遅れてすいません!
すぐに投稿スピード戻します。
―――意味わかんない。
勝手に入ってきて、勝手に助けて、……勝手に優しくしてくれて。
頼んでもないのに。
ドオオォォン……
轟音が響き、反射的に空を見上げる。
―――見上げた夜空には、輝く大輪の花が咲いていた。
背負われながら見るその景色は……。
少しだけ。
ほんの少しだけ、いつもより綺麗に見えた。
◇◇◇
頭上には灼熱の太陽。
階下から聞こえる昼休みの喧騒。
視線の先は陽炎で揺らめいて見えた。
暑い。とにかく暑い。
今日の日中の最高気温は30度。六月上旬にして真夏日となると、地球の未来がだんだん不安になってくる。けどまあ五つ子の未来の方が何十倍も心配だ。果たして卒業……の前に進級できるのだろうか。
……そこは、俺の家庭教師の手腕にかかっているんだが……。
そもそもインドア派の俺が外に長時間いることが間違っていると思う。
わざわざ学校の屋上なんかで昼食わなくてもなあ。
「そう思わないか? 三玖」
「え……な、なに、フータロー」
三玖の肩がビクッと震えた。
「いやー、暑いなってさ。なんでこんなクソ暑い中俺は昼食ってんだろうって思ったんだよ」
「ごめんなさい·····」
三玖が屋上で食べたいって言うからこうなってるわけだが·····。
四時限目の終わり。教科書筆記用具をリュックにしまった俺は、三玖の席に行った。
メールで昼飯食った後に図書館で勉強をする予定と決まっている。
「三玖、食堂に行こう」
「えっ·····?」
しかし話しかけて返ってきたのは疑問の声。
ん? 俺なんか変なこと言ったか?
「あっ·····えっと、今日は屋上で食べるから、そっちに行こう?」
「ああ。まあ別にどこでもいいが·····他の五つ子たちはいいのか?」
「うん、大丈夫。もう二乃にメールしてあるから」
食堂で五つ子と昼飯食うと·····生徒の視線を集めるからな。
そこに俺となると、事情を知らない生徒たちにとっては疑問でしかない。翌日にはあらぬ噂が飛び交うことだろう。
だから三玖の提案は俺にとって嬉しいものだった。
·····と思ってた時があったさ。
そして今に至る。
今更移動するのも時間がかかるだけなので、ここで食べているわけだ。今から行っても席をとれるか分からないしな。
最初は屋上の高さと開けた場所ならではの涼しい風で快適だったんだが、風が止んだ途端に暑くなる。太陽はほぼ真上にあるので、日陰もない。
「いやなに、俺は別に責めてないんだ。安易に同意した過去の自分を責めてるだけなんだよ」
「遠回しに私が悪いって言ってるよね·····」
カバンを開け、何かを探し始める三玖。すると、缶の飲み物を取り出して俺に差し出してきた。
これは·····。
「抹茶ソーダ·····」
「お詫び。私のオススメ、あげる。·····もちろん、鼻水は入ってないよ」
「いや、なんだよ。そもそも茶碗じゃないんだから入る余地ないだろ」
いやヤバいだろ、抹茶ソーダ。
なんだ? 和と洋の融合ってやつか? いや炭酸は洋じゃない·····がそんなことはどうでもいい。なんか凄い押し付けて来るし、そんなに飲んで欲しいのか·····?
というか·····ん?
「三玖、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「し、知ってるの!?」
なんか三玖が目をキラキラさせてる。普段の落ち着いた雰囲気とのギャップが凄い。顔が近い近い。
「知ってるもなにも·····大谷吉継と石田三成の逸話だろ?」
「うんうん!」
首をブンブンと縦に振った後、三玖はすぅー、と大きく息を吸い込んだ。
「吉継は豊臣秀吉に仕えて、小田原攻めや九州征伐などで功績があったんだよね!『100万の軍勢を与え、自由に軍配をさせてみたい』と秀吉に言わせたほどなんだよ! 晩年は難病を患っちゃったけど……親友の石田三成から「挙兵」という重大決意を明かされて、関ケ原の戦いでは西軍に加わったんだ。小早川秀秋ら東軍に寝返った軍勢の猛攻に最後まで戦って自害した!
石田三成との友情と豊臣家への忠義を守って、病を患いながらも戦地を駆け抜けて、最後は自ら命を絶った吉継! かっこいいよね! 『義』の精神だよ!」
一息。
……。
「おう! そうだな!」
何を言えばいいかわからず、とりあえずそう返すしかなかった。
……。
続くのはもちろん沈黙。三玖のマシンガンを受け、呆然とする俺は場を繋ぐ力など無い。無力だ。
……元からとか言うな。
目を合わせながらぱちぱちと数回まばたきした後、目と鼻の先にある三玖の顔が、急に真っ赤になった。炎天下にずっといた後のマシンガンで酸欠、熱中症か?
「ち、違う! あ、違くはないんだけど……違うの!」
慌てて後ろに下がり、大慌てで何かを否定する三玖。
「別にいいじゃねえか。吉継、好きなんだろ?」
「う……」
何かを考えるように下を向いた。そして何故か伏し目がちにこちらを見ている。
「変、じゃないかな……?」
「何が変なんだ?」
「だって……」
三玖は一度ためらうも、再度言葉を続ける。
「みんなと違うから……みんな雑誌とかテレビ見て、芸能人とか俳優とかの話してるけど……私は髭の生えたおじさん。変だよ」
どうやら三玖は、いわゆる歴女というやつらしい。周りに自分と同じ趣味を持ってる人がいないから不安なのだろう。
『みんなと違う』
ひとりは怖い。自分だけ周りと違うのは誰だって不安になる。
一人になることがどれだけ不安なのか、俺は五年前にそれを知っている。
だから、
「いいんじゃねえか、別に」
「え·····?」
今度は俺が、あの時の女の子みたいに
「だって好きなんだろ、戦国武将。いいじゃん、かっこよくてさ」
人を一人にさせないように言うんだ。
「みんなも全然気にしないと思うし·····少なくとも、俺は変だとは思わない」
「·····っ!」
もしそれで、少しでも救われる人がいるなら。目の前で不安そうな顔をしてる人が笑ってくれるのなら。
俺はあの子のようには出来ないだろう。
それでも、不器用かも知れないけれど手を差しのべたいと思う。
三玖が俺を見る。その顔に、もう不安そうな色はないようだ。
これで、いい。
人に頼られることがどういうことか、昨日知った。
『迷惑かもしれないけど·····勉強、教えて欲しい』
あの言葉は、俺の中に焼き付いたように残っている。
今までいつか頼られるためにと思いながら勉強し、しかし他人との交流は出来るだけしてこなかった。
だから、その言葉は俺に鮮烈に響いた訳だ。
五年前のあの子が今どこにいるかは分からない。
届かないと知りながらも、きっと同じ雲一つない快晴の空にいるだろう、あの日の女の子に問いかける。
―――なあ。俺、頼られる人になれてるかな?
あの時の君みたいに。
◆◆◆
「そっか·····じゃあ、また話していい? もっとたくさん話したいこと、あるんだ」
再び抹茶ソーダを差し出しながら、俺に言う三玖。
「ああ。でも続きは図書室でな? もう暑くて仕方ないんだよ·····」
三玖の激しい抹茶ソーダ押しと炎天下の暑さに顔を引きつらせながら答える。
いや、抹茶ソーダ要らないから·····。
だが、うだるような暑さとは裏腹に、俺は今、とても心地よい何かを感じていた。
ちなみに、結局飲んだ(飲まされた)抹茶ソーダは、じっとりとかいてしまった汗もあってとても美味しく感じた。
なんだか負けた気がするな·····。
「……(抹茶ソーダの箱買いを検討中)」
どうも、フィヨルドです(´・ω・`)
遅れて申し訳すいません。次からは投稿ペース戻すので大丈夫ですよ。二日に一話くらいです。
途中で放ったりしませんよ。ええ。
どうやら前回が高評だったらしく、感想もたくさん来て、日間ランキング13位まで上がってました。ありがとう!
……少し捕捉を。
原作読んでる人なら分かると思いますが、フータローはチートキャラなんですよ。何でかは言いませんが。
だから鼻水の話も知ってます!
それと、どうやら鼻水の逸話を残した大谷吉継という武将は、歴女人気ナンバー1らしいです。その理由は三玖が語ってますので、そちらで。どうせ読み飛ばしましたよね? ……自分は何でも知ってるんですよ。
これからもよろしくお願いします。