U.C0074 ムンゾ共和国 35バンチ『ガーディアン』
連邦宇宙軍の駐屯地として建造され現在は共和国軍に接収されたこの密閉型コロニー内は軍事基地を始め士官学校や演習場など様々な軍事施設が存在する。
『三号車!味方を轢き殺す気か!ケツの穴に榴弾ぶちこむぞ!!』
そんなコロニー内の市街地演習場で戦車教導隊のデメジエール・ソンネン少佐は戦車部隊に拡声器で怒声を浴びせるが隣に女性将校が居ることを思い出して気不味そうに一つ咳ばらいをした。
「失礼しました。中佐殿」
「私ら海兵隊は荒ぽい野郎ばかりでね。この程度じゃ何とも思わんさ、おっと少佐拡声器を貸しとくれ・・・『おい!リチャードこの早〇野郎!戦車の掩護無しに突っ込んでんじゃないよ!金〇切り落とされたいのかい!!』・・・とっまあ私らはいつもこんな感じなんでね」
「なるほど・・・」
シーマ・ガラハウ中佐は二十代半で荒くれ者揃いの海兵隊を率いる女傑だ。その統率力は海兵達のシーマに対する態度で容易に想像できた。一見海賊の様な荒くれ者がシーマの前では従順な猟犬の様になる。
「海兵と戦車の連携ようやく様になったと思ったらまだまだ訓練の必要が有りそうだね」
「ですな、我々も新型車輌を完璧に物にできたと言い難いですし」
昨今モビルスーツの高機動化と高火力化が顕著になり幾つかの問題が発生した。特に問題となったのがコロニー内での戦闘による周辺被害であった。コロニー内で全力機動や大口径砲はシャフトや外壁を損傷させる危険が有る。なのでコロニーの制圧等の任務のため歩兵わけても一番最初にコロニーに突入する海兵隊の重要性は増えてそれを支援する戦車等の車輌の重要性も増した。そこで開発されたのがザクマシンガンと共通の120mmを使用しながら単発式にして精度を上げた主砲(ちゃんと旋回する)に小型で小回りきく車体が特長のマゼラタンクだった。
「新型戦車に新戦術まったく覚える事が多すぎて休む暇も有りませんな」
「その割には嬉しそうじゃないかい少佐」
デメジエールは口では愚痴を言いながらも顔は笑っていた。
「まあ戦車兵冥利につきますね」
シーマは愉快そうに笑った。
「そうかい、それじゃ部下を頼んだよ。私はモビルスーツ隊の訓練をしなきゃならないからね」
「了解しました。中佐の部下は教導隊がお預かりします」
デメジエールは見事な敬礼をして見せた。
ムンゾ共和国軍 演習宙域 実験艦『パドマーヴァティー』艦橋
一隻の異様な軍艦が二隻の僚艦を伴い停泊している。ムサイ級を改造した様で艦首から飛び出した巨大な砲身と砲塔部分は撤去して代わりにザクの頭を元に作られたセンサーポットを搭載していた。
「センサーが標的を捉えました。数14、距離50000、追尾開始します」
「エネルギーチェンバー充填率80%」
乗組員が機材を操作したりモニターの数値を確認しながら報告をあげる。
「射角調整取舵15、上げ舵10」
「取舵15、上げ舵10宜候」
艦が細かくスラスターをふかし体勢を変える。
「照準よし、発射準備整いました。サハリン技術中佐」
ギニアス・サハリンは技術者として大成していた。共和国技術大学に飛び級して入り首席で卒業その後ジオニック社に研究員として入社した。モビルスーツの火器管制システムや携行型ビーム兵器の開発に携わり多大な貢献をした。そのことが評価され軍に中佐待遇で出向しビーム兵器の改良と開発を任された。
「了解した。これより拡散ハイメガキャノンの試射を開始する。各員は所定の場所に退避せよ」
ギニアスは軍から評価され多くの人々から尊敬の念を集め最新兵器の開発を任されたが自身は不満だった。
(拡散ハイメガキャノンはモビルスーツに乗せるには大きすぎる。早くモビルスーツ関連の技術開発に戻りたい)
ギニアスはモビルスーツが開発したいから技術者になったと言える。しかし今回開発を任された兵器は大型の艦載兵器だった。せめてもの少しはモビルスーツと関わりたいとわざわざセンサーポットをザク頭にしたりした。とは言え技術者としてのプライドが半端な仕事を許さず拡散ハイメガキャノンの試射は大成功を納めたが結果的にギニアスの願いは遠退いた。
「小型化すればモビルスーツに搭載できるかな?頭とか腹部とか」
ギニアスは諦めなかった。