サイド3『ムンゾ共和国』首都バンチ『ズム・シティ』首相官邸
「うむ、よろしく頼む」
ギレンはセシリア・アイリーンとの通信を切る。アームストロングの悪行を知ったのは全くの偶然だった。共和国ニュータイプ研究所設立案が提出され被験者への説明責任と人道的配慮をしっかりする事を条件に設立を許可した時に、ムラサメ研究所やオーガスタ研究所の事を思い出した。そこで諜報部に調査させたところフォン・ブラウンから定期的に貨物が届けられている事が分かり更に詳しく調べると、人身売買が行われている事が判明した。アームストロング側の隠蔽工作は完璧だったが販売先から調査される事を考えていなかったのだろう。割とあっさりと証拠を集める事ができた。
(ムラサメとオーガスタは何れ潰すとして、今はブリティッシュ作戦に集中だ)
端末を操作して別の相手に通信を繋げる。
『ギレン閣下』
画面にスキンヘッドと髭が特徴の軍人が写し出された。
「デラーズ大佐、フォン・ブラウンへの根回しは完了した。物資打ち上げ施設を接収可能だ」
『では推進用レーザー施設を制圧。ブリティッシュ作戦の第二段階への移行いたします』
「ふむ、連邦艦隊の出撃は確認したのかね?」
『はい、約二百隻、全戦力です』
連邦艦隊の戦力は四艦隊、内一つの月軌道艦隊は開戦当初の奇襲を回避しきれずほぼ壊滅状態にある。残り三つ、地球軌道艦隊、ルナツー駐留艦隊、コロニー駐留艦隊が連邦宇宙軍の現在の主力だった。
「上手く釣り出せたか、後はタイミングだけだな、細かなところは君に任せる」
『はい、朗報をお待ちください』
デラーズの軍の教本に載せたいほど綺麗な敬礼を見て通信を修了した。次に通信を繋げる。
『これはギレン閣下お疲れ様です』
今度は小太りのちょび髭の軍人が写った。
「コンスコン少将、各サイドの反応はどうかね」
小惑星が地球降下軌道をとって以来、ムンゾのコロニーではデモやストライキが発生していた。特にエレズム(地球神聖視)の思考の強い35バンチ『キンツェム』では暴動一歩手前と言う状況で現在サスロをはじめ各官僚達が事態の鎮静化に努めている。本拠地でもこの有様なのだから当然各サイドでも反響は大きい。
『はい、各サイドではデモ行進が頻発しています。またサイド2のアイランド・イフィッシュでは暴動に発展。行政府より我軍の出動を要請されました』
ギレンは顔を顰める。
「却下だ。今の状況で軍を派遣したら悪化するだけだ。各サイドの警備隊に任せて軍はそのサポートに努めて表立って活動しないように厳命する」
『了解しました。駐留軍は裏方に回ります』
「苦労をかけるがよろしく頼む」
通信を切って次に繋げる。最近のギレンはそれを繰り返す日々を送っている。