サイド3『ムンゾ共和国』首都『ズム・シティ』周辺宙域 共和国軍宇宙艦隊旗艦『グワジン』
象徴としての艦より艦隊旗艦としての能力を重視された暗灰色(朱色だった物を塗り直した)の巨艦の内部は原作の豪華絢爛な宮殿染みた内装と打って変わって薄暗く大量の機材と大人数のオペレーターが働き各所に指示を飛ばしている。そして正面の巨大なメインモニターにはズム・シティ内の首相官邸が写し出されていた。
「犯人からの要求は?」
モニターを睨み付けるように見ながらギレンは安全保障担当補佐官の将軍に訊ねる。
「今のところはありません」
補佐官のルーゲンス中将は簡潔に答える。
「首相官邸が占拠されるとは、しかし閣僚会議の為に警備は厳重にしていた筈だが?」
「警護担当官に由りますと余りに物々しい警備は市民に不安を与えると首相の判断でいつも通りの警備状態だったようです」
「其でテロリストに襲撃されたら意味が無かろう!」
「申し訳ありません」
ルーゲンスが頭を下げる。
「あっ、いや貴方のせいではないのだからそうも畏まる必要は無い」
「は、しかしギレン軍務大臣がご無事なのが不幸中の幸いでした」
「新型戦車の選定会議が白熱してね、気が付いたら閣僚会議の時間を過ぎていた訳だ。変態技術者共め!砲塔は回す物で飛ばす物では無いぞ!」
「は?」
「何でも無い、其よりテロリストの情報は何か掴めたかね?」
「官邸周辺の監視カメラの映像を解析中であります。・・・・・今完了しました」
ルーゲンスがオペレーターの一人に合図するとメインモニターにトラックの荷台から出てくる武装集団の映像が写し出された。続いて其の中の一人の顔が拡大される。
「この男はレントン・オーニアテ、テログループ地球の息子のリーダーと目される男です」
オペレーターから渡された資料を読みながらルーゲンスが説明する。
「地球の息子と言えば確かウィルヘルムファーフェンの・・・」
「はい爆破実行犯として全てのコロニーで指名手配されているグループです」
「そんな連中がどうやったてサイド3しかも首都バンチに入り込める?」
「目下調査中ですがウィルヘルムファーフェンの時と言い今回と言い何等かの後ろ楯が有る筈です」
ギレンは顎を撫でながら思考する。その時オペレーターが叫ぶ。
「ダイクン首相からの連絡です!!」
「なに!メインモニターに回せ!」
スピーカーからジオン・ズム・ダイクンの声する。
『私だダイクンだ』
「閣下ご無事ですか?」
『ああ今は護衛のジューコフ大尉と一緒に資料室に隠れている』
ギレンは資料室の位置とジューコフのデータをモニターに出すようにオペレーターに命じる。
(ロイ・ジューコフ大尉・・・・成る程優秀な軍人の様だ)
「首相ジューコフ大尉と代わって頂けますか」
一拍の間の後でジューコフ大尉が通信に出る。
『ロイ・ジューコフ大尉であります』
「軍務大臣のギレンだ、早速で悪いが大尉の知る限りの官邸内の情報が欲しい」
『はい閣下、敵は約三十名程で自動小銃、短機関銃及び手榴弾を装備しています。デギン・ザビ副首相以下閣僚の皆様は三階会議室に他の人質は一階メインフロアに其々捕らわれています』
思った以上の詳細な情報に驚きながらもルーゲンスは各所と情報を擦り合わせ情報の精度を精査し始めた。
「解った、今救出プランを練っている。作戦まで首相は任せたぞ大尉」
『了解しました。首相に代わります』
『ギレン君』
「はい首相」
『事態が事態だ、首相権限を持って君を首相代理に任命する。全力を尽くし事態の沈静に努めてくれ』
其の言葉にギレンは身震いする。原作のギレンは喜んで拝命しただろうが今生のギレンは出来れば裏方に居たい、そもそも軍務大臣等と言う役職も自分には荷が重いとさえ思っている。がしかしそうも言って居られない。
「首相代理の任拝命致します」
襟を正し真っ直ぐに答える。
『うむ、頼んだ』
通信が切れる。ギレンはその場にへたりこみそうになるのをこらえたがそんなギレンに追い討ちをかける報告を受ける。
「首相代理早速で申し訳ありませんが問題が発生しました。ウィルヘルムファーフェン暗礁宙域で連邦艦隊を発見したと報告が宇宙艦隊司令部から上がって来ました」
「成る程、連邦が裏に居た訳か、余程我々と事を構えたいと見える」
ギレンは覚悟を決めた。
「宜しいでは望み通りにしてやる」