盾しか装備できない?わたしは一向にかまわんッッ   作:タコス13

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同行者

朝食の後、案内役の男に後程、王からの呼び出しがあると伝えられた。

 

日が昇り具合から、10時くらいと推察される頃に案内役の男に案内されて、謁見の間に通された。

 

「勇者様の御来場ッッ。」

 

謁見の間の扉が開くと其処には様々な服装をした男女が12人ほど集まっていた。

 

騎士風の身なりの者もおり、皆、それなりには腕に覚えがありそうだ。

 

援助を行うという、王の言葉は守られたようだ。

 

勇者4人は、王に一礼をすると、話を聞く。

 

「前日の件で勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者が居るようじゃ。」

 

一人に付き3人の同行する仲間が居るのなら均等が取れるのだが。

 

「さあ、未来の英雄達よッッ。仕えたい勇者と共に旅立つのだッッ。」

 

しかし、勇者が同行者を選ぶのではなく、同行者側が勇者を選ぶようだ。

 

そして、同行者となる者達が、並び、それぞれが同行したい勇者の前に並ぶ。

 

天木 錬   5人

 北村 元康  4人

 川澄 樹   3人

 烈 海王 0人

 

「......王よ、これはどういう事だ?」

 

烈は取り乱す事は無かったが、王へ説明を求めた。

 

「う、うぬ。さすがにワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった。」

 

「人望がありませんな。」

 

王は狼狽えて、大臣は切り捨てるようにそう答える。

 

「昨日来たばかりのわたしに人望を求められても、困るのだが。」

 

烈の返しに、大臣はムッとしたような顔になる。

 

そこへローブを着た男が王様に内緒話をする。

 

「ふむ、そんな噂が広まっておるのか……」

 

「何かあったのですか?」

 

元康が微妙な表情を浮かべて、問いかける。

 

「ふむ、実はの……勇者殿の中で盾の勇者はこの世界の理に疎いという噂が城内で囁かれているのだそうだ。」

 

「それに、なにか問題が?」

 

「伝承で、勇者とはこの世界の理を理解していると記されている。その条件を満たしていないのではないかとな。」

 

王がそう説明していると、元康が烈の脇を肘で小突いてくる。

 

「昨日の雑談、盗み聞きされていたんじゃないか?」

 

「いや、それにしても噂が広まるのが早すぎる。意図的に噂を広めた人間が居るはずだ。王よ、スパイの存在を疑った方がいいのでは?」

 

((王、自ら広めさせたわけでなければな.....))

 

前の視線といい、名前の呼び忘れに、今回の件と、烈は王を信用していなかった。

 

「う、うむ。確かにその可能性も捨てきれんな。調べさせておこう。」

 

烈の言葉にドキリとしたのか、一瞬言葉に詰まる王。

 

「まぁ、こうなってしまったからには、1人で旅立つしかないな。」

 

「いや、それは.......」

 

烈の言葉に、何やら都合が悪そうな王。

 

「あ、勇者様、私は盾の勇者様の下へ行っても良いですよ。」

 

元康の所に並んでいた、女冒険者の1人が手を上げて名乗り出る。

 

「無理にわたしに付き合う必要はないぞ?」

 

「いえ、大丈夫ですから。」

 

そう、笑顔で答える女は、セミロングの赤髪に、整った若干幼めな容姿に、体格は165cmくらい、線は女らしく細い。

 

「他にレツ殿の下に行っても良い者はおらんのか?」

 

王が最終確認を行うが、他に誰一人手を上げることは無かった。

 

「しょうがあるまい。レツ殿はこれから自身で気に入った仲間をスカウトして人員を補充せよ、月々の援助金を配布するが代価として他の勇者よりも今回の援助金を増やすとしよう。」

 

「ああ、それは有難い。こちらも、出来るだけ努力しよう。」

 

言葉ではそう言うものの、今日の様子を見る限りでは、仲間の勧誘は望み薄と見ていいだろう。

 

それを考えると、この女の申し出は有難かったが、同時に警戒すべき相手である。

 

さらに言えば、申し出のタイミングだけでなく、自分を観察する様に見るこの女の眼差しを、烈は見逃さなかった。

 

「それでは支度金である。勇者達よしっかりと受け取るのだ。」

 

勇者それぞれに、それなりの重さがある金袋が手渡される。

 

中でも、一際重い金袋が烈に渡ったところで、王が発言する。

 

「レツ殿には銀貨800枚、他の勇者殿には600枚用意した。これで装備を整え、旅立つが良い。」

 

「「「「はッッ!(好的ッッ!)」」」」

 

勇者達と、その同行者は王に一礼し謁見を終えた。

 

それから、謁見の間から出ると、それぞれの自己紹介を始めた。

 

「えっと盾の勇者様、私の名前はマイン=スフィアと申します。これからよろしくね。」

 

「ああ、こちらこそよろしく。」

 

人当たりの良い笑顔を浮かべ、親しみやすい態度で接してくる。

 

「では、行くとしよう、マインさん。」

 

「はーい。」

 

城門を出て、街中にはいると、石造りの整った街並みに、活気溢れる様子は、中世ヨーロッパに紛れ込んだ様だ。

 

「これからどうします?」

 

「武器等が売っている店があるなら、そこへ行きたい。わたしの武器が盾である以上、他の武器が欲しい。わたしはともかく、マインさんの防具も見ておきたいしな。」

 

「勇者様は、防具を装備されないんですか?」

 

「ああ、動きを阻害されないように、身軽な方が好ましい。」

 

「じゃあ私が知ってる良い店に案内しますね。」

 

「お願いしよう。」

 

「ええ。」

 

マインはスキップする様な歩調で烈を武器屋に案内する。

 

城を出て10分くらい歩いた頃だろうか、一際大きな剣の看板を掲げた店の前でマインは足を止めた。

 

「ここがオススメの店ですよ。」

 

「ああ、いかにも、という感じだな。」

 

店の扉から中を覗くと、壁にはあらゆる武器が立て掛けてあり、まさに武器屋といった面持ちだ。

 

さらに、鎧や盾、スコップや鍋に至るまで、冒険に必要な物は大体揃っている様子だ。

 

「いらっしゃい!」

 

中に入ると、店主と思しき男が景気良く話しかけてくる。

 

筋肉は程よく鍛えられており、筋骨隆々で顔や腕には傷があり、スキンヘッドの男だった。

 

「お、お客さん初めてだね。当店に入るたぁ目の付け所が違うね。」

 

「ああ、彼女が勧めてくれたのでな。」

 

そう言って後ろのマインを親指で示すと、手を軽く振って答える。

 

「ありがとうよお嬢ちゃん。」

 

「いえいえ~この辺りじゃ親父さんの店って有名だし。」

 

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。所でその変わった服装の彼氏は何者だい?」

 

烈はチャイナ服を着ており、この世界には存在しないであろうし、この反応は仕方が無い。

 

「親父さんも分かるでしょ?」

 

「となるとアンタは勇者様か! へー!」

 

店主はまじまじと、烈を凝視する。

 

「かなり、頼りになりそうだな。」

 

「やっぱり、そう思いますか?」

 

烈を見ながら、そう評価しながら話す2人。

 

マインの方は、本心かどうかは分からないが。

 

「だが、良いものを装備しなきゃ舐められるぜ。」

 

確かに店主の言う通りで、ある程度しっかりした装備をしていないと、見下されたり、不要な争いの種になるとも限らない。

 

「盾の勇者をしている、烈海王だ。今後とも、厄介になることもあるだろう。よろしくお願いする。」

 

「レツねえ。まあお得意様になってくれるなら良い話だ。よろしく!」

 

表裏がない人物なのだろう、烈はそんな店主に好感を持った。

 

「ねえ親父さん。何か良い装備無い?」

 

マインが店主にそう尋ねる。

 

「そうだなぁ……予算はどのくらいだ?」

 

「そうねぇ……」

 

マインが烈を値踏みするように見る。

 

「銀貨250枚の範囲かしら。」

 

「それだと、どの程度のものになる?」

 

相場の説明をせず、勝手に話を進めるマインに、呆れ顔で問いかける。

 

「お?まぁ、一般的なものより1つ上くらいのものになるな。となると、この辺りか。」

 

店主はカウンターから乗り出し、店に飾られている武器を数本、持って来る。

 

「あんちゃん。得意な武器はあるかい?」

 

「剣、刀、槍、棍、手裏剣なら一通り扱える。」

 

「なるほどなぁ、とりあえず剣から見てもらおうか。」

 

数本の剣をカウンターに並べた。

 

「どれもブラッドクリーンコーティングが掛かってるからこの辺りがオススメかな。」

 

「ブラッドクリーン?」

 

「血糊で切れ味が落ちないコーティングが掛かってるのよ。」

 

「ほう、それは便利だな。」

 

元の世界であるならば、血糊も含め、汚れに対するメンテナンスが不可欠だが、ここに並ぶ剣はある程度そういった事が必要ないらしい。

 

「左から鉄、魔法鉄、魔法鋼鉄、銀鉄と高価になっていくが性能はお墨付きだよ。」

 

使用している鉱物によって、性能に差が出るという事だ。

 

「まだまだ上の武器があるけど総予算銀貨250枚だとこの辺りだ。」

 

「少し見させてもらっても?」

 

「おう、落っことすなよ。」

 

店主に了解を得て、1番質の高い、銀鉄の剣を取る。

 

((ふむ、剣の質はそれなりには良いな。切れ味の方も問題は無さそうだが........!?))

 

少し振ってみようかと考えていると、突然、手に強い電撃が走り、剣が弾かれてしまう。

 

「お?」

 

店主とマインが不思議そうな顔で烈と剣を交互に見る。

 

「まさか......」

 

もう1度、剣を持ち直して、しばらく待ってみると、再度強い電撃が走る。

 

今度は、しっかりと握っている為弾かれはしないが、断続的に強い電撃が走る。

 

「......これは...持てなくは無いが、かなり鬱陶しいな。」

 

弾き飛ばされない様に、丁寧に剣をカウンターに置くと同時に視界に文字が浮かび上がる。

 

『伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました』

 

烈はすぐに該当するヘルプを呼び出し、内容を確認する。

 

『勇者は自分の所持する伝説武器以外を戦闘に使うことは出来ない』

 

「どうやら、わたしはこの盾以外の武器を装備出来ないようだ。」

 

((もっとも、武器ならば既に手にしているし、盾を使った中国武術も無い訳では無い...問題は無い。))

 

「どんな原理なんだ? 少し見せてくれないか?」

 

烈は腕から盾が外せない故、店主の目の前に持っていく。

 

店主が小声で何かを呟くと、盾に向かって小さい光の玉が飛んでいって弾けた。

 

「ふむ、一見するとスモールシールドだが、何かおかしいな……」

 

店主は武器の性能を確認出来る、何らかの術を使ったようだ。

 

「真ん中に核となる宝石が付いているだろ? ここに何か強力な力を感じる。鑑定の魔法で見てみたが……うまく見ることが出来なかった。呪いの類なら一発で分かるんだがな。」

 

どうやら、先程のは魔法というらしい。

 

「面白いものを見せてもらったぜ、じゃあ防具でも買うかい?」

 

見終わって満足したのか、防具について、尋ねてくる。

 

「いや、動きを阻害されてしまっては、かえって戦いが不利になってしまう。なので、わたしには必要ない。マインさんのを見繕ってくれないか?」

 

「あの......」

 

烈の説明に、マインが口を挟んできた。

 

「私、勇者様が心配です。いくらお強いといっても、防具も無しに戦うのは無謀ではありませんか?」

 

「いや、問題ない。それに、防具を装備していても、衝撃が強ければ肉体が耐えられない。それでは、意味がない。」

 

「そう......ですか......わかりました。私の装備は勇者様の実力を見せて貰ってから決めますので、今は要らないです。すみませんね、親父さん。」

 

「いや、気が変わったらまた来てくれりゃいいよ。じゃあ、頑張ってな。」

 

「ありがとうございます。それじゃあまたー。」

 

店主に別れを告げて、2人は店を出る。

 

「それじゃあそろそろ戦いに行きましょうか勇者様。」

 

「ああ、そうだな。」

 

それから、烈達は街の出口の関所の方に歩きだし、関所を潜り抜ける。

 

烈がこの世界に来ての、初めての戦闘が始まろうとしていた。




まず、首相の名が不適切かつ、ととも幼稚で、悪戯にしても笑えない内容であり、多数の方に不快な思いをさせてしまい、大変申し訳御座いませんでした。

私と致しましては、一種のブラックジョークのつもりで、件の人名を使ってしまいました。

しかし、常識的に考えて、また、被害者遺族を思えば、当然使用は控えるべき人名でした。

思慮の浅さと、非常識さ、人の痛みへの鈍感さが招いてしまった結果だと痛感致しました。

以後、この様な無神経で、非常識かつ、幼稚な内容を書かない様にすると共に、深く猛省を致します。

読者の皆様には、大変ご迷惑をかけ、また、不愉快な思いをさせ、さらには、心無い言葉で精神的な苦痛を与えてしまった事を、ここにお詫び致します。

また、件の人名は修正させて頂いた事を、ここにご報告致します。

誠に身勝手な事では御座いますが、これに懲りず、これからも、御愛読下さると、大変嬉しく思います。

大変、申し訳御座いませんでした。

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