さりげなく人類最強格が異世界から来るそうですよ?   作:我楽多零號

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第3話:帰っていいっすか? あれ? 聞こえてます?

 

 

 

 

 

彼らの前で項垂れる浩介。

そんな浩介を観察する彼らは各々彼に対する評価を挙げる。

 

(おいおい、自然すぎて逆に不自然なくらい“普通”なヤツだな)

 

(特徴らしい特徴が何一つ見つからないわね…)

 

(なんだろう、この感じ。ありふれているようで、初めて嗅ぐような…匂い…)

 

彼から漂う“普通すぎる”空気に逆に戦慄する問題児三人組だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浩介の心をどうにか回復させ、黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

 

「ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます」

 

(恩恵………か。確かに、技能やら魔法やらを使えるようになった時は、子供みたいにはしゃいでたっけなぁ…)

 

自分を今の自分たらしめる全ての始まりに思いを馳せる浩介。

異世界トータスに召喚され、その際に与えられた力。それはまさに“恩恵”と呼ぶにふさわしい代物だっただろう。

与えた張本人が、全ての黒幕、というふざけた現実でなければ。

それに、地球へ帰還した後のことだって、その身に宿すこととなった、一般人から見れば異常でしかないその様に何度疑惑の目やら蔑みの目を向けられたことか。

そう考えれば自分が持つ力を恩恵と呼ぶには少々皮肉に聞こえる。

……が、そんなことは今更だ。それに、そんな力でも、そのおかげで得たものは確かにあるのだ。

 

 

「『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保有者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問する為に挙手した。

 

「自分の力を賭けなければいけないの?」

 

「そうとは限りません。ゲームのチップは様々です。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる賞品の価値も高くなるというものです。ですが当然、賞品を手に入れるためには“主催者(ホスト)”の提示した条件をクリアし、ゲームに勝利しなければなりません」

 

「……“主権者(ホスト)”って何?」

 

「『ギフトゲーム』を主催し、管理する人のことですね」

 

「誰でもなれるの?」

 

「賞品を用意することさえできれば。それこそ修羅神仏から、商店街のご主人まで。それに合わせてゲームのレベルも、命懸けの凶悪、難解なものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ!」

 

(この世界って神が当たり前のように跋扈してるのかぁ……。うん。超帰りたい)

 

神の強大さを知っている浩介は、早くも帰郷を決心した。

 

「『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

「それは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します。が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです」

 

「そう。なかなか野蛮ね」

 

(野蛮通り越して理不尽でしょコレ…。強いヤツはどんどん強くなって弱いヤツはとことん冷遇されるってことじゃん。なにがオモシロオカシクだよぉ…。すでに闇が見えるよぉ)

 

もはや嫌な予感しかしない、といった様子で頭を抱える浩介。

もちろんこれが箱庭の全てのシステムというわけではないが、聞く限り相当弱者に対し容赦ないシステムだ。

浩介の心中を知る由もない黒ウサギは、四人にある提案をしだす。

 

「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?」

 

「この世界にはコミュニティというものが存在します」

 

そういいながら黒ウサギはトランプを取り出し、シャッフルしながら説明を続ける。

 

「この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに所属しなければなりません。いえ、所属しなければ生きていくことさえ困難と言っても過言ではないのです!」

 

パチンとフィンガースナップ。どこからともなくカードテーブルが現れ、ドスンと着地する。

 

「みなさんを黒ウサギの所属するコミュニティに入れてさしあげても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです、むしろお荷物・邪魔者・足手まといなのです!」

 

明らかな挑発に目を細める四人。言い方からして機嫌を損ねる可能性は充分にあった。

問題児三人組の場合、プライドの高さ故か逆に焚きつけられ、「上等」とでも言いたげな顔つきになるのだが、常識人の浩介にそれは通じない。

 

「ああ、邪魔になるんなら帰っていいっすか?そもそも、元の世界の全てを捨てて来い的なこと書いてあったけど、俺そんなつもりさらさらないんで」

 

「……………」

 

ある意味空気の読めない発言に、場は静寂と化す。

その中で、十六夜が訝しむような目を浩介に向けた。

黒ウサギの顔が、挑発的なもののまま石のように固まり、なにやら汗が滝のように溢れているように見える。

やがてカクカクと壊れたロボットのように挙動不審になりながら、

 

「……ジシンガナイノデアレバ、コトワッテクダサッテモケッコウデスヨ?」

 

と、絵に書いたような片言で、浩介の発言をなかったことのように続けた。

 

「………あれ、聞こえてます? 聞こえてますよね? 今無理矢理話を進めてますよね? ダメっすよ? わざと気づいていないふりしてもわかりますからね?」

 

そこへ口を挟んだのは十六夜だ。なにやら面白そうなものを見るような目をしている。

 

「まぁいいじゃねぇか。どうせとやかく言ったところで今すぐ帰れる保証なんざねぇんだからよ」

 

「ぐ……そりゃ確かにそうだけどよ」

 

十六夜に諭され、浩介は渋々身を引くことにした。十六夜は視線を黒ウサギに移し、ゲームのルールについて問いただした。

彼らを見て、黒ウサギはホッと一息つきつつ、

 

「ゲームにはこのトランプを使います。この52枚のカードから絵札を選んでください。ただし、チャンスは一回、一人につき一枚までとします」

 

「方法はどんなことをしてもいいの?」

 

「ルールに抵触しなければ。ちなみに黒ウサギは審判権限(ジャッジマスター)という特権を持っていますので、ルール違反は無理ですよ?ウサギの目と耳は箱庭の中枢と繋がっているのです」

 

「チップは?お前の言う恩恵(ギフト)ってのを賭けるのか?」

 

「今回皆様は箱庭に来てばかりなので、チップは免除します。強いていえば、あなた方のプライドを賭けると言ったところでしょうか」

 

「私達が勝ったら?」

 

「そうですね。その時は、神仏の眷属であるこの黒ウサギが、なんでも一つあなた方の言うことを聞きましょう」

 

(なんでも一つ……だと?)

 

その一言についつい反応しちゃう浩介君。男の子だもの。

 

「ほぉ、なんでもか?」

 

軽薄そうに笑う十六夜の視線が黒ウサギの豊満な胸部へ。

男同士、考えることは同じらしい。浩介と比べて遠慮がまったくないが。

黒ウサギが慌てて一部訂正する。

 

「で、でも性的なことは駄目ですよ!?」

 

十六夜に白い目を向ける飛鳥と耀。まさか貴方も、と言わんばかりに浩介の方にもその視線は向けられる。スっと目をそらす浩介君。だってしょうがないじゃないか!男の子だもの!

 

「冗談だよ。……で、どうする?」

 

三人に返答を促す十六夜。

 

「どうもこうも」

 

「うん。やろっか」

 

飛鳥も耀も断る気はないらしい。

 

「まぁ、別にいいか……」

 

浩介も、チップ免除ならば、別に断る理由はないので、参加を宣言。

 

「それでは、ゲーム成立ですね!」

 

そう言うや否や、虚空から羊皮紙が現れる。

 

「それは?」

 

契約書類(ギアスロール)です。いわば、ゲームに関する契約の書」

 

 

『ギフトゲーム名 スカウティング

 

・プレイヤー一覧

逆廻十六夜

久遠飛鳥

春日部耀

遠藤浩介

 

・クリア条件 テーブルに並べられたカードの中から絵札のカードを選ぶ。

 

・クリア方法 選べるカードは一人につき一枚まで。

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印』

 

 

「OK、わかった。だがその前にそのカードを調べさせてもらおうか」

 

「かまいませんよ?」

 

契約書類を確認した十六夜は、黒ウサギにトランプカードの提示を要求。黒ウサギはなんの疑いもなく承諾した。

 

カードを一枚ずつ目を通していく十六夜。

一枚の絵札の裏側に爪で傷をつける飛鳥。

三毛猫の唾液の匂いを絵札につける耀。

 

(イカサマのオンパレードだなぁ……)

 

彼らのイカサマ現場を横から眺めていた浩介。

とはいえ、ルールに抵触していないのだから仕方ない。黙って目を瞑ることにした。

トランプは全部で52枚。うち、絵札は全部で12枚ーー3/13。適当に引いても当たらないわけではないが、確実に勝つなら心許ない確率だ。

多分、黒ウサギは彼らがイカサマをすることは織り込み済みだろう。

そうでもなければ、このような穴だらけのゲームなど仕掛けるはずがない。

黒ウサギは、彼らが勝つか負けるか、ではなく、どのような手段で勝つのかを見たいのだろう。値踏みも兼ねて。

もちろん、そんなこと浩介が知る由もないし、わかってたところで知ったことではない。

浩介はとにかく、事を荒立てたくないのだ。なにより、自分のあの忌まわしき力をあまり他言したくないのだ。

そんなわけで、

 

(ま、普通にやろっと)

 

と、イカサマ抜きの、よく言えば正々堂々、悪く言えば適当に勝負を受けることにした。

 

「では、ゲーム開始でーす!」

 

黒ウサギはなにやらテンション高めな様子で、ピースサインを横に、そして額にかざしポーズをとる。少々香ばしいポーズに浩介の中の“アレ”が「呼んだ?」とチラリと顔を出す。必死抑え込む浩介君。

 

「誰からいく?」

 

「…じゃあ、俺からいかせてもらうぜ」

 

十六夜が一歩前に出た。

十六夜が並べられたカードを全体的に見回し、そしてカードを選んだ。

カードを引くその直前。

 

「さっきは素敵な挑発をありがとよ」

 

え? とカードの方に意識を集中させていた黒ウサギが咄嗟に十六夜の方に向けられたその瞬間。

 

「これは、お礼だ!」

 

ドン、と大きな音を立てて掌をカードに叩き込む十六夜。

その衝撃で周りのカードは舞い上がり、何枚かのカードは、表側を上に舞い落ちた。

ポカンとしている黒ウサギ。

ポカンとしている浩介。

飛鳥と耀は、その間に表となった絵札をそそくさと回収。我に返った浩介も便乗して絵札を回収した。

そこへ黒ウサギは待ったをかけるが…。

 

「なにもルールには抵触してないぜ? 並べられたカードから絵札を選べ、一人一回一枚まで。違うか?」

 

正論により、ぐ、と怯む黒ウサギ。中枢からの判断を仰ぐが、有効とされた。

しかも当の十六夜もしっかり絵札を選んでいた。理由を尋ねると、単純にカードの並び順を覚えたらしい。

ガックリとする黒ウサギに満足気な問題児三人組。

 

「並び順覚えたのは普通にスゲェと思うし、便乗してなんだけどさ。えげつないことするなお前」

 

「そうね。おかげでこちらで考えていた策が無駄になったわ」

 

「うん」

 

「ヤハハ、そりゃ悪かったな」

 

十六夜は、項垂れている黒ウサギに視線を戻した。

 

「おい、黒ウサギ。さっそくだが、言うことを聞いてもらうぜ?」

 

「ふぇ!?だ、駄目ですよ!?性的なことは!」

 

十六夜が悪い笑みを浮かべているのを見て、よもや本当に?と言いたげな表情で、腕で自分の胸部を隠す仕草をする黒ウサギ。

 

「まぁ、それも魅力的ではあるんだが…。俺が聞きたいことはただ一つ」

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

彼は何もかもを見下すような視線で一言、

 

「この世界は……()()()()?」

 

他二人も無言で返事を待つ。

 

(『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』……か)

 

改めて言うが、浩介にそんな気はさらさらない。なにせ、浩介には帰る場所があり、帰りを待っている人がいるのだ。

そう考えると、少し違和感を感じる浩介。

 

(他の三人は、多分、それだけの理由があって箱庭に来た。でも俺は違う。仮に箱庭の世界の存在を知っていたとしても来ようとは思わないし、今だって別に居たいとは思わない。この箱庭に元の世界の全てを捨てる程の価値は感じない。ならなんで俺は召喚された?あの手紙はただの建前で、合意があろうがなかろうが、召喚されていた?)

 

ただの善意か、遊び心で退屈を持て余していた異能力者に箱庭という遊び場をプレゼンする。はっきり言って意味があるとは思えない。

けれど、別に不自然とは思わない。

事実、浩介の人生一度目の召喚では、神の遊戯の一つの余興として、しかももとより勇者のみを召喚するはずがついでとばかりに無意味に引き摺り込まれたのだから。

召喚イコールなんらかの意味がある、とは思わない。

けれどーーー。

 

(いや、やめよ。どうせそのうち南雲が迎えに来る。俺が今ここにいる意味なんて考えるだけ無駄だ)

 

よく、正義の味方や勇者が、『俺がこの力を手にしたのには、なにか意味があるのかもしれない』なんていうが、実際意味なんてほとんどない。あったところでロクなものじゃない。トータスにいる勇者(笑)(天之河光輝)がいい証拠だ。

 

 

 

 

浩介が一人考えを巡らせていると、クイクイと、服の裾が軽く引っ張られた。犯人は浩介の隣に佇んでいる耀だ。

 

「どうしたの?」

 

「ん?いや、なんでもない」

 

小首を傾げながら小声で尋ねてくる耀を見た浩介は顔に出てたかも?と少し焦りながらもいつも通りの様子に戻った。

 

そこへ、黒ウサギはーー。

 

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

眩しいほどに優しげな笑顔。その顔には一部の嘘もないだろう。

 

そんな黒ウサギを見て、浩介は軽くため息をする。

浩介は箱庭に長居する気はない。南雲ハジメが迎えに来たらすぐに帰るだろう。

けれど、それまではーーー。

 

(とはいえ、せっかく異世界に来たわけだし、まぁ、少しぐらい、箱庭の世界ってヤツを満喫していいか…)

 

箱は蓋を開けなければ、何が入っているかわからない。

そう自分に言い聞かせ、ルンルンとステップを踏む黒ウサギの後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






タグに深淵卿微強化と付けました。
とはいえ、これは保険です。
感想を書いてくれたり、指摘してくれるのありがたいことです。
ですが、この作品はあくまで私自身が面白そうだなと思って書き出した作品で、いわば自己満足です。
私の方でもなるべく違和感のないように気をつけるつもりですが、この作品の根底を揺るがすような指摘は御遠慮ください。

無礼な言葉及び長文失礼しました。
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