盾しか装備できない?わたしは一向にかまわんッッ 作:タコス13
あれから、1週間が経った。
その殆どを森や草原にて過ごし、飯時だけは城下町の酒場で食事をとる生活をしていた。
初日に、酒場にてガラの悪そうな輩に絡まれた。
「盾の勇者様ー仲間にしてくださいよー......ぐあっ!」
上から目線で、気安く烈の肩に手をかけてきた輩の1人の関節を外す烈。
「む......すまない、反射的に関節を外してしまったようだ。ハメなおしたので問題はないと思うが......」
「うわぁぁ!に、逃げるぞ!?」
関節をハメなおして貰った後、悲鳴を上げながら輩は脱兎の如く逃げ去っていった。
その後、薬草と思しき物を取引しているのを見て、元々、薬膳に明るい烈は、興味を持った。
草原に行った烈は、魔物を狩りながらそれらしい草を盾に吸わせてみると反応が起こった。
『リーフシールドの条件が解放されました』
その文字を見た烈は、ウェポンブックを開いていない事に気付き、開いてみる。
『スモールシールド』
能力解放! 防御力が3上昇しました
『オレンジスモールシールド』
能力未解放……装備ボーナス、防御力2
『イエロースモールシールド』
能力未解放……装備ボーナス、防御力2
『レッドスモールシールド』
能力未解放……装備ボーナス、防御力4
『ウサレザーシールド』
能力未解放……装備ボーナス、敏捷3
『ウサミートシールド』
能力未解放……装備ボーナス、解体技能1
『リーフシールド』
能力未解放……装備ボーナス、採取技能1
早速、ヘルプを開き、わからない用語を調べる。
『武器の変化と能力解放』
武器の変化とは今、装備している伝説武器を別の形状へ変える事を指します。
変え方は武器に手をかざし、心の中で変えたい武器名を思えば変化させることが出来ます。
能力解放とはその武器を使用し、一定の熟練を積む事によって所持者に永続的な技能を授ける事です
『装備ボーナス』
装備ボーナスとはその武器に変化している間に使うことの出来る付与能力です。
例えばエアストバッシュが装備ボーナスに付与されている武器を装備している間はエアストバッシュを使用する事が出来ます。
攻撃3と付いている武器の場合は装備している武器に3の追加付与が付いている物です
つまり、能力解放を行う事で他の武器に変えても、その武器の能力をそのまま、引き継ぐ事が出来るというわけだ。
そして、熟練度とはその武器を繰り返し使う事で、経験値とは別に獲得出来る値の事を指すようだ。
以上の事を確認し、リーフシールドの採取技能1という装備ボーナスが気になった烈。
恐らくは、薬草等を採取した時に、何らかの効果を発揮するものだと推察出来る。
早速、スモールシールドからリーフシールドに変化させてみる。
シュンと風を切るような音を立てて、スモールシールドは植物で出来た盾に変化する。
スモールシールドが弱い装備だからか、防御力の低下などは起こらなかった。
早速、目の前にある先程と同じ薬草を摘み取ると、薬草が淡く光った。
『採取技能1』
アエロー 品質 普通→良質 傷薬の材料になる薬草
簡易的な説明と共に、薬草の品質が向上した事を告げる。
その後は草原だけでなく、森にも行き薬草等は無いかと見に行った。
その際に、ルーマッシュという、白く人の頭の大きさくらいの動くキノコの様な魔物を狩る。
さらに、色違いのブルーマッシュやグリーンマッシュ等も倒した。
『マッシュシールド』の条件が解放されました
『ブルーマッシュシールド』の条件が解放されました
『グリーンマッシュシールド』の条件が解放されました
盾が新しく解放されたので、ウェポンブックを開く。
『マッシュシールド』
能力未解放……装備ボーナス、植物鑑定1
『ブルーマッシュシールド』
能力未解放……装備ボーナス、簡易調合レシピ1
『グリーンマッシュシールド』
能力未解放……装備ボーナス、見習い調合
「調合に、植物鑑定か......これは、使えそうだな。」
簡易調合レシピを開くと、持っている薬草で出来る範囲のレシピが載っていた。
とりあえず、機材がないので乳鉢と乳棒で出来るレシピに挑戦する事にした烈。
川辺の石を拳や指先で削り、即席の乳鉢と乳棒を作り上げる。
薬膳料理を得意としている烈は、ある程度、中薬学にも精通しており、手馴れた様子で薬を作成していく。
「......ふぅ...この乳棒と乳鉢ではここら辺が限界か。」
『ヒール丸薬』が出来ました!
『ヒール丸薬』 品質 普通→やや良い 傷の治療を早める丸薬、傷口に塗ることで効果を発揮する。
その後もいくつか薬を作り、街へと戻って薬屋に持ち込んでみる。
「薬草に、丸薬類ですな。ほほう......薬草は中々の、薬はかなりの品ですな。これはどうされたんですか?」
「薬草の方は草原と森で。丸薬はわたしが川辺の石を使って作ったものだ。」
「ふむ......あそこでこれ程のものが......もっと質が悪いと思っていましたが......それに、川辺の石でここまでの品が......」
そんな話をしながら、取り引きを進めていく。
「ところで、古い品でもいいので、製薬機材はないか?」
「ありますよ。古い品ですが、勇者様がもし、私のところをご贔屓にして下さるなら、お安くさせて頂きます。」
「ほう、それは有難い。約束しよう。」
薬屋は、烈との取り引きを有益なものになると判断し、協力的に接してくれる。
そんな具合でこの日の利益は銀貨10枚程となった。
こんな調子で1週間後には、銀貨600枚とかなりの稼ぎを得る。
Lvの方も15まで上がっており、順調かと思いきや、烈は思い悩んでいた。
「ふむ......生活する分には問題は無いが、国を出るにしろ、残るにしろ、地形や世情に詳しい協力者が欲しい所だし......人手が足りないな......」
烈はこの世界の文字が読めない故に、この国以外に国はあるのか、あったとしてどういった国なのか、現状知る術がない。
「お困りのご様子ですな?」
「え?」
シルクハットに似た帽子、燕尾服を着た、奇妙な男が裏路地で烈を呼び止める。
贅肉のたっぷりついた肥満体型に、丸いサングラスを掛けているおかしな紳士。
烈が初見で受けた印象はこんなところか。
「人手が足りない、と、聞こえてきましたので。」
「......貴様は、それを解決できると?」
警戒しながらも、男の言葉に耳を傾ける。
「ええ、裏切る可能性のある『仲間』等ではなく......絶対に裏切らない、『奴隷』を扱っております。」
「ふむ......興味無いな。......だが、話くらいは聞いてやっても良い。」
烈は、奴隷の様な弱者を虐げる行為を良しとはしていなかった。
しかし、人手不足は事実であるし、なにより奴隷商という事は、世情や地理に詳しいのではと考え、ついて行く。
裏路地をしばらく歩く。
この国の闇も相当に深いようだ。
昼間だというのに日が当たらない道を進み、まるでサーカスのテントのような小屋が路地の一角に現れる。
「こちらですよ勇者様。」
「ああ。」
軽い足取りで、男は案の定テントに入っていく。
「そうだ、一応言っておくが、もしわたしを騙すつもりなら......」
「ええ、私は無事では済まないでしょうね。」
烈の商談やゴロツキに対する行動は有名になっているようだ。
「勇者を奴隷として欲しいと言うお客様はおりましたし、私も可能性の一つとして勇者様にお近付きしましたが、一目見た時点で考えを改めましたよ。はい。」
「ほう?」
「あなたは良いお客になる資質をお持ちだ。良い意味でも悪い意味でも。」
「どういう意味だ?」
「さてね。どういう意味でしょう。」
なんとも掴みどころのない男のようだ。
重々しい金属音をさせて、サーカステントの中で厳重に区切られている扉が開いた。
「ふむ......」
店内の照明は薄暗く、仄かに腐敗臭が立ち込めている。
獣のような匂いも強く、環境はあまり良くないようだ。
幾重にも檻が設置されていて、中には人型の影が蠢いている。
「さて、こちらが当店でオススメの奴隷です。」
奴隷商が勧める檻に近づき覗き込んで中を確認する。
「グウウウウ……ガア!」
「人、なのか?」
鍛えられた肉体を毛皮で覆った様な外見の、所謂人狼が檻の中で暴れ回っている。
「ええ、獣人といって、一応は人間の部類です。」
「......こう言ってはなんだが......そうは見えないな。」
最大トーナメントにて、夜叉猿を見たことがあったが、それに近い存在に見えた。
「こいつらの事を、詳しく教えてくれないか?」
どういった生き物なのか、知っておく必要があると烈は考えた。
「メルロマルク王国は人間種至上主義ですからな。亜人や獣人には住みづらい場所でしてね。」
「ほう......」
確かに、城下町で見かけたのは大部分が人間で、それらしき者はほとんど見かけなかった。
「亜人と獣人とはなんなのだ?」
「亜人とは人間に似た外見であるが、人とは異なる部位を持つ人種の総称。獣人とは亜人の獣度合いが強いものの呼び名です。はい。」
「なるほど、分類は同じという訳か。」
「ええ、そして亜人種は魔物に近いと思われている為に、この国では生活が困難、故に奴隷として扱われているのです。」
何処の世界にでも闇はあり、人間として扱われていないのであれば、奴隷にするのに都合が良いのだろう。
「そしてですね。奴隷には......」
奴隷商が指を鳴らすと奴隷商の腕に陣が浮かび上がり、檻の中に居る人狼の胸に刻まれている陣が光り輝いた。
「ガアアア! キャインキャイン!」
人狼は胸を押さえて苦しみだしたかと思うと悶絶して転げまわる。
もう一度、奴隷商がパチンと鳴らすと狼男の胸に輝く陣は輝きを弱めて消えた。
「このように指示一つで罰を与えることが可能なのですよ。」
「そうやって指示を出すわけか。」
仰向けに倒れる人狼を見遣り、烈が呟く。
「誰にでも使えるのか?」
「ええ、何も指を鳴らさなくても条件を色々と設定できますよ。ステータス魔法に組み込むことも可能です。」
「なるほど......」
使役者に対して、どこまでも便利に出来ている。
「一応、奴隷に刻む文様にお客様の生体情報を覚えさせる儀式が必要でございますがね。」
「使役する者の命令を、それぞれの奴隷へ確実に伝えるためか?」
「物分りが良くて何よりです。」
説明しながら奴隷商は、不気味な笑みを浮かべている。
「一応聞いておくが、値段はいくらなんだ?」
「何分、戦闘において有能な分類ですからね……」
吹っ掛けるのはリスクが伴うし、あまりに高値だと手が出せない。
「金貨15枚でどうでしょう?」
「右腕と左足が悪いようだが、それにしてもかなり値下げしているのだろう?」
金貨は銀貨100枚に相当し、今回の場合は銀貨1500枚となるが、戦闘要員であれば、もっと高いはずだ。
「一目見ただけで気付くとは流石ですね。もちろんでございます。」
烈のジト目に対しても、奴隷商は笑顔で答える。
「買うつもりがないのを知りながら、勧めてきたな?」
「はい。アナタはいずれお得意様になるお方、目を養っていただかねばこちらも困ります。下手な奴隷商に粗悪品を売られかねません。」
会って間もないのに、随分と気に入られたようだ。
「参考までにこの奴隷のステータスはコレでございますよ。」
小さな水晶を奴隷商は烈に見せる。するとアイコンが光り、文字が浮かび上がる。
戦闘奴隷Lv75 種族 狼人
その他色々と取得技能やらスキルやらが記載されていた。
「コロシアムで戦っていた奴隷なのですがね。勇者様のご指摘通り、足と腕を悪くしてしまい、処分された者を拾い上げたのですよ。」
「コロシアムか……」
そんな場所があるなら、腕試しに行きたい等と烈は考えた。
「さて、一番の商品は見てもらいました。お客様はどのような奴隷がお好みで?」
「興味無いと言った筈だが......まぁ、もし買うならば安値のある程度動ける者が望ましいな。」
「となると戦闘向きや肉体労働向きではなくなりますが? 噂では……」
「わたしはやっていないぞ?」
「ふふふ、私としてはどちらでも良いのです、ではどのような奴隷がお好みです?」
「動けるならば特には無いな。性奴隷等は欲していない。」
「ふむ……噂とは異なる様子ですね勇者様。」
「噂など、当てにはならんものだ。」
そもそも、奴隷自体をそこまで欲していないので適当に答える烈。
「性別は?」
「男の方がなにかと使えるだろうが、こだわりはない。」
「ふむ……」
奴隷商はポリポリと頬を掻く。
「些か愛玩用にも劣りますがよろしいので?」
「見た目等、気にしない。」
「Lvも低いですよ?」
「戦力が欲しいのなら、育てれば良い。」
「……面白い返答ですな。」
「大金を支払い、使えない者を寄越されるよりはマシだ。」
「これはしてやられましたな。」
クックックと奴隷商は何やら笑いを堪えている。
「ではこちらです。」
そのまま、檻がずっと続く小屋の中を歩かされること数分。
暴れる様な声がしていた区域を抜けると、今度は啜り泣く様な声がする区域に入る。
不意に視線を向けると薄汚れた子供や老人の亜人か獣人が檻で暗い顔をしている。
そしてしばらく歩いた先で奴隷商は足を止めた。
「ここが勇者様に提供できる最低ラインの奴隷ですな。」
そうして指差したのは三つの檻だった。
一つ目は片腕が変な方向に曲がっているウサギのような耳を生やした男。見た限りの年齢は20歳前後。
二つ目はガリガリにやせ細り、怯えた目で震えながら咳をする、犬にしては丸みを帯びた耳を生やし、妙に太い尻尾を生やした10歳くらいの女の子。
三つ目は妙に殺気を放つ、目が逝っているトカゲの様な亜人だ。ただ、人の比率が多い印象だ。
だが、烈は見逃さなかった。
2つ目の檻に入っている、亜人の少女の瞳に宿る希望の光を。
ここまでの奴隷達や他の2つの檻の亜人は、ただ怯えるかやけを起こしているかのどちらかだった。
無条件に服従する者達と、絶望し人間を呪い道連れにしようとする者達。
そんな中で、怯えながらも決して絶望せず未来を信じる、亜人の少女の瞳にはそんな光があった。
「左から遺伝病のラビット種、パニックと病を患ったラクーン種、雑種のリザードマンです。」
「真ん中の檻にいる彼女を、もう少し近くで見せてくれないか?」
「別に構いませんが、その奴隷はLv1のラクーン種という見た目が悪い種族な上に、夜間にパニックを起こしますよ?」
「構わん、見せてくれ。」
奴隷商の言葉を意に介さず、2つ目の檻に近付く烈。
亜人の少女の身体には、生々しい傷跡が幾つもあり、凄惨な扱いを受けていたと見える。
傷の治り具合や呪いの存在からして、このテントで受けたわけでも無さそうだが。
10歳前後に見えるこの少女はそんな扱いを受けてなお、希望を失っていないのだ。
「わたしの名前は烈海王。君の名は?」
「...........」
亜人の少女は烈の問いに、首を振り、黙したままだった。
「奴隷紋を使いましょうか?」
すかさず、奴隷商は罰を与えようかと問いかける。
「やめろ。......君の名前を教えてはくれないだろうか?」
底冷えする様な声で制止すると、今度は真逆の温かみのある声色で再度問いかける。
「......ラ、ラフタリア......コホ、コホ......」
亜人の少女は咳をしながら、小さくそう答えた。
「ラフタリアか。では、ラフタリア......君には2つの道がある。1つはわたしの奴隷として生きる道だ。わたしは君を虐げたりしないし、生活はさせてやるが、わたしが死んだらまた奴隷に逆戻りする事になるだろう。もう1つは、わたしの下で教えを乞い修行する道だ。かなり厳しいものになるだろうが、自分の
烈はラフタリアを真剣な眼差しで見つめながら、そう語りかける。
「わ、私は......私は強くなりたい!コホ、コホ......わ、私を...私を弟子にしてくださいッッ!!」
「君なら、そう言うと思っていたッッ!!君をわたしの弟子とするッッ!!!」
檻から懸命に伸ばしたラフタリアの手を、烈はしっかりと握った。