しかも超面白い!
toフータロー
______________________________
件名
______________________________
明日の昼休みにする勉強、
どうする?|
目の前にあるスマホの画面を見ながら私は、はぁ。とため息をついた。絶賛悩み中。
と、言うのも·····。
この内容で大丈夫かな?と。
フータローと別れマンションに戻り、お風呂に入った。それから髪の毛を乾かして·····そこから一時間スマホと睨めっこ。文字を打ったら消し、何回も消し·····出来上がったメールがこれ。合計文字数十七、一時間を費やしてできた私の努力の結晶がこれ。
·····。
何度も送信のボタンを押そうとしているけど、·····なかなか押せない。
これじゃあ愛想悪く思われちゃうかな? もっと明るく·····女の子っぽく·····。
toフータロー
______________________________
件名
______________________________
明日の昼休みにやる勉強なん
だけど(>_<)どこでやろうか?
(´・ω・`)|
·····。
絶対違う。ダメだ。
一花ならこれでも大丈夫だろうけど。うーん·····。
私は机を離れ、ベッドに寝転んでうつ伏せになる。
私は初めて家族以外の人にメールを送ろうとしている。姉妹へのメールなら、別に気にすることなんてないけれど·····フータローは別。
「うー·····」
近くにあったクッションを抱きしめる。なんだか変な声が出た。
時計を見ると、時刻は既に十時半。そもそもフータローは起きてるのかな? 勉強出来るから授業中も寝ないだろうし·····今から送ったら迷惑かな。
抱きしめているクッションに顔を埋める。ダメだ。いくら考えても分からない。
いっそのこと二乃にでもきこうかな。でも絶対面白がって来るし·····。
少し、外の空気でも吸って落ち着こう。
◆◆◆
私は部屋の大窓を開き、ベランダに出た。
フータローとマンションを出た時と同じく、生暖かい風が頬を優しく撫でる。
五つ子の部屋のベランダは全て繋がっていて、五つの部屋全てから明かりが漏れていた。みんなまだ起きてるみたい。
タワーマンション三十階から見える夜の街の景色はいつ見ても綺麗だと思う。できるならいつかフータローと·····ああでもそうしたらフータローはこの家に泊まってるわけで·····どこで寝るのかな? ·····ソファーだと失礼だし·····。そ、そうしたら私の部屋で·····。
顔に熱が溜まっていくのを感じる。
ダメだ。今の私はいつも以上にダメだ。
落ち着こうと外に出た矢先にこれ。なんだか体中が暑くて仕方ない。
私は作りかけのメールが表示されているスマホに再び目を落とした。
toフータロー
______________________________
件名
______________________________
夜遅くにごめんね。
明日の昼休みにする勉強、
どうする?|
あまり遅くなっても迷惑かも知れないし、これで送ってしまおう。大丈夫、変じゃない変じゃない。
よしこれで送信、と。
·····。
で、できない!
指が震えて、送信ボタンが押せない。
一通送るだけでこんなんじゃ·····。
私は自分の心の弱さに、はあ。とため息をつき、そのまま夜空を見上げる。
フータローのことになると、やっぱり自分が変だ。
……そんな思考に頭が埋め尽くされていた、今の私には。
背後から忍び寄る悪魔の存在に、気が付かなかった。
「はい、そーしん。ポチッと」
後ろから突然現れた手。それが私が押すのをためらっていた送信ボタンを·····ためらいなく押した。
無情にも表示される送信中の文字。そして何が起きたか分からないまま、画面には送信完了の文字が·····。
私はバッ、と勢いよく振り返った。
そこには人差し指を立てたまま、いたずらっぽい笑みを浮かべる一花がいた。
「な、なんでそんなことするの!」
非難を込めた目で一花を睨む。
「いやー、スマホ見てる三玖がいたら·····覗きたくなるじゃん?」
「なっ·····い、いつから見てたの·····?」
「うーんとね」
一花は面白いものを見つけたような顔で言った。
「外見ながらもじもじしだした所からかな」
「全部……」
あははごめんごめんと軽く謝る一花。
私は愕然とし、羞恥で顔が赤くなっていくのを自覚する。
「でもさー」
「?」
「まさかフータロー君だとはねぇ。まぁ見送りから帰ってきた時から怪しかったけど」
「そ、それは走ってたから暑くなっただけで·····」
「顔が赤い自覚、あったんだ?」
「〜っ!」
一花の言葉に上手くのせられてしまった。それにしても全部見られてたなんて·····。私、口に出して無かったよね?
「今も顔赤いよ三玖·····そんなんじゃフータロー君泊めたとき、·····もたないんじゃない?」
「なっ、なんで·····」
だってー。と人差し指を口にあてる一花。
「声に出してたじゃん。この景色フータローとみたいなぁとか·····」
「だ、だめ·····!」
私は一花の言葉を強引に遮る。高速フラグ回収。やってしまった。一人だと思って声に出てたんだ·····。
もうダメだ·····もういっそ布団被って部屋に引きこもろうかな·····。
「大丈夫だよみんなには内緒にしておくからさ」
「むー……」
その時、手の中のスマホが振動した。
……フータローからだ。
from フータロー
______________________________
to 中野三玖
______________________________
件名 Re:
______________________________
四時間目終わったら三玖の席に
行く。昼食ってから三十分くら
いだな。
私は「わかった」とだけ短く返信し、画面を消した。
緩みそうになる口を必死に引き締める。
「よかったの? それだけで」
「いいの……一花に変なことされるかも知れないし」
困ったものだ。一人で結構悩んでたのに……。
一時間以上も、悩んでたのに!
◆◆◆
体冷えてきたからもう戻るね。と一花に伝え、自室に戻る直前、
「二人でお勉強デート、楽しんでね」
と一花に言われた。
冷え始めた体がまた暑くなってきたのがバレちゃいけない。ポーカーフェイス、クールクール。冷静さが売りだからね。私は。
私は「クールクール」とつぶやきながら全然冷めない体をベッドにダイブさせる。
そしてクッションに顔を埋めて、
「うーーーーーーー!」
恥ずかしさを全てクッションにぶつけるようにはき出した。両足もバタバタさせ、スマホはベッドの端に投げ捨てる。
まあつまるところ、一花の前で平静さを保っているのは限界だった。
一花の前ではああ言ったものの。
好きな人からの初メールを、喜ばない人はいないと思う。
嬉しいに、決まっている。
「明日からどうしよう……」
このままじゃ……まともに顔を見ることさえ出来ないよ·····。
なんだかさっきから隣が騒がしいわね……。
どうも、フィヨルドです。(´・ω・`
評価、感想、誤字報告ありがとうございます。もうすぐ赤バーで埋まりますね。まさかこんなに高評価をもらえるとは……。
次回もよろしくお願いします。