U.C0071地球 日本 山陰地方の一軒家
男は技術者である。少し前まで所属先の企業『アナハイムエレクトロニクス』で大きな兵器開発プロジェクトの一員として仕事をしていた。しかしプロジェクトは中止され関わった人々は各々別の部署に移動した。男の配置先はアナハイムでも零細とされた玩具開発部つまるところ左遷だった。左遷された当初は不満しかなかったが慣れるとここも悪くは無いと思える様になった。
「はい、あなたお茶」
「ああ、ありがとう」
不思議なもので仕事が忙しかった時は余り良くなかった家族の仲も最近は円満になった様に感じた。
「なあ次の休みにみんなでキャンプでも行かないか?」
「キャンプ!!やったー!」
息子は笑顔ではしゃぎ回る。息子のこんな顔を見るのはいつぶりだろうか、妻は驚いた様に夫の顔を見る。
「急にどうしたの?あなた」
「うん、急に行きたくなったキャンプ・・・」
今度は心配そうに顔を覗く様に見た。
「あなた疲れてる?」
「疲れてたらキャンプ行こうなんて言わないさ」
「それもそうね、じゃあさっそく準備しないと」
「おいおい気が早すぎじゃないか?」
「あら私だってたまには、はしゃぎたくなるわ家族でお出かけなんて久しぶりだもの」
「そうだな本当に久しぶりだ」
テム・レイは家族と居る幸せを噛み締めていた。
ムンゾ共和国 首都バンチ『ズム・シティ』ダイクン邸
ジオンは息子のキャスバルの二人で向かい合っていた。
「それで、話しとは何だ?キャスバル」
「父さんにお願いしたい事があります」
キャスバルは青い瞳で真っ直ぐにジオンの顔を見つめた。
「僕を地球に行かせて下さい」
「なに?地球だと!キャスバル自分が何を言っているか解っているのか!」
サイドイズムを提唱しコロニーの連邦からの独立を成そうとするジオン・ズム・ダイクンの息子が連邦のお膝元と言える地球に行けばどうなるか、良くて人質、悪ければ殺される。そんな危険な目に息子を合わせる気などなかった。
「命の危険は承知しています」
「ならば何故、地球に行こうなどと言う!」
ジオンは興奮して息子に詰め寄りながら問う。
「僕がジオン・ズム・ダイクンの息子だからです」
「なに!?」
それに対してキャスバルは落ち着いた声で答える。
「僕は今まで一度も地球を見た事がありません、多くの人々があそこまで執着する地球とはどの様な物なのかこの目で確かめたいのです。そうで無ければ父さんのジオン・ズム・ダイクンの思想を本当の意味で理解できないと思うのです」
キャスバルの表情は強い意志と決意を感じる。ジオンはそう感じた。
「・・・・・お前も男の顔をする様になった」
「父さん?」
「良いだろう、お前の地球行きを認めよう」
「ありがとうございます!父さん!」
「だが直ぐと言う訳にはいかん、諸々の準備が整うまで暫く待て」
キャスバル・レム・ダイクンのままでは地球には行けない身分の擬装が必要だ。護衛も必要だろう。
「少し前まではアルテイシア共々子どもだと思っていたのだがな」
ジオンは息子の成長を噛み締めた。
その後、三年間地球で過ごしたキャスバルはムンゾ共和国に戻る時に一人のインド系少女(CV潘 恵子)を伴い帰国してひと悶着有ったがこれは別の話しである。
アムロのキャラがおかしいと思うかも知れませんが七歳ぐらいの男の子なんてこんなものかな?と思う