ギレンは生き残りたい   作:ならない

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旧友

U.C0078 ムンゾ共和国首都バンチ『ズム・シティ』首相官邸会議室

 

各閣僚と軍人や専門家等が集まっていた。

 

「でかいな」

 

ギレンはモニターに映し出された物を見てそう呟く。

 

「はい、直径90km、我国の保有する小惑星の中では最大級の物です」

 

スキンヘッドの将校、エギーユ・デラーズ大佐の説明を聞きながら手元の資料を読む。

 

「大きさの割りには採掘量は少ないのだな」

 

「粗方の資源は採掘し尽くして後は破棄する予定でした」

 

ギレンの疑問に経済産業大臣が答える。

 

「ソロモンやア・バオア・クーの様に要塞化しないのかね?」

 

財務大臣のサスロが小惑星の利用方に関する疑問を投げ掛ける。共和国の経済を指導する立場上無駄を嫌う傾向が強い。

 

「坑道が多く要塞化の為には補強の必要があり、費用対効果が悪く断念しました」

 

「補強が必要な小惑星が質量弾に向いているのかね?」

 

「質量弾に用いるにも補強は必要ですが安全性を考慮しなくて良い分安く成ります。最悪穴を埋めるだけで良いので」

 

「加速は熱核パルスエンジンを使うのかね?」

 

「いえ、表面で核爆発を起こし反動と気化した岩石を推進力とする予定です」

 

各閣僚の一連の疑問に総司令部技術本部長アルベルト・シャハト大将が答える。他に疑問点が無いか確認してからギレンは会議の纏めにかかる。

 

「なるほど、では採決を取る。この小惑星の使用に反対の者は?・・・・・・居ない様だな、では『ブリティッシュ作戦』を許可する。不測の事態に備え訓練等怠らん様に、以上だ」

 

「それでは此にて閣僚会議を閉会します」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ズム・シティ』BAR『ネクタール』

 

ギレンが店内に入るとバーテンダーが声をかけてくる。

 

「ギレン様良く御出下さいました。お連れ様がお待ちです」

 

そう言って個室に通してくれる。そこには二人の男がソファーに座りグラスを傾けながら談笑していた。

 

「おおギレン先に始めていたぞ。そら駆け付け一杯」

 

上機嫌なランバ・ラルが新しいグラスにウイスキーを注ぐ。

 

「ラル居酒屋じゃないんだぞ」

 

ゲラート・シュマイザーがツッコミを入れる。

 

「二人とも久しぶり、遅れてしまったかな?」

 

グラスを受け取りソファーに腰を下ろす。この三人はたまにこうやつて集まり酒を飲んでいたがギレンが首相に就任してからはお互いに忙しく暫くの間その様な席を設けていなかった。

 

「しかしあのギレンが首相閣下とはな」

 

ラルがしみじみと言う。

 

「それを言うならお前だって閣下だろうランバ・ラル准将」

 

ゲラートが嫌みぽく話す。

 

「ゲラートさんは兎も角、ラルさんはもっと上の階級に成れるんじゃ無いですか?」

 

基本的に特殊部隊を率いて秘密作戦に従事するゲラート大佐(開戦後に一気に昇進予定)と違い表の部隊を率いるランバ・ラルが准将止まりなことに疑問を感じた。

 

「前線で戦ってこそのランバ・ラルよ!」

 

胸を張り威張る様に言い放つ

 

「俺はラル夫人に同情するよ」

 

「同感です」

 

「ハモンの事は言うなよ」

 

ギレンは久しぶりに酒を心の底から美味しく楽しく飲んだ。


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