくれんぼ負けなしを自負する男に悔しがられてもただ虚しいだけである。

 

「それでは、貴方様もこの箱庭にいらっしゃったギフト保有者なのですね?」

 

黒ウサギは、浩介に対して申し訳ないと思いつつも、同士となる人間がさらに増えたことを喜んだ。

が、その言葉を受けた浩介は何故か、眉を八の字に下げて悲しそうな顔になった。よく分からない反応に、黒ウサギが戸惑う中、浩介は声音まで悲しそうにしながら尋ねる。

 

「この箱庭にいらっしゃったのかって、俺達のことピンポイントで召喚したんなら、俺のことも名前くらいは知った上で召喚したんじゃなかったんすか?」

 

「え?貴方様についての報告なんて………」

 

黒ウサギは戸惑う。みょんみょんと黒ウサギのウサミミがレーダーのように動く。黒ウサギの目と耳は箱庭の中枢に繋がっている。そこから有効範囲内であれば、ある程度情報が入る。

 

「逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀…………遠藤浩介? ……………………あ」

 

「うん、忘れてたんだよな?そうなんだよな?なんかよくわかんねぇけど、うっかり見落としちまうほど俺の影が薄かったんだろ?」

 

………とうとうガクリと四つん這いになってしまう浩介であった。

俯いた顔の様子はわからないが、髪の間からなにやら光るものが見えた気がした。

 

「…あー、なんだ? それがお前の能力みたいなヤツなのか?」

 

「いや、素だ」

 

「そうか……」

 

流石の十六夜もこれ以上はなにも言えなかった。

女性陣はハンカチで目元を拭い始めた。

浩介のおかげで、先程までの学級崩壊レベルの荒れ具合はどこへやら、四人の心は今この瞬間一つとなった。

その理由が、精神的自己犠牲をした浩介への同情心というのが実に悲しかった。

 

 

 

 

 

 

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