・白蛇の月、11日
またミッション発動。なんでもグレイロッジが以前に倒した氷嵐の支配者が復活して悪さをしはじめたのでなんとかしてこいと――待て。なんでそれをグレイロッジじゃなくて俺たちに言う? と聞いたら執政院の役人、え、だってまた君たちがなにかやったから暴れ出したんだろう? と真顔で返しやがった。ハハハ、否定しても説得力がない自分が憎い。
とはいえ、15階のあの湖をどう渡るのかというのは大問題ではある。筏でも作るか、とも思ったが、渡っている途中で竜に来られたらたまったもんじゃねえしな。どうしたものか。
・白蛇の月、12日
祝祭明けにモリビトの集落に行ってみたら、片づけでえらくごった返していてほとんど相手にされなかった。
それで、かろうじて相手にしてくれたモリコと雑談。15階で困ってるんだよなー、と言ったら、
「ではコロトラングルに乗っていけばよい。
速度は大したことはないが属性的に相性がいいからな。竜も好んで襲おうとはしないだろう」
と返された。そしてそのプランにショロロが大興奮。ミッションとかはどうでもいい、ともかくコロトラングルに乗りたいという理由で決行確定。……最近、ギルド内での自分の発言力が急激に落ちているような気がするんですが、これは気のせいでしょうか。ぶっちゃけそろそろシメたほうがよくないかアイツ。
で、とりあえず16階からの通路を確保して撤退。ちなみにショロロは最初ははしゃいでいたが、そのうちコロトラングルの揺れに酔ってうつむいてなにも言わなくなった。お子さまめ。
・白蛇の月、13日
氷嵐の支配者を撃破。……あれ? 弱くね?
相手なにもできない状態だったんだけど。ほとんどの攻撃はフリーズガードを抜けられないし、自分を強化しようとすればカチドキにペースを乱されてうまくいかない。グレイロッジと戦っていたときは氷の槍を生み出してマハに大ダメージを与えていたりしたのでアレがコルネオリに来たらまずいなーと思っていたんだがそういうこともなく無事撃破。
まあ、いい運動にはなった。エンタングルレイの影響もほとんどなくなったことだし、そろそろ通常営業を再開してもいい頃かもしれない。
・白蛇の月、14日
グレイロッジが、活動停止した。
事件が起こったのは30階の通路。前後から大量の魔物が――えーと魔竜10体と鳥15体と数えきれない量の白細胞、ですか。ハハハそんなの聞きたくもねえ。ともかくそういうとんでもねえ量の敵に襲われたグレイロッジは、当然のように倒れ……なかった。
なにしろフロントガードとバックガードが同時にできるパーティだ。柔らかいのもワテナしかいないし、ムズピギーの呪歌が長期戦における体力をサポートする。火力はワテナとオコナーに任せろ。てな感じで、襲い来る敵を片端から焼き払い切り捨て、ついには全滅させてしまったらしい。もうぶっちゃけ人間の所行じゃねえよソレ。
とはいえさすがのあいつらも無傷とは行かなかった。特にロッドテイルはあばら骨にヒビが入ったそうで、それでもそんなもん怪我のうちに入らん! とか言っていたが歳を考えろとマハに説教されてしぶしぶ入院。他のメンバーも大なり小なり怪我をしているので、大事を取ってしばらく休むことにしたらしい。
そして俺たちにミッション発動。おそらくは30階にいると思われる、魔竜たちを動員してグレイロッジを襲わせたり、ヴィズルのクローンを作ってロックエッジを襲わせたりした黒幕。そいつをどうにかしてこい、というものだ。
通常営業どころの話じゃなかった。正真正銘、誰もたどり着いたことのない場所に住まう未知の強敵。おそらくは俺たちにしかできない、これまでにない大ミッション。その発動を受けて、ショロロは腕が鳴るね、と楽しそうに言った。イナー姉さんは怖いから行きたくないなぁ、とぼやきながらさっさと弓の手入れを始めた。カチドキは未知の文物を目にできる機会に大興奮していた。コルネオリはいつものようになんにも考えてない。……緊張感ねえな。と思いつつ、まあ今回もなんとかなるだろ、と思っている俺もきっと同類なんだろう。染まっただけかもしれないけど。
・白蛇の月、15日
かつてロックエッジと共闘したときにあらかた地図を作り終えていたせいで、あっさり27階は素通り。28階の水飲み場で休憩しつつ29階へ。
グレイロッジの報告書によると、あまりにわけがわからんので地図なんて作れません、だそうな。なんだそりゃ、と思いつつ探索開始――がー! なんだこのわけのわからねえ階は!
いろいろ抜け道みたいなのが入り組んでいてどこをどう行ったらいいのかわからん。法則みたいなのはかろうじて掴めるんだが、途中から本気で2択、3択、4択を迫られまくった。どうしようもないので巨大な亀がうろうろする回廊で亀を全部倒してから撤退。明日はどうにかなるかな……
・白蛇の月、17日
探索、続行中。
トライを繰り返すうちに時間が経ちすぎて体力が尽きたのでいったん28階にもどって水飲み場でキャンプし、もう一日かけてようやく30階への道筋を特定してから撤退。明日はとうとう、現行で知られている樹海の最下層を探索だ。気合い入れていくぞ!
・白蛇の月、19日
30階は、まるで人間の腸みたいにぐねぐねと曲がりくねった一本道の続く場所だった。
竜と鳥はもう駆除されていたが、なんか赤い変な生き物とか剣が効かないサソリとかがウヨウヨしていてシャレにならん。かろうじて体力が尽きる前に水飲み場を発見し、一息ついた。助かった……砂漠でオアシスを発見した探検隊の気分ってたぶんこんなんだろうなー。
で、キャンプ。よく考えたら、こんな風にキャンプしながら探索するのは3度目だ。1度目は8階で試練のため。2度目はモリビトとの決戦に打ち勝つため。こいつらともずいぶん長い付き合いになったなぁ。いつの間にか、一緒にいるのが当たり前みたいになっちまった。
そうして活動再開し、26階への隠し通路を発見したのでいったん街へ帰還。明日はいよいよ決戦、準備は入念にしないと。
・白蛇の月、20日
樹海の奥の奥、扉を開けた俺たちを待っていたのは、火氷雷それぞれの竜のクローンだった。――あ、死ぬ。とか思った。あのときは。マジで。
で、戦闘。フリーズガードを連打しながら火竜を殴りまくるが、間隙を縫って繰り出された雷竜の打撃がコルネオリを直撃、あえなく気絶。まずい、負ける、と思ったその瞬間、銀の光が走って一撃で火竜がぶち倒された。――抜刀氷雪。刀を再び鞘に収めたレンは笑って、
「どうした諸君。
こんな連中は私とツスクルより数段弱い。君たちに勝てない相手でもあるまい。よもや、緊張して実力が出せていないのではあるまいな?」
無茶言うな、と思ったがその言葉にショロロが大反応。やろうよアイノテ、どうせ氷竜なんて攻撃する前に削っちゃえば大丈夫だよっ、と言って大爆炎連打。そしてマジで勝利。いやもう、気合い入れればなんとかなるんだなーとか若干危険なことを考えた。
で、いったん水飲み場まで撤退してレンと会話。どうやら、ここは樹海を生み出した素となるモノがいる場所らしい。ヴィズルから昔聞いたところによると、ソイツは普段は森の維持のための活動しかしないが、世界樹に危害が及ぶと樹海の中にいるべきでないと判断した相手をなんとしてでも排除しようとするモードに入るのだとか。おそらく、グレイロッジとヴィズルの戦闘によってそのモードに入ったソイツが、今回の様々な事件の元凶なのだろう、ということだった。
「ソイツ――フォレスト・セルはヴィズル達が設定した通りに動いているだけだ。そしてソイツは、ヴィズルを世界樹を守るモノの象徴みたいに捉えていたんだろう。だからコピーを作り出して戦わせたりした。まあ、結果としてヴィズルの遺志を果たそうとしているという意味で、幽霊というのは不当ではない評価かもしれんな」
レンはそう言う。なんだよ、ならまたやるのか、と言ったら彼女は悲しそうに、
「もう、やめたよ。
ヴィズルがなにを考えていたのかは知らないけれど、もうそれは過去のものでしかない。こだわってもしょうがないさ。
――アイノテ、君が言ったとおりだ。死んだモノのために誰かが襲われ傷つくなんて馬鹿げている。引導、渡してやってくれ」
と、言った。
レンが言うには、ヴィズルはレンに次のようなことを言っていたらしい。なにかの間違いでフォレスト・セルが動き出したら自分が止める。ただし万が一自分が留守のときはレンに対処をお願いする。本体に強力な打撃を与えれば活動を停止して再起動するはずだ。対処のために、フォレスト・セルの戦闘プログラムの概要を渡しておくから参考にしてくれ――という話だ。要するに強く叩けば直るということらしく、そのための対処策もおおまかには教えてくれたらしい。
共闘しよう、と言ったのだが、レンは首を横に振った。
「フォレスト・セルの起動中、周囲にフォレスト・セルの細胞たちが大量に集まってくる。それをだれかが止めないといけない。
私はモリビト達に任せるつもりだったが、彼らは長い戦争の影響でだいぶ戦力を失っているし、――正直、これ以上彼らを巻き込みたくない。だから、私が止めるのでそのうちに君たちがフォレスト・セルをなんとかしてやってくれ」
そして、決戦。
先ほど3竜のクローンがいた場所の、さらに奥。そこに、いままで見たどんな生物とも違う、禍々しい姿があった。
勝てるかな、とショロロが言ったので、勝てるだろ、と答えた。いままで俺たちはこのメンバーで数多の強敵を打ち破ってきた。今回もきっとそうなるさ。
相手が唸る。俺はレンから教えられた対フォレスト・セル用戦闘手法を反芻する。最初の攻撃はエクスプロウド。火竜の炎もかくやというレベルの超火炎だ。対抗するためには、コルネオリがガードするしかない。カチドキが歌い始め、イナー姉さんが全員動きやすいようにと指示を飛ばす。すげえ、こんな技術も知っていたのかこのひと。そうして最初の炎をかわした俺たちに対して、フォレスト・セルは強烈な威圧をかけてきた。――王の威厳。カチドキの歌が止まり、行動が乱れる。ヤバい、いきなり乱された!? このタイミングで炎でも来たら死ぬ、と思ったのだが、フォレスト・セルは変な粉を全体に撒いただけだった。助かった、と思ったのもつかの間、いきなり強烈な睡魔に襲われてひざをつく。まさか毒ガス! くそ、予想外だ。イナー姉さんとカチドキも肌が石のように堅くなって行動が制限され、コルネオリはうわあ目が見えないと叫び出した。もうダメかと思ったところにショロロが薬を撒く。テリアカβ。全員かろうじて復活。しかしフォレスト・セルから次の攻撃が! と思ったらコルネオリが当てずっぽうに振り回した盾に相手の触腕がぶち当たり、威力が減殺された攻撃ではイナー姉さんを倒すことはできなかった。ラッキー!
だがうかうかはしていられない。そろそろ次の大攻撃の連打、すなわちサンダーストーム→エクスプロウド→フリージング連鎖が来る。コルネオリはガードを準備、俺とショロロは迎撃用意を固め、その間にイナー姉さんが――すげえ、一度に3本も矢を撃ち放った! 強烈な打撃にフォレスト・セルが悲鳴を上げる。さらに前と同様上に向けて矢を放って、そしてカチドキの呪歌が全員を鼓舞する。態勢が整った、と思った瞬間に王の威厳サンダーストーム王の威厳エクスプロウド王の威厳フリージングむきー! 態勢が一向に整わないままジリジリと時間が過ぎ、そしてふたたび相手の毒ガス攻撃。うわ目が見えなくなった! 慌ててカバンからテリアカβを取り出してあたりに撒く。幸い、コルネオリはちょっとした呪を受けただけで無事だったので、次の炎にはファイアガードが間に合った。
とはいえ、偶然保っていることは当然こちらも承知している。こうなったら速攻しかねえと腹をくくった俺たちは態勢を整えつつ猛攻。だが火力が足りねえ! くそ、せめて俺がスタンバッシュでも使えればいいんだが、ショロロも俺も多勢を相手に属性戦を行うことを主眼に入れたスタイルなので攻撃力が若干足りない――と言った瞬間、ショロロが
「あ。電撃の術式、忘れてた」
あ、じゃねえよバカ。さっさと使えー!
はい勝ちました。最後、相手がなにか危険なコトをやろうとしたのが見えたがギリギリこちらの勢いのほうが上だったらしい。まったく、最後まで締まらねえ話だ。――それも俺たちらしいっちゃらしいけど。