・虹竜の月、24日
執政院からミッション発動。25階の様子を見てこい、だそうな。要するに責任は自分たちで取れと。はいはいたしかに俺たちのせいですよ。おのれ。
で、ともかく昇降機が動かないと話にならないってんで、こりゃもう突撃しかないかーとばかりに行ってみて死にかけた。虫くらい閉鎖空間に大爆炎ぶちかませば死ぬだろとか思ってたら相手めちゃくちゃ早くてあっという間に這い出てきやがって、しかもタフだからなかなか死なない。そして糸がどんどん絡まる。ショロロの術式が無力化されたタイミングでギリギリ俺が動けるようになったのと、防御陣形が崩れた頃にちょうどコルネオリが盾突撃可能な態勢を整えたおかげでなんとか勝てたが、もう少し遅かったら終わってたな。
で、虫掃除を済ませて、ケーブルの点検も終えてなんとか25階への道を確保。あー疲れた。
・虹竜の月、25日
25階はゾウみたいな超でかい魔獣がうろうろしている本物の魔窟だ。そのくせ、小物もえらく大量に出るので始末が悪い。グレイロッジが先だって隠し通路を見つけてくれていたんだが、その隠し通路の着く先には竜がいらっしゃる。仕方ないので地道に行くしかなさそうだ。ガッテム。
で、動いていたら遺跡の外の地面に変な鉄のでかい箱発見。ショロロ曰く、古代の乗り合い馬車の類と考えられているらしい。マジかよ。あんな箱のどこに馬をくくりつけるんだ?
・虹竜の月、26日
アシタ、電☆撃☆復☆活。
なんでも右腕が動かなくなったからってすっぱり切断した上でショロロ父に相談して錬金術式の義腕を装着したらしい。その決断の早さにもびっくりだがアシタの真価はそこから先。右腕動けば後はどうでもいいとばかりにさっそく現役復帰を宣言し、パベールの止めるのも聞かずに俺たちのところにやってきて
「というわけで復帰戦はあのナマイキそうな雷竜にするから。キミたちサポートよろしくー」
無茶言うな。つーかなんで俺たち? と聞いたら、だってロックエッジっていまパラディンいないんだもん、と言う。医術防御あれば強いパーティでガチ戦闘してもなんとかなるかもしれないけど、いまの体調じゃ無理だしエリアキュアって実はあたし苦手なんだよねーアハハ。だからコルネオリのショックガードちょうだい。ついでだから残りも一緒に来なさいこれ決定事項ね。すげー。あまりの横暴さにショロロがぶち切れたが、アシタはどこ吹く風でじゃあキミは来なくていいよ。でもコルネオリは当然来るよね? ハハハ忘れてた、あいつ狂信者でしたねそういえば。そうして当然のようにコルネオリを味方につけたアシタはなぜか俺に向かって、
「それじゃ明日の5時に樹海磁軸26階集合ね。遅れたら死刑」
と言い放って去っていった。……オイ、なんで俺は参加確定してるんだ?
・虹竜の月、27日
雷竜轟沈。やったネ! マジかよ。
いやもう、アザーズステップ+医術防御がいかにあり得ない強化スキルかということを思い知った一戦だった。たまに強烈な一撃が飛んでくるんだが効きやしねえ。肝心の棍棒はアシタの腕のほうの調整不足でいまいち揮わなかったが、その辺は俺たちでどうとでもなる。ショロロがいないのでチェイス剣こそ使えないがそこはそれ、トルネードでがりがり削って長期戦を制し勝利。最後アムリタによるドーピングに多少頼ったとはいえ、余裕でした。
で、勝利を祝って酒場で宴会。アシタのヤツは酒が入ってもそのまんまで、要するにアイツはシラフでも酒が入ってるのと大差ないようなヤツなのだ。カチドキの同類か。最近そんな人間ばっかりだ。
とはいえ、アシタの傷は本当に完治してはいなかった。そりゃそうだ、あそこまでぶっ壊れたら人間元通りなんてなれねえよ。現に、彼女の衣装の肩口から見える肌には、生々しい傷痕がはっきり残っている。見入っていたらアシタはちらちらそれを見せて、ホラホラせくしーだろ惚れるなよとか言ってきやがった。――まあ、こいつはこういうヤツだ。
それで、最初のバカ騒ぎが幾分落ち着いたあたりで、俺はさっさと早引けして宿舎へ戻り、……もうひとりの、困ったちゃんをフォローしておくことにした。
案の定、ショロロはものすごく怒っていた。アイノテのバカ、みんなさっさとロックエッジでもなんでも行っちゃえばいいんだ、みたいなことを言って部屋に入れようともしなかった。
で、しょうがないから俺は、部屋の扉ごしにアシタの真意(と、俺が思っていること)を聞かせることにした。
――そもそもこの一戦、本来はホイスビーが引き受けなければいけないものだった。
偶然の産物とはいえ、俺たちがやってしまったことだ。俺たちでけじめを付けることができなければ、メンツは丸つぶれ、信頼は激減する。たぶんギルドの通常営業も難しくなって、解散までは行かなくとも、深層を潜ることは諦めざるを得なくなるかもしれない。
とはいえ、ホイスビーの現戦力で雷竜を倒すことはまずできない。だからアシタは、いろいろ理由を付けて手伝ってくれたのだ。ロックエッジの仲間でなく、俺たちを連れていったのはそのせい。弱点属性の見えない雷竜にはチェイス剣使いの俺よりスタンバッシュ屋のチ・フルルーのほうが確実に使えるし、イナー姉さんと違ってパベールは戦闘も強い。パラディンが欲しければグレイロッジに掛け合ってマハを連れていけばいいし、バードだってロックエッジにはチクタクというそこそこ使えるのがいる。俺たちを巻き込んだのは、なんのことはない、俺たちを巻き込むこと自体が目的だったからだ。
ショロロは返事をしなかった。まあ、しばらくは感情的に納得できないかもしれないさ。だから俺は、それ以上のことは特に言わず、早く寝ろよとだけ告げて自分の寝床に帰った。
さあ、明日からまた普通の探索に戻らないと。いろいろ遠回りしたが本来の目的はロックエッジを壊滅させたヴィズルの幽霊? とかいうヤツについて調べること。かつての決戦の地、25階を調べれば、その手がかりはきっとあるはずだ。
・虹竜の月、28日
案の定機嫌を直したショロロも加わり、いよいよ25階を本格探索開始。
25階、広いなー。まがりくねった通路が多くてとても辛い。唯一の救いは熊が追いかけてきたとき。あいつ防御陣形仕掛けるとほとんどなにも怖い行動をしてこないから、その間にカチドキの唄で体力回復させながらぼーっとできる。癒しの時間だ。
そんなことをやっているうちに一応俺たちも回れるだけの箇所は回った感じがする。後は雷竜がいた場所の後ろとかその辺を残すのみ。
・白蛇の月、1日
参った。マジで身体が重い。
正直ペンを持つのも辛いのだが、日課をこなさないと気持ち悪くてしょうがないので寝る前に必要なことだけ書いておく。
雷竜のいた場所から、26階への階段をスルーしてさらに後ろに回った場所。そこに、ソイツがいた。
世界樹の王、ヴィズル。かつてそんな名で呼ばれたその男は、壊れた機械みたいに、秘密を暴いた者に死を、と繰り返すだけの人形と化していた。
で、そんな状態にも関わらず、ソイツの壊れた意志に世界樹が反応した。反応して、かつてのグレイロッジに対するように、暴れ出した。
とんでもないパワーだった。まず王の威厳、と呼ばれる強力な威圧攻撃によって、俺たちはすぐ陣形を崩され、またカチドキの唄も効力を失ってしまう。そして態勢を崩したところに、世界樹の根が大嵐のごとくうねり狂う。後でマハに聞いたら、サイクロンルーツ、とか名付けられた技術らしいがともかくとんでもなく強力で、防いでも防いでも削られ、ソーマがあっという間に尽きていった。
――勝てたのは、たぶん。相手が壊れていたからだと思う。何度目かの攻撃の直後、世界樹の動きがにわかにおかしくなった。エラー発生、自己修復機能を作動させます。そう言って守りに入ったソイツは、カチドキの曲によってさらに機能を阻害され、ただ伸ばした枝でこちらの剣を払うだけの防御形態に入ってしまった。
そうなるともう、ショロロと俺の独壇場だ。伸ばした枝など、炎の前には無力でしかない。世界樹は焼かれ、裂かれ、人形のような男を手放して三度、眠りについた。
だが、俺たちは相手を甘く見ていた。
落ちた男の様子を見ようとしたその瞬間、男の身体から禍々しい光が放たれた。
瞬間、周囲にとんでもない呪いの波動が走り、近くにいた俺とコルネオリとショロロJrはまともに受けちまった。おかげで身体がとんでもなく重くなり、歩くこともままならない惨状になった。
ちなみに、怖がって近づかなかったイナー姉さんと、そしてカチドキは無事。つーかなんでカチドキは無事なんだ。……風水パワー? まさかな。
そして肝心なことはなにもわからない。というかアレ、マジでなんのために襲ってきたんだ?
簡単に補足すると、レン&ツスクル戦で勝った時点でイナーとカチドキは70レベル引退リビルドして30レベルに、そして今回の最後で残りメンバーが70レベル引退リビルドして30レベルになりました。次回はそのレベルのリハビリ戦からです。