Fate/Phantom Order   作:坂本コウヤ

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今回もレヴァさんことレーヴァテインがキャラ崩壊を起こしてるかもしれません。
見てる人によっては不快に思うかもしれませんが、ご了承ください。

あと、書き溜めのストックが実はつきちゃったので、ここから投稿がちょっと不定期になります。すみません。今週中に最低でも序章は終わらせて、FGOのストーリーに突入したいと考えてはおりますので、楽しみにしててください。

お知らせはこれぐらいにして、後編をどうぞお楽しみください。


第5話:異世界からの襲撃(後篇)

「・・・さて、思わぬ助っ人・・・、と呼んでいいのか分かんない『鬼神(バーサーカー)』が来ちゃった訳だが・・・。ティル、『アレ』と共闘とかできそうか?」

 

「・・・3分7分、といった所ではないでしょうか?」

 

「ハハハ、だよな・・・。ハァ・・・。」

 

 

 スケルトン達を生み出している召喚陣を破壊するため、色々と作戦を練ってる俺達なのだが、物理干渉の可能性を捨て切れず、動き出せずにいた。だがそこに、おそらく偶然か何かで爆睡していた『破壊の鬼神(レーヴァテイン)』を起こしたバカがいたようで、現在辺りを更地に変えかねない勢いでこちらへ侵攻してきていた。

 一応、味方ではあるので会話は可能だろうが、果たしてこちらと共闘してくれるかというと、ちょっと微妙な所である。それに以前、俺はアイツを無理やり起こすという愚行を犯した結果、敵も味方も死病累々、挙句オレまでミンチにされかけたという前科があるため、まともに執り合ってくれるかどうか怪しいというのが、オレとティルの見解なのだ。普段は割とどうでもよさそうな表情をしてるくせに、嫌な事に関しては割とネチネチとついてくるのが、うちの隊のレヴァさんこと、レーヴァテインなのである。

 とはいえ、ここでもたついていてはいつまでたっても状況は進展しないだろう。一応、ビーチ方面へ向かってるスケルトン達、特にゴーレムに関してはレヴァさんによって入念かつ徹底的に粉砕されてるようなのでそっちは大丈夫かもしれないが、街側がやばいかもしれない。アスカロンやロンちゃん、クーゲルにフライ姉がうまく戦線を維持できていればいいのだが。

 

 

「・・・ここで悩んでても仕方ないか。よしティル、とりあえずいくか。」

 

「っ、何か作戦があるんですか?」

 

「あぁ。まぁ、『鬼神』と化してるレヴァさんを説得、ないし誘導しないといけないが・・・。」

 

「・・・もしものときは、仲介しますね。至らないかもしれませんが。」

 

「あぁ、頼むな。」

 

「はい。」

 

 

 ティルとオレは短く言葉を交わすと、今もまだ暴れる『鬼神』へ協力を仰ぐべく、行動を開始した。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――接敵。一閃。潰す。壊す。

 

―――新手。発見。一閃。破壊。

 

 

 気持ちよく爆睡していた私を叩き起こした異形(愚者)共を、自分の剣で力任せになぎ倒す。寝起きや怒ってる時って、よく思考が鈍るとか聞くけど、今の私は普段から考えられないくらい頭の中がクリアになっていた。これ、俗にいう『怒りすぎて頭が逆に冷静になってる』って状態なのかもしれないけど、そんなことは今の私にはどうでもいい。そう、今重要なのは、このウザったい睡眠妨害の雑魚共を一分、一秒でも早く殲滅する事のみ!

 

 

「ハァァァァァァ!!」

 

 

 怒りのまま、衝動のままに、自らの記憶に宿る破滅の力を振るう。辺りが更地になろうが構うものか。それでコイツらを殲滅出来て、また気持ちいいまどろみの時間に戻れるのであれば、周りがどうなろうが知ったこっちゃない。自己満足? 大いに結構。言いたいヤツには言わせればいい。私は、ただ日々をのらりくらりとゆっくり生きれればそれで――

 

 

「レーヴァテイン!!」

 

「・・・あ゛っ゛?」

 

 

――雑魚共を潰していると、横から誰かが呼ぶ声が聞こえた。全く、誰よこんな時に? と、顔を向けると、声を掛けてきたのが誰か分かり、少しだけ思考が冷めた。

 

 

「・・・マスターに、ティルフィングか。何? 今忙しいんだけど。」

 

「レーヴァテイン、私達に協力してくれませんか? この異形達を、これ以上のさばらせない為にも。」

 

「異形? ・・・あぁ、この睡眠妨害してきたヤツら?」

 

「そ、そうそう。で、コイツらどうも、この先の召喚陣から次々に出てきてるんだよ。それこそ、ウジ虫の大群が如く。」

 

「・・・それで?」

 

 

 剣をふるって、近づいてくる雑魚共を潰しながら、マスターとティルフィングに話の続きを促す。正直、相手がどこからどう出てくるとかどうでもよかったのだが、マスターが言った『召喚陣』という言葉から、それを潰せば、後はこのあたりのヤツらを掃討してはいおしまいとなるはず。ただ、それだけならティルフィングとマスターだけでもどうにかできるだろうから、私に協力を持ちかけてくる意図が分からない。私だって斬ル姫だ。怒りに任せていようと、それぐらいの思考はできる。

 となると、私に協力を持ちかけないといけない何かが、その『召喚陣』とやらにあるのだろう。そう思って話を促したら、案の定メンドーな事が絡んでいた。

 

 

「その召喚陣なんだが、地面に直に描かれた魔法陣の上に出現してるんだよ。ティルとオレの推測だと、おそらく何らかの物理干渉を防ぐものがあると思うんだ。あんなでかい図体したのをホイホイ呼び出しといて、魔法陣の方に何も影響が出てないのはおかしいしな。」

 

「・・・なるほど。そこで私の出番ってわけ?」

 

「はい。今から非物理要員を探しに行くのも時間がかかりますし、私とレーヴァテインで同時に仕掛けるのであれば、おそらく突破できると判断したので。」

 

 

 2人の話で、協力を持ちかけてきた理由に納得した。なるほど、確かに物理干渉を防ぐ障壁的なものがあるとなると、いくら『ファーストキラーズ』のリーダーで、マスターと付き合いの長いティルフィングでも突破は厳しいか。その点、私ならパワーはパラシュとほぼ同等・・・、というか、おそらく今の状態ならその均衡を崩せるとも思う。寝起きを妨害された私は、皆曰く『普段のメンドくさがりが消えた鬼神』のような状態らしいし、自分でもどこか、リミッターみたいなのが外れてる感じはしてるから、それに期待してるのだろう。

 まぁ、早く寝れるようになるなら、私としても別に手伝うのもやぶさかではない。・・・ただ、やっぱりタダで付き合うのは何となく私の性根的になんかメンドクサイので、ここは一つ、終わった後の報酬を要求するぐらいは許されてもいいだろう。

 

 

「・・・手伝うのは別にいいよ。ただし条件がある。」

 

「・・・何だ?」

 

 

 私が条件があるというと、マスターが少しだけ口を引きつらせた。ん~、そこまで無茶な要求するつもりは無いし、マスターが出来ない事を要求した事は無いはずなんだけどね。まぁ、無茶振りの一つや二つこなせてこそ、私のマスターをやれるはずだし、そんな表情をしないでもらいたいな~。私の中の嗜虐心が刺激されちゃうじゃない。

 

 

「何。別に難しい事じゃないよ? マスターに帰りおぶって欲しいってだけだし。」

 

「っ、ちょっとレーヴァテイン! いくらなんでも図々しすぎでは?」

 

「いや、私はマスターに聞いてるから。ティルフィングはちょっと黙ってるか、その雑魚達何とかしといて。で、どうなの?」

 

「・・・それはそれで結構きついんだけどな。」

 

「何? なんか言った?」

 

「イエ、マリモ!*1 ・・・わかった、条件を呑もう。」

 

「フッ、交渉成立だね。」

 

「っ、マスター!?」

 

「いいんだ、ティル。」

 

 

 ティルフィングが抗議の声をあげたけど、マスターはそれを手で制した。うちのマスターは、こういう所律儀だからねぇ。頼めば断らないだろうと思ってたよ。まぁ、断ッテタラマタ地獄ヲ見テモラウダケダッタケドネ。

 マスターに止められたティルフィングは、何か言おうと逡巡したものの、結局ため息を一つついた後、剣を構えて口を開いた。

 

 

「・・・レーヴァテイン、後ろは任せますよ。」

 

「ん、オッケー。ま、とりあえずテキトーに片付けますか。安眠妨害のツケ込みでね。」

 

「あんまり派手にやり過ぎるなよ? 島の一角更地にしましたとか、オレの信用に関わるからな。」

 

「へぇ~、マスターもそういうこと考えるんだ。意外。」

 

「違ぇよ。余計な書類仕事が増えるのが、嫌なだけだ。」

 

「まぁ、そういう事だろうと思いましたよ。という訳でレーヴァテイン、ここからは最短最速、無駄を極力省いて片付けますよ。」

 

「オッケー。さぁて、私に本気を出させたんだからさ・・・。楽に死ねると、思わないでよ!」

 

 

 その言葉を最後に、一気に駆けだす私達。目の前にはさっきぶっ潰してきた雑魚達の残骸を気にもせず、うじゃうじゃと雑魚達がまた湧き出てきていたが、世界を滅ぼした事もある魔剣『レーヴァテイン』の記憶を持つ私からすれば、こんなのは有象無象の寄せ集めが雪崩れてきてるだけにすぎない。ましてや、さっきまでと違ってこっちは信頼できる仲間(ティルフィング)に、的確に指示を出してくれる頭脳(マスター)がいるんだもの。無秩序に破壊を齎してしまう力を、よりよく振るわせてくれる存在がいるなら、私が、私達が負ける要素なんて一つもない!

 

 

「ティル、左からゴーレムを迂回して直進! そのまま突っ切れ!! レヴァさんは目の前の骨達を撃破次第、ゴーレムを踏み台にして、魔方陣(ターゲット)まで一気に跳躍!! 先に無限湧きの元を断て!!」

 

「分かりました!!」

 

「ハイハ~イっ、と! ティルフィング、合わせてよ。」

 

「そちらこそ、メンドくさがらないでくださいね。レーヴァテイン!」

 

「フッ、安眠(と無茶ぶり)の為なら、いくらでも働いてやるっつーの!」

 

 

ティルフィングの言葉にそう返し、目の前にいた最後の骨の雑魚を粉砕して、すぐに近くにいた岩野郎を踏み台にして飛び上がった。すぐに魔方陣の位置を確認するために下の方に目を向けると、ティルフィングも魔方陣に向かって直進しつつ、マスターの方に雑魚達がいかないよう蹴散らしてるのが見えた。全く、相変わらず律儀というか、ベタ惚れというか。・・・うん、何か後者で考えてたらほどよく『苛立ってきた』。あの魔方陣をぶっ壊すくらいには、ちょうどいいかも。

 

 

「ティルフィング!!」

 

「っ、はい!!」

 

 

私の呼び掛けと同時に、一気に加速して、魔方陣に接近するティルフィング。そして、その短い間に剣に溜めた力を解放し、魔方陣に向かって降り下ろした。

 

 

「『ファントムオブラブ』!!」

「『全部夏のせいだし』!!」

 

 

ティルフィングの連撃に合わせて、私も跳躍した高所から、一気に力を叩きつける。同時に魔方陣に向かって叩きつけられたそれは、最初こそ魔方陣の上の方に張られた透明な障壁みたいな何かに強く弾き返されそうになったものの、二人で思いっきり押し返してやると、ビキビキッとどんどんヒビか入る音が聞こえ始め、ついに耐えきれなくなってバリンと弾け、地面に直に描かれていた魔方陣に剣が叩きつけられて崩れたことで、その輝きを失った。

 マスターも「よしっ!」、と後ろでなんか喜んでるのが聞こえた。が、私もティルフィングも両方魔法陣を破壊するために他をあえて無視していた。ということはまぁ、必然的に―――

 

 

「ゴォォォ!!」

 

「っ、ヤバッ!?」

 

 

 

―――まぁ、そうなるよね。振り向くと、岩野郎と数体の骨野郎に襲われそうになってるマスターが見えた。流石に死なれたら約束どころじゃないので、駆け出そうと足を踏み出すけど、その横を超速で駆けるピンクの軌跡が視界を横切り、瞬きのうちに骨数体を塵と化して、ティルフィングがマスターへと振り下ろされた岩野郎の腕を受け止めていた。

 

 

「くぅっ・・・、マスターには、指一本触れさせません!!」

 

「ティル・・・。」

 

「ハァァァァ!!」

 

 

 ティルフィングは叫ぶと同時に、受けとめてた岩野郎の腕を押し返し、眼にもとまらぬ連撃にてただの土塊へと変えてしまった。ホント、マスターの事となると途端にパワー上がるよね、ティルフィングは。愛故に、ってことなんだろうけど、私にはイマイチ分かんない感覚だ。ロンギヌスやフライシュッツも似た節があるけど、正直私からすると、そこまで好きになるほどかと思ってたりする。悪友、としては割と付き合えそうだけど。

 

 

「ハァ、ハァ・・・。」

 

「すまん、ティル。助かった。」

 

「っ、いえ! マスターが無事なら、私はそれで///」

 

「そうか。でも悪いな、また無茶させちまって。」

 

「い、いえ。お気になさらず。その、私にとってマスターは、大切な人なので・・・。あの、別に、深い意味がある訳ではなくて///」

 

「アー、あのさぁ。戦場のど真ん中でそれ以上イチャつきあうのは、流石にやめてくんない? 糖分過多か熱中症で倒れそうになるから。」

 

 

流石にこれ以上は看過出来ず、メンドーだったけど二人の会話に割って入った。ティルフィングは「イ、イチャっ・・・!?」と顔を真っ赤にして俯き、マスターの方はしばらく無言になると、さっきまでの会話を思い出してか少し頬が赤くなって顔を背けていた。いや無自覚だったんかい、二人とも。

そう考えるとちょっとイラついたので、この辺をちょっと更地にして、嫌な事務仕事を押し付けようかと思ったが、流石にメンドくさすぎるのでやめた。私もそこまで子供じゃないし。

というか、いい加減さっさと戦線に復帰してほしいし、と恨みがましい目を向けると、二人とも仲良く咳払いを一つして、元の調子に戻った。・・・こんな時に言うのもあれだけど、これでデキてないというのだから、さっさとくっ付いてしまえばいいのにと思うのは私だけかな? ―――閑話休題。

 

 

「さて、あとはまぁこの辺の奴らを掃討すれば、全部片が付くはずだ。二人とも、まだいけるよな。」

 

「はい。」

 

「え~、私も? ・・・早く寝たい。」

 

「終わったら、好きなだけ寝ていいから。頼むよ、レヴァさん。」

 

「よし、じゃあさっさと終わらせますかね。」

 

 

 掃討戦なんてメンドーな事は全部ティルフィングに丸投げしようかと思ってたけど、好きなだけ寝ていいなんて聞いたら、やるにきまってるでしょ。二人掛かりで終わらせた方が効率がいいし。より長く寝れるなら、私はいくらでも働くよ。後ろで「チョロい」とか「扱いなれてきましたね」とか聞こえてるのは、気にしない事にした。

 

 

 

 

 その後、ものの数分で残った雑魚達を殲滅した私達は、周囲に敵が無いことを確認して、一度ビーチで集合する事にした。街の方で防衛戦とかやってたメンバーはティルフィングが呼びにいって、マスターには約束通り私をおぶってもらった。ん、『帰り』ってラグーナ島からの帰りじゃないのかって? 何言ってんの、どっちもだよ。当然じゃん? 働いたからには、それに見合った報酬が必要なんだし。ついでに、好きなだけ寝ていいって言ったんだから、ハンモックの貼り直しも手伝って(全部やって)もらわないと。私のマスターなんだから、これぐらいの要求、飲んでくれるよね?―――

 

 

 

 

 

―――数分後、ティルフィングが街の防衛戦を担当したメンバーを連れて戻ってくると、そこにはご満悦な表情でハンモックで爆睡しているレーヴァテインと、その近くで何人かのメンバーに介抱を受けてる疲労困憊のマスターがいたとか。

 後に、マスターは語る。「レヴァさんの要求を呑む時は、それ相応の覚悟がいるわ・・・、ガクッ。」、と。

 

*1
『仮面ライダー剣』にて有名な『オンドゥル語』の一つ。大家のお婆さんに追い出された主人公剣崎一真が小声で愚痴を呟くと、それに(バイクで走ってそれなりに距離が空いていたにもかかわらず)聞き取った大家さんが「何か言った?」と威圧的な笑みを浮かべてきたのに対しての発言。本当は「いえ、何も!」と言っているのだが、かつぜつが悪くてこうとしか聞こえない。


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