ギレンは生き残りたい   作:ならない

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感想、誤字修正ありがとうございます。




終戦に向けて

地球 南米大陸 連邦軍本部【ジャブロー】

 

自身の執務室でゴップ大将は葉巻の紫煙を燻らせている。

開戦以降、統合参謀本部長として休む暇も無く書類の山と闘っていたゴップは久しぶりの余暇を味わっていた。

 

「閣下、ご休憩のところ失礼します」

 

入室してきたブレン大佐が敬礼する。

 

「構わんよ、それで政府側の代表は決まったのかね?」

 

「ハッ、未だに決定しておりません。現在、緊急で議会が開催されておりますが…」

 

陰鬱な表情のブレンにゴップは肩を竦める。

 

「喧々囂々、纏まらずか?まあ誰も敗戦の責任なぞ取りたくは無いだろうからな」

 

こんな時に責任を取るべき高官達は宇宙に脱出しようとして皆死んでしまった。

もっとも生きていたとしても素直に責任を取っていたとも思えなかったが。

 

「しかし、大将閣下は軍の代表として自ら志願したと聞き及んでおりますが」

 

「上位の者が責任を取るのはあたりまえだ。それに面倒事は早めに片付けておくにかぎるからな」

 

終戦交渉が終了し次第、ゴップは責任を問われ軍の職務を追われる事となるだろう。

 

「政治屋達にも見習って欲しいものです」

 

大佐は不満気に鼻を鳴らす。

 

「そう言うな大佐、政治家は軍隊ほど分かりやすい上下関係は無いからな」

 

とは言え、こうして居る間にも共和国側は終戦を有利に進めるための工作を行っている。

時間を掛ければ掛けるほど交渉が不利になると思うとタメ息を付きたくなる。

口から出かかったタメ息を呑み込み、気を持ち直しゴップは手に持った葉巻を灰皿に置き口を開く。

 

「それで、終戦交渉の代表の事では無いなら何の用かね?」

 

「ハッ、ヨーロッパ方面軍とアジア方面軍から意見具申が有りました」

 

「パウルス大将とライアー中将か…」

 

地上軍の二大派閥を形成する二人の将軍の顔を思い浮かべゴップは眉間に皺を寄せる。

強硬派と知られる二人の意見、内容が容易に想像できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド6 コロニー【リボー】ホテル【カミーチ&マルチェシ】

 

「皆さま、集まった様なので始めさせていただきます。議長は本件の発案を行ったサイド3ムンゾ共和国のコウサク・クロダ氏に勤めていただきます」

 

ホテルに設営された会議室で各サイドの外交官が集まった。

簡素な椅子に座っている外交官の中から一人の男が立ち上り口を開く。

 

「議長を勤めさせていただきます。クロダです。本日はお忙しい中、お集まり頂きありがとうございます」

 

宇宙世紀には珍しい純血の日本人らしい黒髪黒目の男が恭しく頭を下げる。

 

「本日、集まって頂きましたのは、開戦前より我がムンゾ共和国が各サイドの代表者の方々に提案して参りました……宇宙市民連合成立に関する事前協議と言う訳有ります。各サイドにとって有意義な協議と成るよう議長として努めさせていただきます」

 

外交官達は拍手を贈る。

数年前からギレンが提唱し始めた【宇宙市民連合】その名が示す通りスペースノイドのみで形成する政治経済の連合体である。

今は未だ各サイドのコロニー市民にしか参加を呼び掛けていないが、何れは月面都市及び木星船団等の全宇宙生活者に参加を呼び掛けて行く予定である。

 

「なお、宇宙市民連合と言う名称に関しましては仮名でありますので、ネーミングセンスに自信の有る方はぜひともご提案下さい」

 

会議室に笑いが起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド3【ムンゾ共和国】首都バンチ【ズム・シティ】首相官邸

 

執務室でギレンは秘書が淹れてくれたほうじ茶を啜っていた。

芳ばしいく爽やか香り僅な苦味とほんのりと甘い味をを楽しんでいた。

 

「ほうじ茶ラテは邪道だと思う」

 

「閣下、行けません!その手の話は泥沼化します!」

 

「そうだな…言い直そう。私はラテにするよりも普通のほうじ茶が好みだ」

 

秘書は安堵の息を付く。

その時、執務室の扉がノックされる。

 

「兄上、私です」

 

「キシリアか入れ」

 

失礼しますとキシリアは入室する。

入ってすぐ執務室に立ち込める香りに気づく。

 

「良い香りですね」

 

「ほうじ茶だ。キシリアも飲むかね」

 

「いただきます」

 

秘書に茶を持って来るよう指示すると秘書は頷き退室した。

 

「それで、キシリアが私のところに来ると言う事は」

 

「はい、宇宙市民連合の大枠が決まりました。大体が兄上…失礼、ギレン閣下の思惑通りに進んだ様です」

 

キシリアの言に苦笑いを浮かべる。

 

「思惑通りとは人聞きが悪いな」

 

それに対してキシリアは人の悪い笑みを返す。

 

「兄上は昔から腹黒いところが有りましたからね。今更、言葉を飾っても仕方がないでしょう?」

 

「ひどいな妹よ」

 

二人で声を挙げ笑いあう。

一頻り笑った後、キシリアが切り出す。

 

「しかし、良かったのですか? 宇宙市民連合発足後に共和国軍の指揮権を宇宙市民連合議会に譲渡する等と」

 

「仕方あるまい、我が国が武力を持って他のサイドを圧していると市民に印象を与えては、後々の禍根となるだろう」

 

不公平感を軽視してはいけない、何故なら共和国の独立運動も結局のところ地球市民との不公平感が根っこにあるのだから。

そう不公平【感】、必ずしも実際に公平である必要は無い、公平で有ると感じさせる事が出来れば良いのだ。

 

宇宙市民連合はU.C0085に制式に発足される事に成った。

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