ギレンは生き残りたい   作:ならない

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ルウム会戦(3)

共和国軍第三艦隊旗艦グワジン級戦艦【グワデン】

 

「敵艦隊加速!我が艦隊に急速接近!」

 

レーダー担当のオペレーターの悲鳴の様な報告が艦橋に響く。その声に乗組員達が騒然となる。

 

「落ち着け!!戦場で敵が来るのは当たり前だ!」

 

艦隊司令ダグラス・ローデン中将は連邦艦隊の予想外の行動に混乱した艦橋の乗組員達を一喝した。不安そうな顔をした乗組員達を見渡す。そして浮き足立った乗組員に渇を入れる為に強い口調で言い放った。

 

「敵は我が艦隊に突っ込んで来たのでは無い、虎口に飛び込んで来たのだ!!」

 

ローデンの言葉に乗組員は落着きを取り戻し始めた。

 

「全艦に通達、砲撃戦の準備をさせよ!ビーダーシュタット中佐の直援モビルスーツ隊にも伝えろ。乱戦になる可能性が有るぞ!」

 

ローデンの命令を聞きオペレーター達は指揮下の部隊に命令を伝達して行く。

 

「全艦に通達、砲撃戦用意」

 

「モビルスーツ隊は近接戦に備えよ」

 

味方の部隊の動きがメインモニターに映し出される。両翼の艦隊が敵艦隊の側面に回り込むために機動している。

 

「よしよし、他の味方艦隊も敵を包囲する動きをしているな」

 

通信も無しに艦隊が同じ目的のために行動する。このまま推移したならば連邦艦隊を射程に収めるのにそう時間も掛からないだろう。

 

「敵艦隊よりミサイル多数!数五百以上!」

 

連邦艦隊よりミサイルが全方位にばら蒔かれた。ミノフスキー粒子散布下に置いて長距離からのミサイル誘導はほぼ無力化されて久しい。しかし数が数のために艦隊には多少の脅威にはなるだろう。

 

「迎撃開始。全て落とす必要は無い、当たりそうな物だけ落とせば良い」

 

各艦のメガ粒子砲が火を吹く、ミサイルに光の矢が降り注ぐ、ミサイルは次々と落とされて行く。だがその時、妙な事が起こった。ミサイル群が艦隊に到達する前に全弾自爆したのだ。

 

「何が起こった!?」

 

オペレーターが機材を操作して状況の確認を急ぐ。

 

「・・・・ッ!メガ粒子ビームの拡散無力化を確認!対ビーム粒子です!」

 

対ビーム粒子は共和国軍でも制式化された技術だったが生産性に難が有り個艦防御を意識した装備としている。ここまでの集中運用は見越していなかった。

 

「何!?・・・・しまった!」

 

報告を聞きローデンはほぞを噛む。共和国軍の艦艇はミノフスキー粒子散布下の戦闘を意識してミサイル等の誘導兵器は重視せず、殆どの艦がメガ粒子砲を主武装としている。ドロス級とグワジン級は対空砲に至るまでメガ粒子砲のみを装備しており、ザンジバル級等は大型ミサイルの発射管を費用対効果に難が有るとしてメガ粒子砲に換装してしまっている。現在共和国軍でミサイルを装備している戦闘艦はムサイ級とティベ級のみになっている。それに比べ連邦宇宙軍の戦闘艦はレバント級を始めとしてサラミス級もマゼラン級もミサイルを装備している。

 

「ムサイ級とティベ級を前に出せミサイル攻撃を開始せよ!確実に乱戦になるぞ!各艦は近接戦闘用意!」

 

(ビーダーシュタット中佐、頼んだぞ)

 

ローデンは優秀な指揮官で有りエースパイロットでもある、歳の離れた友人の顔を思い浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

連邦宇宙軍地球軌道艦隊旗艦マゼラン級戦艦【タイタン】

 

「敵艦隊よりミサイル攻撃」

 

「迎撃!」

 

「対応が早いな」

 

先程から共和国艦隊の素早い行動にティアンムも思わず唸ってしまう。

 

「厄介ですな、此方の被害が増えてしまいます」

 

参謀の言葉に首肯く。

 

「うむ、しかし、我々も始めから無傷で勝とう等思って居ない。全艦に下令【肉を切らせて首を獲れ!!】」


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