盾しか装備できない?わたしは一向にかまわんッッ   作:タコス13

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波直前

あれから、さらに1週間と数日が経過した。

 

その間に行っていたのは、ひたすらに組手に站樁。

 

ここら辺の魔物では、経験値が頭打ちになってきたという判断からだ。

 

よってLvに変動はないが、ラフタリアはそこそこの使い手へと成長していた。

 

通常、厳しい肉体鍛錬を経て身体を作らねばならないが、Lvの上昇により、勝手に身体が作られるのは大きい。

 

また、体力を回復させる薬膳により、睡眠時間を減らす事にも成功していた。

 

だが、それ以上にラフタリアのやる気と、才能が素晴らしかった。

 

烈達は、国王の言っていた期限が近いのではと、城下町に訪れていた。

 

「街全体が、かなりピリピリしていますね。」

 

「前回の波を見たわけではないが、様子を見る限りは余程の災害だったのだろうな。」

 

街の様子を見遣りながら、そう答える烈。

 

「さて、これからどうしますか?かく言う私も、波に関しては知らない事の方が多いです。」

 

「うん、1つ心当たりがある。そこへ、行ってみよう。」

 

烈達がしばらく歩いて辿り着いたのは、武器屋だった。

 

「なるほど......こちらの親父さんがいましたね。」

 

「いらっしゃい!あんちゃん達、久しぶりだな!」

 

列達を見るなり、威勢よく挨拶する店主。

 

「ああ、久しいな。」

 

「お久しぶりです。」

 

お互いに挨拶を交わす。

 

「んで、今日はどうしたんだ?」

 

「波の情報を得たくてな。残念ながら、殆ど情報がないんだ。知っている事があるなら、教えて欲しい。」

 

「なんだ、そんなことか。いいぜ、教えてやる。」

 

烈の問いかけに、笑顔で応じる店主。

 

「広場の近くに大きな時計塔があるのは知っているか?」

 

「確か、城下町の端の方にそんな建物があったと思うが。」

 

「それは『龍刻の砂時計』ていうんだ。勇者ってのは砂時計が落ちたとき、一緒に戦う仲間と共に厄災の波が起こった場所に飛ばされるらしいぜ。」

 

「ほう、それはかなり助かるな。」

 

店主の説明にしっかりと頷きながら、聞いている烈。

 

「何時ごろか分からないなら、見に行ってみれば良いんじゃないか?詳しい時間も分かるはずだぜ。」

 

「なるほど、それなら前準備もしやすいですね。」

 

店主の提案に、成程と頷き返すラフタリア。

 

「謝謝、次は何か買う、ではな。」

 

「おう、生き残れよ!」

 

「ありがとうございました。」

 

2人は礼を述べて、『龍刻の砂時計』へと向かう。

 

 

「ここが、龍刻の砂時計か。」

 

「ここで、波までの時間を知る事が出来るのですね。」

 

城下町の中でも比較的標高の高い場所に位置する『龍刻の砂時計』、遠くの方からでも分かるその建物は、近くで見るとその大きさに圧倒されるであろう。

 

教会に近い作りのドーム状の建造物の上に、時計台を乗せた様な造りになっている。

 

正面に位置する扉は開かれており、入場に制限等は無いのか頻繁に人が出入りしている。

 

中に入ると修道服の様な格好の女性が、烈達を見るなり怪訝な目をしている。

 

顔が知れ渡っているという事なのだろう。

 

「盾の勇者様ですね。」

 

「ああ、波までの時間を知りたく、ここへ来た。」

 

「では、こちらへ。」

 

案内されたのは、建物の真中に鎮座する巨大な砂時計だった。

 

全長にして7mはあるだろうか、装飾が施され荘厳な雰囲気を醸し出していた。

 

砂は紅く、もうすぐ落ちきるであろう事が感覚的に伝わってくる。

 

盾から音がし、一条の光が砂時計の中央に位置する宝石へと伸びた。

 

すると、烈の視界の隅に時間が現れる。

 

『20:12』

 

しばらくすると、『20:11』となる。

 

「なるほど、こうして時間が知れるというわけだな。つまり、20時間程で波がくるのか。」

 

「あまり、余裕が無いですね。」

 

烈の呟きに、神妙な面持ちで答えるラフタリア。

 

「そうでも無いぞ?武器の点検や回復薬の準備、イメージトレーニングに休養等、出来ることは割とある。」

 

烈がラフタリアにそう教えていると、2人の後ろに人影が来る。

 

「ん?そこにいるのは、烈じゃねぇか?」

 

1ヶ月ぶりの再会となる元康が、なにやら女性を数人引き連れていた。

 

「ああ、1ヶ月ぶりだな元康。」

 

「そうだな、お前も波に備えて来たのか?」

 

蔑む様な目付きで、舐め回すように上から下まで観察してくる元康。

 

「なんだ?1ヶ月前から、まだ装備を買えないのか?」

 

「特に必要も無いのでな。そういう貴様は、かなり良いものを装備しているな。」

 

鉄とは違う銀の様な輝きを放つ、恐らくは魔法銀鉄製であろう鎧を身に付けている。

 

その下には、新緑色の高級素材が使われているであろう服を着て、鎧と服の間には、鎖帷子を着込む事で防御力の底上げをしている。

 

持っている伝説の槍も、最初に見た時の頼りなさそうな槍から、業物と見て分かる矛になっていた。

 

「当たり前だろ?いい装備でなきゃ、勝てるもんも勝てないからな。」

 

「腕前が伴わなければ、宝の持ち腐れだかな。」

 

見下した態度でそう語る元康に、切り捨てるようにそう返す烈。

 

「何よその態度!モトヤス様が話して下さってるのに!」

 

騒々しくそう捲し立てるのは、元同行者のマインだった。

 

「ふん、事実を言ったまでだ。」

 

面倒くさそうに、そう答える烈。

 

「師父様、この方達は......?」

 

元康達を観察する様に見ながら問いかけるラフタリア。

 

「ああ、奴らは槍の勇者と、その取り巻きだ。」

 

「この方達が......」

 

烈の紹介に、少し腑に落ちないという感じのラフタリア。

 

「あ、元康さんと...........烈さん。」

 

「...........」

 

会いたくない人物に会った様な態度の樹と、無言のままの錬が歩いてきた。

 

「貴様らも来たのか。これで、勢揃いした訳だ。」

 

同じ様に装備が良くなった錬と樹に、その取り巻きが合わさって総勢17名が顔を合わせる形となった。

 

「誰だその子、すっごく可愛いな。」

 

ラフタリアを指差しながら聞いてくる元康。

 

「お初にお目にかかります!私は、レツ様と行動を共にさせて頂いてるラフタリアと申します!以後よろしくお願いしますッッ!」

 

ラフタリアはハツラツとした態度で、元康に自己紹介する。

 

烈はラフタリアに修行の合間に言葉遣い等も教えており、その賜物と言えるだろう。

 

「初めましてラフタリアお嬢さん。俺は異世界から召喚されし四人の勇者の一人、北村元康と言います。以後お見知りおきを。」

 

「御丁寧にありがとうございます。キタムラ・モトヤス様。」

 

元康の気障ったらしい挨拶に、丁寧に返すラフタリアだが、どこか腑に落ちない様な態度で。

 

「失礼ですが、そちらのお2人も勇者様なのでしょうか?」

 

「ええ、弓の勇者の川澄樹と言います。」

 

「俺は剣の勇者の天木錬だ。」

 

「カワスミ・イツキ様にアマギ・レン様ですね!よろしくお願いします!」

 

烈が元気良く答えるラフタリアを見ていると、視線を感じ元康の方を見遣ると、怪訝な目で烈を見ていた。

 

「......なんだ?」

 

「お前、こんな可愛い子を何処で勧誘したんだよ。」

 

ラフタリアとの出会いが気になっている様子だ。

 

「貴様は刺されて死んだのだろう。まだ、懲りていないのか?」

 

「うるさい!......てっきり一人で参戦すると思っていたのに……ラフタリアお嬢さんの優しさに甘えているんだな。」

 

烈の言葉が癪に触ったのか、軽く怒鳴るとそんな事を言う元康。

 

「ふん、貴様が思いたい様に思えば良い。」

 

烈は元康に対して吐き捨てる様にそう答えた。

 

「波への準備もあるので、わたし達はこれで失礼する。」

 

烈はこの場にいても争う事になるだけだと考えて、その場を後にする。

 

「波で会いましょう。」

 

「足でまといになるなよ。」

 

事務的に当たり障りのない返答をする樹と、どこから来るのか自信満々の偉そうな態度で返答する錬の横を通って外に向かう烈。

 

「それでは皆さん、波でお会いしましょう!」

 

最後に軽く会釈して後にラフタリアもついて行く。

 

時計台を後にして、城下町に出る烈達。

 

「どうした、ラフタリア?何か、腑に落ちない様だな。」

 

「いえ、私が未熟なだけなのでしょうか?勇者様方がその......あまりお強そうには見えなかったので......」

 

ラフタリアの態度を見て問いかける烈に、言いにくそうに答えるラフタリア。

 

「うむ、君の見立てに間違いは無いのだが......奴らもあれで勇者なんだ。そういう事はあまり態度に出さない方が良い。」

 

「そ、そうですね......ごめんなさい、師父様......」

 

窘める様に注意する烈に、頭を下げるラフタリア。

 

「分かれば良いんだが......どうした?まだ何かあるのか?」

 

「はい、勇者様方の師父様に対する態度が気になって......何かあったんですか?」

 

烈の問いに、瞳を見つめながらさらに質問するラフタリア。

 

「ああ、あれか。実はな......」

 

ラフタリアの問い掛けに、嵌められた時の事を説明する烈。

 

「そんな......!それじゃあ師父様があんまりです!」

 

烈の説明に憤慨した様子のラフタリア。

 

「まぁ、程度の低い連中の戯言だ。気にするだけ損だぞ。」

 

ラフタリアを宥める様に話す烈。

 

「うぅ......納得行きませんが......それにしても、そんな方々と一緒に闘うと思うと、気が重いですね......」

 

「まぁ、奴らは波の止め方を知っている様だし、そちらは任せても問題無いだろう。それよりも、如何に被害を食い止めるか考えなくてはな。」

 

そんな事を話しながら、波への準備を調え始める烈達。

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