ギレンは生き残りたい   作:ならない

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就任

U.C0076 ムンゾ共和国首都バンチ『ズム・シティ』国会議事堂

 

「ハァー」

 

ギレンは思わず深いため息をついてしまった。今日ギレンは首相就任演説をする事となっている。今は控え室に一人きりだ。出された緑茶を啜りながら考える。

 

(野党ももう少し頑張って欲しいものだ)

 

ムンゾ共和国の国会議員は殆どがジオンに賛同している。やり易いが国として健全とは言い難い。追々対策を考えなければならない。ジオンが引退を決めてから同時に複数の閣僚が引退を決めてしまった。総務大臣デギン・ソド・ザビ、法務大臣ベニーニョ・トト、外務大臣ジンバ・ラル、財務大臣ホト・フィーゼラー、皆ムンゾ共和国建国前からジオンと供に活動を続けてきた古参の政治家だった。ギレンの軍務大臣職を含め空いた穴に誰を置くかでかなり悩んだ。結果、総務大臣にマハラジャ・カーン、法務大臣にダルシア・バハロ、外務大臣にキシリア・ザビ、財務大臣にサスロ・ザビ、軍務大臣にクラウス・ルーゲンスを任命する事となっている。身内を二人も起用する事に反発は有った物のキシリアの

 

『この連邦との戦争を控えた時勢に私以上に上手く外交を纏める事ができると言うならば喜んでお譲りする!』

 

との一喝に押し黙ってしまった。反発もポーズだけ、保身にばかり長けた政治家は誰もこんな時勢に本当は大臣職等やりたく無いのだ。そう言う意味でも野党には頑張ってほしいのだ。

 

「閣下そろそろ時間です」

 

その時部屋の外から秘書官の声がする。

 

「ああ解った」

 

一つ気合を入れる。

 

(さあ煽動者ギレンの本領発揮だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

国会議事堂本会議場

 

五階までの吹き抜けとなっている広大な会議場には議員が自分の席に着き待機していた。傍聴席では多くのマスコミがカメラ等の機材を設置しリポーターがテレビカメラに向いギレンの略歴の解説や此からの政策についての予想等を話している。進行役がギレンの就任演説が始まる事をアナウンスした。ギレンが檀上中央に進み出る。

 

「私がムンゾ共和国第二代首相に就任した。ギレン・ザビです」

 

ギレンは檀上から議員達や傍聴席をゆっくりと見渡す。

 

「宇宙世紀が始り、我々がスペースコロニーを故郷として七十年以上になりました。今や人類の九割が宇宙に住んでいます」

 

足下に手を向ける。

 

「皆さん足下を見てください。人類の作った人工の大地、此処が我々の故郷、我々の父母が築いた歴史です。その上に我々は立って居る。その上に築く新たな歴史とは何が相応しいでしょうか?連邦に支配される奴隷の歴史でしょうか?私は違うと信じる!我々は生きている人間だ!」

 

段々と声と言葉を強くして行く。

 

「自由を求める声がある!もう一度言う我々は人間だ!!搾取されるだけの家畜ではない!幸福を求める権利がある!!・・・・・・そして平和を求める思いがある」

 

拳を胸に当てる。

 

「だがそんな細やかな思いを踏み躙る者達が居る。ならば私は戦う!」

 

拳を振り上げ叫ぶ。

 

「我々の歴史の上に子供達が誇れる歴史を築く事ができるように我々の未来の為戦う!皆さん信仰も思想も違うでしょう。しかし未来をより良くしたいと思う事は一致していると信じます。どうか私に力を貸して頂きたい。我々の未来を掴む為に・・・・・」

 

一拍置いて頭を下げる。拍手が会議場を埋め尽くす。檀上から降りながらギレンはほくそ笑む。

 

(終わった~緊張した~)


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