ギレンは生き残りたい   作:ならない

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中尉の独白

U.C0079十一月二十七日06時00分 北米大陸 ジョージア 統一軍第44機械化混成連隊対戦車特技兵小隊長ベン・バーバリー中尉

 

俺達の連隊が北米に上陸して九ヶ月が経った。お偉方は今の戦況を停滞と言っているらしいが俺達にとっては悪化だ。

 

忌々しいミノフスキー粒子のせいで誘導兵器による長距離からの精密打撃も衛星通信や部隊間ネットワークによる高度な連携も二十世紀末から今に至るまで積み重ねられた軍事技術は一年も経たぬ内に崩壊した。

 

戦争は変わった。

 

防御のために塹壕を掘り、敵の顔を拝めるほどの距離での撃ち合い、短距離無線と有線通信そして伝令兵を使った部隊間や後方司令部との連絡、戦場は旧世紀の二度の世界大戦のころの水準まで先祖返りしている。

 

統一軍占領下の工場地帯では軍事物資の生産が優先されている。聞く所によると都市部の民間人はそのせいで物資不足に陥り、配給制が施行されたらしい、その割りには俺達に届くはずの物資はいつまでも届かない。

 

食料や医薬品、武器弾薬に至るまでだ。既に四基有った対戦車誘導弾発射機M-101A2【リジーナ】は二つが故障して残りの二つの内一つは不具合を故障した発射機の部品を使いながら騙し騙し使っている。ミサイル本体も残り三発しか無い。代わりの発射機も弾薬の補充も幾ら要請しても届く気配も無い。

 

人員不足も深刻だ。

 

栄養不足と不衛生な環境とで病気になりバタバタと倒れて行く部下達、後送された彼らの代わりの補充員は基礎訓練が終わったばかりの新兵………であればまだマシだった。

 

あろう事か送られて来たのは十五、六歳の少年兵、聞けば入隊すれば家族の配給を優遇してくれると言う口車に載せられて連れて来られたのだと言う。

 

気が付けば俺の部隊の三分のニは少年兵だ。

 

少ない食料と酷い環境は若い彼らを腐らせるのに時間は掛らなかった。

 

少し前に他の部隊の兵士達が民家を襲い略奪を働こうとした。兵士達はその日の内に銃殺刑にされたが、その兵士達は金品には目もくれず奪おうとしたのは食料だったらしい。

 

そしてその兵士達は二ヶ月前に送られて来た少年兵だった。

 

現状を良く思わない奴もいた。大隊長、嫌味野郎のコレマッタは皮肉混じりに上層部を批判したが返ってきた答えは佐官位の剥奪と懲罰部隊への編入だった。

 

これを、統一軍総司令官の信奉者は「大義を見失い自己保身に奔った裏切り」などと宣った。

 

代わりに大隊長になったのは上に媚を売るぐらいしか能の無い低脳で「進め」か「攻撃」ぐらいしか命令しない……まさかあの嫌味野郎を恋しく思う日が来るとは思いもしなかった。

 

今日もクソ垂れな一日が始まる。

 




「隊長、混線して無線に妙な通信が」

「なに?貸してみろ」

『…リーン…繰…す…アイリーン』

「……何処かのアホが恋人の名前でも叫んでるんだろ」

「司令部に報告しますか」

「ほっとけ」
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