第1話:転生してからの日常
「・・・随分懐かしい夢を見たな。」
気だるげな眠気から、眼を覚ます。随分とまぁ、懐かしい夢を見たものだ。オレがこの世界、『天上世界』で生きていく事となった初めてのきっかけ。その原点を。
今のオレは、『クレア・バラージュ』という名前でこの世界を生きている。転生した当初は、(まぁ原作通りといえばそうなんだが)名前以外の記憶を失っていて*1同じく記憶喪失だったとある斬ル姫と一緒に旅をする事となり、現在は『ラグナロク教会*2』所属のマスター*3として、仲間のキル姫達と共に、日夜任務に励んでいる。
「あっ、ようやく起きられましたかマスター?」
「ん? あぁ、ティルか。」
寝ていたオレが起きたのに気づいて、桃色ロングヘアーの赤目の少女が話しかけてきた。彼女が、さっき言っていた初めて出会ったキル姫、ティルフィング。オレは『ティル』って愛称で呼んでいる。
彼女もまた、オレと出会った時は記憶喪失で、自分がキル姫で『ティルフィング』という名前だという事と、この世界の事についてしか覚えていなかったぐらいだ。
今では、オレも彼女もある程度記憶を取り戻しているものの、まだ完全ではないところが歯がゆい。まぁ、そこに関しては二人とも、『ゆっくり取り戻していく』という結論に達しているため、特に取り立てて気にしているというわけでもない。
ちなみにティルは、オレが『転生者』という異分子である事を知る数少ない人物の一人だ。なので、その手の話を相談できるっていう点でも、彼女に対する信頼は一番大きい。
まぁ、そんな説明はさておき、今はもうすぐお昼時といった所。オレ達は今、教会から依頼された事務作業をしており、教会への報告書や人事案件、承認事項やその他諸々にサインやらなんやらをしていた所だ。幸い、書類が汚れたりする事はなかったようだが、簡単に状況を整理すれば、今の今まで寝てサボっていたという事になるだろう。
「・・・って、オレどれくらい寝てた?」
「ざっと30分ほど、といったところでしょうか。」
「マジか・・・。ヤベェ、事務仕事中に寝すぎたな。相方が『アロさん』や『シェキさん』じゃなくて助かった。」
「まぁ、あの二人なら寝てたら即座に叩き起こしそうですけど。」
「アハハ、違いない・・・。」
あの二人は割とこういうの厳しいからなぁ。まぁ、アロさんはそもそもキラーズの性質上、武人然としてるから、あんまり事務作業とかに突き合わせた事は無いけど。
ちなみに、『アロさん』っていうのは『アロンダイト』さん、『シェキさん』は『シェキナー』さんっていうキル姫の事だ。どっちも規律や規則といったものには厳しく、さっきみたいに寝てたらまず間違いなく説教コースはおそらく免れられない。ただこの二人、プライベートにおいてはある一点がどうにもそりが合わないようで、ごくたまに揉めてるのを見かける事があるそうな。プライベートだとだいたいオレはティルかもう一人と一緒だからか、そういう話を聞くとちょっと見てみたいと思ってしまう。まぁ、俗にいう恐いもの見たさというやつだが。
「さてっと。じゃあキリのいいところまでやったら、一旦昼休憩入れるか。」
「はい。」
それからオレは机での寝起きで凝り固まった体を解した後、ティルと一緒に本日の事務仕事をある程度片づけ、昼休憩のために食堂へと移動したのだった。
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ティルと一緒に食堂へ行くと、昼休憩に来てたキル姫や教会の人達がたくさんいた。二人で座れる場所を探していると、ぽわ~っとした陽気な声が聞こえてきた。
「あっ、マスターくん! それにティルフィングちゃんも! 二人とも、今からお昼休憩?」
「おぉ、フライ姉。まぁそんなところかな?」
声をかけてきた彼女は『フライシュッツ』。『魔弾の射手デア・フライシュッツ』と呼ばれる凄腕のガンナーで、『エンシェントキラーズ*4*5』と呼ばれるキル姫の一人だ。物騒な二つ名とか、とんでもない過去話が紛れてるが、本人は普段陽気でぽわ~っとしていて、天然な感じだ。正直な話、ときどき見てて危なっかしい時があるのだが、やる時はきっちりやってくれるため、うちの隊でも頼りになる仲間の一人だ。
ちなみに、『フライ姉』というのはオレが呼んでる彼女の愛称で、理由は一人称が『お姉ちゃん』だからなのだが、どうにもお姉ちゃんしてる時があまりないらしい。ま、まぁ姉がぽわ~っとしてるから、それを(義理だが)妹(?)であるオレや、本来の彼女の妹がフォローしてると考えれば、まぁ間違っては無いのだろう。
そんな彼女は、オレとティルが席探し中だと知ると、自分の席に俺たちを招き寄せた。
「ここ、ちょうど席空いてるよ~。ロンギヌスちゃんやクーちゃん、レーヴァちゃんも来てるけど、いい?」
「オレは別にいいよ。ティルは?」
「私も、マスターがいいのなら構いません。」
「そっか。じゃあフライ姉、お言葉に甘えさせてもらうな。」
「うん♪ 皆もきっと喜ぶと思うよ~。」
フライ姉に招かれるまま席へ行くと、そこにはフライ姉の他にも、事前に聞いてた3人――少し横にはねた茶髪ショートの優しげな『ロンちゃん』こと『ロンギヌス』、銀髪ロングの気だるげな『レヴァさん』こと『レーヴァテイン』、ピンク髪ツインテールの元気溌剌な『クーゲル』こと『フライクーゲル』――もいた。ロンちゃんはこちらを見ると顔をパァッと輝かせ、クーゲルは「あっ、マスター!」と元気よく声をかけてきた。唯一、レヴァさんだけはこちらに気付いてないのか、黙々とご飯を食べていた。
「よっ、3人とも。悪いけど、オレとティルも相席させてもらうな。」
「失礼しますね。」
「マスター、ティルフィングさん。こんにちは。」
「Hey、マスター! ティルフィング! 『ヘァピィ☆*6』してる?」
「アハハ、まぁそれなりにだな。」
「相変わらず、貴女達姉妹*7は元気ですよね。」
「アハハ~、褒めても何も出ないよ~。」
「で、ティルフィングは『ヘァピィ☆』してる?」
「・・・まぁ、私もそれなりに、ですね///」
クーゲルの質問に、照れながらも返事するティル。ティルは割りと、こういうノリの相手には振り回されてる事が多い気がする。まぁ、普段は比較的落ち着いてて物静かなティルにとって、基本テンション明るめなフライ姉達『魔弾姉妹』は苦手ではないものの、未だに慣れないところがあるのかもしれないな。ってあれ? ロンちゃんも割とこういうノリ、ティルとは違う意味で苦手だった気がするが。
「そういえば、ロンちゃんやその~、そこで飯食いつづけてるレヴァさんは何でフライ姉達と一緒に?」
「あ~、実はですね――」
ロンちゃんはオレとティルに、ここまでの経緯を教えてくれた。どうも、最初はロンちゃんとレヴァさんだけだったのだが、途中からクーゲルがフライ姉と一緒にここに来たらしく、席も二人で使うにはちょっと広かったため、一緒に食べ始めたとの事。って事はフライ姉・・・、最初からこの席にいたわけじゃなかったのか。ありゃ最初からここにいた感あったが、そういう訳じゃなかったのか。まぁ、別にそれをとやかくは言わんが。
「なるほどな。」
「じゃあ、レーヴァテインはその時から?」
「あ~、はい。おそらく、その時からずっとこんな調子かと・・・。」
「・・・アレ? マスターとティルフィングじゃん。アンタ達もこっちに来たの?」
オレ達がロンちゃんと話していると、ようやくこちらに気づいたのか、レヴァさんが昼飯をかき込んでいた手を止め、こちらを気だるそうに見てきた。
「おぉ、悪いなレヴァさん。ちょっと今、席があんまなくてな。」
「申し訳ないけど、相席させてもらってるわ。」
「ふ~ん。まぁ、別にいいよ。気にしないし。ってあれ? 食器ないけど、もう食べた感じ?」
「「えっ?」」
レヴァさんの不意の質問に、ふと自分達の目の前を見る。そして、二人して席を確保する事ばかり考えていたため、昼食を買うのを忘れていたのに気づいた。そう言えば、なんか足りない気はしていたのだが、よりによって忘れちゃいけないのを忘れていたとは・・・。
「あっ、ヤッベ! そういや買い忘れてたわ!」
「そう言えば、どちらも席を確保する事に夢中でしたね。」
「だな。そういう訳で悪い、フライ姉! ちょっとティルと一緒に飯買ってくるから!」
「すぐ戻ってきます。では!」
「は~い、いってらっしゃ~い。」
慌てて飯を買いに行くオレ達。その後ろからゆるーい声で送り出すフライ姉。そう言えば、姉妹でも口調は全然違うよなと、少しどうでもいい事を考えながら。
余談だが、喋りながら食べてたせいか昼の仕事が少しずれこんだのだが、ロンちゃんも手伝ってくれたおかげで、今日中の事務仕事は何とかギリギリ間に合った。
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その日の夕方、オレは今日の事務仕事を終え、自室にて休憩していた・・・、のだが。
「~~~♪」
「・・・あの~、ロンちゃん? オレ、いつまでこの状態なのかな?」
「え~、いいじゃないですか。最近ティルフィングさんばかり構ってもらってて、私だって、嫉妬ぐらいしてるんですよ?」
そういって、オレを膝枕して頭をなでるロンちゃん。最初のころはこんな事をするだけで、互いにビクビクしてたというのに、随分と慣れたものだよな。というかロンちゃん、『嫉妬』は確か、君のブラックキラーズ*8*9*10が司る『業』だったよね? まさか、元々そういう気質はあったってことなのか? っていうか、ロンちゃんって確かキリスト教(正確に言うとその経典の聖書)関係の民話・神話出身って事もあって、一応敬虔なキリスト教信者だったよな? こういうのって・・・、う~ん、どうなんだろう。生前、無神論者だったがゆえに、その辺わからんのがツラい。
(まぁ、本人は楽しそうだし、別にいいか。)
「どうしましたマスター?」
「ん? あ~いや、楽しそうだなぁって思っただけだから、気にしないで。」
「・・・マスターは、楽しくないですか?」
「ん~や、最初は気恥ずかしかったけど、慣れちゃえばそうでもないかな。こういう時間も、割りと好きっちゃ好きだし。」
「マスター・・・///」
「なるほど。じゃあ、マスターも着せ替えには慣れてるはずですし、今からどうですか?」
「ん~、そうだなぁ・・・、って、えっ?」
あれ? 何か今、この部屋から聞こえるはずのない声が聞こえた気が・・・。そう思って怪訝な表情をして扉の方に顔を向けると、そこには、それはそれは良い笑顔をしたティルが、手に(どこで買って来たかわからないが)少し露出のキツそうな服を持ってこちらを見ていた。
「・・・あの~、ティルさん? その手に持ってるのは・・・?」
「フフフ、マスターなら、言わなくてもわかりますよね?」
・・・マズい。何がマズいって、このままだと、俺の貞操が色々とヤバい。何よりこの状況が、マズさに拍車をかけてやがる。今オレはロンちゃんに膝枕されてる状態。その上、目の前にはティル。いや、今オレの前にいるのはティルじゃない。クール系着せ替え魔人『T氏』だ! というか、このままだとロンちゃんまでファンシー系魔人『L氏』になるかもしれない。そうなったら、一巻の終わりだ・・・。
「・・・・・・あ~、ごめん二人とも。オレちょっと緊急の用事思い出したから、この辺で――」
「――フフッ。逃 が し ま せ ん よ ?」
「――そうですよ、マ ス タ ー。」
「・・・アハハ、デスヨネー・・・・・・・。」
まぁ、普段から『異族』なんていう奴らとずっと戦ってる二人のキル姫からあの体勢で逃げられる訳もなく・・・。
―――こうして、オレの記憶にまた一つ、新たな『着せ替え』という名の黒歴史が刻まれる事となった。毎度思うんだが、オレを着せ替えして何が楽しいのだろうか、あの二人は・・・。と、後日疑問を『T氏』のもう一人の(というか原作的には本来の)着せ替え対象である『D氏』こと妖精の『デュリン*11*12』に聴いてみると――
「ん~、何かあの子達の琴線に触れるものがあったんじゃないの?」
「琴線に?」
「えぇ。アタシもティルフィングに一回聞いてみた事があるけど、そしたらあの子、『何というか、着せ替えし甲斐があるというか・・・。』とか言うのよ?」
「着せ替えし甲斐がある、ねぇ。ん~、よくわからん。」
まぁ、人の趣味にとやかくいうのもアレだし、別にあの二人も、本当に嫌がるラインまでは踏み込んでこない。その上仕事もちゃんとやってるし、それに公私共に頼りになる存在だ。それに、ティルはともかくロンちゃんは、本当は心の優しい、戦う事すら嫌いな子だ。こういう時にガス抜きをさせてやらなきゃ、やってられないだろう。ならまぁ、せめてあぁいう時だけでも、好きにさせてもいいかと思った―――。
「―――なら、分かるまで付き合いますよ? マスター。デュリン。」
「―――マスターの方は、私もお供しますね。ティルフィングさん。」
「「・・・ゑ?」」
―――翌日、ある一室から悲鳴か何か分からない可愛らしい声が二つ、響いたらしいが、それはまた、別の話。
主人公の設定はこんな感じ。
クレア・バラージュ(Clare Balazs)
イメージCV.好きな方でどうぞ
性別:男性(ただし見た目的には女、俗に言う男の娘)
身長:156cm(ティルより少し小さいくらい)
年齢:18
設定:
天上世界にて、ティルフィング達キル姫キラープリンセスを束ねるマスターの一人。
性格は明るく気さくだが、どこか気取った感じのしゃべり方を好む節がある。他人を褒めたり、笑顔になるのが好きだが、自分の事になると評価は割と下目に見てしまう悪癖があり、本人も自覚はあるも、直せなくて少々困ってる模様。
元々はサブカル好きなただのオタクだったが、テンプレ的な事故により死亡。
そこを神様に拾い上げられるも、転生先が『ファンキル』だと知ると、『外見と声を女性に』という外向きの特典以外は何も望まずそのまま承諾。
そして、転生後記憶を失い草原で倒れていた所をティルフィングに助けられ、以後彼女と行動をともにしてきた。
今では記憶もある程度戻っていて、「自分が転生者という『異分子』」という自覚もあり、一時期そのことでいろいろと苦悩するも、現在ではティルフィングやその他大勢の仲間達と日々を逞しく生き抜いている。
趣味は歌を歌う事と、カッコいい事探し。特に後者は、普段隊の皆に着せ替え対象として弄られる様になってから始めた事だが、「『漢』としてのカッコよさを求めようと色々する姿と普段のギャップで余計可愛く見えて仕方がない」とは、着せ替えの主犯のT氏とL氏の談。なお、歌は普通に上手い。
また、彼には彼自身知らない何かがあるようで・・・。
他のキャラの設定も、随時載せていきます。