ギレンは生き残りたい   作:ならない

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海底から

地球 太平洋 南米~オーストラリア間航路

 

光りの届かない水深四百メートルの海中にロックウッド級潜水艦【シーホース】がその二百メートルを超える巨体を沈めて耳を澄ませていた。

統一軍大西洋艦隊所属のこの新型潜水艦は南太平洋にて通商破壊任務に就いていた。

そのユーロ機関室では新型核融合炉が微かな非常に微かな音を立てている。

 

「ご苦労」

 

機関室に白の混じった黒髪と髭を蓄えた初老の男性、艦長ロバート・ケンハント中佐が入って来た。

 

「艦長殿」

 

機関長は脇を締めた海軍式の敬礼を更に小さくした様な潜水艦乗り独特の敬礼をする。回りの機関員達も機関長に倣おうと作業の手を止めようとした。

 

「皆、そのまま作業を続けてくれ」

 

機関員達が作業を再開したのを確認してケンハントは機関長に向き直る。

 

「機関部員に変りはあるかね?」

 

「ハッ、新型に触れられて機関部員総員士気高々であります」

 

ケンハントは新型反応炉の外装を一撫でする。こうして直接触れなければ動いているのを感じられないほど静かな機関だった。

 

「この新型融合炉はやはり静かだな、整備は面倒だと聞いたが」

 

「まぁ、そうですな中々のじゃじゃ馬ですが─」

 

機関長はニヤリと笑う。

 

「─その方がやり甲斐が有ります」

 

「フフ、そうか頼りにさせて貰おう」

 

機関長の自信に満ちた言葉と表情にケンハントは満足気に首肯く。グレートブリテン島デヴォンポート海軍基地を出港して三ヶ月、地中海からスエズ運河を抜けインド洋を通り太平洋にたどり着いてから二ヶ月半、そろそろ乗組員の気が緩み始める時期だった。ケンハントは各部署を巡回して乗組員の気を引き締めていたがこの様子ならば機関部員は問題無いだろう。

 

『艦長、至急指令室にお越しください』

 

「呼び出しか、では行くとする。後は宜しく頼む」

 

「ハッ」

 

呼び出しのアナウンスを聞きケンハントは機関室を後にする。

 

シーホース指令室はその巨大な船体に似合わず狭く薄暗い、その中に人員と様々な機材が詰め込まれている。

 

「副長、何が有った?」

 

「ハッ、航行中の大型艦とその護衛らしき艦を捕捉しました」

 

「方位は?」

 

「方位一一〇、距離一五〇、速力八ノットで北東に移動中」

 

副長はケンハントの質問に簡潔に答え補足も入れる。

 

「ソナー、艦種特定は可能か?」

 

今度はソナー員に訪ねた。

 

「遠すぎて正確には、ただ二軸で十万トンほどのかなりでかいヤツです。護衛の方は一軸で約九千トン」

 

十万トンクラスの艦種はけっこう居るが二軸となると艦種は絞られる。宇宙世紀の現在、使われている空母や強襲揚陸艦ならば全て四軸や六軸だ。二軸でこれ程の大型艦となると輸送艦、それも排水量十万トン以上の物は絞られる。

 

「マッターホルン級かアンナプルナ級、或は旧式のフガク級か…」

 

タンカーなどの民間船の可能性も考えたが護衛艦の存在があるため、その可能性は低いと判断する。

 

「航路からも外れているし定期便では無いな…」

 

ジャブローからオーストラリアの部隊への補給のため、或はオーストラリアの鉱物物資をジャブローに送るため、南米~オーストラリア間の航行は定期的に行われているがその航路からも外れている。一体何を運んでいてどこに向かっているのか。疑問が絶えない、情報が少ない。数瞬の沈黙の後ケンハントは口を開く。

 

「移動予測地点で待ち伏せを行う。加速二十ノット、方位〇九〇、深度百五十」

 

いずれにしてもこれ以上の情報を得るにはもっと近付く必要がある。または攻撃してみるのも一種の情報収集の手段である。

 

「アイサー、速力二十ノット、方位〇九〇、アップトリム深度百五十」

 

副長が復唱し乗組員達が素早く命令を遂行し始め後方に引っ張られる様な感覚が乗組員に掛かる。シーホースは静かに加速して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

南太平洋洋上 フガク級改造型輸送艦【カイセイ】

 

「フンフン~♪今日は朝から箱のなか~♪きっと明日も箱のなか~♪」

 

パイロットスーツの前を大きく開けた男が甲板で歌を口ずさみながら釣糸を垂らしている。

 

「曹長、そろそろテスト開始しますよ」

 

灰色のつなぎを着た若い整備士が呼びに来た。

 

「おう、もうそんな時間か」

 

呼ばれたパイロットスーツの男、コーカ・ラサ曹長は釣り竿をしまいスーツの前を締めてヘルメットを被り格納庫に向かう。

 

「しかっし、デカイ船だよな、移動も一苦労だ」

 

後ろを歩く技術者に声をかける。

 

「そうですね。なんでも連邦海軍最大級の輸送艦らしいですよ」

 

U.C0028に進水したこの旧式艦は一隻で主力級の艦隊を満腹にする物資を積めると言う触れ込みで配備されたが大き過ぎて使いづらく海軍ではもて余していた。そもそも統一軍の進撃で地球上の資源地帯の多くを奪われた連邦では資源不足に悩まされ大型補給艦を満杯にする様な物資が無かった。そこに共和国から資源を割安で譲る替わりに連邦の一部兵器の買取りやライセンス生産が提案されて来た。まさに渡りに船、軍部の一部の反対は有った物の共和国側の提案は受け入れられた。結果としてフガク級を始めミデア輸送機などの地球上での輸送とフライアロー戦闘機などの旧式とは言え航空兵器開発のノウハウを共和国は労する事無く手に入れる事となった。

 

そして現在このフガク級輸送艦カイセイは共和国軍により改装され試作モビルスーツの運用艦として用いられている。内部は格納庫にモビルスーツの整備を行う設備が設けられ、さらには簡単な装備を作れる工廠までも持っていた。外装にはモビルスーツを持ち上げる大型クレーン、観測用各種センサーが据え付けられている。共和国は大型輸送艦を安く買い叩いたがその十倍の資金を注ぎ込み改装されていた。

 

「ヨイショと」

 

ラサは格納庫に固定されたモビルスーツのコクピットシートに収まり、スイッチを押して反応炉を立ち上げる。独特の起動音が格納庫内に響き細かな震動をシート越しに感じる。クレーンに機体が固定される。

 

『ラサ曹長、聞こえているか』

 

サブモニターが壮年の男が映し出した。

 

「ハッ、技師長、何のご用ですか?」

 

『ふむ、連邦が派遣して来た護衛艦の事なんだが』

 

「護衛?監視の間違えじゃありませんかね」

 

連邦海軍モンブラン級ミサイル駆逐艦【モンブラン】護衛として派遣されたこの艦がその実、地球上で行動する共和国軍を監視する事を意図しているのはカイセイ乗組員ならば全員理解していた。

 

『…兎も角、お客さんの目があるからな、予定を変更して機動テストのみにして武装テストは中止する』

 

ラサは少し残念に思ったが肩を竦め笑いながら答える。

 

「了解しました。お楽しみは後に取って置きましょう」

 

『すまんな……ではテストを開始する。格納庫オープン!クレーン上げろ!』

 

けたたましいブザー音とオレンジ色のランプそして震動と共に機体が持ち上げられメインモニターに青い空と海、白い大雲が映し出される。クレーンが横にスライドして機体が海上に吊り下げられる。

 

『発艦準備良し、クレーンのロック解除をパイロットに移譲』

 

「コーカ・ラサ、ゴッグ出るぞ!!」

 

ロック解除をしようとした時、駆逐艦モンブランの横で水柱が三本上がり次の瞬間には激しい爆炎と轟音を上げながら真っ二つに割けモンブランは轟沈した。





遅くなって申し訳ありません。
特に忙しかったり体調を崩したりした訳では無いんですが、途中まで書いて急に筆が進まなくなってしまっいました。
次は出来る限り早めに更新したいなと思います。
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