サイド3 ムンゾ共和国軍総司令部
ククルス・ドアンは困惑していた。いきなり総司令部に呼び出されたと思えば通信用大型モニターの前に立たされたのだ。さらにモニターに写し出された人物を見て度肝を抜かれた。
『軍務大臣兼首相代行のギレン・ザビだ』
「は!小官はククルス・ドアン少尉であります!」
軍事教練とは偉大な物で偉いさんの前に立つと自然と敬礼が出来てしまう。
『なんとククルス・ドアンか!?』
ギレンが何やら興奮している。
「自分に何か有りましたか?」
『コホン、いや何でも無い。それより貴官はモビルスーツの格闘戦に優れたパイロットと聞いている』
確かにドアンは部隊一の格闘能力を持っていると自負している。
『それに器用さも随一とも聞く』
連邦への偽装工作の一環として流したウソ情報を面白がり部隊間のお遊びで卵を潰さずに割るという事をやり、一番上手くやったと自分でも思っている。
『そんな貴官にやって欲しい事が有る』
首都バンチ『ズム・シティ』首相官邸近くの公園
ククルス・ドアンは自分の愛機MS-06FZザクⅡ改のコクピットで待機していた。
(こんな作戦思い付くとはギレン大臣は天才か或いは大馬鹿者だな・・・・・・・・たぶん後者だ間違いない)
『少尉準備は良いですか?』
オペレーターの声で考えるのを止め作戦に集中する。
「此方ククルス・ドアンいつでもどうぞ!」
『了解、作戦開始まであと二十秒・・・・・・・・・・あと十秒・・・・・五、四、三、二、一作戦開始!!』
ドアンはフットペダルを踏む、スラスターが火を吹き出してザクが加速する。勢いのままに首相官邸に突撃する。官邸に激突すると思われた瞬間ザクは地面を踏み込み勢いを関節を通して腕に回す。野球の投球ホームの様に腕を振りかぶり手に持ったヒートホークを官邸の外壁に叩き込む。ヒートホークを抜きその場に捨てると開いた穴に今度は手を突込み穴を広げる。
「此方ククルス・ドアン突入口を開いた!」
『了解!突入班は突入開始!』
待機していた特殊部隊が一斉に開いた穴から内部に進入して行く。
首相官邸内
突入した部隊は素早く各部屋を制圧して行く。ドアを蹴破り閃光手榴弾を投げ込みテロリストは射殺した。
「食堂クリア、六名射殺、死傷者無し」
「応接室クリア、三名射殺、死傷者無し」
「広間八名射殺、死傷者一、人質を確保、クリア」
「此方会議室各閣僚を確保、二名射殺、死傷者無し、クリア」
「第三通路で敵と交戦中・・・・・排除完了三名射殺、前進する」
「此方資料室!首相の身柄を確保!」
その日に起こった首相官邸占拠事件は発生から約二時間で幕を閉じた。実行したテロリストは全員死亡、警備員七名と突入部隊の隊員一名が殉職したものの人質には命の別状は無かった。また暗礁宙域で激しい閃光を見たとの目撃情報が有ったが事件には関係の無い事故として処理された。
原作設定モビルスーツからの脱出
ジオンのモビルスーツには脱出装置が装備されていた。友軍機に脱出コールは必ずする。シート中央に有る脱出リングを勢い良く引くと胸部装甲がはね上がりコクピット内は真空に成ると同時にパイロットはシートに固定されシートごと射出される。(脱出装置リングを引いても作動しない場合は胸部装甲強制排除装置を作動してもう一度リングを引くそれでも作動しない場合は自力で脱出)シートの脱出リングが引かれると0.25秒でリニアによりシートごと射出される。射出後ブースターを点火、最大で三十秒ブースターは作動を続ける事が出来る。五秒後には約一キロ離る事が出来る。充分離れたらリバースロケットを点火友軍の作戦宙域から離れ過ぎない様にする。脱出後はシートが太陽に正対するように体勢を変え太陽光発電パネル、脱出ビーコン、通信アンテナを展開して救出を待つ、宇宙空間で最短三日間生命維持(空気は最低五日分)が可能な様に装備が設置されている。脱出者の救助は南極条約で保証されている。脱出者を攻撃したり救助作業を邪魔するのは南極条約で禁止されている。また例え敵兵で有っても救助を求められた場合救助しなければならない。例え上官の命令で有っても南極条約が優先される。