今回は番外編となります。速い段階でモビルスーツを開発して研究も順調に進めばこう言う事も起こるだろうとふっと思い書きました。
あくまでも番外編、時間が飛びますが本編とは別なのでご注意ください。
U.C0078 L2 宇宙要塞『ア・バオア・クー』モビルスーツ格納庫
最新鋭のモビルスーツが並ぶ其の片隅に旧式のMS-05ザクが一機だけ駐機されていた。装甲は傷だらけバーニアの回りは黒く焦げ付いて修繕の痕も目立つ、其の足下で一人の若いパイロットが床磨きをさせられていた。
「精が出るな、ニッキ少尉」
其処に短髪の壮年の士官が声をかける。
「ル・ローア大尉、ご苦労様です」
若いパイロット、ニッキ少尉は背すじを正し敬礼する。
「マットの奴に随分シゴかれた様だな」
「はい、模擬弾をしこたま撃ち込まれましたよ」
「其れで床磨きか?」
「新型を汚した罰だそうです」
ニッキは05の反対側に駐機されている自分の機体を見上げる。出撃前はピカピカだった装甲が今はピンク色の塗料で斑模様になっている。
「自分も新型を受領して少し調子に乗っていたかも知れません」
「反省もけっこうだが余り気にするな、慣らしもそこそこに行きなり模擬戦では俺でも苦戦する。其に奴の05はかなり手を入れている新型のアドバンテージは思う程では無い」
「そうですかね?」
「ところでマットの奴が居ない様だが何処に居る?新型との戦闘の手応えを聞いておきたいのだが」
「オヤジさんなら一服すると言っていましたから、おそらく喫煙所かと」
「わかった、其と模擬戦の報告書、今日中に出しておけよ」
ル・ローアの去り際に放った言葉にニッキは深いタメ息を着いた。
ア・バオア・クー 『一般兵士用喫煙所』
ア・バオア・クーの喫煙所は全体の巨大さに比べ少なく高級将校用と一般兵士用の計二ヶ所しか存在し無い、スペースノイドの喫煙者は元々少ないためだ。コロニーと言う密閉空間で空気を汚染する用な行為は御法度だし連邦政府が地球のオーガニック農業保護の名目でコロニーでの煙草や酒等の嗜好品の生産に制限を設け地球からの輸入以外では手に入らないようにしている。その為嗜好品分けても煙草はコロニーでは高級品としてなかなか手に入らない物となっていた、もっともムンゾ共和国ではここ数年の間に嗜好品の生産を推進しているため一般人が手を出せない様な高級品ではなくなった。(5バンチ『ボルドー』の完全コロニー産ワインはけっこうな高級品だが)ともかくもそんな喫煙所で紫煙を燻らすスキンヘッドの男マット・オースティン軍曹は先程の模擬戦の内容を頭で反芻していた。新型を受領して気が大きくなっていたヒヨッコの根性を叩き直すために模擬戦を組んだ訳だが、結果的に勝利は出来た物の内容は新型機への不慣れを突いての薄氷の勝利だった。もし慣熟訓練を充分に積んだ状態で戦っていたら結果は逆になっていただろう。
(スッキリせん)
マットが唯の歩兵からモビルスーツパイロットに抜擢されたのは既に十数年前のこと、それ以来05に乗り続けた。05の問題点を改良したとされる後継の06が配備されても05に乗り続けていたのは歩兵時代の上官の「装備を体に合わせるじゃ無い、体を装備に合わせろ」と言う教えが染み付いていたためだろう、それ以来06が改良され更に高性能な新型が配備されても05で突っ張り続けた、同僚や上官は機種転換を進めてきたが回りに認めさせる力を示し黙らせてきた。だが今まで後方支援等で使われてきた05も改良型や新型の配備に伴い06置き換わり去年には部品の生産が終了した。其処に最新鋭主力モビルスーツ配備である。
「俺も相棒もロートルになっちまった、てことかね」
「何を独り言を言っている」
「こりゃ大尉殿、大尉殿も一服ですかい?」
ル・ローア大尉との付き合いも長くなった。歩兵の頃からだから、既に二十年近い付き合いだ。
「俺は吸わん、其よりニッキとの模擬戦はどうだった、かなり苦戦した様だが」
「どうも何もアイツはまだまだヒヨッコですよ、せっかくの良い機体が・・・」
「ん?どうした?」
マットは自分の言葉がモヤモヤした心にスットンとはまる様な感じがした。「良い機体」そう良い機体なのだ、一度其を認めてしまえばスッキリした心持ちに成った。
「大尉殿、自分は・・・」
「なんだ?」
ル・ローアはいぶかし気に聞き返す。
「自分は退役します」
「はぁ!?貴様何を行きなり!?」
「これからは自分の様な頭の硬い老兵では無く新しい物を取り入れられる柔軟な人材が我が国には必要でありますから」
「軍を辞めてどうするつもりだ?」
「何か堅気の仕事を探すつもりです。それじゃ自分は退役願を出して来ますんで失礼します。」
ビシッと敬礼したあと踵を返し喫煙所を後にした。後ろからル・ローアの声がするが振り返らない。
(軍を辞めるか、せっかくだ女房の奴と暫くのんびり旅行するのも良いかも知れんな)
思い返せば妻と一緒に成ってからそんな時間を過ごしたことはなかった。
(こんなロートルに長らく付き合ってくれるとは、女房も物好きなもんだ)
マットは何処か晴れやかな気持ちで退役願を書き上げた。
数ヶ月後
「で、女房に説教されて戻ってきたと・・・」
新型機への転換訓練を受けるマットと其に呆れるル・ローアの姿があった。
「女房の奴に「あんたなんかを雇ってくれるのは軍隊しか有るわけ無い」とケツを蹴り上げられましたぜ」
「良い女房じゃないか、あとは退役願を保留してくれていた、シュマイザー大佐にも感謝するんだな」
「全く本当に良い女房と上司に恵まれましたよ」
マットの戦いは続く
ガンダム世界ではロートルと書いて古強者と読む