U.C0079一月七日サイド5【ルウム】への航路 連邦宇宙軍ルナツー駐留艦隊旗艦マゼラン級戦艦【アナンケ】
ルナツーから出撃して二日、連邦艦隊全戦力は地球に落下する小惑星を迎撃する為、ルウムに針路を取っていた。本来ならば二百を超える艦隊の移動は小部隊に分けて別々の航路を分進する事で、より迅速に移動をする。しかし、艦隊は共和国軍の奇襲を警戒して三つの艦隊を一つに纏め進撃していた。その為に移動出来る航路が制限されルウムへの移動に日数を必要としていた。更に小惑星破壊の為のレーザードリルや工作器機、工兵を載せた工作艦八隻とルナツーに配備されていた核弾頭三十発を載せた輸送艦一隻、鈍足の艦艇を伴っての行軍のため速度が出せないでいた。それでも落下阻止最終ラインには充分間に合う予定だった。
「すまない。もう一度言ってくれ」
「増援艦隊が打ち上げ中に襲撃され全滅しました」
ルナツー駐留艦隊司令カニンガン中将がその報告を聞いたのは各艦隊の司令との作戦会議中の事だった。報告した兵士は沈痛の表情を浮かべ顔を伏せた。カニンガンは頭を抱えたい思いを必死に抑える。
「増援艦隊には連邦政府の政治家や官僚達が乗って居た筈だ!」
「諸供だろうな・・・」
「「・・・・」」
沈黙がその場を支配した。沈黙を破ったのは地球軌道艦隊司令のティアンム中将だった。
「いずれにせよ今の我々ではどうしようも無い、政事の事は残った政治家達に任せよう。我々は小惑星の迎撃に専念すべきだ」
「そうだな、増援艦隊が来ない以上、艦隊の編制も変更しなければ為らん」
応えたのはコロニー駐留艦隊司令のワイアット中将だった。カニンガン、ティアンム、ワイアットこれに月軌道艦隊司令のスターン中将を入れた四人が連邦宇宙軍の柱と言えた。もっともスターンは月からの撤退戦で二階級特進してしまったが。
「ルウム到着まであと八時間ほどしか無い。急ぐとしよう」
「提督!緊急事態です!!」
その時、兵士が部屋に飛び込んできた。
「何事だ?(面倒事は集団で遣って来る。誰の言葉だったか・・・・)」
カニンガンは半ば諦めて兵士に問うた。
「小惑星が加速!!迎撃予定の軌道から外れました!!」
「バカな!!」
ワイアットは思わず叫ぶ。
「降下予測地点は、何処だ!」
ティアンムの問に兵士が答える。
「地球落下軌道からは外れました」
その言葉に提督達はホッとした。だが続く言葉に騒然と為った。
「しかし、ルナツー直撃の軌道に乗りました!!」