U.C0079 一月三日 七時二十分
ムンゾ共和国から全世界に向けて放送された一つの宣言が世界を震撼させた。
『地球連邦政府並びに地球圏に住む全ての人々に告げます。私はムンゾ共和国首相ギレン・ザビです。地球連邦政府は我々を宇宙へと追いやり地上から宇宙を支配してきました。そして一握りのエリートと呼ばれる人々がその私利私欲を満たすために我々スペースノイドは自由を奪われ続けました。しかしこの屈辱の歴史も今終わります!腐敗した連邦政府を砕きスペースノイドの真の自立を勝ち取る為に我々ムンゾ共和国は地球連邦政府に対し宣戦を布告する!』
その宣言と同時に共和国は各サイドと月面都市に侵攻を開始した。
L4 サイド2『ハッテ』8バンチ『アイランド・イフィッシュ』共和国軍揚陸艇
海兵隊の兵士達が狭い艇内に押し込まれ今か今かと出撃の時を待っている。
『モビルスーツ隊が制宙圏を確保!揚陸艇出撃!』
激しい振動が艇内を揺らす。
「揚陸地点まで一分!」
「野郎ども準備は良いか!!」
艇内で最上級の階級の者が兵士達に発破をかけている。
「「「サーイエスサー!!」」」
「貴様らは何者だ!!」
「「「海兵隊!!」」」
「共和国で一番勇敢な隊はどこだ!!」
「「「海兵隊!!」」」
「俺達海兵隊のモットーは!!」
「「「最初の一撃海兵隊!!」」」
揚陸艇がコロニーの外壁に取り付き外壁を焼き切り穴を開ける。隙間は修復剤ですぐさま埋められる。
「野郎ども俺に着いてこい!!続けえぇ!!」
「「「ウーラァ!!」」」
海兵達がコロニーに雪崩れ込む。
共和国首都『ズム・シティ』首相官邸
会議室に大型モニターが取り付けられ戦況図が映し出されていた。ギレンとルーゲンスがモニターを眺めている。他の閣僚は各省庁にて不測の事態に対応するため待機している。
「各サイドおよび月面都市の制圧は順調です」
参謀本部から派遣されて来た中佐の言葉にギレンは笑を浮かべる。ギレンは愉悦に浸っていた。この日のためにこれまで何年も掛けて準備して来たのだ。辛い日々だった。各サイドの理解を得るためジオンへの個人崇拝を抑える。お陰で過激派から命を狙われた事も一度や二度では無い。連邦の力を削ぐため連邦議員の対立煽り派閥争いを激化させた。連邦の古狸どもの相手は胃袋に深刻なダメージを与えた。今それらの苦労が結実している。
「圧倒的だな我が軍は」
調子に乗るのも無理からぬ事だった。
「しかし妙ですな・・・」
ルーゲンスが顎を撫でながら眉間に皺を寄せる。
「何がかね?軍務大臣」
「はい、制圧が早すぎる様に思います」
「良い事では無いか」
「連邦軍の抵抗が弱すぎるのです。なにかしらの意図があるのではと・・・中佐」
ルーゲンスは中佐に指示をだす。中佐は情報を司令部に要請した。
「分りました。各地の連邦駐留艦隊は反撃をせずに撤退を繰り返しルナツー方面に脱出している様です」
「これは厄介ですな」
中佐の報告を聞きルーゲンスは苦々しい顔になる。
「どういう事かね?」
「はい、敵は各個撃破を避けて戦力の温存に注力している訳です。戦力を集中されても我が方が宇宙艦隊戦力では上回っていますが要塞火砲との連係を取られれば我が方の艦隊と言えど生半可な事では勝つのは難しいかと」
「・・・・・」
戦争は始まったばかりだった。