地球連邦宇宙軍小惑星特別攻撃艦隊サラミス級巡洋艦【カンバーランド】
地球連邦宇宙艦隊本隊から分離してルナツーへ衝突する進路をとる小惑星追撃の任務に就いたサラミス級の一隻、その艦橋で双眼鏡を覗いていた筋肉質で大柄の士官が声を上げる。
「艦長、目標目視で確認できました」
副長の言葉に艦長のエイパー・シナプス中佐は双眼鏡を覗き前方を確認する。今まで艦隊から見て地球の影に隠れていた小惑星の全貌を確認した。レーダーの索敵能力が低下している現在、巨大な小惑星はレーダーより先に目視で確認出来た。
「やはり大きいな、攻撃地点までどれ程か?」
「後、二十分程で到達します」
シナプスは航海長の報告を聞き顔を顰める。
「妙だな・・・・」
「何の事でしょう?」
怪訝な顔の副長に答える。
「敵の防衛部隊と遭遇が無いのが気になる」
「小惑星に張り付いて居るのではないでしょうか?」
「それにしても前哨も確認出来ないのはおかしい」
シナプスは顎に手を当て考える。艦隊本隊からこの攻撃艦隊が分かれ小惑星に向かったのは敵も把握しているはずだ。何の対策も取っていないとは考えられない。
「旗艦に通信、敵襲に対する警戒体制を要請する。とな」
地球連邦宇宙軍小惑星特別攻撃艦隊旗艦サラミス級巡洋艦【エムデン】
「核攻撃は小惑星右側に集中する。このポイントだな」
モニターに写し出された小惑星の映像の一部をポインターでしめす。
「敵防衛部隊の推定戦力は一個艦隊、第二艦隊と推測されます」
臨時的に攻撃艦隊の旗艦の任務に就いているエムデンの艦橋には臨時で艦隊司令官に任命されたゴドウィン・ダレル准将と参謀のジョン・コーウェン大佐が此からの戦闘についての最終確認を行っていた。その時、エムデン艦長が報告を上げる。
「カンバーランドより通信が有りました。【敵襲に対する警戒体制を要請する】との事です」
「ふむ、哨戒機は飛ばしているが、どう考えるかね?コーウェン大佐」
「ハッ、・・・・言われて見れば確かに今まで敵影を見なかったのは不自然です。採用の価値有りと愚考致します」
「では哨戒機の数を倍にッ!!」
ダレルが命令を下す直前で激しい振動と共に艦内に警報が鳴り響く。
「何事だ!!」
艦長の問に副長が焦った様子で報告する。
「攻撃です!僚艦ラ・グロワールが轟沈!!」
「敵の位置と数は!?」
「真後ろ!六時の方向!」
コーウェンの声に反応して機材を操作していたレーダー担当のオペレーターが更なる報告を上げる。
「モビルスーツ十二機!不明三機!不明の三機は大型の機動兵器と思われます!」
「何だと!いったい何処から現れた!」
共和国第二艦隊所属第302哨戒中隊隊長機MS-14JG【ゲルググイェーガー】
緑の胴体と青い四肢を持つゲルググイェーガーがモビルスーツ隊の先頭を行く。その直ぐ横に赤色の矢じりを思わせる形状の大型機動兵器モビルアーマーMA-06FMM【ヴァル・ヴァロ・フルミッションモード】が並んで飛んでいる。ヴァルヴァロはその巨体に見合った大型メガ粒子砲を撃ち放った。メガ粒子ビームは連邦艦隊最後尾を航行していたサラミス級に吸い込まれる様に当たる。
「初弾で命中か、流石だなケリィ」
第302哨戒中隊隊長アナベル・ガトー大尉はヴァル・ヴァロに搭乗する戦友のケリィ・レズナー大尉を誉め称える。
『機体の性能だ。俺の腕じゃ無い』
ケリィの駆るモビルアーマー、ヴァル・ヴァロフルミッションモードは高速モビルアーマー、ヴァル・ヴァロを改造して高出力メガ粒子砲を八基搭載して火力を高め、高出力ブースターを増設して速度も上げた高性能モビルアーマーだった。更にこの機体はブースターに取手が取り付けられておりモビルスーツ四機を高速で運搬できる。ただ高性能な分、生産コストも高くなり第二艦隊には三機しか配備されていなかった。ともかくその高速性能を利用して地球軌道を低空で飛行、小惑星の反対側、連邦艦隊の背後に回り込む事を可能にしたのだ。
「良し、連邦艦隊は動揺している。ヴァル・ヴァロ隊の一斉射の後、モビルスーツ隊は全機突入!我に続け!!」
ガトーは連邦艦隊に突貫した。